というわけで、ひさなぽぴー様の『銀河の片隅でジェダイを復興したい!』(https://syosetu.org/novel/241445/)とのコラボ回です! ご許可いただきありがとうございますわーい!(五体投地)
お日様がポカポカと暖かい、とある休日の昼下がり。こんな日はお散歩したら気持ちいいだろうなぁ。ということで、あーちゃんとお散歩へ行くことにしました。
そして、お散歩ついでにコンビニでお菓子を買い、公園のベンチに座って堪能しています。外で食べるといつもより美味しく感じて不思議ですねぇ。ペットボトルのお茶に口をつけ、ふぅ、と一息つきました。
「中間テストとヒーロー仮免試験をほぼ同時期にやるの頭おかしくありません?」
「ねー」
どれだけお天気が陽気でも、テスト前の学生の気分は陽気になれないみたいです。
「中間に仮免か。嗚呼、そうかそうか、そんな季節か」
さらに陽気そうな人がやってきました。春だからかなぁ。
「エイ姉ちゃんだー、就職決まった?」
「今はひたすら祈りを集めるばかりさ」
あ、陽気じゃなかったみたいです。
「我のことは気にしなくともいい。それより君たちには素晴らしい『可能性』を見せてもらっているからね。元塾講師として試験対策の手伝いをしようじゃないか」
「なんで教鞭を取り出すのです?」
「“個性”を使うからだが?」
ヒーロー免許持ってても“個性”の乱用は処罰対象になります、ダメ絶対。
「試験対策は逆算が基本。合格に当たって何が必要なのかを知ることが大事だ。ゆえに、合格体験記というものは単なる塾の広告に留まらないのだよ。というわけで、条件はヒーロー仮免試験合格直後、あとは前回と同じでいいだろう。えいっ」
「ん? エイ姉ちゃん、前回と同じってさ」
「……嗚呼、世界線が混線したままのようだね。対象も渡我くんのみになっているな。ハハハ、それもまた『可能性』だとも」
いつもより覇気のない笑い方です。エイブルさんもちょっと疲れているのかもしれません。だからといって、また何かやらかしてる……という気持ちが消えることはありませんが。
いつも通りピカッと光ったその場所に、二人の少女が立っていました。一人は今日の朝も鏡の中で見かけた同じ顔、違うのは髪型と、あっちは制服を着ていてこっちは私服というくらい。もう一人は、黒髪のサイドをあっちの私と同じように三つ編みで結った、高校生として見るには小柄というより幼い、触れれば折れてしまいそうな細さの女の子でした。
「なるほど。“個性”で形づくられた、異なる世界線の『可能性』、それが私か。持続時間はおよそ90分、と」
「合格者の名前にコトちゃんを見つけたっていうところまで覚えているのに、今ここにいることを普通だと思ってるの、変だねぇ」
まるで新しく手にした知識、感覚をお互い確かめ合うように呟く二人の姿を目の当たりにし、あーちゃんが首を傾げました。
「前から思ってたんだけど、具現化した子たちって自分が“個性”で生まれたって自覚あるんだね。それにこう、すっごく落ち着いているっていうか」
「そりゃあ、事実その通りなのだよ。彼女たちはもしかしたら四次元の向こう側に実在しているかもしれないが、例えそうだとしても、ここに生まれ出でたのは写し絵に過ぎない。そして、洞窟の壁に映し出された影は光の当たり具合でたやすく揺らぎうる。我の“個性”はあくまで『可能性』の具現化であり、何処まで行っても虚影なのさ」
「なんか言い訳してません?」
「ソンナコトハナイトモ!」
もっと分かりやすい表現がいくらでも出来そうなのにやたらめったら回りくどいエイブルさんの弁明を聞き流しつつ考えます。
前回と同じというなら、あの小さい女の子はあっちのトガに近しい存在というわけです。見た目的に姉妹ではなさそうですが、同じ髪型をしているということは少なくともあっちのトガはあの子のことが大分好きなのでしょう。
血の繋がりがなく仲良しとなれば、大好きなお友だちとかそんなところですかねぇ、と結論づけ、ふーん、と気の抜けた感じで頷きます。いや、エイブルさんの“個性”はなんでもアリですし、身構えていたよりは普通だな、と思いまして。
「って、大変ですよコトちゃん! 90分しかないなら今すぐたくさんイチャイチャしないと!」
「落ち着くんだヒミコ、公衆の面前だぞ」
そんな思考をかっ飛ばすように、黒髪の女の子を目一杯抱きしめるあっちの私。同性の友人に対する戯れにしては表情が蕩けているといいますか、隠す気なしでラブみたいです。お相手もあっちのトガを抑えつつも受け入れている様子を見るにラブラブでもありそうな。なるほどなるほど?
つまり恋人。恋人なんですかその子。いえまぁ、雄英の制服を着ているということは見た目こそ幼児と見紛う幼さとはいえ同年代でしょうし? 懸念することなんてないでしょうけど?
「ねーねー、キミ名前は? ボクは朱紅藍、よろしくねー」
「ああ、私は
「マスちゃんかぁ。ちっちゃいねー、いくつ?」
「マスちゃん……? 歳は十一だ」
……愛に性別だとか年齢だとか関係ないですよ! 健全なお付き合いなら条例も法律も問題ないですし! あの、どうして意味ありげに笑うのですかそっちの私ぃ……?
「そういう君は?」
「ヒミちゃんが十六で、ボクの誕生日がもう来てるから、十七だね!」
「いえまだ十六歳ですよ」
一番遅い早生まれでしょう貴女。
「年上だったのか……」
「えへん、よく頭五歳児って言われる!」
「胸を張ることではないと思うが」
「五足す十一で十六だね、一緒に遊ぼ!」
「うん、人の話を聞いていないようだ」
あーちゃんが差し出した手を見つめて、理波ちゃんは一つ頷きました。
「ヒミコ」
理波ちゃんがあっちの私の名前を呼ぶと、そのまま見つめ合います。なにやら想い通じ合っているようで、少し間をおいてから、あっちの私が不満そうにしながらも理波ちゃんから離れました。
「……いいんですか?」
「良くはないですけど、コトちゃんもコトちゃんで頭ジェダイなので」
ぶぅ、と頬を膨らませてはいるものの、理波ちゃんを見つめる視線は愛しさに満ちています。その横顔からフイと視線を外して、とことこと遊具の方へ歩いていく二人の後ろ姿を目で追いかけました。
あーちゃんはジャングルジムやシーソー、すべり台を通り過ぎて、公園の片隅、ポツンと鎮座している砂場の近くにしゃがみ込みます。理波ちゃんが屈んで話しかけました。
「何をするんだ?」
「砂場といったら、まずは穴掘りかなー」
「穴を掘って、それで?」
「元通りに埋める!」
「ふむ、その心は?」
「もう一度掘れるよ! 楽しいね!」
そういう拷問もありますよね、楽しいならいいと思いますが。いやぁ、外見だけ見ると理波ちゃんと遊んでいるあーちゃんに見えますが、完全に
「でもシャベルもスコップもないからなー、泥団子つくる?」
「泥団子。団子ということは食べ物なのか?」
「うーん、覚悟と気合があれば食べられるかな。お腹壊すからやめたほうがいいと思う」
「食べ物でないのならわざわざ食べないが」
泥団子は覚悟と気合があっても食べられません。絶対にやめましょう。
「うーん、聞いてるだけで心配になってくるねぇ」
「うちの子がすみません……」
いやあのほんと……ごめんねぇ……?
「それより、コトちゃんのことを不埒な目で見てるお隣のおねーさんをポムってしてもいいですか?」
「あー、現行犯ならいいと思いますよ」
「残念、たぶん手は出さなさそうなのです」
隣のベンチでは、先程までの草臥れた様子は何処へやら、マッドサイエンティストが最高傑作を見るような目をしながらニコニコ笑顔なエイブルさんが足を組んで座っています。元気そうでなによりです。そして実に残念そうな顔をして手をグーパーしているあっちの私、ポムって何の音なんでしょう?
「人体から出る音です」
「ポムが!?」
そんなファンシーな音が出るのですか!? 人体から!?
「そんな驚かなくても。ちょっと言ってみただけでしないですよ。私はヒーロー志望のトガなので、例え私自身がおねーさんの“個性”だから何をやっても責任は全部おねーさんにいくなぁ、って思ってもしないのです」
「ほんとかなぁ」
「ほんとですよぉ」
あっちの私がクスクスと口に手を当てて笑います。真偽はどうであれ、今すぐエイブルさんをポムるつもりはなさそうなので、追及はやめておきました。
気を取り直して、砂場で遊んでいる二人の姿を見守ります。黙々と砂のお山を建設している姿を眺めていたら、あっちの私が唐突に首を傾げました。
「ヒロチキ?」
「? おなかでも空きました?」
ヒロチキとはコンビニで売ってるホットスナックの一つ、ランダムでヒーローの焼印が付いているフライドチキンです。ランダムは悪い文明だと何故人類は理解しないのか。売り切れのオールマイトと売れ残りのエンデヴァーが答えなのでしょう。
ヒロチキは買ってないですが、他に何かコンビニで買ってたかな、とビニール袋をガサゴソします。いくつか箱に入っているお菓子が見つかりました。
「チョコエッグならありますよ」
「あ、いやー、おなかが空いてるのはあっちの子じゃないです?」
「あーちゃんが?」
さっきまでトーヤくんのカードが出ないと、しょんぼりしながらウエハースをサクサクしてたのでおなかいっぱいだと思いますけれども。
挙動不審なあっちの私を見て、少し考えます。ヒロチキにはトーヤくんの焼き印がないのであーちゃん興味ないんですよね。そんなあーちゃんとヒロチキが結びつくとしたら……? うん?
あははまさかぁそんなそんな、と思いつつ、出来心で念じてみます。
――ヒロチキください――
「んっふ、ふふっ、あはは! なんで二人とも同じことするんですか、もう!」
お腹を抱えて笑い転げるあっちのトガ、かなりツボにハマったのか暫く笑い続けていました。あっちのトガの“個性”か理波ちゃんの“個性”か分かりませんが、人の心が読める、というよりテレパシーが可能なのでしょう。な、内心の自由!
「いやいや、今のはハッキリ分かりましたけど、基本そっちのトガは分かりにくいので大丈夫ですよ。あっちの子に関してはなんにも考えてないですし!」
「それは大丈夫なんですかねぇ……?」
未だに笑いを噛み殺しそこねてるあっちのトガを半目で見ていると、砂場の方から大きな声で呼ばれます。
「ヒミちゃーん! 見て見てすっごいよー!」
そこには、五本の砂の塔が聳え立っていました。世界史の教科書に載っていたジッグラトを思わせる精巧な建造物を背に、理波ちゃんは胸を張り、こう答えました。
「ここをジェダイ・テンプルとする!」
「コトちゃんどうしたの???」
困惑しているあっちの私を横目に見てから、よくよく理波ちゃんを観察してみると瞳から知性の光が消えているといいますか、一挙一動があーちゃんみたいなことになっています。なんてひどい……誰がそんなことを……と、容疑者エイブルさんに非難がましい視線を送れば、彼女は大袈裟に肩をすくめました。
「言っただろう? 『洞窟の壁に映し出された影は光の当たり具合でたやすく揺らぎうる』、と」
「もっと分かりやすくどうぞ」
「『可能性』である増栄くんが朱紅くんの影響で変動したんだ。嗚呼、実に素晴らしいねぇ、これぞ『可能性』だとも! ハッハッハ!」
すっかり調子を取り戻したようで、元気よく高笑いしています。その隣では対照的にすんっと真顔になったあっちの私が、静かに立ち上がりました。
「おねーさん、現行犯ですね?」
「あっ」
逃げてくださいエイブルさん! ポムってなる前に!