黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦! 作:とんこつラーメン
まだ先ではありますけど、もう既に感慨深くなっています。
本当に色んな事があったなぁ~…。
と言いつつ、今年最後の楽しみであるジム・スパルタンの到着が待っているんですけどね。
未来の自分に送るクリスマスプレゼントです。
江田島学園長が持って来てくれた俺の専用機『白式』…。
こいつが俺の相棒なのか…。
「白式って割には、なんだか色がくすんでいるような気が…?」
「当たり前だ。まだこれは初期設定すらしていない。それらの各種設定を済ませて初めて、お前の機体となるんだ」
「そうなのか…」
俺がISに合わせるんじゃなくて、ISの方が俺に合わせてくれるのか。
けど、そう思うと色々と納得はいく。
ISと操縦者がリンクしていたからこそ、セシリアも船子もあんなにも自由自在に動く事が出来たんだ。
「ま、そこら辺の設定に関しては、この船子様に任せときな! パパっとやっちまうからよ!」
「えっ!? 船子…出来るのかっ!?」
「当たり前じゃねぇか! このアタシを誰だと思ってやがる! ソースかつ丼だけで宇宙制覇を目論んでいる最強無敵のウルトラヒロインだぞっ!!」
「なんでソースかつ丼なんだよ…美味いけどさ…」
あれのタレを作るのが意外と難しいんだよな~…って、ンな事は今は全く関係ないんだよ!
「千冬の姉御も、その為にアタシを呼んだんだろ?」
「フッ…流石にバレていたか」
え? マジで?
冗談じゃなかったの?
「船子がその気になれば、専用機の設定ぐらい片手間でやってみせる。こいつはそれだけの頭脳を持っている」
「おうよ! 伊達に田沢のおっちゃんに勉強を教わってないぜ!!」
「あ奴は男塾一のインテリだったからのぉ…」
船子はそんな人に勉強を習っていたのか…知らなかった。
道理で昔から頭が良かったはずだ。
「噂では田沢の奴、今は大手ゼネコンの社長になったと聞くが」
「まぁな。それでも、まだ松尾のおっちゃんと仲が良いみたいだけど」
「あ奴等の友情は、どれだけの年月が経とうとも不滅…ということか」
大人になっても仲のいい友人…か。
なんだか羨ましいな…。
俺と弾もそんな風になれんのかな…。
「って、ンな事を話している暇は無かったな。ちっと待ってろ。すぐに終わらせてやっからよ。…酢飯を作るついでに」
「なんでここで酢飯が出てくるッ!?」
「んなの決まってるじゃねぇか! 寿司を作る為だよ!!」
「なんで寿司っ!?」
「美味い食い物には国境や生まれ育ちも関係ねェ! 美味いって気持ちにそんなもんは無いんだからな!」
「うん…言ってる事は正しいし、俺も同感するよ。けど、それとこれとどういう関係があるんだ?」
「え? あたしが作った寿司を持ってボアザン星まで行って無駄金使って建てやがった黄金の塔の最上階からアホ丸出しの成金野郎を引き摺り下ろして、民衆を開放してやるためだ。んで、疲れ切った皆に美味い寿司を振る舞って笑顔にするんだよ」
「ん~?」
なんだろう…またもや意味不明な単語が沢山飛び出してこなかったか?
いや…やめよう。まともに考えたら、それこそ船子の思う壺だ…。
「つーか、船子って寿司も作れたんだな。知らなかったよ」
「毎日、回らない寿司屋の厨房に忍び込んで、見て学んだ」
「しれっと言ってるけど、それって物凄く凄いことだからなっ!?」
こいつは…どこまで生粋の天才肌なんだよッ!?
もうマジでこれから先、船子が何をしてきても驚かない…と言いつつ、結局は驚くんだろうなぁ…。
「さーてと…いっちょ…やったりますかぁ!」
首をグルグルと回してコキコキと鳴らし、肩も同じようにグルグル回してコキコキと鳴らした。
これは…船子のやる気全開の合図だな。
「それじゃあ…いっくぜぇぇぇっ!!」
そう叫んだ瞬間、船子は左手で白式の固定されたハンガーのコンソールを凄まじい速度で操作し、それと同時にいつの間にか用意してあった台の上に置いてある酢飯の入った桶をしゃもじで器用に掻き回し、なんでか江田島学園長がそれを手伝うように団扇でパタパタと仰いでいた。
「おりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!! 最高に美味い寿司を作ってやるぜぇぇぇっ!!」
「ISの方が本当の目的なんですけどねッ!?」
なんか知らない内に寿司を作るついでにISの設定をしてる事になってるっ!?
白式…お前の影…凄く薄くなってるぞ…。
「うむ! 船子よ、良い感じになってきたぞ!」
「おっし! この調子でやったるぜっ!!」
現在の白式の立ち位置…酢飯以下…。
白式はマジで泣いていいと思う。
「お…織斑先生…」
「いきなりどうした山田先生。船子の寿司が食べたくなったのか? アイツが作った料理はいずれも絶品だぞ?」
や…山田先生? まさかとは思うけど、先生もボケ側になってしまったんじゃ…。
「そっちも気にはなりますけど、それよりもISの方ですよ!」
「ん? 白式がどうした?」
「金野さんの設定スピードが速すぎる上に的確過ぎます! 無駄な部分を徹底的に排除して、恐ろしく効率的に行っているお蔭で、通常なら一次移行に30分ぐらいかかる所が10分ぐらいに短縮されてます!!」
まさかの所要時間が三分の一にカットっ!?
どんな裏技を使えば、そんな芸当が出来るんだっ!?
「船子ならば、それぐらいは楽勝だ。なんたって私の船子だからな」
「それでいいんですかッ!? なんだか普通に私は落ち込んでるんですけどッ!?」
よかったぁ~! まだ山田先生はツッコミ側だ!
それと、またしれっと『私の船子』って言ったよ、この人…。
「もうすぐ出来るぞ~…」
「一応聞くけど…どっちが?」
「酢飯」
「だと思ったよっ!!」
白式――――――!
俺だけは絶対にお前の事を見捨てないからなー!!
「よっし! 酢飯完成!! 後ついでに白式の設定も終わった」
「テンションの落差ッ!!」
そんなに酢飯が大事なのかッ!?
って、おおおぉぉぉぉぉぉっ!? なんか急に白式が輝きだしたぞっ!?
「お…おい船子! 千冬姉! これって一体…!」
「今までで最高の酢飯が出来上がったぜー!! 学園長! 千冬の姉御! どんなネタが食いたい?」
「ワシは矢張り、大トロ一択である!!」
「流石は学園長。だがここは敢えて、私はヒラメにしよう」
聞いてね―――!!
つーか、見向きもしてね――――!!
三人共、揃って寿司のことしか話してね―――!!
「や…山田先生ッ!? これって大丈夫なんスかっ!?」
「だ…大丈夫ですよ織斑君! この光はISが一次移行する時の合図ですから!」
そうだったのか…良かった。
良かったけど……。
「大トロにヒラメか…いいじゃあねぇか。他にも色々と種類を増やしたほうが喜ばれるよな…何が良いかな…?」
「タマゴやイクラ、軍艦巻きなどは外せんであろうよ」
「学園長の仰る通りだな。他には…」
いつまで寿司の話を引っ張る気だよ…。
もうこちとら別の意味でお腹一杯ですから…。
「えっと…織斑君? 少しだけ飛んでみたりしてみます?」
「じゃあ…ちょっとだけ…」
そうして、船子と千冬姉と江田島学園長が寿司談義に花を咲かせている間、俺は一人寂しく白式でフヨフヨとアリーナ内を飛んだのだった。
これさ…自分で言うのもアレだけど、かなり重要なシーンだよな?
それなのに寿司に全てを持って行かれるって…どんだけ。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
もうそろそろ四月も終わりを迎えようとする頃。
俺達は今日も今日とて、こうして千冬姉の授業を受けているのであった。
「それでは、これよりISの基本的な飛行操縦を実際に行って貰う。オルコット。それから船子。前に出てくれ」
「了解ですわ」
「おいーっす」
呼ばれたのは一組の専用機持ちの二人。
一応、俺も専用機を持ってはいるんだけど、何故かお呼びは掛からなかった。
「織斑。お前…どうして自分は呼ばれなかったのかと思ったな?」
何故にバレたし。
やっぱ千冬姉は読心術が使えるのか?
「確かにお前も専用機を持ってはいるが、操縦練度はこの二人に比べて遥かに下だ。そんな奴に飛行させて何か事故でも起きたら、どう責任を取るつもりだ?」
「た…確かに…」
俺はまだまだ超が付くほどのド素人だ。
お世辞にも皆の手本には成り得ない。
寧ろ、俺は二人の操縦を見て学ばなければいけない立場だ。
「では、ISを展開しろ」
「はい」
「よっし」
言うが早いが、セシリアは文字通り一瞬で青い専用機を身に纏い、船子もまた最初の時とは打って変わって、あっという間にドミネーターを装着してみせた。
「二人とも見事だ。お前達、これが熟練の操縦者というものだ。ISの展開一つとっても一秒すら掛からない。いずれ、お前達にも同じような事が出来るようになって貰うからな」
うへぇ~…あれが目標かよ~…。
一秒未満って…最初からハードル高すぎるだろ…。
「飛行実践か~…」
あ。船子の奴、また絶対に碌な事を考えてない。
顔は見えないけど、口調でなんとなく分かる。
「……良いことを思い付いた♡」
…嫌な予感しかしないけど…今は授業中だから何も言えない。
こんな時にヘタレな自分を恨むぜ…。
「準備はいいな二人とも。では…飛行開始」
「いきますわ!」
千冬姉の合図と共に、まずはセシリアが凄い速度であっという間に空の彼方まで昇っていく。
これがISの全速力ってやつか…。
「どうした船子? 何かトラブルか?」
「うんにゃ。大丈夫だよ。ちょっちイメージをしてただけだ」
「イメージ?」
「おう。アタシのドミネーターは他のIS以上に自分のイメージ力が重要な機体なんだよ。けど…もう決めた」
そう呟くと、ドミネーターもセシリアを追って上空に昇っていく。
まだ何にも変化は無いけど…。
「スカルリーダーより各機へ! アタシに続けぇぇぇぇぇぇっ!!」
「ええぇっ!?」
どこかで聞いたことがるようなセリフと共にドミネーターが変化していく。
形状変化したその姿は完全に…アレだった。
「VF-1バルキリーっ!? しかもロイ・フォッカー機!!」
確かに『飛ぶ』事にはこれ以上ない程の適応してるけど!
まさかここで可変戦闘機を持ってくるとは!
このアイデアには普通に脱帽した…。
「追いついたぜセシリア! んじゃなー!」
「さ…流石は船子さん…! でも、負けませんわよ!」
セシリアの方も速度を上げ追いつこうとするが、バルキリーの速度には追いつけず、結局は船子の方が先に目標高度に到達した。
「この船子ちゃんに迫るとは…意外と根性あるじゃねぇか。見直したぜセシリア」
「お褒め頂き光栄ですわ」
典型的なお嬢様だと思ってたけど、意外と違うのかもしれない。
人は見た目に寄らないとは、まさにこのことだな。
『目標高度に到着したな。では、今度はそこから急降下からの完全停止をやってみせろ。目標は地表から約10センチとする』
空の向こうにいる二人に千冬姉がインカムで次の指示を出す。
聞いてるだけで今の俺には無理だって分かるわ…。
なんだよ、急降下からの完全停止って。
「了解ですわ。では船子さん。まずは私から行きますわね」
「おう。頑張れよ」
「はい!」
お? まずはセシリアから来るみたいだな。
あっという間に小さかったセシリアの姿が大きくなって近づいてくるのが分かる。
そして、難なく完全停止もやってみせた。スゲー…。
「9.8センチか。まぁまぁだな」
「ありがとうございます」
次は船子か。
一体どんな風に急降下してくるのやら…って、なんか真っ直ぐに突っ込んで来てませんかねぇっ!?
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」
こ…このままだと地面にぶつかるっ!?
どうするんだよ船子ッ!?
「今だ!! 必殺…船子ちゃんスペシャルッ!!!
あと少しで地面に激突…ってところで、なんとガウォーク形態に変形して見事に着地をしてみせた!
しかも、その際に周囲の皆に全く衝撃などが来ないようにして。
いや…マジで凄かったんだけど…。
「記録は?」
「ジャスト10センチ。見事だ。流石だな」
「へへへ…」
あ。珍しく照れてる。
見た目が完全にガウォークだから、キャノピー部分を人差し指で擦ってるけど。
「では、次は武装の展開…といきたいが、船子のそれはどうなってるんだ?」
「んー…武器もドミネーターの一部として展開できるからなー。ぶっちゃけ、良くも悪くもアタシのイメージ次第だな」
「ならば意味は無いか…。では、オルコットだけ展開しろ」
「はい」
千冬姉に指示され、セシリアは前に試合で見せたレーザーライフルを展開した。
見た目だけならアレだな…まるでスナイパーライフルだな。
「よし。次は近接用の武器を展開しろ」
「分かりましたわ」
目を瞑って精神を集中させているのか、急に空気が張り付くようになる。
そして目が開かれた時、セシリアの手には一本の短刀が握られていた。
「資料では、お前は近接武器の展開が苦手とあったが?」
「確かに以前までの私はそうでしたわ。けど、船子さんからのアドバイスで克服しましたの」
「ほぅ…?」
船子のアドバイスって…一体どんな助言をしたんだ?
ふざけているようで、意外と的確な事を言ってくれるからな…。
「別に特別な事は教えてねぇよ。ただ、少しでもイメージしやすいように暇な時にでもナイフの実物や絵や写真とかを眺める習慣をしろって言っただけだ。セシリアが近接武器の展開が苦手なのは、単純に銃ばかりを使ってナイフを使う機会が少ないからだ。だから、ナイフの形状や特徴とかを頭に叩き込めば、自然と展開もし易くなるって寸法だ」
「フッ…流石は船子だな。見事なアドバイスだ。お前達も、今の言葉は覚えておいて損は無いぞ」
頭の中にイメージを叩きこむ…か。
単純なように見えて、ISにとってはかなり大事なことなんだろうな。
こういう時に船子の潜在的な凄さってのが垣間見えるんだよな…。
「ん? もう時間か。では、今日の授業はここまでとする」
授業終了のタイムが鳴り、今日の実習が終了する。
うん。今回は船子のお蔭で割と本気で勉強になったぞ。
イメージ…イメージ…覚えておこう。
時系列的には次回辺りに鈴ちゃんの登場ですが…果たして?