黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦! 作:とんこつラーメン
でも、来週は少しだけ頑張れるかも?
山田先生の衝撃発現の後に教室に入ってきた二人組。
一人は長い銀髪に左目に眼帯を付けた少女で、ズボンを履いているせいでパッと見は男性用の制服に見えるが、体付きなどから女であることが分かる。
問題はもう一人の方。
長い金髪を結んでいる美男子で、俺と同じ男用の制服を着ていた。
そう…『男用の制服』だ。
これ重要。
俺と同じ制服って事は、必然的に『そう』ってわけであって…。
「では、自己紹介をお願いします」
「はい」
「………」
ちゃんと返事をしたのは金髪の方だけで、銀髪の方はまさかの無視。
これだけで第一印象は余り良くないだろう。
「フランスからやってきた『シャルル・デュノア』と申します。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国から転入してきました。皆さん、どうかよろしくお願いします」
おぉ…凄く丁寧な挨拶だ…。
まさにお手本見たいとはこの事だな。
同じ男として俺も見習わないと。
って、ちょい待ち。
このパターンは…女子達の歓喜の雄叫びという名のハウリングボイスが炸裂するのでは…!?
「フ…フランス…だと…っ!?」
「ふ…船子? いきなりどうした?」
な…なんだ?
あいつが自己紹介をした直後に、急に船子が頭を抱えて苦しそうに唸りだしたぞ…?
お蔭で、千冬姉がめっちゃ動揺して狼狽えてる。珍しい。
「分からねぇ…。『フランス』って聞いた途端、頭の中にいきなり『存在しない筈の記憶』が浮かんできて…」
「存在しない筈の記憶だと…?」
「あぁ…!」
きゅ…急にどうした?
いつもの船子っぽくないぞ?
そのせいか、他の女子達も一切騒がずに呆然と船子の事を見ていた。
申し訳ないけど、船子のお蔭で俺の鼓膜が守られた。
「フランス…パリ…凱旋門…シャンゼリゼ通り…! うっ…頭が…!」
「こ…これは救急車案件か…!? 場合によっては手術も…!」
いつもながら、船子の事になると凄まじく過保護になるな…。
「何故だ…! 頭の中に急に変な光景が過りやがった…!」
「ど…どんな光景だ?」
「晴れ渡る青空の下で、髪をポニーテールに纏めて豪華で真っ黒なドレスを身に纏ったアタシがシャンゼリゼ通りを闊歩している姿だ…!」
なんじゃそりゃ。
本気で意味が分からないけど…一つだけ分かることがある。
その格好、間違いなく船子には滅茶苦茶似合うんじゃないかってこと。
「ポニーテール…」
「黒いドレス…」
「シャンゼリゼ通りを闊歩…」
「「「凄く良い!!」」」
うん。
千冬姉と箒とセシリアが超良い笑顔で鼻血を垂らしながらのサムズアップをかました。
隣にいる銀髪女は凄くびっくりしてるけど、他の皆は全く気にしてない。
だってもう、このクラスにとっては日常茶飯事になりつつあるから。
その証拠に、あの山田先生すらも苦笑いで済ませている。
この人も、船子の産み出す空気に順応してきてるなー…。
「よし…決めたぜ!!」
「何を?」
「IS学園を卒業したら…フランスに留学してやるぜ!!」
「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!???」」」
そんなに驚くような事か?
俺はもうフランス程度じゃ微塵も驚かないぞ?
「因みに、何をしに留学するんだよ?」
「え? スタンド能力を習得しに。シルバー・チャリオッツ欲しい」
「フランスに行っただけで習得出来れば、弓も矢も必要ないんだよっ!」
お前、完全にポルナレフのイメージでフランスを語ってるだろッ!?
ジョジョ三部の格ゲーでも、いっつもポルナレフばっかり使ってたもんな!
「あ…あのー…」
「あはは…余り気にしないでくださいね? いつもの事なんで…」
「はぁ…」
遂には転入生の方が困り果てて、山田先生がフォローをし出す始末。
これでいいのかIS学園。
「って…ん? なぁ…そこのお前」
「え? ぼ…ボク?」
「そ。お前さ…名前、なんつってた?」
「シャ…シャルル・デュn「なぁぁにぃぃぃぃぃぃぃっ!!??」ひぃっ!?」
今度はどうした?
もう女子達よりも船子一人の方がずっと騒がしいわ。
「シャルル…シャルル…だと…!?」
ん? 今度は船子の方が驚いてやがるし。
こいつの名前がどうかしたのか?
「い…一夏! 大変だ!!」
「何が大変なんだ?」
「神聖ブリタニア帝国の第98代皇帝がウチのクラスに転入してきやがった!!」
「あ…言われてみれば確かに」
あの人と名前だけは一緒だわ。名字は違うけど。
「や…やべぇよ…! 『不平等においてこそ競争と進化が生まれる』とか言いながら、その裏では『嘘の無い世界』を生み出そうとしてやがるに違いないぜ!!」
「んなわけあるか!!」
どうして名前が同じなだけでそうなるんだよッ!?
お前は今すぐに世界中のシャルルさんに謝って来い!!
「み…皆! こいつを下手に怒らせちゃいけねぇ! まずは忠誠の証として『アレ』をするぞ!」
「あれ?」
「そうだ…あれだ!」
いや…マジでなんだよ『アレ』って。
「オール・ハイル・ブリタァァァァァァァァニアッ!!!!!」(CV若本規夫)
声真似上手いなっ!?
本気で本人かと錯覚しそうだったぞっ!?
「お前ら! こいつの前で絶対に嘘とかつくなよ! 皇帝陛下は嘘が大嫌いだからな! もし嘘を言っちまったら、その時はギアスで記憶を改竄されちまうぞ!」
「そんなことしないよッ!? っていうか出来ないからねッ!?」
遂には本人がツッコんだ。
気持ちは分かるけど、初日から船子にツッコむとは…中々やるな。
「まだ何もしてないのに、何故かドッと疲れた…なんで…?」
船子に関わってしまったからだろ?
これが一年一組の日常だから、一刻も早く慣れる事をお勧めするぞ。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
なんだろう…シャルルって奴の自己紹介だけで凄く時間が掛かったような気がする…主に船子のせいで。
「で…では、引き続いて自己紹介をお願いします」
「…………」
またもや無視かよ。
そんなんじゃ友達とかできねーぞ?
しっかし…すげーピリピリとした雰囲気を持つ奴だな。
まるで現役の軍人みたいだ。
現役の軍人の知り合いなんていないから知らないけど。
「…挨拶をしろ」
「了解です。教官」
教官?
千冬姉をそう呼ぶって事は、もしかしてこいつ…?
「学園内ではそう呼ぶな。今の私は教師であり、お前の担任でもある。ドイツにいた時とは違う」
「はっ」
…やっぱりそうか。
はぁ…また厄介そうな奴が来たな…。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
終わりかい。
いや…俺もあんまり人の事は言えないけどさ。
「はーい。しっつもーん」
「なんだ船子? お前からの質問ならば何でも受け付けるぞ」
いきなりコロっと態度が変わり過ぎだから。
「そいつは、一体どこから来たんですかー」
あー…そっか。
船子は諸々の事情を知らないから、こいつと千冬姉の関係も分からないのか。
他の皆も『よく聞いてくれた』的な顔をしているから、きっと質問したかったに違いない。
流石はクラス代表だな。
ちゃんと皆の意見を代弁してくれた。
「こいつはドイツの出身だ」
「ふーん…ドイツねぇ…」
ん? 船子が珍しく怪しむようにジト目でボーデヴィッヒを見ている。
アイツがどうかしたのか?
「お前…本当にドイツ出身かよ?」
「どういう意味だ」
「そのまんまの意味だよ。なんつーか…アタシにはお前がドイツの人間には見えねぇンだよなぁ~…」
「何?」
ドイツ人には見えない? どういう事だ?
別にドイツ人の特徴とかを知ってる訳じゃないけど、割とそれっぽくは見えると思うぞ?
「お前が本当にドイツ人だって言うんならよ…」
「なんだ…!」
「なんで忍者っぽくねぇんだよ!!」
どうしてそこで忍者の話が出てくるッ!?
お前はドイツ人全員がシュバルツみたいな奴ばかりだと思ってんのかッ!?
「ニ…ニンジャ…? 貴様は一体何を言っているッ!?」
「ドイツ人なら、ドイツカラーの服に黒と赤と黄色の覆面を付けてるもんだろーが!!」
「そんなわけあるか!!」
全く以てその通り。
今回は全面的に、このボーデヴィッヒって奴が正しい。
「もしかしてお前…ゲルマン流忍術が使えねぇな?」
「ゲルマン流忍術だと? 何をほざいている…?」
「やーっぱ知らねぇのか。それでよくドイツ人だって言えるよな。あー情けねぇ~」
「き…貴様ぁ…!」
あーあ。こっちの方は普通に怒らせやがった。
俺は知らねーぞー。
「やっぱよー…ドイツ人なら最低でも『シュツルム・ウント・ドランク』ぐらいは出来て欲しいよなー」
出来てたまるか!!
お前の中のドイツ人像はマジでどうなってるんだよッ!?
「はい。つーわけだから、来週までにこの『錆びた刀』で丸太を切れるようになってください」
「ふざけるな!! どうして私がそんな事をしなければならんのだ!!」
確かにな。
「ふざけてんのはそっちだろーが!! ドイツ人なら、それぐらいは出来やがれ!!」
理不尽極まりない言い分だな。
「因みに、アタシは普通に出来る。フン!!」
何処からか取り出した丸太を空中に放り投げてから、落ちてくるまでの僅かな間に錆びた刀を鞘から取り出して、それを凄まじい勢いで抜いてから丸太を斬り裂いた。
ふ…船子の抜刀術…相変わらずマジで凄いな…!
「ば…バカな…!? こんなボロボロの剣で丸太が切れるだと…!?」
「ついでに言うと、千冬の姉御も当然のように出来るぞ。な?」
「無論だ。はぁっ!!」
船子から錆びた刀を渡された千冬姉は、またもや何処からか取り出された丸太を一刀両断した。
もう、この二人に関しては何をしても不思議に感じなくなってきてるな…。
悪い意味で感覚が麻痺してきた。
「さ…流石は教官…! そうなると、この女も教官と同じ領域に達しているというのか…!?」
あー…うん。
ある意味じゃそれはあってるわ。
普段の言動からじゃ想像も出来ないかもだけど、船子の武術はマジで千冬姉や束さん達と同レベルの領域に達してるからな。
「あと、箒も出来るぞ」
「え? マジ?」
思わず口に出てしまった。
箒よ…お前もソッチ側なのか…。
「これぐらいなら流石にな。とうっ!!」
三本目の丸太が何処からともなく出現し、それを箒が千冬姉から手渡された錆びた刀で叩き斬った。
俺の周り…超人染みた女しかいない件。
「こ…これはどういう事だ…!? 織斑教官と同じ事が出来る人間が二人も…!?」
「と言う訳で、お前もドイツ人を名乗りたいなら、最低でもこれぐらいは出来ろよな」
「い…いいだろう! ドイツ軍人の力を貴様にも見せつけてやろう!! 今に見ていろ!!」
完全に焚きつけやがった…。
雰囲気はかなり緩和されたけど。
もしかして、最初からそれが狙いだったのか?
「あのー…この丸太…どうするんですか…?」
「「「あ」」」
こいつら…完全に後の事を考えてなかったな…。
山田先生に指摘されて初めて気が付きやがった。
「あ…あー…これで朝のHRを終了する! 今日は二組と合同でISを使った実習を行う! HR終了後、お前達は速やかにISスーツに着替えてから第二グラウンドに集合するように! では日直!」
「は…はい! 起立!」
誤魔化しやがった!!
威厳と勢いで自分達の不始末を誤魔化しやがった!!
頼むから…しっかりしてくれよ千冬姉…後生だから…。
あー…なんかスッキリした。
久し振りに好き放題に書けた気がします。