黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦! 作:とんこつラーメン
だからと言って、劇中での出番が沢山あるのかと言われると…それは非常に微妙です。
そんなキャラを出しても、船子ことゴルシの前では相当に頑張らない限りは同じボケかツッコミ役にしかならないから。
色んな意味で衝撃的過ぎた緊急の全校集会を終え、早くも精神的疲れを抱えたまま一時間目の授業を迎えた。
どうやら疲れているのは俺だけじゃないようで、他の皆も大なり小なりの疲れは抱えていたようで、あの千冬姉でさえも少し呆けているようだった。
まぁ…当然だよな。あの学園長の前じゃどんな存在も霞むって…船子以外は。
そのままズルズルと流れて今は昼休み。
俺は船子や箒、セシリア(本人が名前で呼んでいいと言った)と一緒に同じテーブルに座って昼食を食べている。
「それにしても驚きましたわね…まさか、あの新しい学園長と船子さんが親しい間柄だったなんて…」
「船子の顔が広いことは私も知っているつもりだったが、まさかあそこまでとは思わなかった。しかも、なにやら聞いた事の無い名前が沢山出ていたしな…」
そうなんだよな。
今の俺が一番気になっているのがそこなんだよな。
一体、船子の過去に何があったのか。
どこであの『江田島学園長』と知り合ったのか。
少なくとも、俺の記憶の中では船子があの人と会っている場面を見た事は一度も無い。
うーん…物凄く知りたいような…知ったら後悔しそうな…。
「おいおい! 皆して何を沈んだ顔をしてやがんだ!? そんなツラしてたら、塾長…じゃなくて学園長から『直進行軍』しろって言われちまうぞ?」
皆の分のドリンクを取りに行ってくれた船子が戻ってきて、いつものように意味不明な事を言いだした。
字面だけを見ると普通のように聞こえるけど…。
「なんだ? その『直進行軍』というのは」
「簡単に言っちまうとだな、目の前にどんな障害物があっても只只管に真っ直ぐに進み続けるってだけの授業だ」
「ど…どんな障害物があっても…ですの? 家屋や壁があっても?」
「当たり前じゃねぇか。壁が有ったら叩いて砕く! 家が有ったらぶっ壊す!」
「どう考えてもおかしいだろッ!? 普通、障害物があったら迂回するとか、その場で引き返すとかするんじゃねぇのかッ!?」
「馬鹿野郎!! そんなんじゃいつまで経っても『真の日本男児』になんてなれねぇだろうが!! いいか…男ってのはな…例えどんな事があっても絶対に立ち止まったりしちゃいけねぇンだよ…!」
いや…良い事を言ってる風に聞こえるけど、やってる事は完全にサイコパスの所業だからなっ!?
「成る程…それこそが『ジャパニーズ・ヤマトダマシイ』なんですのね…」
ほらー! 言わんこっちゃない!!
セシリアが完全に日本の事を誤解しちまったじゃねぇか!!
「いかなる障害があっても突き進む精神…それが船子の強さの源なのだな…納得した!」
納得するな箒ぃぃぃぃっ!!
それは絶対に間違ってるから! おかしいから!!
時にはあのジョセフ・ジョースターみたいに『逃げるんだよぉ~!』してもいいんだぞっ!?
「って、ンな事はどうでもいいんだった。ほれ、皆の分の飲み物を持ってきたぞ」
やっと本題に戻った…。
どうして船子との会話は一瞬で本筋から外れてしまうんだろう…。
「まずはセシリアだな。ほれ、ミネラルウォーター」
「ありがとうございますわ」
セシリアが食べているのはミートソース・スパゲッティー。
流石に紅茶とかは飲まないか。
「箒は麦茶だったな。ほらよ」
「ありがとう。船子」
箒は俺と同じ日替わり定食。
今日のメニューはチキン南蛮定食だ。
つーか…麦茶もあるんだな。マジで色んなニーズに応えてやがる…。
「んで、一夏はこれだったな。ドリアンジュース」
「そうそう。やっぱお昼にはこれが欠かせない…ってちげーよっ!? 誰もんなもん頼んだ覚えないんですけどッ!? つーか、よくあったなドリアンジュースなんて!」
もうさ…なんだこれッ!?
どうしてよりにもよって、あのドリアンをジュースにしようと思ったッ!?
いや…確かにドリアンも立派な果物かも知れないけどさ…。
それでもジュースにしようって発想になるか?
「あれ? 違ったっけか? おっかしーなー…確かにさっき『おいどんのお昼はいつもドリアンジュースから始まるですたい!』って言ってたような気がするんだけど…」
「一体どこの織斑一夏がそんな事を抜かしたっ!?」
俺以外の織斑一夏がいるってのかッ!?
同姓同名か? そうなのかっ!?
「俺が頼んだのは烏龍茶だよ!」
「マジか。こんな事もあろうかと、念の為に烏龍茶も持って来てたんだけど…正解だったな!」
「なら最初からそっちをくれ!!」
はぁ…はぁ…はぁ…。
朝に引き続き、どうして昼飯を食う時までこんなに疲れなきゃいけねぇンだ…。
「んで、アタシがこの『クスハ汁』…っと」
「ちょっと待て」
「どした?」
「なんだろう…気のせいかもしれねーけどよ…とてつもなく不穏な単語が聞こえたような気がしたんだが…」
「気のせいだろ? いっただきまーす!」
まるで、健康と引き換えに大切な何かを失いそうなドリンクだな…。
心なしか、コップの中から異様な瘴気みたいのが漂ってるような気がする…。
因みに、船子の昼食は『大盛り焼きそば』だったりする。
量はともかくとして、意外と食べてる物は普通なんだよな…。
「そうだ。千冬の姉御から一夏に伝言があるんだった」
「千冬姉からの伝言?」
早くもちゃんとクラス代表の仕事をしてるな。
真面目な時は本当に真面目だから怒るに怒れないんだよなぁ~…。
マジで計算でもしてるんじゃないかって具合に絶妙だから質が悪いんだよ…。
「ほら。前にHRで千冬の姉御が『政府から一夏にデータ取りの為の専用機が用意される事になった』って言ってたのを覚えてるか?」
「そんな事もあったなー…」
覚えてるっちゃー覚えてるけど…あの時は船子が修行に行った時の衝撃が強くて、そっちの方が印象的過ぎたんだよな…。
「その専用機が今日の放課後に届く予定になってるんだと。で、お前にはそれの設定とかをして欲しいから、放課後になったら、この間アタシとセシリアが試合をした第三アリーナに来てほしいってさ。姉御と山田先生の二人も一緒だって言ってた」
「りょーかい。分かったよ」
放課後に第三アリーナだな。覚えておこう。
「そういや…姉御の奴、どうしてか『船子も一緒に来てくれ』的な事を言ってたんだよな…なんでだ?」
「船子も一緒に?」
「そーなんだよ。もしかしてアレか? 入学前にやった『ウルトラストリートファイターⅡ』でアタシがガイルを使っての『待ちガイル』を使った事をまだ根に持ってんのか?」
「うーん…それは俺でも恨むわ」
船子は正攻法でもめっちゃ強い癖に、なんでかよく卑怯な戦法ばかりを使いたがるんだよなー。
端から飛び道具撃ちまくったり、ダルシムを使ってのハメ戦法とか。
そのくせ、こっちが強キャラを選んだら逆にダンやザンギエフを使って完勝するんだから凄い。
「兎に角、放課後忘れんなよ? じゃねぇと…」
「じゃないと?」
「姉御の『出席簿ビット』が一夏のことを地獄の果てまで追い駆ける」
「普通に怖すぎるわ!! っていうか、あれって脳波で動かしてたのッ!?」
こ…今度からはマジで出席簿の餌食にならないように気を付けよう…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
約束の放課後になり、俺と船子は一緒に千冬姉たちが待っているという第三アリーナへと足を運んだ。
「待っていたぞ。織斑、そして船子」
千冬姉は相変わらずの腕組み仁王立ちのポーズで待っていた。
あれ? 山田先生の姿が見えねぇけど…どこにいるんだ?
「おーっす。って…一人足りなくねぇか? 山田先生はどこに行っちまったんだ?」
「山田先生なら、織斑の専用機を取りに行っている最中だ」
成る程。そーゆーことだったのか。
にしても…俺の専用機かー…どんなのだろうな?
ISに関してはマジで無知だからな。
どんな機体なのか全く想像が出来ない。
「待っていればすぐに来るだろう。その間にお前は更衣室で支給されているISスーツに着替えてこい」
「分かった」
更衣室は…あっちだったか。
んじゃ、とっとと着替えて……あれ?
「な…なんだ…? この地響きは…」
「奥の方から聞こえてくるような気が…」
「この気配は…まさかッ!?」
なんか船子だけが分かった風な顔をしてるけど、俺と千冬姉にはさっぱり分からない。
徐々に地響きが近づいてくる。
それに紛れるようにして、山田先生の慌てるような声も聞こえてきた。
「ちょ…大丈夫ですから! こっちの移動式ハンガーを使えばいいですから!」
「何を言うか!! 学園長たる者、いついかなる時も教職員や生徒の手助けをするのは当然のことであぁぁぁぁぁぁるっ!!!」
こ…この声は学園長ッ!?
つーか、モロに山田先生の口から『学園長』って聞こえてきたし!
「はっはっはっ! 待たせたな織斑一夏よ! 貴様の専用機を持って来てやったぞ!!」
「嘘ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!??」
が…学園長が右腕一本でISを担いでやって来たぁぁぁぁぁっ!?
え…えぇっ!? ISってめっちゃ重たいんじゃなかったのかッ!?
それをああも軽々と運ぶって…そんなのアリかよッ!?
「む? 船子もおったのか」
「おうよ! いつ見ても学園長の超腕力は見ていて惚れ惚れしちまうよなー!」
ちょ…超腕力? なんだよそれ…?
それだけ学園長は馬鹿力ってことなのか?
「結局、最後まで学園長が運んじゃいましたぁ~…トホホ…」
「ぬぁはっはっはっ! これぐらい朝飯前だわい!!」
「はうぅ~…」
完全に山田先生が子供扱いされてる…。
空いてる左手で頭をグリグリと撫でられてるし。
「あ…ありがとうございます…江田島学園長…」
「礼は不要! 学園長として当然のことをしたまでよ! ふん!!」
ズシ―――――――――ン!!!
そんな音と共にISが床に置かれた。
これ…壊れてないよな?
「織斑一夏よっ!!」
「は…はい!」
「括目して見るがよい…これが今日から貴様の愛機となるIS…」
ゴクリ…。
「その名も『
白式…これが俺の専用機…俺の相棒…!
「台詞を取られた…」
「織斑先生…」
なんか千冬姉が落ち込んでる。
割と普通に珍しい光景だな。
「ふーん…結構カッコいいじゃねぇか。よし! とっとと『
「よ…よく分かんないけど…頼むぜ! って、船子ンな事が出来んのかッ!?」
「あったりまえじゃねぇか! アタシを誰だと思ってんだ? いつの日か『新世界』に行って『四皇』になって、そんで最後には『海賊王』になる美少女だぞっ!」
「いつの間にそんなデカい野望を抱いてたんだよっ!? っていうかクルーはどうする気だっ!?」
「えっと…アタシに箒にセシリアだろ? あとは束の姉貴に千冬の姉御…山田先生に楯無パイセン…勿論、江田島学園長と小野ミチオ君もいるし…後は雑用係で一夏だな」
「今まで出てきたキャラほぼ全員かよッ!? しかも俺、まさかの雑用係ッ!? せめてコックとかにしてくれませんかねぇっ!?」
「無理!!」
「ハッキリ言うなぁっ!!」
「一夏には雑用以外のいい役職が思いつかねぇっ!!」
「なんでだよッ!?」
「なんとなくっ!!」
「それ言っちゃおしまいだろうがっ!!!」
ちくせう…こんなんで本当にISの設定とか出来るのかよッ!?
いや…船子なら普通に出来そうだけどさ…。
「船子が船長を務める船のクルーか…いいな…」
「海の旅か~…憧れちゃいますねぇ~」
「はっはっはっ! 流石は船子よ! 実に壮大な野望を抱いておるわい!!」
そこの教員三名はどうして乗り気なんですかねぇっ!?
誰でもいいからツッコんでくれよっ!!
俺一人じゃ荷が重すぎるんだってばよっ!!!
マジで船子が勝手に動いて喋る…。
そのお蔭で、白式の起動だけで二話も使う羽目になった…なんでぇ?