黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦!   作:とんこつラーメン

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久し振りになりますが、気にせず参りましょう。

さーて…ハジけますか。








やると決めたら一直線!!

「いや~…まさか、クラス対抗戦の初戦の相手が鈴になっちまうとはな~」

 

 なんやかんやあった次の日の朝。

 俺と船子とセシリア、箒の四人はいつものように登校をしていた。

 

「相手は中国の代表候補生…油断は禁物ですわよ! 船子さん!」

「もちのろんだぜ! どんな相手でも全力全開! それが船子ちゃんの生き様だからな!」

 

 昨日の夕飯の帰り、廊下にある掲示板に今度、開催される『クラス対抗戦』のトーナメント表が張り出されていた。

 それによると、なんと一年生の部の一回戦の第一試合は船子率いる一組と、鈴率いる二組との試合になっていた。

 まさかの専用機持ち同士の試合が一番最初になるだなんて。

 これには流石の俺も開いた口が塞がらなかった。

 

「昔から運動神経は良かったからなぁ…。きっと、かなり強くなってるんだろうな」

「そんなの関係ねェ! そんなの関係ねぇ! はい! オッパッピー!」

「また懐かしいネタをしやがって…」

 

 因みにあの人、今は子供達相手に舞台で頑張っているらしい。

 

「まぁ…だからと言って、何にも対策をしないってわけじゃあねぇけどな」

「では、またセシリアの時と同じように外で特訓をするのか?」

「そうだな…前みたいに、ずっと外に出てる…って事はしねぇと思う。場合によっちゃ、どこかに出かけるかもだけどな」

 

 それでこそ船子って感じだけどな。

 努力する姿を決して隠さずに恥とは思わない。

 この鋼のメンタルこそが、船子の強さの秘訣なのかもしれない。

 

「今日の放課後から早速、特訓開始だな! 何から始めるかねぇ~」

「そんなに色々と考えてるのかよ…」

「そりゃな。何事にも万全を期すのは当然だろ?」

「うーん…言ってる事は正しいし、理解も出来るんだけどなぁ…」

 

 船子の場合、その『万全を期す』の意味が少し…いや、かなり違ってくるから困るんだよ…。

 そのお蔭で、俺達がどれだけ振り回されて来た事か…。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 放課後 IS学園内にある剣道場。

 主に剣道部に活動の場となっている場所に俺達は来ていた。

 今回は特別に剣道部の皆に頼んで、この日だけ貸切にして貰っている…船子が。

 

「…………」

 

 俺達の目の前には、あの船子が剣道着を着て道場の中央付近で正座をし、静かに目を閉じて精神を集中させている。

 船子の剣道着姿と言う時点で相当にレアなのに、それに加えて、今の船子は動きやすさ重視なのかポニーテールに長い髪を纏めていた。

 

「なんて凛とした佇まいなのでしょうか…。こうして見ているだけで、こちらの精神まで研ぎ澄まされていくようですわ…」

「伊達に私や千冬さんと同じ篠ノ之流ではないということか…。まるで、船子自身が一本の鋭い剣のようだ…」

 

 セシリアや箒が言ってくれたが、今の船子にはそれ程までの迫力がある。

 言葉に出来ない近寄り難さ。

 気になって見学に来ている剣道部の面々もそれは感じているのか、誰一人として言葉を発そうとはしない。

 

「いや…確かに今の船子が相当に集中しているのは分かる…分かるけどよ…」

「けど? どうしたんだ?」

「…じゃあ、船子の目の前に置いてある、あの『白い塊』は一体何なんだ…?」

 

 下にはサランラップを敷いてあって、白い粉が上から振り掛けてある白くて丸い物体。

 俺には、あれが『うどん粉』に見えて仕方がないんだけど…。

 

「まさか…なぁ…」

 

 剣道場でうどんを捏ねようだなんて、流石に…。

 

「…………はっ!!」

 

 船子が動いた!

 今まで閉じていた眼をカッと開き、目の前にあるうどん粉を天井高く投げ飛ばした!

 その際に周囲に粉が散ったが、本人はお構いなし。

 

「ほっ! はっ! どりゃぁっ!!」

 

 器用に空中でうどん粉を捏ねていき、段々とモチモチになっていく。

 そして最後には……。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」

 

 まさかのオラオララッシュ。

 一体何がしたいんだ…。

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!!」

 

 あ。今度は無駄無駄ラッシュに変わった。

 

「ドラララララララララララララララララララララララララララララララァ!!」

 

 お次はドラララかよ。

 ってことは…。

 

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリィ!!」

 

 ですよねー。

 なんとなく想像は出来てた。

 

「ボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラァ!!」

 

 ボラボラもかよ。地味にスゲーな。

 

「オォォォォォォォォ…ラァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

 最後に謎のアッパーカットを喰らい、うどん粉はベタンとラップの上に落下した。

 良い具合に捏ねられたとは思う…が、だからなんだって話。

 

「さぁて…まだまだ行くぜぇ…!」

 

 麺棒と…大きな板?

 粉を沢山振ってから…うん。だよな。

 

「ウボシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァっ!!!」

 

 なんかパープルヘイズっぽい叫び声と共にうどん粉を引き延ばしていく。

 綺麗な楕円形に仕上がったな…。

 

「うし。お次は…」

 

 今度は、どこからは出刃包丁とまな板を取り出した。

 何処から出したとか、そんなツッコミは、それこそ無駄だ。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」

 

 オラオラの掛け声でうどん粉を器用に切り分けてる…。

 スゲー勢いだな…。

 

「無駄無駄無駄無駄む無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!!」

 

 んで、またもや何処からか取り出した鍋とコンロ、その中に入っているお湯に切り分けたうどんを入れて静かにかき混ぜながら茹でてる。

 うーん…上手いな…。

 

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!」

 

 最後は湯切りか…これも上手だ。

 やっぱ女子力高いな~。

 …こんなツッコミしか言えなくなってる時点で、俺も相当に船子の影響を受けてるな…。

 

「そして…こいつで……」

 

 おぉ~…もういつの間にかスープの方が出来上がってる…!

 匂いで分かる…鰹節と煮干し、後は干しシイタケで出汁を取ってやがるな…!

 隣にいる箒たちも、匂いに釣られて涎を垂らしそうになってるし…。

 

「アリーヴェデルチ」

「「「「おぉ~!!」」」」

 

 刻まれた小葱とカマボコを添えて…出来た!

 

「ふっ…会心の出来だぜ。一夏、試しに食ってみてくれ」

「わ…分かった」

 

 道場に上がってから、船子から器を貰う。

 まずはスープから…。

 

「んっ!!!」

 

 う…美味い!! あっさりしているのに、なんてコクのあるスープなんだ!!

 

「め…麺も…」

 

 も…もちもちしこしこで…最高の喉越しだ…!

 スープともよく絡んでやがる…!

 

「ほれ! お前らの分もちゃんと用意してあるから、冷めないうちにとっとと食いやがれ!」

「「「「「いただきまーす!!」」」」」

 

 こうして、剣道場にて謎のうどんパーティーが開かれる事となった。

 ……なんじゃこりゃ。

 

「しかし…まさかうどんを作る過程を特訓にするとは…恐れ入ったぞ」

「全身を使った動きをすることで、均等に全身を鍛え上げる…お見事ですわ」

 

 いや…船子がそんな事を考えてるとは思わないんだが…。

 

「何言ってんだ? あたしは単純に、船子ちゃん特製うどんを皆に振る舞いたかっただけだぜ?」

「だと思ったよ!!」

 

 船子が意味不明な事を始めた時は、そこに意味なんて求めてはいけない。

 何故なら、こいつはいつも本能とノリで生きているから。

 

 それにしても、このうどんは冗談抜きで絶品だな…。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 その後も、船子の特訓は続いて行った。

 

「おーい! 清十朗のおっちゃーん! 特訓を受けに来てやったぞー!」

「このバカ娘が!! 俺の事は『おっちゃん』じゃなくて『比古お兄さん』と呼べと何度も言ってるだろうが!! 『お兄たま』や『兄貴』でも可!」

「なんで、この時代に生きてるんだっ!?」

 

 そう…色んな特訓を…。

 

「行くぞ船子よ! 人間賛歌は勇気の讃歌!」

「人間の素晴らしさとは勇気の素晴らしさ!!」

「「山吹色の波紋疾走(サンライトイエロー・オーバードライブ)!!」」

「ひゅ~! やっぱツェペリのおっちゃんはすげーぜー!」

「この人もなんで生きて…ってかマジで超絶スゲーなッ!?」

 

 俺のツッコミなんて微塵も追いつかなる程に…。

 

「カカシせんせー! イチャイチャパラダイスの最新刊を持って来てやったぞー」

「本当か船子ッ!? なら、その礼代わりに少し鍛えてやるか」

「やりー!」

「もうツッコまねぇぞ…」

 

 船子は…。

 

「流派東方不敗は!!」

「王者の風よ!」

「全新!」

「系裂!」

「「天破侠乱!!」」

「「見よ! 東方は! 赤く燃えているぅぅっ!!」」

 

 様々な人々と出会い…。

 

「くぁ~! 言峰のおっちゃん特製の激辛麻婆豆腐は効くぜぇ~!」

「ふっ…これを喜んで食べてくれるのは君ぐらいだ船子。ランサーも少しは君を見習ってくれればよいものを」

「無茶言うんじゃねぇっ!!」

「令呪を持って命ずる。ランサーよ。この超大盛り激辛麻婆豆腐を10分で完食せよ」

「この外道神父がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 自らを…。

 

「五条せんせ。遊びに来たぞ~」

「お? 船子ちゃんじゃ~ん! 久し振りだね~」

「ちょ…マジ?」

 

 徹底的に…。

 

「金野船子。矢張りお前は強くて美しい。だから問おう。今からでも遅くは無い。有料限定会員にならないか? 色んな特典が沢山ついててお得だぞ?」

「猗窩座の癖に人を勧誘してんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「ぶべらっ!?」

「真面目にお仕事をしてただけなのにぃぃっ!? いや…それ以前に、なんで鬼が現代でそんな仕事をしてるんだっ!?」

 

 鍛え上げていったのだった…。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 あっという間に時間は過ぎ去り、遂に明日がクラス対抗戦本番。

 俺達がいるのはグラウンド。

 そんな今日も船子は特訓をするらしいが…。

 

「なんで江田島学園長も一緒なんだ?」

 

 この人の事…すげー久し振りに見た気がする。

 

「おう。対抗戦最後の特訓は、最初から『アレ』をするって決めてたんだ。その為に学園長を呼んだのさ。な?」

「うむ」

 

 あれ? あれって…なんだ?

 全く分からない…。

 

「今日の為に特別に用意させた代物よ。存分に使うがよい。ふん!!」

「「「こ…これはっ!?」」」

 

 学園長の手によって地面にドンと置かれたのは、人一人が余裕で入れそうな程に巨大な鉄鍋。

 その中には並々と油が注がれていて、その表面には笹で作られた舟、その上には一本の火のついた蝋燭があった。

 なんで蝋燭が倒れてないんだとか、そーゆー疑問は今は無しで。

 

「男塾名物『油風呂』…やっぱ、最後はこれっきゃねぇよなぁっ!!」

「「「あ…油風呂ッ!?」」」

 

 それって…船子が昔挑戦したって言う…?

 今から、そいつをするってのかッ!?

 

「薪ならもう用意してある。学園長。存分に燃やしてくれ」

「心得たのである。任せておけい!!」

 

 近くに山のように積んである薪の束を掴み、それを鍋の下に組んでいき、そこに火を着けた新聞紙を投げ込む!

 あっという間に火は薪全部に燃え移り、まるで地獄の窯のように鍋の油が煮えたぎってきた。

 

「準備は完了よ。船子よ。いつでも構わんぞ」

「おう!」

 

 学園長からの言葉を聞き、これまた前のように船子は着ていた制服を一発で脱ぎ去り、その下からは前にも見た赤いISスーツがあった。

 

「んじゃ…いくぜ」

「船子…」

「船子さん…」

 

 箒とセシリアが心配そうに見守る。

 無理もない。

 こんなのを見せられたら、誰だって心配になるってもんだ。

 

 そんな俺達を余所に、船子はゆっくりと足から高熱の油の風呂へと自らの身体を浸らせた。

 

「ふっ…相変わらず、いい湯加減だぜ…」

 

 胡坐をかき、全身から滝のような汗を掻きながらも、船子はいつもと同じ笑みを浮かべている。

 凄いよ…やっぱ凄いよ…お前は…。

 

「なぁ…一夏。そういや、お前にはまだあたしが、どうして中学の時に生徒会長になろうと思ったのか…言ったことねぇよな」

「え? あ…あぁ…そう…だな」

 

 けど、あれは単純に学校を楽しく盛り上げようと思ったからじゃないのか…?

 

「…アタシには、江田島学園長とかとは別に、この世でたった一人だけ…本気で目標としている人がいるんだ」

「そ…そうなのか?」

 

 初耳だぞ…これ…。

 

「男塾初代生徒会長『枢斬暗屯子』…。本来ならば女人禁制である男塾において、男以上に気合と根性、男気を見せた事で前代未聞の『男子校の女性生徒会長』という偉業を成した人だ」

「ふふ…実に懐かしい名を言うものよ…」

 

 男子校なのに女の生徒会長…。

 それだけ凄い人物って証拠だよな…。

 

「昔…まだ学園長が塾長だった頃、その人の話を聞かされた時…本気で魂が震えたよ。物凄い猛者ばかりが集う男塾の野郎どもを一番最初に纏めてみせたのが、まさかの女だったんだからな」

「船子…」

 

 並み居る男達を寄せ付けない実力とカリスマ…。

 確かに、今の船子と通じるものがあるかもしれないな。

 

「だから、アタシはその手始めに生徒会長をやってみたいと思った。誰にも真似できない、暗屯子先輩にも負けない最強で最高な生徒会長を目指してな」

 

 憧れの人が生徒会長をやっていたから、自分も生徒会長を目指した…か。

 なんだよ…船子にもちゃんと乙女な部分があるんじゃないか。

 

「いつの日か、楯無パイセンも越えて、このIS学園でも生徒会長に上り詰めてやる。それはアタシの今の一先ずの目標だな」

 

 …前にあのパーティーで言ってたことは冗談でも伊達でも酔狂でもなく…本気だったんだな。

 本気で船子は憧れの人の背中を追って…それを追い抜こうとしている。

 

(…敵わねぇなぁ…)

 

 羨ましいよ…お前が。

 心から、そんな事が言えるお前が羨ましい。

 まだ俺には…目標とか夢とか…よく分かってないからな…。

 

「その為にも今度の試合は負けられねェ。鈴が相手でも関係ない。絶対に勝つ。それだけだ」

 

 今…ハッキリと分かった。

 一組のクラス代表はお前だ…船子。

 お前しかいない。お前しか有り得ない。

 俺じゃ…皆を引っ張れない。

 

「へっ…なんか柄にもないことを話しちまったな。一夏! なんか温くなってきたぞ! 薪追加だ!!」

「あぁ! 熱々にしてやるよ!!」

 

 ったく…人使いが荒い奴だぜ。

 そんなお前に惚れちまった時点で、俺もある意味じゃ同類なのかもな…。

 

 

 

 

 

 

 

 




いつかは劇中で本気でしたかった油風呂。

まさか、ちょっとしんみりとした話に使うとは思いませんでしたが。




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