黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦!   作:とんこつラーメン

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遂に船子の戦闘シーンが始まります。

真面目に戦うのか、それともハジけるのか。









変幻自在にして自由自在!

 オルコットさんとの試合直前のギリギリのタイミングで戻ってきた船子。

 途中、小野ミチオ君の存在とかツッコミ所満載な事が起きたが、それでもなんとか間に合う事は出来た。

 

「んじゃ…とっとと行きますか!」

 

 そう言いながら徐に船子は制服の肩の部分を握った。

 何をする気だと思っていたんだけど、よくよく思ったら船子ってISスーツを着てないじゃん。

 更衣室で着替えたりしないのか?

 

 …なんて常識的な事を考えた俺は忘れていた。

 今、自分の目の前にいるのが『金野船子』なのだという事を。

 

「オラァッ!!!」

 

 そう叫ぶと、いきなり船子の体を覆っていた制服が一発で全部脱げた!

 しかも、ボタンとかが取れた様子は全く無い!

 一体どうやって脱いだってんだっ!?

 って…あれ? なんか千冬姉と箒が阿修羅のような顔をしながら俺に向かって突っ込んでくる?

 

「「見るな―――――――――っ!!!」」

「御尤も――――――――――っ!!!」

 

 普段の言動から完全に忘れかけていたけど、船子だって立派な女の子だった!

 幾ら本人が気にしないとはいえ、その着替えを見るのは普通にアウトだわっ!

 その事を瞬時に察した千冬姉と箒は、俺の顔面目掛けて鉄拳をぶちかましてきた!!

 うん…今回は完全に俺の方が悪いわ…。

 

「大丈夫か? 少年よ」

「お…おう…なんとか…」

 

 鼻血を出しながらぶっ倒れた俺にミチオ君が優しく手を差し伸べてくれた。

 うぅ…ゆるキャラも捨てたもんじゃねぇな…。

 今度、広島の物産展に行って尾道の名物を買ってこよう…。

 

「それが…金野さんのISスーツ…ですか?」

「おう! 似合ってるだろ?」

 

 山田先生が呆けた顔のまま尋ねる。

 そこに立っていたのは、真っ赤に染まったISスーツを着た船子の姿だった。

 

 真紅に染まったワンピース型のISスーツで、胸の部分には金色で菱形の装身具があり、その上にはスーツと同じ色のリボンが。

 何よりも目を引くのは、胸周りを覆い尽くしている謎のベルト。

 特に胸下の部分をキュっと締めているので、タダでさえ抜群のスタイルが更に強調されている。

 腕のカバーと足カバーは真っ白になっていて、それがまた船子の手足の細さがより映えて見える。

 

(つーか…船子の奴…スタイル良すぎだろ…。幾らなんでも美人過ぎるぞ…)

 

 街を歩けば誰もが振り返るような超美人。

 黙ってさえいれば、一発で惚れることは間違いない。

 いつの間にか俺は…本気でISスーツ姿の船子に視線が釘付けになっていた。

 

「う…美しい…流石は私の船子…! これだけで大半の奴は戦意喪失するぞ…」

「本当に同い年なのか疑ってしまう程の美しさ…。まるで女神のようだ…」

 

 …で、さっき俺を殴った二人は船子の格好を見て呆然自失状態に。

 誰でもいいから、この二人をどうにかして。

 

「あんまし待たせんのも悪いし、こっちも専用機を展開しますかね」

「えっ!? 金野さんって専用機持ちだったんですかッ!?」

「あれ? 言ってなかったっけ? ちゃんと千冬の姉御には伝えた筈なんだけどなぁ…狼煙で」

「狼煙ぃっ!?」

 

 スマホの普及率が限りなく100%に近くなりつつある、このご時世に狼煙となっ!?

 つーか、んなもんを出されても意味が全く分からねぇだろうがっ!

 

「その通りだ。私はちゃんと船子からのメッセージを受け取ったぞ」

「読めたのかよッ!?」

 

 一体どこで狼煙の読み方なんで勉強したんだ、この姉はッ!?

 船子も大概だけど、千冬姉も割と負けてねぇぞっ!?

 

「見せて貰うぞ船子…君の『試合』を」

「おう。任せときなミチオくん。期待は裏切らねぇぜ」

 

 歯をキラーンと輝かせてからのサムズアップ。

 なんつーか…本当の美人ってのは何をやらせても絵になるもんだぁ…。

 

「さぁて…そろそろ行こうぜ…『相棒』!」

 

 そう言うと、船子はどこからか真っ赤なボールを取り出した。

 なんだあれ? スーパーボールか?

 

「…船子。それがお前の専用機の『待機形態』か?」

「まぁな。正確には『縮小』しているだけなんだけどよ」

「縮小…だと?」

 

 それってつまり、普通に縮んでいるだけって事か?

 縮んでいるIS…? どーゆーことだ? さっぱり分からん。

 

「このアタシの体を覆い尽くしやがれ! 支配者(ドミネーター)!!」

 

 そう叫ぶと、船子の手にあったボールが急に宙に浮き始め、そのまま船子の身体よりも巨大になっていく!

 そして、まるでスライムのように溶けて、船子の体と融合しようと飛び掛かる!

 

「「「「こ…これは―――――――――――――――っ!!?」」」」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 自分の専用IS『ブルーティアーズ』を纏い、私はアリーナのステージにて待機をしていた。

 今から試合をする相手…金野船子さんを待って。

 

 彼女は私との試合に向けて学校を休んでまで修行をした。

 その時点で既に、私と彼女の差は出ていたのかもしれない。

 代表候補生だからと言って他者を見下していた自分と、例え誰が相手でも本気で挑み、本気で戦おうとする金野さんとの差が。

 

「一週間という僅かな時間でどこまで強くなったのか…見せて貰いますわよ」

 

 まだ安全装置を解除していないとはいえ、ライフルを持つ手に緊張が走る。

 こんなにも心臓が鼓動するのはいつ以来かしら…。

 

「よぉ…待たせちまったな」

 

 いきなり金野さんの声が聞こえた。

 遅れていたと聞いてはいたけど、どうやら無事に到着したようだ。

 

(はっ!? 今…私、安心した? 金野さんが怪我も無く戻って来た事に? いえいえいえ! 別にそれ自体は普通の事ですわ! 対戦相手であると同時に、金野さんは私のクラスメイト! 同級生の無事を祈ることに何の不思議があるというの!)

 

 大きく深呼吸をしてから自分を落ち着かせ、私は声のした方を見る。

 すると、そこにいたのは……。

 

「な…なんなんですの…それは…!?」

「なんなんですのって…これが船子ちゃんの専用機『ドミネーター』だぜ?」

 

 それは『機体』と呼んでいいのかすらも分からない代物。

 顔も無い真っ赤な人型の着ぐるみのような物体が手足をブランとさせたまま宙に浮いている。

 

「支配者…とは、また随分と大きく出た名前ですわね。本当にISなんですの?」

「正真正銘、どこに出しても恥ずかしくないISだぜ」

 

 専用機持ちであった事も驚きだけど、それ以上に奇妙な形状をしたISに私は冷や汗を掻いた。

 機械らしさが欠片も無いISなんて前代未聞過ぎる。

 果たして、これを本当にISと呼称していいのかすら分からない。

 

「そんなに慌てんなよ。確かに、パッと見じゃドミネーターはISっぽくはねェ。今のこいつはまだ『基本形態』だからな」

「基本…形態?」

「あぁ。ドミネーターの真骨頂はズバリ『変幻自在』だからな。そいつを今から…たっぷりと見せてやるよ」

 

 力の籠った口調でそう言うと、突如としてドミネーターがグニョグニョと歪み始めた。

 まるで、スライムのように。粘土のようにその形を徐々に変化させていく。

 所々に分離し、幾つかの塊が中から現れた金野さんの四肢に集まる。

 やがてそれは『私が良く知っている形状』へと変わった。

 

「ふぅ…やっと顔を出せたぜ」

「そ…そんな…馬鹿な…!?」

 

 ドミネーターが変化した姿…それは間違いなく『赤いブルーティアーズ』だった。

 ティアーズの象徴とも言うべきビット兵器は存在しないが、それを除けば完全にブルーティアーズと瓜二つだった。

 

「さながら『蒼い雫(ブルー・ティアーズ)』ならぬ『紅い雫(レッド・ティアーズ)』ってところか?」

「レッド…ティアーズ…」

 

 機体の色も赤ならば、金野さんの着ているISスーツもまた赤だった。

 そして、私の機体とスーツの色は青…。

 私と彼女は、全く正反対の存在となっている…。

 

「そのライフルを見る限り、お前のそのIS…射撃戦重視だろ?」

「…それがどうかしましたの?」

「別に? ただ…勿体無いと思ってよ」

「勿体無い?」

「あぁ。アタシのドミネーターは文字通り『あらゆる物』に変化する事が出来る能力がある。剣や銃、盾と言った武器類だけに留まらず、こうして別のISと同じ姿にも変わる事が出来る。そして、別のISに変化した場合…見た目だけじゃなくて性能もまた変化元のISと全く同じになるんだよ」

「…何を仰りたいのかしら?」

「射撃戦重視のISだからっつって、戦い方を遠距離攻撃一本で縛り付けてるのが勿体無いって言ってるんだよ。アタシら人間と同じで、ISもまた無限の可能性を秘めてるんだぜ? その証拠を今…ここで証明してやるよ」

 

 一気に彼女の纏う雰囲気が変わった。

 これは私が知っている無駄に元気な金野さんじゃない。

 まるで、圧倒的強者と対峙した時のようなプレッシャー。

 

(本性を現しましたわね…!)

 

 きっと、これこそが彼女の本来の姿。

 貪欲に勝負を、勝利を求める本能。

 そうでなくては、一つの勝負の為に学校を休んでまで修行になんて出ない。

 

「そこまで言うのでしたら……」

 

 手に持つレーザーライフルのセーフティーロックを解除し、即座に狙いを付けてトリガーを引く!

 並の相手では避けることは不可能なタイミング!

 さぁ…どう対処するのか見せて貰いますわ!!

 

「ふんっ!!」

「なっ!?」

 

 レーザーが…切り裂かれた…?

 斬ったという事は、金野さんが使ったのは剣の筈…。

 だけど、彼女が実際に握りしめているのは…!

 

「や…野菜…?」

「フッ…残念だが違うぜ」

 

 金野さんは手に持つ『ソレ』を眼前に掲げ、鋭い目で睨みつけながら説明してくれた。

 単なる野菜の癖に、なんという存在感…!

 

「ドミネーターも立派なIS…ちゃんと『拡張領域』が存在してる。こいつは、そこから取り出したもんでな。修行の末にアタシが手に入れた愛剣。その名も…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔剣『大根ブレード』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大根…ブレード…」

 

 え…えっとー…一体どこに『ブレード』要因があるというの?

 どこからどう見ても日本で生産されている『大根』にしか見えませんわ…。

 

(け…けど、私の撃ったレーザーをあれで切り払ったのもまた事実…! ならば、見た目に騙されてはいけませんわ!)

 

 形状が奇抜なだけであって、本当に『魔剣』と称されるだけの性能があるのかもしれない!

 しかも、それを握っているのはあの金野さん…油断は禁物ですわ!

 

「…まさかとは思いますが、その『魔剣』一本だけで私と戦うおつもり?」

「おいおい…誰が『剣は一本しかない』なんて言った?」

「なんですって? まさか…!」

 

 金野さんの左手に光が収束する。

 あれは拡張領域から量子化された武装が出現する時に起きる現象!

 矢張り、あれだけでは終わらない!?

 

「聖剣『ドンパッチソード』……『魔剣』と『聖剣』…この二刀流で相手をしてやるぜ」

 

 …ネギですわ。

 どこからどう見ても単なるネギですわ。

 あれのどこが聖剣?

 傍から見たら、右手に大根を、左手にネギを持っているだけにしか見えない。

 

「ティアーズでも近接戦闘が出来るって船子ちゃんが身を持って教えてやるぜ。伊達にアタシだって『篠ノ之流』の門下生じゃないんだって所を見せてやんよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回から本格戦闘開始。

果たして、魔剣『大根ブレード』と聖剣『ドンパッチソード』の威力はいかに?




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