とある警備府で死んだ憲兵の主人公が駆逐艦舞風に転生して暴力ですべてを解決していこうとするお話。ちなみに途中で力尽きた。結末は後書きにほんとうだったらこんなお話にする予定でしたよ的なのを書いて終了。
*転生もの。いつものネタ小説。見る人によってはアンチ・ヘイト色が強いかも。
やっぱり、のわっちは私が救ってやんなきゃなあ!?(黄色い悪魔)
とある警備府に所属することになった憲兵の俺は着任早々、警備府の母港で取り行われた式典にてとんでもない失態を犯した。その式典は警備府の提督(クソ)を祝う為に行われたもので、クソ野郎や所属する艦娘のほか、上層部のお偉いさんまでもが招待された大規模なものだったのだが、俺は勤務初日ということもあり緊張のあまり大勢の目の前で盛大に足を滑らせて海に転落してしまったのだ。冷たい海に落ちて苦しくてもがくが、もがけばもがくほど体は暗い海へと沈んでいく。
もうおしまいだ…と観念した、そんな時だ。
何かが俺の手を掴んだ。そして俺の手を力強く握ったその何かに引き上げられるように俺の体は浮上する。
「大丈夫ですか?」
久々の酸素と体の中から込み上げてくる海水。激しくせき込んで丸くなった背中をさすられながら誰かがそう言ったのを聞いた。
呼吸が落ち着き、ぼやけた視界がクリアになり始める。同時に周りから失笑が聞こえたが、相も変わらず俺の背中を優しくさすり続ける誰かの手に俺は安心していた。
「泳げますか?さぁ、こちらです」
俺は導かれるままにその小さな体に全てを委ねる。きれいな銀色の髪に目を奪われた。水に濡れたその透き通るような銀色の髪は太陽に照らされ、美しくキラキラと輝いていた。
式典後、クソ野郎には激しく叱責された挙句ぶん殴られ、同僚の憲兵たちからもからかわれたが、正直そんなことはどうでもよかった。
俺を岸へと導くその娘の真剣な横顔、そしてあの艶やかな銀色の髪が頭から離れなかったからだ。
…今思えば、俺はあの時彼女に一目惚れだったのだと思う。
後に知った。彼女は陽炎型駆逐艦15番艦の野分。この警備府における古参の一人で、駆逐艦ながらその勇敢さは戦艦にでさえひけを取らないこと。真面目な性格と明るい表情で艦娘たちから慕われていること。そして…
そしてあのクソ野郎のお気に入りの一人だってことだ。
この警備府は異常だった。クソ野郎と奴の取り巻きだけが甘い汁を啜れる。あの豪奢な式典の裏には艦娘を兵器として扱い、玩具として弄ぶ形容の出来ない警備府の本当の姿があったということ。
もちろん彼女だって例外じゃなかった。
忘れもしないあの日。僚艦をかばって責任をすべて負おうとする彼女につけこみ、あのクソ野郎は皆の目前で彼女をいたぶり、辱めた。
…見たくもなかった。俺の手を掴み、救ってくれた彼女が何度もなぶられ続ける姿を見たくもなかった。
仮にもお前の嫁艦とやらのひとりなんだろ?
なんで大切にしてやらなんだよ?なんでそんな平気な顔で殴って蹴って痛めつけてるんだよ?
なんで…。なんでお前が彼女の……!
この場でニヤニヤと薄汚い笑みを浮かべている同僚たちも泣いて謝る艦娘たちもどうでもよかった。
ただその時の俺は苦しそうに呻きながらも必死に許しを請う彼女の顔だけしか目に入っていなかった。
だから俺はあのクソ野郎を殺してやろうと奴に殴りかかったのだ。
そして
俺は彼女―――野分に撃たれて死んだ。
揺れる視界、そして床に崩れ落ちる体。薄れゆく意識の中、野分のまるで氷のように冷たい目がじっと俺を見下ろしていた。そしてキーンと高い耳鳴りが襲う中、彼女が心配そうに声を掛けるのはあのクソ野郎に対してであって、床に這いつくばって息も絶え絶えになった俺にではない。
自分の最期を悟った。それでも最後に野分の姿が見たかった。それだけを頼りになんとか最後の力を振り絞って床に崩れ落ちた体を少し起こす。
「…………」
そして死ぬ間際に俺が見たのは、まるで褒美を与えると言わんばかりにクソ野郎が野分の銀髪をいとおしそうに撫で、奴が髪を梳くのを恍惚とした表情を浮かべて受け入れる野分の姿であった。
なぜ、と心をかき乱されるような思いに襲われたがそれも一瞬。視界は暗転、俺は完全に沈黙した。
「あれ、ここは…?」
気が付いたら俺は暗い海の上に立っていた。
刹那、何が起きたのかと狼狽したがすぐに落ち着いた。
俺は蘇ったのだ。すべての記憶、彼女への思いをしっかりと胸に抱いたまま俺は蘇ったのだ。
陽炎型駆逐艦18番艦の舞風として。
★
因縁の警備府は俺が蘇った地点、つまりドロップした海域からとても近いところに位置していたようだ。仰々しく掲げられた警備府の旗を目印に少し海上を進んだだけで付近を警戒していた艦娘たちに発見された。
「司令、舞風の案内はこの野分に任せていただけませんか?」
ドロップした艦娘は出現した海域を管轄する鎮守府に所属となるケースが多いのを俺は知っていた。そして思惑通り、俺はこの警備府へと戻ってきた。
そして俺はまた彼女に再会することが出来たのだ。
「ありがとうございます!では、失礼いたします!」
怒りも恨みもなかった。ただどうして彼女があのクソ野郎に心酔しているのか、それだけが疑問であった。
「まさか舞風とまた一緒になれるなんて…!私、すごく嬉しいよ!」
キャッキャッと子どものようにはしゃぐ野分とは対照的に俺の中ではどす黒い感情が渦巻いていた。
「…わっ!?ま、舞風、急にどうしたの!?」
気が付いたら抱きしめていた。おたおたする野分をよそに俺は彼女の息遣いや鼓動に耳を澄ませていた。
「…………」
野分に抱きしめ返され、自分の鼓動が早くなったような気がした。そして鼻腔をくすぐるような彼女の髪の匂いにとろけそうになりながら俺…私は決意する。
「んっ…ちょっ、痛いよ舞風」
あのクソ野郎を殺す(ヒイロ・○イ)
「もう…いきなり強く抱きしめるからびっくりしちゃった。本当に急にどうし…」
「ねぇ、のわっち」
野分さん、と呼ぼうと思っていたが自然に口から出たのは“のわっち”という言葉だった。
「うん?どうしたの、舞風?」
私の顔を覗き込むのわっちは優しそうな笑みを浮かべている。私が最期に見せつけられたあのとろけるような表情と言い、彼女は無表情に見えて実はコロコロと表情の変わる可愛らしい娘なのだ。
「あれ?舞風?おーい?」
そんなのわっちの表情を独り占めするなんて許せないよなあ?許せませんよ。
だから私はここに宣戦布告するのだ。
「まいか―――んむっ!?」
のわっちの首に手をまわし、彼女の唇を奪う。
「ん、んんっ!!」
のわっちが私を押しのけようとするので腕に力を込めてやった。
ふーん、人間から艦娘になったからなのか分からないけど、人間の時には考えられなかったとてつもない力がみなぎってくる。
というか…のわっち、力よわぁ♡
「んん~~~~ッ!!やめてッ!!」
「ッ!」
のわっちに唇を嚙まれた。口内にかすかに鉄の味が染みる。
「あ、あっ!ごめん舞風、どうしよう!で、でもだって…ああ、どうしよう」
謝りながら私の周りでわたわたとするのわっちを完全に攻略するまで、きっと時間はそう遠くはない。
おまけ
舞風…憲兵の生まれ変わり。死ぬ間際に野分にとんでもないトラウマを植え付けられた(本人は無自覚)。その為、舞風に転生したはいいが、野分へのゆがんだ愛とクソ野郎への並々ならぬ殺意がその小さな体の中で常時渦巻いているという怪物と化した。ちなみに人間から艦娘へと転生するという特異な現象から誕生した為、彼女自身はまだ気が付いていないが超硬化ナノマシンを搭載している。愛する人を守る為にビースト(まずいですよ!)に身を堕とした野分と対決した際、「この警備府には変革が必要だ」、「死にやがれぇ!!(クソ野郎に対して)」「気に入らない奴はぶん殴る!」「のわっちを私が取り戻す!」「力こそ正義!」などと数多くの名言を言い放ち、その暴言さることながら硬化した鉄のこぶしをブンブン振り回して暴れ尽くした本当にとんでもない艦娘。野分との最終決戦では『It Has To Be This Way』がどこからともなく流れた。
野分…真面目な性格。無表情に思われがちだが、信頼している者の前ではコロコロと表情が変わる実は愛嬌のあるかわいいメス。クソ野郎に拾われた過去を持ち、彼へ忠誠は厚い。彼から暴力を振るわれることを周りの艦娘からは心配されているが、本当のところは他の艦娘が受ける暴力をかばう名目で率先してその身に引き受ける超弩級のドM。最初からこういった娘というわけではなかったが、クソ野郎といる時間があまりに長すぎたため、素直な彼女はすっかり彼に染められてしまったようだ。痛めつけられるのも辱められるのも、最後に彼が優しくしてくれるので全然余裕むしろどんとこいの変態ちゃん。舞風と対峙した際はクソ野郎を守るために銀色の狼(ハロウィンモード)へと姿を変え、舞風と死闘を繰り広げた。
クソ野郎…いわゆるDVするのになぜか女にモテてしまう魅力的なバカ。舞風に頭をつぶされて死んだらしい。
↑こういった感じのスカッとするお話を誰か書いてくれないかしら?