黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦!   作:とんこつラーメン

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無限大の可能性(笑)

 色んな意味で騒がしかった昼休みから一転。

 今は放課後で、場所は毎度お馴染みの第三アリーナ。

 俺は自分に与えられたIS『白式』を少しでも乗りこなせるように、今日も今日とて箒やセシリア、船子と一緒に練習に明け暮れていた…んだけど…。

 

「おーほっほっほっ! ま~たまた船子ちゃんの勝利ザマスよ~!」

「チクショー! ぜっんぜん勝てる気がしね―――!!」

 

 専用機を受領してから、俺は船子と模擬戦を繰り返していた。

 基礎的な事を覚えるのも大事だけど、早く上達するには格上の相手と戦う事だ…って船子が言うもんだから、その時は何を思ったのか、その言葉に凄く感動して見事に言い包められて、こうして船子と模擬戦をやっている。

 …が、結果はご覧の通り。

 未だに俺は船子に勝つ事は愚か、碌にダメージすら与えられていない。

 

「くっそぉー…! 船子の専用機『ドミネーター』が変幻自在に姿を変えるISなのは知ってるけどよ……」

「ん?」

「どうして、よりにもよって『紅蓮聖天八極式』なんだよ!! どう考えても勝てるワケねーだろーが!!」

 

 その機体がどんだけの超弩級のチート機体なのか知ってて使ってるだろ!!

 さっきからこっちの攻撃は掠りもしないし、船子の攻撃(輻射波動)が一撃必殺過ぎるし!!

 俺みたいなド素人には無理ゲーすぎるんだよ!!

 

「っていうか、紅蓮の姿で体をクネクネさせるな!! 違和感が凄いんだよ!!」

「おーほっほっほっ!」

 

 全然聞いてねーし!!

 くっそー…! 完全におちょくられてる…!

 

「なんて機動性なんですの…! あれで通常機動だなんて…信じられませんわ…」

「船子が高速移動するだけで、アリーナに真紅の軌跡が描かれるからな…」

 

 下で完全に実況モードになっているのは、ISを纏ったセシリアと、訓練機『打鉄』を借りて装備している箒の二人。

 さっきまで鈴に敵意剥き出しだった二人はどこへやら。

 

「頼むから、もうチョイだけ手加減してくれよ! 勝負にならないんじゃ意味無いだろッ!?」

「うーん…それもそうだな。んじゃ~…」

 

 紅蓮がグニグニと溶解し、再び姿を変える。

 今度は一体何になるんだ…?

 

「これにするか!!」

「そ…それは…!」

 

 全体的に丸みを帯びたデザインに加え、両肩から生えている低反動キャノン砲。

 そして、あの独特のバイザー型のカメラアイは…まさか…!

 

「ガンキャノンかよ!! 中・遠距離の砲撃戦に特化して、めちゃめちゃ装甲が固い癖に、その鈍重な見た目からは想像も出来ないぐらいに実は運動性が高い、ガンダムに負けず劣らずの高性能機体のガンキャノンかよ!!」

「そうでーす!」

 

 運動性特化の次は、防御力&遠距離戦特化かよ!!

 どっちにしても、剣一本しかない白式にとって相性最悪の相手じゃねーか!!

 

「オラオラいくぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

「ちょ…待てって!! うわぁぁぁっ!?」

 

 本来のガンキャノンは空を飛べないけど、あのガンキャノン擬きはISだから普通に上空からの攻撃が出来る。

 上からの砲撃なんてマジで洒落になってねぇぞっ!?

 

「堅牢な装甲と高い砲撃能力を備えた機体…後方支援機としては、まるでお手本のようなISですわね」

「前線の味方を的確にサポートし、万が一にも懐に潜り込まれても、その分厚い装甲で攻撃を防ぐ…か。隙が無いな」

 

 そこの二人!! 実況してないで少しは助けてくれよ!!

 その身に付けているISは飾りなのかッ!?

 

「くっ…! こなくそぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

「おお?」

 

 もうこうなったら意地だ!!

 半ば自棄になった状態で白式をぶん回すと、辛うじて船子の放った低反動キャノン砲を回避することに成功した。

 そこからなんとか体勢を立て直して、そのまま懐にまで潜り込めるように左右に移動しながら近づいていく。

 と言っても、ガンキャノンの武装はキャノン砲だけじゃなく、その手に持ったビームライフルもあるので油断は出来ない。

 実際、何回かライフルから発射されたビームが肩とかに当たった。

 けど、ここで怯んだが最後、もう絶対に勝ち目はない。

 この流れだけは何が何でも物にしないと!!

 

「もらったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「おぉ~!」

 

 カン!

 

「…………へ?」

 

 懐に潜り込んだ瞬間、間髪入れずに全力で雪片を振り下ろしたんだけど…気のせいかな?

 すんごい気持ちのいい『カン!』って金属音が鳴った気がするんだけど…。

 

「もう終わりか?」

「あ」

 

 思い出した…。

 俺が自分で言ったんじゃねぇか…。

 『ガンキャノンはメチャメチャ装甲が固い』って…。

 劇中でも、ドムのジャイアント・バズの直撃にも余裕で耐えてるほどなんだぞ?

 そんな分厚い装甲が、素人の剣なんかで傷つけられるとでも?

 いや無理。不可能。

 逆に、今みたいに跳ね返されるのがオチだわ。

 

「それなら……ほらよ。ポイってな」

「え?」

 

 なんか船子から空き缶ぐらいのサイズをした黒い物体を投げ渡された。

 これって…まさか…!?

 

「ハンドグレネードかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 ド派手な爆音と共に、俺はまたもや船子に敗北するのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「はぁ~…結局、また船子に一矢報いる事が出来なかった…」

「にゃっはっはっ~! そう簡単にこの船子ちゃんから一本取れると思ったら大間違いだぜ~!」

「全くだよ…はぁ…」

 

 流石に勝つとまではいかないまでも、せめて一撃ぐらいは与えれるようになりたい。

 そこに至るまで、まだまだ道は遠いけど。

 

 アリーナの使用時間も迫ってきたので、俺達はISを解除してからピットに戻ることに。

 本来は反対側に行く筈のセシリアも、何故か今回はこっち側に来た。

 本人曰く『嫌な予感がしたから』らしい。

 女の勘ってやつだろうか?

 

「にしても、今日も良い汗を掻いたな~!」

「ふ…船子の汗…」

「ゴクリ…」

 

 こらこらそこ。それは流石にダメだろ。

 その一線を越えたらマジで戻ってこれなくなるぞ。

 

「しかし…本当に船子さんのドミネーターは変幻自在ですわね。変化する姿次第で無限の戦い方が出来るんですもの」

「確かにな。だが、それは同時に『それだけ多くの戦い方を知っている』ことが前提になる。船子以外にドミネーターの能力を使いこなすのは不可能だろう」

 

 それには俺も激しく同感。

 船子が本気になれば、様々な場面で一瞬で姿を変えて対応することも可能だろう。

 そうなれば本当に船子は限りなく無敵に近くなる。

 マジで船子に勝てる奴なんて存在しなくなるかもな。

 

「まずはシャワーでも浴びてサッパリとしたいぜ~」

 

 船子のシャワーシーン…。

 いやいやいや! いきなり何を妄想し始めてるんだ俺は!!

 船子は俺の大事な友人で…幼馴染で……。

 

「おいーっす。おつかれー…って、どしたの?」

 

 ピットの廊下側の扉が開いて、そこから鞄を持った鈴が入ってきた。

 どうやら差し入れを持って来てくれたみたいだけど…変な空気の時に来ちまったな…。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 第三アリーナで練習をする予定だって聞かされていたアタシは、一夏や船子達に差し入れをしようと思って、練習が終わる時間を見計らってアリーナのピットまで来たんだけど…何この空気は?

 

「お? 鈴じゃねーか! どした?」

「差し入れを持って来てあげたのよ。ほら、まずはその汗をこのタオルで拭きなさいよ」

「あんがとな。助かるぜ~!」

 

 アタシからタオルを受け取って顔や首に着いた汗を拭う船子。

 気のせいかしら…汗を掻いてるのって、一夏と船子だけな気がするんだけど。

 あの箒って子とセシリアって子は全く汗を掻いて無くない?

 

「ふぅ~…これだけでもかなりスッキリするな~」

 

 …そういや、船子のISスーツ姿って初めて見るわね。

 普段から服の下に隠されているプロポーションがモロに出てるから…その…かなりエロいわね…。

 これで本当にあたし達と同じ15歳なんだから恐ろしい。

 このまま成人したら本当にどうなっちゃうのかしら。

 

「ほら。一夏もタオル。それとスポドリもね。船子も」

「「サンキュー!」」

 

 …悔しいけど…やっぱり息は合ってるのよね…この二人って…。

 ライバルは想像以上に強力…か。

 

「む? 私達には無いのか?」

「いや…一応はあるけど…あんたら汗とか一切掻いてないじゃない」

「今日の私達は、船子と一夏の模擬戦の見学をしていたからな」

「その通りですわ」

「ふーん…」

 

 模擬戦の見学…ねぇ…。

 どんな様子だったのか気になりつつ、アタシは二人にもタオルとスポドリを手渡した。

 

「船子って、そんなにも強かったの?」

「強いなんてもんじゃねーって。俺が超が付くほどの素人だってことを加味しても明らかにおかしい実力だぞ? 幾らなんでも、どれだけやっても掠り傷一つすら真面に与えられないのは異常だろ?」

「はぁ?」

 

 掠り傷一つも与えられない?

 それは流石に言い過ぎなんじゃ…。

 

「そこの…えっと…セシリア! アンタの時はどうだったのよ?」

「今、地味に私の名前を忘れてましたわね。まぁ…いいですけど」

 

 うぐ…悪かったわね。

 今後はちゃんと覚えるように努力するわよ。

 

「私の時も同じでしたわ。終始、船子さんの圧倒的な実力に翻弄されっぱなしでした。手も足も出ないとは、まさにあの事を言うのでしょうね…」

 

 代表候補生を一方的に負かすって…どんだけなのよ…。

 昔から頭脳明晰で運動神経も抜群なのは知っていたけど、まさかその才能がISに使われると、これ程までになるとは思わなかった。

 

「お? このスポドリ…ちゃんと人肌になってるじゃあねーか」

「そりゃね。前に散々、アンタや一夏から教えて貰ってたから」

「ちゃんと覚えてたのか? やるな~!」

「ちょ…くっつくんじゃないわよ!」

 

 いきなり船子がアタシに肩を組んできた。

 まだ僅かに付いた汗の匂いと、船子自身の匂いが合わさって…ヤバい…普通にドキドキする…!

 

「い…一夏! アタシを助けなさいよ!」

「んー? どうかしたか?」

 

 呑気にスポドリを飲んで…!

 こんな時に限って難聴を発症するんじゃないわよ!!

 

「にひひ…や~っぱ鈴と一緒にいると楽し~な~!」

「は…はぁ!?」

 

 い…いきなり何を言い出すのよコイツはっ!?

 っていうか、そこの二人が鬼の形相でこっちを睨み付けてるから!

 めっちゃ怖いから!!

 

「きぃ~さぁ~まぁ~…! 一度ならず二度までもぉぉ…!」

「私達の前で船子さんとイチャイチャして…!」

「イ…イチャイチャなんてしてないから!! つーか船子! いい加減に離れなさいよ!!」

「え~? 別にいいじゃね~かよ~! もっとアタシとイチャイチャしよ~ぜ~?」

「いきなり何を言ってんのよアンタはぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」

「「凰鈴いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんっ!!!!!」」

「お昼と同じ展開ぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

 

 ある意味、船子って一夏以上に厄介じゃないのよぉぉぉっ!!

 鈍感よりも遥かに質が悪いんですけどぉぉぉぉっ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんやかんやあったので、鈴と箒の『部屋替え云々』の話はオミットされました。

そこであった『酢豚云々』もここでは飛ばされますが、いつかは話題に出るかもしれません。




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