黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦! 作:とんこつラーメン
「ふぅ~…。思い切り体を動かした後のシャワーは気持ちいいぜ~♡」
現在、船子ちゃんはシャワーを浴びている真っ最中。
部屋に戻って来てからすぐに、制服を脱いでからシャワー室へと直行した。
破天荒な言動が多い彼女だけど、これといった問題はしてない。
それどころか、普通に成績は良好で、学年主席は伊達ではないと自分の身を持って証明してみせている。
…別にそれ自体はどうでもいいのよね。
あの子がいるお蔭で、心なしか今まで以上に学園内の雰囲気が明るくなったような気がするし。
それを考えると、船子ちゃんの与える影響力って想像以上に凄まじいのね…。
なんか、生徒会長としての立つ瀬が無くなってくるんですけど。
(それはそれとして…問題なのは船子ちゃんの『風呂上りの格好』なのよね…)
なんというか…あの子には年頃の少女らしい恥じらいが欠けているというか…。
どんな人生を歩んできたら、あんな風になるのか本気で知りたい。
「あ~…サッパリした♡」
来たわね…毎度のことだけど、私も心の準備をしておかないと…!
本当に色んな意味で心臓に悪いのよ…船子ちゃんの格好は!
「あがったぜ~」
そう言いながらやって来た船子ちゃんの格好…それは…!
「いつでも入れるぜ。パイセン」
「わ…分かったわ」
真っ赤に染まったバスローブ…!
しかも、胸の部分が開いて見事な谷間を強調している…!
程よく鍛えられた真っ白な足がスリットから覗きこんでいて、また凄くエロい…。
こんなの同性でも絶対にドキってなるわよ!
本当にこの子って15歳なのッ!?
私よりも遥かに大人びて見えるんだけどッ!?
あ~…もう! 見れば見るほどに完璧なスタイルなのよ!!
一体どうなってんの!?
「ね…ねぇ…船子ちゃん? もう少しでいいから肌の露出を抑える事って出来ないのかしら?」
「うーん…そう言われてもなぁ~…。このバスローブよぉ…今年に入ってから急にキツくなってきてよ。主に胸が。こんな風にしないと着られないんだよ」
そ…それってつまり…この状態からまだ成長しているってことっ!?
幾らなんでも冗談でしょっ!?
成長期だからって、もう現時点で完成され尽くしてるでしょ!
これ以上、どこをどんな風に成長させるってのよッ!?
「じゃあ…新しいのを買ったりとかは…」
「そうしたいのは山々なんだけどよ、最近は忙しくて、んな事をしている暇がねーんだよ」
そ…そうよね…。
クラス代表として真面目に頑張っているみたいだし、それに加えて織斑一夏君の特訓にも付き合っていると聞いているし。
他にも勉強やら、自分の特訓やらもしないといけないだろうし…。
あれ? もしかしなくても今の船子ちゃんって割と多忙だったりする?
下手をすると、今の私よりもなんか頑張ってない?
「ずーん……」
「おうおう…いきなりどーした? 落ち込んだような効果音を口から出しやがって」
「なんでもないわ…」
クラス代表よりも暇している生徒会長って…。
これからはもっと頑張ろう…。
そしていつか、新しいバスローブを船子ちゃんにプレゼントしてあげよう…。
「そ…それにしても、船子ちゃんって本当に顔が広いわよね」
「そーか?」
「そうよ。織斑一夏くんと篠ノ之箒ちゃんと幼馴染ってだけでも相当よ? あの二人のお姉さんはどっちも世界的な有名人だし」
「んなの別にカンケーねぇけどな。あいつ等をそんな風な目で見た事なんてねぇし」
…他人を色眼鏡で見る事をしない…か。
だから船子ちゃんは皆から人気があるのかしらね…。
家柄上、自然と他人を疑う事から始めてしまう私には眩しく見えるわ…。
「もしかして、織斑先生だけじゃなくて、篠ノ之博士とも仲が良かったりする?」
「あったり前じゃねぇか。束のネーちゃんはアタシにとって一番のダチ公だぜ?」
「そう…なのね…」
その話が本当なら、裏の連中は迂闊に船子ちゃんには手が出せないわね。
どうも織斑先生も船子ちゃんの事を気に入ってるみたいだし、もしもこの子に何かをしたら、世界最強と天災を同時に敵に回す事に繋がるんだから。
あと…あの江田島理事長も。
「あっという間にイギリスの候補生の子とも仲良くなってしまうし、今度来たって言う中国の候補生の子も幼馴染なんでしょ?」
「まぁな。鈴とは小中と一緒だったんだよ」
「成る程ね」
今後、どんな人物が船子ちゃんの知り合いとして登場しても驚かない自信があるわ…。
江田島理事長の時点でもう既にお腹一杯だし。
「あと…アンタもな」
「へ? わ…私?」
「おう。パイセンもアタシの立派なダチ公だぞ? 少なくとも、アタシはそう思ってる」
「船子ちゃん…」
あぁ…これは卑怯だわ…。
こんな綺麗な顔で、こんな真面目な表情をしながら、こんな事を言われたら…大抵の子は惚れるわ…。
普段の貴女はどこに消えたの?
極稀に真面目な顔でカッコいい事を言うから破壊力が凄いのよね…。
コンコン
「「ん?」」
このノックは…誰かが訪ねてきたみたいね。
「船子ちゃん。もしかして、誰かにこの部屋の場所を教えたりした?」
「箒とセシリア、一夏と鈴、後は千冬の姉御に教えておいた」
ってことは、今の時間帯的に生徒の誰かが来たってのが妥当かしらね。
流石にまだ織斑先生は仕事中でしょうし。
「へいへい。誰ですかーっと」
「ちょ…船子ちゃん?」
まさか、そのままの格好で出るつもり?
いやまぁ…玄関先ぐらいなら大丈夫…かしら?
「ふ…船子さん!」
「一緒に夕飯を食べに行かないかッ!?」
やって来たのは船子ちゃんと同じクラスのセシリア・オルコットちゃんと篠ノ之箒ちゃんの二人。
抜け駆けをしないように一緒にやって来たのかしら。
もしくは、ドアの前で偶然にもかち合ってしまったか。
「夕飯かー…そうだな。腹も減っちまったし、行くか!」
「「やった!」」
なんて嬉しそうなガッツポーズ。
それだけ船子ちゃんが好かれている証拠ね。
「って…船子さん?」
「そ…その格好は…?」
「ん? あぁ…ついさっきまでシャワーを浴びてたんだよ」
「「シャワー…」」
あ。これはまず間違いなく、船子ちゃんのシャワーシーンを妄想してるわね。
だって顔が凄くだらしなくなってるもの。
「「ゴクリ…」」
二人一緒に唾を飲んだし。
なんか視線が胸や足の方に行ってない?
思わず見てしまう気持ちは分かるけど。
「どした? アタシの身体をジロジロと見やがって。あまりの美貌っぷりに見とれちまったかぁ~?」
「「はい…見惚れてました…」」
素直に白状したッ!?
まさかの誤魔化す気ゼロ!?
「おいおい…そこまでストレートに言われちまったら、流石の船子ちゃんも照れちまうじゃねぇか…。アタシだって立派な乙女なんだぞ?」
「「グハァッ!?」」
そしていきなり血を吐いたぁッ!?
た…確かに船子ちゃんの照れ顔は滅茶苦茶に可愛かったけど…。
「おいおい…大丈夫か? 今から夕飯を食いに行くんだろ?」
「そ…そうでしたわ…」
「こんな所で倒れてなどいられんのだ…!」
どうして夕飯を食べに行くまでの間に、無駄に壮大な台詞が連発されるの?
「うっし! んじゃ、とっとと食いに行くべ!」
「「は…はい」」
ちゃんと鼻血は拭くのよー?
…あれ? ちょっと待って…。
「ふ…船子ちゃんッ!?」
「ん? どしたパイセン?」
「まさか…その格好で行くつもりなのッ!?」
「そーだけど? なんか問題でもあるか?」
「あるでしょ!」
本当に船子ちゃんには羞恥心というものが存在していないのッ!?
普通の乙女なら絶対に着替えるわよッ!?
「む…? あの人物は誰だ? 見た所、二年生のようだが…」
「あの顔は…まさか?」
「おう。アタシのルームメイトで生徒会長やってる更識楯無パイセンだ」
こっちが自己紹介する前にしてくれた。
細かな気遣いが出来る子って割と女子力が高いわよね。
「更識楯無よ。二人の事は船子ちゃんからよく聞かされてるわ」
「「は…初めまして」」
うーん…流石に先輩を前にすると借り的な猫みたいになっちゃうわね。
ちょっとだけ残念。
「まさか、船子が生徒会長殿と一緒に住んでいるとはな…驚いたぞ」
「基本的にルームメイトは同学年同士と思っていましたけど、例外もあるんですのね…」
私の場合は船子ちゃんのお目付け役って意味合いの方が強いけどね。
その心配は殆どが杞憂に終わってるけど。
「それよりも船子ちゃん。夕飯を食べに行くなら、ちゃんと着替えなきゃ。そのままの格好で行ったら恥ずかしいでしょ?」
「別に?」
まさかの本当に気にしてないパターンだったッ!?
この格好で食堂なんて人が集まる場に行ったらどうなるか…想像もつかないわ…。
でも、船子ちゃんを論破して着替えさせるのは至難の業だし…。
力付くってのはもっと無理。船子ちゃんの身体能力、私よりも上なんだもん。
「はぁ…仕方がない。私も一緒に行くわ」
「んだよ~! なんだかんだ言いつつ、結局はアタシ等と一緒に行きたかっただけかよ~! それならそうと最初からそう言えよな~! アタシはてっきりメソ…」
「「「メソ?」」」
「い…いや…なんでもない…」
メソって言った!
なんか知らないけど、今確かにメソって言ったー!!
「ほ…ほら。早く行こうぜ!」
「「「う…うん…」」」
図らずも船子ちゃんに関する謎が増えてしまった…。
本当にメソって一体なに…?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
廊下を歩くと案の定、船子ちゃんは物凄く目立っていた。
一緒に歩いている私達が一瞬で霞んでしまうほどに。
「ちょ…なにあのモデルみたいな子…」
「あんな子…学園に居たっけ…」
「すっごい美人…レベルが違い過ぎる…」
「え? あれどこの女優?」
バスローブ姿で寮の廊下を歩くなんて…噂では入学初日に一年生たちが似たような事をしたらしいけど、それは単に織斑君へ自分をアピールするためにやった事であって、少なくとも何の理由もなくそんな事はしない。
けど、船子ちゃんは違う。
完全にバスローブ姿を普段着として利用している。
この度胸だけは本気でお見逸れするわ…。
「ちょ…船子ッ!? アンタなんつーカッコしてんのよっ!?」
「お? 鈴じゃねーか! オメーも夕飯か?」
「まぁね…じゃなくて!」
あの子が中国の代表候補生の凰鈴音ちゃんね。
噂通りの小さい子だけど…それ以上にツッコみキャラなのが目立つ。
今の所、私以外のツッコミを見かけた事が無いから。
もしかしたら織斑一夏君もツッコみキャラかもだけど。
「あんたには羞恥心ってのが無いワケっ!?」
「しゅーちしん? なんだそりゃ? 新しいHMの名前か何かか?」
これ…本気で自覚してないわ。
自分が美少女であると言うことは自覚していても、自分自身の美貌に関しては正しく認識してないと見た。
「そこのアンタ等も! どうして船子を止めなかったのよッ!?」
「「どうして止めなくちゃいけないの?」」
そうよね…最初から止める気なんて全く無かったわよね。
それどころか、ずーっと船子ちゃんの事を凝視してたし。
「私はちゃんと止めたのよ? でも、船子ちゃんが言葉で止まるような子じゃないのは、アナタだってよく分かってるんじゃない?」
「そ…それはそうだけど…って、アンタ誰?」
「生徒会長をしている二年の更識楯無よ。今は船子ちゃんのルームメイトをしているわ。よろしくね、中国代表候補生の凰鈴音さん?」
やっと私らしく自己紹介が出来た…。
少しは生徒会長としての面目躍如が出来たかしら?
「に…二年生で生徒会長…!? 船子…アンタ、そんな人と一緒に住んでるの?」
「まぁな。結構面白くていい奴だぜ? 楯無パイセンはよ」
船子ちゃんに褒められた…。
なんだろう…ちょっぴり嬉しいと思ってる自分がいる…。
「船子アンタ…遂には上級生まで…はぁ…」
この様子、彼女は船子ちゃんが人気があるのを知っている感じ?
中学まで一緒だったって言うし…。
「なんか心配になってきた。アタシも一緒に行くわ」
「おぉ~! そうこなくっちゃな!」
「「ちっ…」」
舌打ちした!
そこの二人が今、露骨な舌打ちをしたっ!?
どんだけ凰さんと敵視してるのッ!?
確かに船子ちゃんとは凄く仲がよさそうだけど…。
「どーしたアンタはいつもいつもそーなのかしらね…ホント」
「それが船子ちゃんだからだ! こいつは前前前前前前前前前世から確定してる事だからな!」
「はいはい。そーねそーね」
流石に長い付き合いなだけあって、少なからず船子ちゃんの扱い方を知っているみたいね。
この場では頼もしい味方…になるのかしら?
こうして、私達は揃って食堂に行くことになったのだけれど…今以上に人が集まる場所にバスローブ姿で行ったりしたらどうなるか…想像するだけで頭が痛くなりそうだわ…。
後半に続く。