黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦! 作:とんこつラーメン
試合開始早々に船子から双竜剣を使った強襲を受けたけど、なんとか防ぎきって反撃に転じて間合いを取ることに成功した…んだけど…。
「ほぉ~…今のを防いじまうか~。中々にやるじゃあねぇか」
「お褒め頂きドーモ」
全然全く堪えてないじゃないのよ…!
それどころか、まだまだ余裕があるって感じ。
元々の運動能力の差がここで出ちゃってるのかしらね…。
船子に負けたくない一心でアタシも運動を始めたけど、それでも体格や自力の差はどうしても埋められない。
それはISでも同じことが言える。
どれだけ機体が高性能でも、ISは所詮は機械。
扱う人間次第で良くも悪くもなる。
(接近戦じゃダイモスの方が圧倒的有利…それに加えて、船子の実力もアタシの想像の遥か上を行っている…!)
アタシだって伊達に代表候補生をやってる訳じゃない。
今の一連の攻防で、彼我の戦力差ってのが否が応でも実感できる。
(だからこそ…『アレ』を撃つタイミングだけは絶対に間違えちゃいけない…!)
船子の事だから、一度でも見たらすぐに対応してくるに違いない。
故に、真面に通用するのは一度きりだと思っていた方が良い。
攻勢の流れさえ作ってしまえば、どうにか…。
「ん~…双竜剣じゃあ、ちっとばっかし射程が短すぎるかな~? それじゃあ…」
船子が双竜剣を元に戻し、腰に手を当てた。
あそこにある武装と言えば…!
「今度は『
「出たわね…三竜棍!」
ダイモス専用の三節棍…威力は勿論、その長さ故に中距離からでも攻撃が出来る武器!
一応、ぎりぎりこっちの近接ブレード『双天牙月』と同じぐらいの長さだけど…。
「おらおら…いくぜぇっ!!」
「ちっ!」
まるで己の手足のように三節棍を自由自在に振り回しながら、こっちに向かって突撃してきた!
余りの早さに、まるで一筋の軌跡みたいになってる!
「ほらほらほらっ! まだまだ、こんなもんじゃあねぇぞぉ!」
「当然じゃないの…よっ!!」
両手に握った二振りの刃を駆使して、なんとか縦横無尽の攻撃を防いではいるけど、徐々に追い込まれている…!
一瞬だけ『今か』と思ったけど、ここで焦ったら意味が無い。
船子相手に中途半端な攻撃なんてダメだ。
逆に、相手に手の内を見せる結果になってしまう!
「いつまでも調子に乗るんじゃあ…」
「お?」
「ないわよ!!」
咄嗟に分裂状態の双天牙月を連結させ、大きく振り回してから船子の身体を突き飛ばす!!
こっちにだって、接近戦での広範囲攻撃の手段が無いわけじゃないんだから!
「いいねぇ…! 盛り上がってきたじゃあねぇか!! そっちが『ダブルブレード系』の武器を使うんならよぉ…船子ちゃんも同じことをしたくなっちまうじゃあねぇか!!」
ダイモスの長柄系の武器って言えば…あれか!!
「ダイィィモシャフト!!」
「やっぱり!」
前方宙返りをしながら、ダイモスの足から薙刀状の武器がこっちに向かって飛んでくる!
慌ててソレを弾き返すと、船子はシャフトを空中で見事にキャッチ。
二対のシャフトを一本に連結させてから、高速回転させつつ再度、突撃を敢行してくる!
「ボラボラボラボラボラァ!!」
「アンタはナランチャかっつーの!! この!!」
反射的にこっちも連結状態の双天牙月を回転させて応戦する。
けど、すぐにアタシは頭を冷静に戻す。
(完全に船子のペースに飲まれてる! このままじゃキリが無い!)
さっきからずっと同じパターンで接近戦を挑んでくる船子。
それは恐らく、こっちがダイモスと同じで近い距離での戦いを得意としていると踏んでいるから。
もしこの予想が正しければ、『あれ』を使って意表を突けるかもしれない!
(その為にもまずは!)
「こんのぉっ!!」
「うぉっ!?」
強引にダイモシャフトを弾き上げるようにしてから、その僅かな隙を利用して大きく間合いを取る。
幾らダイモスと言えども、すぐに飛び込めない程の距離…これなら…!
「はぁ…はぁ…はぁ…!」
呼吸を整えながら考えるのよアタシ…!
こういう状況での読み合いじゃ船子には勝てない…!
もし勝機があるとすれば、それは『
それこそがアタシの切り札。
切り時を絶対に間違えちゃいけない!
「ふぅー…ふぅー…!」
よし…時間にして僅か数秒だったけど、それでも呼吸が落ち着いてきた…。
後は船子を……えっ!?
(船子の…ダイモスの手に握られている投げナイフは…まさか!)
ファイブシューター!
そうだった…忘れていた!
ダイモスの数少ない『遠距離の格闘武器』!
ダイモガンとかは牽制とかにしかならないけど、あれは十分過ぎるほどに威力がある!
「ファイィィィィブシュゥゥゥタァァァァッ!!」
どうする…どうする!?
あの全てを双天牙月だけで弾けるとは思えない…!
どうにかするには、高い威力を持つ『砲撃』でないと…!
そう思った瞬間、あたしは無意識の内に『ソレ』の発射命令を甲龍に下していた。
「くっ…龍砲!!」
肩部にある非固定浮遊部位の中央部が光り、そこに『見えない砲身』が形成される。
これなら、飛んでくるファイブシューターを全て破壊できる!
船子の口が怪しく歪むのを見るまで、アタシは本気でそう思っていた。
(しまった!
だが、もう時既に遅し。
アタシが放った不可視の砲撃は、見事に飛んでくるファイブシューターを迎撃してくれた。
あろうことか…自分から『切り札』を相手に見せてしまった…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
船子と鈴の試合は一進一退の攻防戦を見せていた。
多種多様な武器を使って攻撃を仕掛ける船子に対し、鈴はその両手に握るブレードだけで対処してみせていた。
そして、この試合初めての遠距離戦が始まった瞬間、不思議と俺は『試合が動いた』と思ってしまった。
「三節棍に薙刀に飛び苦無…流石は船子…それらの武器を見事に使いこなしている! だが…鈴から放たれた今の一撃は一体なんだ…? 全く見えなかったぞ…」
「そう…あれが噂に聞く『衝撃砲』ですのね…」
「「衝撃砲?」」
今の鈴が撃った見えない攻撃、セシリアは知っているのか?
「空間自体に圧力をかけ、それにより砲身を形成。そこから発生する余剰の衝撃を砲弾として撃ち出す、中国が開発したとされる第三世代兵装ですわ」
「「え…っと…?」」
つまり…どういうことだってばよ?
「簡単に言えば、鈴さんは『見えない砲弾』を撃ったのですわ」
「見えない砲弾…だと…!?」
「そんなのがあるのかよ…!」
「しかも、その特性故に発射角度は全方位。どの位置にいても自由自在に相手へと向けて発射可能なのですわ」
「なんだよ…そのチート武器は…」
つまり、自分の体勢や相手の位置に関係なく有効打が撃てるって事かよ…!
やっぱ…タダじゃ勝たせてはくれないってことか…!
「ですが、その射程距離は精々が十数メートル程度で、威力もそこまでではないと聞いています。無論、操縦者側で出力を上げれば別でしょうけど、そうすれば機体コンセプトに反することになりますし…本末転倒ですわね」
「それって、どういうことだ?」
「中国のISは基本的に『燃費重視』になっているのですわ。エネルギー効率を良くして長期戦に対応したIS。鈴さんの機体も恐らく、それに基づいて開発されているでしょうし…」
「威力をあげれば、その分だけエネルギーも食うってことか…」
鈴としては威力を上げて攻撃したいけど、そうするとエネルギーが持たない。
かといって、威力を下げて効率重視にすると、ダイモスの装甲にダメージを与えることは不可能。
…割と本気で詰みなのでは?
「今の攻防…完全に誘導されたな」
「「「え?」」」
千冬姉が腕組みをしながらボソッと呟いた。
誘導されたって…何が?
「あの娘っ子にとって、あの衝撃砲はまさしく『切り札』。それ故に最も有効な場面で最大の一撃を与える事を狙っていた筈だ。だがしかし、船子にはその目論みはお見通しであった…ということよ」
「何度も何度も手を変え品を変えて接近戦を仕掛けたのは、凰の痺れを切らせるため。何度目かの攻防にて凰が必ず大きく間合いを広げると読んだ船子は、その時を狙ってファイブシューターを放った。アレはマシンガンやミサイルとは違い、持ち主の腕力に威力が依存する。船子の全力の投擲ならば、その威力は推して知るべきだろう。無論、凰もそれは理解している筈。近接ブレードで下手に迎撃しようとすれば、逆に押されてしまう可能性が高い。ならばどうすればいいか」
そ…そっか…! そういうことか!
船子は鈴を『衝撃砲を使わざるを得ない』状況に意図的に追い込んだのか!
「恐らく、船子は試合が開始する前から凰のISに飛び道具系の切り札があることは読んでいただろう。問題は、どうやってそれを露見させるか」
「一度でも見てしまえば、船子の奴は容易に対処法を思い付くであろう。つまり、今までの攻防は水面下では心理戦も繰り広げていた…と言うことになるのだ」
どれだけ強力な武器でも、使いどころを間違ったら意味が無い。
船子は鈴のリズムを乱して、衝撃砲の使いどころを意図的に見誤らせたのか!
「これで鈴は一気に不利になっちまったって事なのか…」
「まさか、衝撃砲と言う『切り札』を切らせることで、逆に自分を優位にするとは…」
「お見事ですわ…船子さん…! 二手三手も先を読むその慧眼…このセシリア・オルコット…感服致しましたわ…」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
完全にミスった!
今のは多少無様でもダメージ覚悟で回避か防御を選択して耐えて、龍砲を温存するべき場面だったのに!
見事なまでにしてやられた!! 悔しいけど…見事過ぎるわよ船子!
「へぇ~…今のが噂に聞く『衝撃砲』ってやつか。本当に何も見えないんだな」
「やっぱ…知ってたのね。龍砲の正体を」
「あったりまえだろ? この間、偶然にもIS学園の前で道に落ちてる小銭を探してた長谷川さんに聞いたからな!」
「あの人、学園前にも出没してんのっ!?」
ホームレスも、そこまで行くともう逆に凄いわね…。
近い内、学園内で捕まってたりして。
「こ・れ・で…お前の手の内は全部だな。にしし…」
想像通り…全部知った上で今までの攻防を繰り広げてたのね…!
ホント…してやられたわ…。
「いいわ…見られた以上、もう切り札として温存しておこうとは思わない。こっちが持ち得る総てで対抗してやるんだから!!」
「…良い顔になったじゃねぇか。でも…いいのか?」
「何がよ?」
「船ピッピのダイモスも…まだ『必殺技』を使ってねぇンだぜ?」
「ンな事、ちゃんと知ってるわよ」
ダイモスの誇る奥義『必殺烈風正拳突き』。
胸部から放たれる『ダブルブリザード』で相手を天高く巻き上げて自由を奪い、落下してきたところを渾身の拳で打ち砕く。
その威力は凄まじく、大半の敵を文字通り一撃で葬ってきた。
(あたしはダイモスの手の内を全て知っている。船子もまた、さっきのでこっちの手の内を全て知った。ある意味、ここからが本番ね…!)
この状況で、どう逆転するか…候補生としての実力が試されるわね…!
さぁ…どうする…?
次回、遂に…?