黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦!   作:とんこつラーメン

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私はお金で動く

 アタシと船子との試合は、徐々に終わりに近づいてきている。

 不思議と、そんな予感がした。

 

「龍砲が露見してしまった以上、もう出し惜しみはしないから! ここからはガンガンいくわよ!! オラオラオラオラァッ!」

「ハハハハハッ! そこなくちゃな!」

 

 龍砲の威力を絞る代わりに連射性能を上げ、中距離から見えない砲弾の弾幕をぶちかます!…んだけど…。

 

「ほっ! はっ! あたぁっ! ほわたぁっ!」

 

 さっきの一撃で完全に見切ってみせたのか、体を捻って回避したり、回し蹴りで迎撃したり、三竜棍で破壊したりと、ものの見事に全く命中しない。

 

「あんた…一体どうやって衝撃砲を見切ったのよ…!? 一応『不可視の砲弾』ってのが売りなんだけどッ!?」

「麩菓子の砲弾? なんだよソレ美味そうじゃあねぇか!」

「『麩菓子』じゃなくて『不可視』! 見えないってことよ! あんたワザとやってるでしょ!!」

「バレたか。テヘペロ♡」

「その格好でされても全く可愛くないんだけどッ!?」

 

 寧ろ、アタシの中のダイモスのイメージが壊れるわよ!

 

「ま…冗談はさておき」

「やっぱ冗談だったんじゃない…」

「んなの、ハイパーセンサーの感度を最大にすりゃ、ほんの僅かではあるけど空間に歪みが生じているのが分かるから、そこから砲弾の大きさや弾速とかを計算すりゃ、割と普通にどうとでもなるぞ?」

「そんな方法で対処するのは船子ぐらいよ…!」

 

 本国じゃ、スモークグレネードとかに気を付けろって注意されてたんだけど…まさか、それを計算でどうにかするなんて…つくづく、船子が生粋の天才肌だって実感させられるわね…。

 天は二物を与えずってよく言うけど、船子の場合は完全に例外ね。

 神様はこいつに二物以上の才能を盛りまくってるわ。

 

「さ~てと…もうそろそろ…」

 

 雰囲気が変わった…!

 本気の船子が来る!

 今までのはあくまでウォーミングアップだったってことね!

 

「マジでいかせて貰うぜぇっ!!」

 

 く…来る!!

 甲龍の機動性じゃ避けるのは難しい!

 龍砲で弾幕を形成しつつ、ここは防御をしなくちゃ!

 双天牙月を分離させて交差させれば…!

 

「オォォォォ…ラァッ!!!」

「くぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

 な…なんて重い蹴りなの…!

 防御には成功したのに…威力を殺し切れずに吹き飛ばされた!

 しかも…こっちが撃った龍砲は全弾回避とか…ふざけんじゃないわよ…!

 

「あたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた! ほわたぁっ!!」

「こ…このままじゃ…しまったっ!?」

 

 飛び蹴りから間髪入れずに放たれる怒涛の連続蹴り。

 ちゃんと防いではいるけど、着実にダメージは蓄積していってる…!

 しかも、最後の一撃で双天牙月の片方が弾かれてしまった!

 

「チャンス! 一気に決めるぜ!!」

「ヤバ…!」

 

 こっちの守りが手薄になったのを見計らって、トドメを刺す気ね!

 ダイモスの胸部装甲が展開して、そこから二基のファンが展開された!

 来る…ダイモス必殺の一撃が!!

 

「ダブルブリザァァァァァァ……っ!? 鈴っ!!」

「え?」

 

 次の瞬間、船子がアタシの手を引いて自分の方に引き寄せたと思ったら…いきなりアリーナ上部のシールドバリアが破壊され、何かがステージへと落下してきた。

 

 

 

 

 

 

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・・・・

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・・

 

 

 

 少しだけ時間は遡り…

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 鈴が切り札である衝撃砲を放ってから、試合の流れが大きく変わった…ような気がした。

 

「なんだ…? 不利なのは鈴の筈なのに、不思議とアイツの動きにキレが出てきたような気が…」

「吹っ切れたから…かも知れませんわ」

「「吹っ切れた?」」

 

 セシリアが俺の疑問に応えるようにポツリと呟いた。

 自棄になったって意味なのか?

 

「えぇ。これまではずっと『切り札である衝撃砲を最高のタイミングで放てるように温存する』というプレッシャーがあった。けど、船子さんの策略によって、その作戦が全て台無しになってしまった。だから…」

「出し惜しみをする必要が無くなった…ということか…!」

 

 そっか…もう鈴には隠す物が無くなったんだもんな。

 使える物は全て使ってでも勝ちを狙ってくるのは必然か…!

 

「だが、それでも船子の動きを捉えきれないか…」

「接近戦重視の機体ならば、その運動性は並の機体の比ではない筈。命中させることは難しいかもしれませんが、鈴さん的にはそれでも構わない」

「懐に潜り込まれる事だけに気を付けていればいいんだしな…」

 

 あのダイモスに接近戦を許す。

 それだけで敗北が決まったようなもんだ。

 

「ほぉ…あの娘っ子…中々にやるではないか。船子のあの猛攻を防ぎきるとは…」

「凰も伊達に候補生ではない…ということでしょう。それでも、船子の優勢は変わらないようですが」

 

 江田島学園長と千冬姉が鈴の事を褒めてるけど、その顔は厳しい。

 ふとモニターを見ると、今度は船子が攻め始めた!

 

「は…速い!!」

「しかも、あの動き…まさか、衝撃砲の弾幕を全て回避しながら突撃していますのッ!?」

「ちょ…マジかよッ!?」

 

 撃たれてるのは見えない砲弾なんだろっ!?

 それをどうやって完全回避なんて出来るんだっ!?

 

「そうか…空間の歪み…そして、あの娘っ子の視線か」

「「「え?」」」

 

 え…江田島学園長…船子が衝撃砲を避けられる理由が分かるのか?

 

「恐らく、船子は衝撃砲が発射される瞬間に発生する僅かな空間の歪みを感知し、そこから砲身の角度や砲弾の大きさなどを計算しておるのだろう。そして、あの娘っ子は無意識の内に衝撃砲を撃つ際に視線を目標に向ける癖がある。船子はそれを見て砲弾が来る場所を把握しておるのだ」

「「「………」」」

 

 え…マジ?

 あんな動きをしながら、そんな細かい計算をして、しかも鈴の視線の動きすらも見ているってのか…?

 一体どんな脳の構造をすれば、一度にそんな複雑な行動を出来るんだ…?

 

「さ…流石は船子…頭脳の方も規格外というワケか…」

「船子さんならば…ビット兵器も易々と使いこなしそうですわね…」

 

 というか、船子ならどんな武器もすぐに使いこなすだろ。

 だって船子だし。

 理由はそれだけで十分。

 

「み…見ろ! 船子の連続蹴りを鈴が防御したぞ!」

「ですが…流石にパワー負けしてますわね…」

 

 セシリアの言う通り、鈴の防御自体は成功したが、蹴りの威力によって大きく吹き飛ばされる。

 それでもダメージは軽減で来てるんだろうけど…。

 

「むっ…?」

「船子め…ここで勝負を決めるつもりか…」

 

 学園長と千冬姉が眉を寄せる。

 その理由は俺にも分かった。

 

「胸部のフィンが出た…! ダブルブリザードを撃つ気か!」

「ダブルブリザード…?」

「なんですの? それは…」

「あの胸部フィンから放たれる強烈な風だ。それで敵の動きを拘束した上で上空高くまで吹き飛ばすんだ。で、落下してきた敵に目掛けて真下から正拳突きを放つ。それがダイモスの必殺技『必殺烈風正拳突き』だ」

 

 これが決まれば確実に船子の勝ちだ!

 烈風正拳突きにはそれだけの威力がある!

 

 だが…世の中はそう甘くは無かった。

 

「お…織斑先生! 江田島学園長! 大変です!」

「「どうしたっ!?」」

「アリーナ上空付近に謎の機影を確認! 徐々にこちらに近づいてきます!」

「「なんだとっ!?」」

 

 いきなりの山田先生の叫びに、場の空気が一気に緊迫する。

 こんな時になんだけど、千冬姉と学園長の息がピッタリなのが凄い。

 

「山田先生よ。モニターに出せるか?」

「やってみます!」

 

 山田先生が素早く機器を操作して別のモニターを映し出す。

 そこに映っていたのは…。

 

「なんだ…これは…?」

「遠くて良く見えにくいですけど…四角い形をしていますわね…」

「サイズも小さいように見えるが…こいつは一体…?」

 

 この姿…どこかで見た事があるような気が…。

 うーん…どこだったかな~…?

 

「もっと拡大は出来ないか?」

「すみません…最大望遠でこれなんです…」

「そうか…」

 

 これじゃあ、相手の正体を探るのは無理か…。

 にしても、一体なんだって言うんだ…?

 

「あっ!? 謎の機影に動きが! そのままアリーナに落ちてきます!!」

「「何ッ!?」」

 

 再び山田先生たちが叫んだ瞬間…。

 

 バリィィィィィィィィィィィィィンッ!!!

 

 アリーナ上部のシールドバリアーがガラスのように砕け散り、そこから何かがステージに落下してきた。

 

「馬鹿な…! アリーナのシールドバリアーが突破されたのか…!? ここに貼られているのは、ISに装備されているのよりも遥かに高い強度を誇っているというのに…」

 

 そ…そんな固いのが破壊されたのかよッ!?

 よく見たら、ステージでは船子が攻撃を中止して、鈴を咄嗟に庇っていた。

 流石だぜ…すぐにそんな判断が出来るなんてな!

 

「一体何が落ちて来たと言うのだ…」

「土煙で良く見えませんわね…」

「急いで排煙装置を作動させます!」

 

 いきなり山田先生が大忙しだな。

 観客席にいる皆は、いきなりの事で呆然としているみたいだな。

 変に混乱されるよりはマシだな…。

 

「土煙が晴れる…」

「姿が見えますわ!」

 

 ば…馬鹿な…あ…あれは…あの姿は…まさか…まさか…!

 なんで『アイツ』がここに…?

 いや、そもそもどうして存在してるんだよッ!?

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 余りにも突然の事で一瞬だけ頭が真っ白になってしまった。

 だって今アタシ…船子に抱き寄せられてるんだもん…。

 ヤバ…不覚にもめっちゃドキドキしてる…。

 

「大丈夫か? 鈴」

「う…うん…」

 

 あ…あれ? 船子ってこんなにもイケメン系だったっけ?

 シリアスモードになった船子は今までにも何回か見た事はあるけど、傍で見るとこんなにも破壊力があるのね…。

 こりゃ、並の女の子たちが一撃で陥落させられるわけだわ。

 

「にしても、いきなりなんだってんだ…?」

「さぁね…」

 

 アタシと船子との大事な試合にいきなり乱入してきた無粋野郎。

 どこのどいつかは知らないけど、絶対に許さないんだから!

 

「あ…煙が晴れるわ…」

「船子ちゃん達の邪魔をした野郎のご尊顔を拝見してやろうじゃあねぇか…!」

「そうね…!」

 

 今だけは船子と完全に同意見。

 土煙が晴れて、そこから出現したのは…。

 

「「あ…あれは!?」」

 

 四角い頭に四角い体…四角い脚に四角い腕…!

 丸い二つの目に、三角の口…。

 まるで全身が『ダンボール』で出来ているような、あの姿は…間違いない…!

 あいつは…あいつは…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は…お金で動く」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「ダンボー!!!???」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、ダンボーVS船子(ダイモス)。

そして、なんと意外過ぎる助っ人(クロスオーバー)が…。





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