黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦! 作:とんこつラーメン
勿論、やって来るのはフランスとドイツから彼女達です。
月曜日の朝。
俺はいつものように船子や箒、セシリアや鈴と一緒に自分達の教室へと向かう。
「んじゃ、また後でね」
「おう」
「うぃ~っす」
一瞬、鈴が船子にウィンクをしたような気が。
セシリアと箒がテラフォーマーみたいな顔になってるから、俺の気のせいじゃないんだろう。
「な…なん…だ…あれ…は…!?」
「ま…まさか…鈴さんも…船子さんのことを…!?」
朝から戦慄するのは良いけど、それは明らかの華の女子高生がしていい顔じゃないからな?
頼むから早く元に戻ってくれ。
「お? 箒もセシリアもいきなりどーした? まさか、これから例の手術をしてから火星にでも旅立つのか?」
「んなわけねーだろ」
でも、もし箒があの手術を受けるとしたら、間違いなくモデルはカマキリだな。
理由? 俺に言わせんなよ殺されるから。
「やっぱりハヅキ社製のが良いなぁ~」
「「ん?」」
ハヅキ社?
教室の中から聞き慣れない単語が聞こえてきたが。
気になるので、未だにテラフォーマーしている箒とセシリアを放置して、俺と船子は教室に入ることに。
「え~?ハヅキ社のって、なんかデザインだけって気がするんだけど」
「そのデザインが良いんじゃない」
「ん~…それはそうかもだけどさ~。やっぱ性能の方も大事じゃない?」
「じゃあ、あんたはどこのがいいのよ?」
「ミューレイとか? あそこのはマジで性能良いらしいし」
「確かに性能は高いけど、その代わりメッチャ値段高いじゃん」
「それは言わないお約束でしょ…」
会社の名前と性能がどうとか言ってるけど…皆は一体なんの話をしてるんだ?
これだけじゃ全く分からん。
「おーっす。おめぇら、さっきから何の話をしてやがんだ?」
「あ…金野さんに織斑君。おはよー」
「そうだ。折角だし、金野さんにも聞いてみれば?」
おぉ…マジか。
これで皆が何の話をしていたのかが分かるぞ。
「金野さんの、あの赤いISスーツってどこの会社のヤツ? 装飾とかもすっごい派手だったけど…やっぱ特注?」
「ん~? アタシのISスーツだぁ?」
成る程…ISスーツの話をしていたのか。
確かに、船子の着ているスーツは明らかに他のとはデザインが違い過ぎるよな。
「船子ちゃんのは『田沢コーポレーション』って所で造って貰ったオーダーメイドだ。因みに、デザインはアタシがした」
「オ…オーダーメイドォっ!?」
「しかも『田沢コーポレーション』って…日本で一番大きな超大手のゼネコン会社じゃない!!」
「デザインは自分でって…それ、物凄く高くついたんじゃない?」
「ん? 別にそーでもねーぞ? アタシのスーツは、IS学園の入学祝で貰った奴だし」
「「「入学祝となっ!?」」」
ちょっと待てよ…田沢コーポレーションって、俺でも知ってるぐらいに有名な会社じゃないのかッ!?
そこからプレゼントして貰ったって…どういうことだ…?
「田沢コーポレーションの社長は、男塾の卒業生の一人で、あの江田島学園長の教え子の一人でもあるんだよ」
「「「「マジでッ!?」」」」
「マジマジ。んで、あたしもガキの頃から遊んで貰ってた縁で今でも仲が良いんだよ」
船子と学園長の新たな交友関係が発覚した…。
まさかとは思うけど、江田島学園長の教え子って、その全員が一人の例外も無く現在進行形で日本のありとあらゆる場所で大成して、この国を影に日向にと支え続けている超凄い人達の集団なのでは…。
「つーか、学園長のから教えを受けた卒業生って、その全員が人生の勝ち組になってるしな」
「「「「そーなのっ!?」」」」
「おう。今の内閣総理大臣の『剣桃太郎』っているだろ?」
「知ってる! 知ってる!」
「一昔前までとは全然違う、超イケメンで超カッコいい総理大臣よね!」
「あの人、学園長の教え子の一人。男塾の卒業生で一号生筆頭で、最終的には男塾の総代…要はリーダーみたいな立場になってた」
…え? 今の総理大臣が…学園長の教え子?
マジで?
「一応言っておくと、江田島学園長も過去に一回だけ内閣総理大臣になった事があるんだぞ」
「「「「あの人、元総理大臣だったのッ!?」」」」
あ…ははは…なんじゃそりゃ…。
俺達…元総理大臣が学園長を務める学園に通ってるのかよ…。
超激レアなんて次元じゃないだろソレ…。
「他にも、ホテル王になった人もいれば、超デカい金融会社の社長になった人もいるし、コンピューター会社の社長になった人もいたな。他にはー…米海軍第七艦隊司令官になったり、民族派系政治結社の会長や防衛庁長官とか…」
す…すげぇ…本当に日本を支えている人達じゃないか…。
つーか、しれっと米軍って言ったかっ!?
国外にも教え子がいるのかよ、あの人はッ!?
「なんか話が逸れちまったけど、兎に角、アタシのスーツはアタシだけに合わせた特注品って事だ」
「小さな頃から妹のように可愛がってた女の子の高校入学祝…か」
「そりゃ、気合も入って当然よね…」
「同じ立場なら、私達でも絶対に同じことをするわよ…」
そうだな。
それだけ船子が色んな人達から好かれてたって証拠だな。
「私達も、IS学園を卒業したら凄いことになるのかな…」
「たった三年って思ってたけど…」
「今から、自分の将来が全く分からなくなってきた…」
俺も…卒業したら何かデカいことをするようになるんだろうか…。
日本を支えられるような大きな男に…。
「あれ? 皆さん集まって何の話をしてるんですか?」
このタイミングで山田先生が入って来るか。
本当なら、ここらで先生にISスーツの事とかを質問するんだろうけど…すんません。
空気的にもう話は終わりっぽいです。
因みに、この後に千冬姉も教室に入ってきた。
廊下でテラフォーマってる箒とセシリアには出席簿アタックをして正気に戻してきたみたいで、二人は痛そうに頭を抱えながら教室に入ってきた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「諸君。おはよう」
「「「「「おはようございます!」」」」」
「ござまーす!」
「うむ。結構」
いや、今明らかに船子だけ挨拶おかしかったからね?
絶対にツッコむべきだったからね?
「本日から本格的な実戦訓練を開始していく。学園に配備してある訓練機ではあるが、それでも実機としてのISを使っての授業になるので今まで以上に気を引き締めていくように」
そっか…俺達のように専用機を持っている人間は兎も角、他の皆は今日が受験の実技試験の時以外で初めてISに触れることになるのか。
そりゃ気を付けていかないといけないよな。
「各々に注文をしたISスーツが届くまでは、学園指定のISスーツを使うように。当然だが、絶対に忘れるような事はするなよ? もし忘れた場合は、スーツの代わりに学園指定の水着で訓練を受けて貰うからな。それすらも忘れた場合は下着だ。自分の下着を大衆の面前で晒したくなければ、ISスーツを忘れないように心掛けろ。いいな?」
いやいやいや。
幾らなんでも下着は無いだろ。
それは流石に言い過ぎじゃ…。
「…………」
あ。ずっと船子の方を見てる。
あれは…船子の水着姿や下着姿を頭の中で妄想してるな。
「ふ…船子の水着…下着…!」
「は…はにゃじが…」
箒とセシリアも同じと見た。
もうパターン過ぎて、頭の中が読めるようになっちまったよ。
「あの…織斑先生? 鼻血が出てますけど…大丈夫ですか?」
「おっと、しまった」
何が『しまった』なのか詳しく聞きたい。
素早くティッシュで鼻を拭くと、それだけで鼻血が止まってしまった。
しれっと凄いことしてるぞ、この人。
「では山田先生。ホームルームを頼む」
「は…はい。分かりました…」
ここで戸惑う山田先生は何も間違ってない。
それが普通の反応だと思う。
「それでは、朝のホームルームを始めます」
ふぅ…ようやくいつもの日常が始まるか。
朝から早くも疲れちまったよ…。
「えっとですね…いきなりなんですが実は…」
ん? なんか急に嫌な予感が…。
「このクラスに転校生がやってきます!」
「「「「「えええええええええっ!?」」」」」
…なんだって? 転校生?
ついこの間、二組に鈴が来たばっかりなのに?
「しかも、二人もです!」
「「「「「二人――――――――――――!?」」」」」
山田先生? 自分が何を言ってるのか自覚有ります?
何がどうなって同じ時期に転入生が二人同時にやって来る?
こーゆーのは普通、クラスを分散させるもんなんじゃないのか?
どう考えても普通じゃないだろ。
けど…なんだろうな…。
船子と一緒にいるせいなのか、もうこの程度の事じゃ全く驚くに値しないのが一番怖い…。
嫌な方向に耐性が付いちまったみたいだ…。
「それじゃあ…入って来てください」
「失礼します」
「………」
教室に入ってきた二人の転入生の内の一人を見た瞬間、俺が目を大きく見開き、同時に教室の喧騒もピタッと収まった。
何故なら…そいつは俺と同じ『男子用の制服』を着ていたから。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
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IS学園 学園長室
いつものように威風堂々と机に座っている江田島は、その上に乗っている二枚の書類を見て微笑を浮かべていた。
「フランスとドイツから同時期にやって来た転入生…。しかも、うち一人は現役の軍人で特殊部隊の隊長であり…織斑千冬の元教え子。そして、もう一人は…」
茶を啜りながら江田島が一枚の書類を手にする。
そこには一人の生徒のプロフィールが記載されていた。
「性別が『男』で、しかも『デュノア』…」
隅から隅までじっくりを書類を見た後、それを机に上に放り出し腕組みをする。
「ふっ…轡木がこの儂をここの学園長に据えたのは英断だったようだな。全く以て暇が無い。つい先日の謎の自立機動兵器の件といい…」
不意に江田島が窓の外を見つめ、空を強く睨み付ける。
「船子よ。今再び、お前の『器』を測る試練が来たのかもしれぬな」
それは、幼き頃から船子を見守ってきた者ゆえの言葉か。
それとも、船子の『過去』を知る故なのか。
「…富樫」
「はっ」
名を呼ばれて突如として学園長室に現れたのは、男塾卒業生にして『男塾の切り込み隊長』とまで呼ばれた男『富樫源次』。
卒業後、江田島の男気に心から惚れ込んだ彼は、それからずっと秘書とボディーガードを兼任していた。
「このフランスから来た者の素性について調査せい。手段は問わぬ」
「了解しました。ドイツの方は良いので?」
「構わぬ。こやつの方は放置しておいても問題はあるまい」
「船子がいるから…ですか?」
「うむ。あ奴ならば必ずや最良の形で片付けるであろうよ」
「そうですね。船子ならばきっと」
嘗ての塾生たちからの絶大な信頼。
故に船子は試される。
IS学園は、今日も元気に賑わっている。
江田島動く。
そして、しれっと富樫登場。
船子は二人の転入生にどんな反応を示すのか?