Roselia 〜屹立の青薔薇〜   作:山本イツキ

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Afterglow初登場。

初めて執筆した時のオリキャラも登場します。


第八曲 宿敵

 メンバーとの苦難を乗り越え本格指導を始めたRoselia。

 CiRCLEの初ライブを大成功に収めた奴らは今飛ぶ鳥を落とす勢いにある。

 一度ステージに上がれば歓声が湧き上がり、友希那や紗夜の元々の知名度も相まってかすぐにその名が世に知れ渡った。

 

 そして今日。

 Roseliaはライブを行なっている。

 "SPACE" というこの街の学生バンドの発祥地と言えるライブハウスで、厳格と有名なオーナーから誘われる形で出演していた。

 かくいうオレも臨時のスタジオスタッフとしてライブに参加していた。

 なんでも、深刻な人手不足のようでCiRCLEから何人か借り出される形となったのだ。

 

 

 「ありがとう」

 

 

 友希那の挨拶と共にライブは終演を迎え、非常に素晴らしい盛り上がりを見せた。

 ステージ裏へと向かうRoseliaのメンバーを拍手で迎え入れる。

 

 

 「おつかれ。よかったぞ」

 

 「今日の演奏はどうだったかしら」

 

 

 友希那はオレの前で立ち止まり真剣な眼差しで問う。

 

 

 「そうだな…………強いていうなら、少し音が走りすぎていた気がするな。ライブでテンションが上がるのは仕方ないが、もう少し落ち着くことだな」

 

 「やっぱり雄樹夜は厳しいな〜」

 

 「当然だ。だが、あれを見てみろ」

 

 

 そういい、ステージを後にする観客たちの反応をこっそり見せる。

 全員同じとは言えないが、一つ言えることはみんなが嬉しそうに、大いに満足した様子だった。

 

 

 「オマエたちの演奏は観客の心を掴んだ。そこは誇ってもいいと思うぞ」

 

 

 オレからの最大限の賛辞。

 まだまだ頂点には程遠いが、決して僻む必要はない。

 観客たちの反応が全てを物語っているのだ。

 

 

 「でも、やっぱり嬉しいね♪」

 

 「うんうん!あこ、これからももっと頑張ります!」

 

 「わ……………私も………………!」

 

 「次のライブまでにもっと練習を積み重ねる必要がありそうですね」

 

 「ええ。この後は──────」

 

 「あの〜。あこから少しいいですか?」

 

 

 恐る恐る、と言った感じであこかま小さな手を上げる。

 

 

 「なにかしら?」

 

 「今日この後、おねーちゃんたちにRoseliaを紹介したいんですけど、いいですか?」

 

 

 あこからの突然の提案に友希那は首を傾げる。

 そんな中、あこは言葉を続ける。

 

 

 「あこたちがすごく仲が良くてカッコいいバンドなんだっておねーちゃんに知ってもらいたくて……………も、もちろん、反省会も受けるので!少しの間でいいのでお願いします!」

 

 「あこ……………」

 

 

 深々と頭を下げるあこ。

 懇願するようなその表情を黙って見過ごすオレではない。

 

 

 「別に、いいんじゃないか?」

 

 「湊くん…………」

 

 「あこの姉もバンドをやってるらしいし、ここで関わりを持っておくのは悪くない話だと思うが?」

 

 

 もしかしたらRoseliaと肩を並べる実力があるかもしれない。

 好敵手を持つことはバンドの意識向上にも直結する。

 

 

 「……………わかったわ。その代わり、先に反省会を行うわよ」

 

 「は、はい!おねーちゃんに連絡します!」

 

 

 あこは嬉しそうにそう話、楽屋へと一目散に走る。

 

 

 「それじゃあ、オレは片付けを手伝ってくるから」

 

 「ええ。後であなたの意見も詳しく聞かせてちょうだい」

 

 「わかった」

 

 

 友希那たちに別れを告げ、清掃作業に入る。

 Roseliaはここ数週間でかなりの知名度を誇るようになった。

 まりなさんから聞いた話だと、獲得に乗り出している事務所もあるのだとか。

 それは大いに喜ばしいことなのだが、オレと友希那はその限りではない。

 昔、義父さんのバンドはその事務所の身勝手によって解散させられたのだ。

 もう二度とあの悲劇は繰り返させない。

 

 

 (……………調べておくか)

 

 

 オレは陰ながらできることをやる。

 変な虫が寄ってこないためにも手を施す必要がありそうだ。

 

 

 

………………………

 

 

…………

 

 

 

 全ての片付けを済ませ、着替えを終えたところでSPACEを後にする。

 季節も夏に差し掛かり、梅雨の時期特有のジメジメとした蒸し暑さが残る。

 入り口を出たところで、大きな人だかりができていた。

 

 

 「待たせたな」

 

 

 Roseliaの面々にそう告げると、全員が一斉にオレを見た。

 見知らぬ姿が六人。

 全員、羽丘の生徒らしい。

 

 

 「この人があこの言っていた "超超カッコいい人" か?」

 

 「うん!そうだよ!」

 

 

 この中でも1番長身の女生徒に歩み寄られる。

 あこと親しげに話していたから、恐らく姉だろう。

 

 

 「はじめまして。あこの姉の巴です。あこがいつもお世話になってます」

 

 「ああ」

 

 

 なんとも礼儀正しいやつだ。

 流石は姉というべきか。

 

 

 「あこから話は聞いている。なんでも、幼馴染でバンドを組んだんだとか」

 

 「はい。Afterglowって言います」

 

 

 今度は髪に赤いメッシュを入れた女生徒が前に出る。

 その側には似たような顔をした男子生徒がいて、入学して少し噂になっていたやつだとすぐにわかった。

 

 

 「オレはCiRCLEでバイトしてるからいつでも利用してくれ。最大限もてなそう」

 

 「ありがとうございます!」

 

 「そうだ、雄樹夜。この後みんなでファミレスに行くんだけど一緒にどう?」

 

 「ああ。別に構わないぞ」

 

 「なら決定☆それじゃあ行こっかー」

 

 

 総勢12名がゾロゾロと歩き出す。

 

 

 「あの、湊 雄樹夜さんですよね?」

 

 

 その道中で、赤メッシュと同じ顔をした男子生徒に声をかけられた。

 

 

 「そうだ。オマエは確か…………」

 

 「羽丘学園1年の美竹 葵(みたけ あおい)です。お会いできて光栄です」

 

 

 和やかに話すこの優男。

 入学式の時からその甘いルックスに魅了された生徒が続出したという噂がある奴だ。

 数少ない男子生徒の中でも、コイツの存在感は群を抜いている。

 

 

 「学園の有名人がまさかバンドをしていたとは驚きだ」

 

 「有名人だなんてそんな…………でも、蘭や巴ちゃんたちと違ってボクはボーカル専念ですけどね」

 

 「何も恥じることはない。ライブで観られることを楽しみにしておこう」

 

 「こちらこそ。よろしくお願いします」

 

 「葵くん!早く早く〜!」

 

 「雄樹夜も置いてくよ〜!」

 

 「あっ、はーい!」

 

 「すぐに行く」

 

 

 静かな夜道とは対照的に、賑やかな雰囲気でファミレスへと向かう。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 ファミレスに着き、それぞれ自己紹介を終えると各々が話を始める。

 趣味同士が合うもの同士、興味があって話がしてみたいもの同士グループとなっていた。

 そんな中、オレは美竹姉弟と友希那とテーブルを囲っている。

 

 

 「やはり二人は似ているな」

 

 「そうですか?」

 

 「ああ。仲も相当いいんじゃないか?」

 

 

 オレのその言葉に二人は視線をずらす。

 

 

 「えーっと、何というか………………」

 

 「良くないです」

 

 「そんなハッキリ言う!?」

 

 

 言葉を濁す弟に対し、姉はストレートに言う。

 いくら血のつながった姉弟といえど性格まで似ることはないようだ。

 

 

 「だって葵は優柔不断だし、頼み事は絶対断らないし、優しすぎるし……………とにかく、性格さえ良くなったら良いのにどれほど思ったことか」

 

 「……………後半部分は褒めているようにしか聞こえないんだが?」

 

 「ち、違います!」

 

 「蘭はもう少し人付き合いができるようになったらいいのに」

 

 「うるさい」

 

 「なんかボクにだけ当たり強くない…………?」

 

 

 二人は貶しあいとも取れる会話を続けているのだが、心の底から罵倒しているわけではないのはわかる。

 これが本来のキョウダイ像なのだろうか。

 

 

 「Afterglowは、ライブはやらないのかしら?」

 

 「今はまだ、オーディションを受けている段階です」

 

 「SPACEのオーナーにはまだ認めてもらえてませんが、いつか必ず」

 

 「「ステージに上がって見せますよ!」」

 

 

 寸分の狂いもなく美竹姉弟は同じ言葉を口にした。

 性格は似ていないが考えていることは同じなようだ。

 

 

 「そう」

 「そうか」

 

 

 どうやらオレたちは、そっけないところは似ているらしい。

 

 

 「あの、お二人は本当のキョウダイじゃないんですよね?」

 

 「よく知ってるな。誰から聞いた?」

 

 「私よ」

 

 「なんだ、面識あったのか」

 

 「彼女たちの入学式の時に偶然、公園で」

 

 「確かあの時、猫を抱き抱えて──────」

 

 「見間違いよ」

 

 「えっ?でも、あのまま学校に─────」

 

 「そんなことした記憶はないわ」

 

 

 美竹弟の言葉を友希那は遮る。

 本人は気づいていないだろうが、友希那が猫好きという事はオレや幼馴染のリサはとうの昔に知っている。

 昔、猫を飼っていたこともあったし友希那は家族の中で誰よりも可愛がっていた。

 携帯の待ち受けも猫の写真だしな。

 

 

 「最近学校に野良猫が大量発生してるのは、オマエが原因だったか」

 

 「私じゃないわ」

 

 「だが、現に餌やりを──────」

 

 「それ以上言えば怒るわよ」

 

 

 脅しとも取れる鋭い視線が、オレの口を噤ませる。

 そこまでしてバレたくないものなのか。

 オレにはその気持ちがわからない。

 

 

 「代わりと言ってはなんだがオレの秘密とやらもバラして構わないぞ」

 

 

 友希那にそう告げ、この場を収めようとする。

 義妹は考えるようなそぶりを見せるが、一向に出てくる気配はない。

 まあ無理はないだろう。

 オレに秘密なんてものは存在しないからな。

 

 

 「リサ、ちょっといいかしら」

 

 「んー?なになにー?」

 

 「実は──────」

 

 

 そこまでして秘密を知りたいのか、友希那は切り札(リサ)を呼び寄せた。

 リサがオレのことをどれほど知ってるかはわからないが、何かしらの情報を握られていても不思議ではない。

 一体何を話してくれることやら。

 

 

 「雄樹夜の秘密か〜…………」

 

 「何か思い当たる節はないかしら?」

 

 「んーーー…………」

 

 

 必死に思い出しているようだが、やはり何も出ない。

 

 

 「……………あっ、でも秘密というよりは "事実" みたいなものなんだけど」

 

 「何ですか?」

 

 「雄樹夜の部屋には、思(・)春(・)期(・)男(・)児(・)が(・)置(・)い(・)て(・)そ(・)う(・)な(・)物(・)が一つもないの」

 

 「………………はっ?」

 

 

 リサの言ってることがわからず腑抜けた声を出す。

 

 

 「その…………ほらっ、ね?」

 

 「いや、わかるわけないだろ」

 

 

 無理矢理にでもわからせようとするリサだが、オレを含め友希那も理解できていない。

 困った顔を浮かべていると、美竹弟が口を開く。

 

 

 「つまり、如何わしい本が一切ないと?」

 

 「そうそれ!!」

 

 「あるわけないだろ。そんなもの」

 

 「ちなみに何ですけど、葵の部屋にもないですよ」

 

 「ちょっ!調べたの!?」

 

 「だって、気にはなるし……………」

 

 「わかるわかる〜!やっぱり布団の下とか覗いちゃうよね〜」

 

 

 顔を赤らめる美竹姉に、リサは共感する。

 

 

 「それが普通なのかしら?」

 

 「いや、奴らは特殊だ。間違っても感化されるなよ」

 

 

 友希那はこう言ったことには疎い。

 オレも人のことを言えるほどじゃないが。

 

 

 「雄樹夜と葵はそういったことは興味ないのかな〜?」

 

 

 悪戯な笑みを浮かべるリサ。

 

 

 「ま、まあ人並みには………………」

 

 「オレは興味ないな」

 

 「えっ、雄樹夜ってまさか…………こ(・)っ(・)ち(・)!?」

 

 

 否定したことによりあらぬ誤解を生んでしまった。

 だが、そういったことは一切興味がないのは事実だしどう返答したらいいか悩ましいところだ。

 

 

 「雄樹夜って本当に男子高校生なのかしら」

 

 「当たり前だろ」

 

 「葵も、思春期ってきてないわけ?」

 

 「これって、ボクたちが悪いんですかね………?」

 

 「いや、オレたちに一切非はない。悪いのは、一方的な概念を押し付けているコイツらだ」

 

 

 人と話すことにより自分にとっての普通が覆る。

 共感して欲しいわけではないが、オレの考えも理解して欲しい。

 

 人付き合いというのは難しいものだな。

 




これからもAfterglowとは絡んでいくかも…………?

そっちの方も過去に執筆しているので読んでいただければ幸いです。
とってもとっても拙い文にはなっていますが
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