俺の嫁がタイトルだった件   作:被害者はトール

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小林家

まだまだ冬の寒さが残る4月の半ば。

 

「よし、これを最後の仕事にしよう」

 

貯金残高がちょっと笑えない額になり、税理士さんから変な勘繰りを受け始めた頃。

ボク、五条悟はニートになることを決意したのだった。

 

 

 

 

「へぇ~遂に辞めるんですか。あのインチキ商売」

「インチキとは人聞きが悪いなぁ。これでもボク、こっちの筋では結構有名人なんだよ?」

 

その事を打ち明ければ、露骨に嫌そうな顔をして煽ってくるのがメイドラゴンだ。

ボクが仕事を辞めれば、嫌でも毎日顔を合わせることになるのを知ってのことだろう。

こいつって顔とスタイルは良いのに、ホント可愛くねぇー。

 

まぁ懐の深いボクは一々そんな事で腹を立てたりしないのだが、さっきも言ったようにこの世界。呪術廻戦の世界ほどではないにしろ、幽霊や呪いが本当にあったりする。

 

それこそ有名どころの花子さんや貞子とは戦って祓ったことがあるし、犬鳴村だって実在していた。

だから昔は呪術廻戦の世界だと思って、高専を探したりもしたのだが、五条家・禪院家・加茂家などの御三家や呪術師と言った呪いを呪いで払うような存在は確認出来ず、何かお経とか詠んで有難い清水や御札で霊を浄化する、いかにもと言ったお坊さん達しかいなかった。

 

もしかして現代に転生し直した?

実際に目にする機会はなかったけど、幽霊とかが存在しないって証明された訳でもないし。

 

それとも他の漫画やアニメだったり、そういう世界に転生したという考えもあったが、最終的にボクが下した判断は『ほぼ前の世界と変わらん』、だ。

 

その時点でボクが五条悟として生まれた意味は消滅したけど、折角の最強の力をそっち方面で生かさないのも勿体ないから、特級みたいな明らかに個人じゃどうしようもない呪いに首を突っ込んじゃったお坊さんを颯爽とボクが助けて、以降そのお坊さんからの伝で荒稼ぎしていたという訳だ。

 

流石に海外までには手が回らなかったけど、有名どころの呪いは倒したし、呪術廻戦の世界みたいに放っておいてもポンポン湧いて来るものでもないから最近は雑魚しかないなくてつまらなかった。

それに総じて依頼金の額もしょぼくなってきたし、ここいらが潮時かな、とも最近思っていたのだ。

 

 

「そんな中入ってきたのが、そこそこ大きな電力会社の社長からなんだけどね。機材の調子が悪いわけでも燃料をケチッてる訳でもないのに、最近作った電気が勝手に減るんだって。そんで坊さんが見たら、みたこともないぐらい膨大な邪気が残っていたって言うし、多分ボクぐらいしか対処出来ない怪物が現れたんだろうって。

……ズバリ、キリよく強敵を倒してスパッと辞めようと言うわけよ!」

 

「……その坊さんとやらがどこまで信用出来るか分かりませんが、貴方の属する現代陰陽師、とやらの方々は知覚することが出来ても、知識がないからか魔力(マナ)と呪いの区別がつかないのでしたよね?貴方なら大丈夫だとは思いますが……下調べはちゃんとしましたか?」

 

え?何、心配してくれんの?

とからかおうとしたが、珍しく深刻そうな顔をしているのを見て、何とか飲み込む。

 

「……もしかしたらメイドラゴンの世界の奴のせいかも知れないって話?」

 

「えぇ。私のように異世界までゲートを開ける存在となると大分限られますが、逆に言えばそのレベルの相手ともなると、流石の貴方でも手こずるでしょう」

 

まぁ実際に会ったことはないけど、メイドラゴンの父親の終焉帝とか、メイドラゴンの土手っ腹に長剣をぶっ刺したという神様クラスともなると、世界観が違い過ぎてちょっと分かんない。

あくまで当時10歳だったガキの視点からだけど呪術廻戦の世界って言うのは、あくまで人間社会の尺度に収まるバトル漫画だ。

 

そりゃビルを破壊したり、国家転覆を個人で成せるような存在もいただろうが、日本とかをぽんっと消し飛ばしたりは出来なかった筈。

メイドラゴンの父親は本気を出せばそれぐらい出来るかもって言うもんだから……本音を言えば絶対戦いたくない。

 

けど、そいつが小林と会ったら殺されるかも。そう言われたらこう答えるしかないでしょ。

 

「大丈夫、ボク最強だから」

「はぁ……貴方って人は」

 

呆れたようにため息をつくメイドラゴン。

それにボクはニンマリと笑う。

 

「一応、退職祝いです。好きな料理はなんですか?」

 

「おっ!なら唐揚げ~!二度揚げは必須!」

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を最後。五条悟を見たものはいない。

 

 

 

 

 

 

「これにて五条悟の物語はおしまい。これから私と小林さんの愛の物語……そう!小林さんのメイドラゴンが始まるのよ!とでも思ったりしてた?ごっめーん!速攻で終わらせて帰ってきちゃった!」

 

「チィッ!!!」

 

 

「……トール様こわい。でも唐揚げ美味しい」

「ほらほら子供が見てるんだぞ?大人げないぜ(笑)」

 

 

「チィッ!!!」

 

 

「悟……この子、どこから拾ってきたの?見たところ……トールの知り合いだよね」

「そう。このメイドラゴンを探してたみたいだけど、長々見付けられなくってさ、その内空腹で動けなくなって…ご飯の変わりに電気エネルギーを近くの発電所から拝借してたみたい」

 

まぁ悟とカンナちゃんの出会いの話はまた今度しっかり説明させるとして、トールが端正込めて作った唐揚げにちょくちょくケチを入れながら、ちなみにこの子が食べた分の電気はボクの退職祝いとしてお坊さんのポケットマネーから払わせたよ!と、遊んで暮らせるだけの金があるだろうにさりげなくケチな発言をする悟。

 

それにいつもの事かと呆れつつ、よほどお腹が空いていたのだろう、大皿いっぱいに積まれた唐揚げの山を次々に口へ放り込んでいく何とも愛らしい生物を何気なさしに小林は撫でた。

 

「うん。戦ったけどサトル……とっても強い。これならトール様のツガイになるのも納得」「オゲェ!ちょっとカンナ!いくらなんでもその間違いはあんまりです!」

 

「あれ?私……何か変なこと言った?」

 

ゴキブリを見つけた時のような悲鳴をあげるトールと、不思議そうに首を傾げるカンナ。

それから何やかんやあってひと騒がせあった電気泥棒ことカンナちゃんはしばらく家で厄介になることになった。

 

 

 

「いや、流石にはしょりすぎでしょ!あぁ!折角の小林さんとの二人っきりの生活に、一気に二人も参入なんて!」

「だって行くとこないんだろ~、なら仕方ないじゃん。これから仲良くしようぜメイドラゴン!そんでカンナちゃん!」

「さっきから流していたがメイドラゴンってなんだー!!!!」

 

 

 

「…また我が家が騒がしくなった」

 

ワイワイ、ガヤガヤと独り暮らしだった頃では考えられないような賑わいだ。人によっては煩わしく感じるかもしれない。私も複数人でいるより一人でいる方が気楽な人間だった筈。……でも悪くないと小林はビールを片手に笑う。

 

「ちょっと小林!何一人黄昏てんの!ちょっと……この!メイドラゴンの暴走を抑えて!」

「あーはいはい。本当に悟は私がいないとダメなんだから」

 

この日常がずっと続けばいいなと、口には出さないがここにいる全員が思った。

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