お父さんから引き継いだ夢の第一歩、オラリオでの料理屋が漸くの開店、此処からが私の頑張り次第。
バルタンと同じ料理を作れるし、分身だって出来るんだから広いお店だって一人で回せる。
お店の名前は『バルタン』、神造兵器は帳簿を付ける部屋に飾っているけれど、全三階建てのお店の中に嫌な気配が漂ってはいるとお客さんとして通う神様が言っていたわ。
えっと、ふーどこーと? って業態を参考にして日替わりでやっていた料理を全てやっているわ。
「アーシアたーん! お酒飲ませてや。どうせだったらお酌してくれんか~?」
「介錯だったら……はやり過ぎだし、ステイタスの更新に必要な指一本だけ残して切り落としますね」
ステイタスの更新って確か指一本残せば可能な筈だし、両足と指九本が無くても神様の役割は果たせるわよね?
「怖いな、自分っ!?」
ロキ様ったら、本気では言っているけれど、此処で止めれば本当にはしないのに怖がっちゃって。
こんな風に今までは出していなかったお酒も夜限定で出しているんだけれど、昼間なのにこうやってロキ様とかが昼間でも飲もうとするのよね。
「……はあ」
あー、やだやだ、疲れるなあ。
肉体的には平気なんだけれど、精神的には本当に大変ね。
屋台の時よりも分身の数が必要だし、いっそ叩き出そうかしら?
でも、お客さんを選ぶのもどうかなのよね。
但し無銭飲食しようって連中は話が別、私から本当に逃げ出せると思っていたのかしら?
冒険者や神様の場合はホームに殴り込んで割増料金を貰っている訳だけれど、マナーの悪い酔っぱらいには神様が多い気がするのよね。
神様の入店拒否やお酒の提供は控えようかとも思ったけれど、善良なお客さんの事を考えれば難しいわね。
「それに今は他の心配事も有るし……」
バルタン達が話をしていたダリーって虫、それに寄生された人が最近起きている事件の犯人だって話だったけれど……。
「妙だな。僕が地球で戦ったダリーは女の子に血を求めさせていたし、その子は衰弱していったけれど、今回の事件は少し違わないか?」
「成る程。ウルトラセブンが(超小型の敵を倒す為に)女児の体に(ミクロ化して)入り込んだ一件を聞く限り、今回の様に高ランクの冒険者から逃げ続けている点を考えれば相違が存在。予想、次元の違い、もしくは……」
「現地の女性と恋愛関係に有ったウルトラセブンが女児(の鼻の中)に入り込んで戦ったダリーとの違いとしては、この星の住民に寄生した事でしょうか? 神や神から恩恵を受けた人の血を吸った事による変化でしょう」
「同意。ウルトラセブンが無断でその身に受け入れさせた女児の血と今回の寄生先との比較が希望だが、不可能。推察の域は出ないが可能性の高さを提示」
「君達、隙有らば僕を罵倒するな!?」
職務放棄の浮気者、ついでにバルタン星人の多くを消し飛ばした者の母方の従兄弟だとも知った相手である。
私が存在するのであればバルタン星人の滅亡はないが、それはそれ、これはこれである。
ああ、それと以前も言ったが……。
「「光の星が鬱陶しいから八つ当たりである(ですよ)」」
「理不尽!? 相変わらず理不尽だな、光の星が関わると!」
「取り敢えず残った細胞データを使って追跡装置をコンピューターに作らせる、其処までは持ち込んだ責任だと自覚」
「じゃあ、場所が判明すれば僕が倒しに行くか? 今の体調なら……まあ、賢い所もあったが強さ事態は其処までもない相手だったしな」
「驚愕。変質しているという説明をウルトラセブンは理解不能。調査員の採用基準とは一体……」
「仕方有りませんよ、バルタン星人。職務放棄の浮気者ですし」
「本当にいい加減にしてくれないかな……」
「思ったのだけど、地球って怖い所ね。ゴモラみたいに普通に大きくて強い子みたいなのが沢山住んでいるんでしょ? 恩恵なんて持っていなくても立ち向かう為の武器も多いらしいけれど」
「それと各地に点在する黒竜の鱗だが、無人地域の物を回収して分析に掛けた結果、神の力を弾く能力を持っている事が判明。つまり分析結果を元に複製、加工すれば神殺しの武具防具の増産が可能」
「ふーん。神様も善良なのまで地上での娯楽優先で放置していた訳じゃないのね。あれ? じゃあ、そんなのを生んだダンジョンって神様の天敵?」
「当初はメフィラスのやり方と同類と想定、ダンジョンは神が故意に作り出した、と。現在、何かしらの強大な力を持つ存在を神が封印した、もしくは想定外の事項により当初の計画に支障を来した可能性が高いと思われる」
その答えは神様なら知っていそうだけれど、無理に聞き出そうとした場合に力を解放しての反撃が怖いからと取れない。
洗脳とかも神という存在の特異性から危険度を高く設定したって。
「あーあ、どうせならアレスを拷問して欲しかったのにな」
でも、バルタンに任せても、私自身の手で行うべきだって言われそうだし、多分適当な闇派閥の主神を捕まえて行えば良いよね、無駄が……あれ?
考え事に意識を割いていたんだけれど、裏口から誰かが忍び込もうとしているのに気が付いた私は足音を消すために浮かんでゆっくりと侵入者の方に向かう。
ゴブニュ・ファミリアに頼んだから扉を開けてもキィキィ軋む音なんてしないのは実家のドアを思い起こして少し懐かしく思えて、ラキアへの憎悪が増す中、正面から現れた私に侵入者は少し驚いた様子を見せた後で何か紙を取り出して私の顔と見比べていたわ。
「アーシア様ですね。お噂は予々聞き及んでおります。早速ですがラキアに協力致しませんか? アレス様は戦功次第では貴族の地位を約束……」
そこまで喋った時点で侵入してきたラキアの使者は驚いた顔で言葉を止める。
だって視線が急に下がったから、前金なのか金貨が詰まった袋を取り出そうとした手が動かないから。
何が起きたのか分からないって顔で固まるラキアの使者に何も言わずに教えてあげる。
ラキアとアレスの名前を出した時点で腕と足を凍らせて砕いたって。
「あ、あれ? 私の腕が、私の足が……」
「ねぇ、知ってる? 人間って死んじゃったら動けないし喋れないの。朝になってもお母さんが起こしてもくれないし、家の手伝いをした事をお父さんが褒めてくれる事もないのよ。だから……」
膝と肘から先が砕け根元まで凍った手足で這って逃げようとした彼女の頭を掴んで持ち上げて、舌を噛んで死なない様に歯だけを冷凍光線で凍らせて砕く。
「散々戦争をして大勢を殺してる国の使者が手足奪われた程度でピーピー喚くんじゃないわよ」
さて、このまま死んだら任務に殉じる事になっちゃうし、ギルドに連れて行きましょうか。
気を失った彼女の髪を掴んで引き摺りながら私は鼻歌混じりに店を出る。
ラキアが攻めて来るなら戦争だもん。
「アレスも王族も殺してあげるわ」