黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦!   作:とんこつラーメン

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ハイ論破!

 ISを用いた初めての本格的な実習。

 正直、最初は『専用機持ちが班のリーダーをする』と聞かされた時はどうなるかと思った。

 俺自身、まだまだISに関しては未熟過ぎて、嘴の黄色いひよこ状態だったけど、それでもなんとか辛うじて教えてやれている。

 もし船子に勉強を教えて貰っていなかったら本気で危なかったな…。

 

 その肝心にして最も心配な船子が、まさか滅茶苦茶真面目にリーダーやって教えている事に本気で驚かされた。

 いや…アイツが誰かに何かを教えるのが上手なのか、他の誰でも無い俺自身が一番よく知ってるじゃあないか。

 けど、まさか俺以外にもあんな事を見事に出来るとは思わなかった。

 実際、今だってほら…。

 

「よーし! 次は本音のターンだな! 今度はちゃんとしゃがんで降りてくれたら普通に乗れるぞ! つっても、何事にも『万が一』って事があるからな! ほれ、アタシが手伝ってやるよ!」

「うん! ありがとね~ふねふね~」

 

 手を取ってやったりして乗り降りの補助を見事にやっている。

 船子って割とマジで教師とかに向いてるのかな…。

 もしアイツが先生とかやったら、毎日がスゲー楽しそうだけど。

 

「フネコ…オヒメサマダッコ…!」

 

 さっきから妙に静かだと思ったら、千冬姉が物凄い形相で船子達の班の事を凝視してる――――っ!?

 顔が完全に推理してる時のうさみちゃんになってるんですけどぉぉぉっ!?

 

 因みに、セシリアと鈴、シャルルの班は特に問題も無く進行していた。

 途中で船子の班の様子に気が付いたセシリアと鈴が、千冬姉と同じように推理してる時のうさみちゃんの顔になってたけど。

 

 んで、ここまでは良かった…ここまでは。

 6班の中で一つだけ、全く進行していない班がありまして。

 それがあの…。

 

「…………」

 

 あのラウラ・ボーデヴィッヒの班。

 転入早々に船子の餌食にされて哀れだったけど、それももう昔の話。

 今はもうすっかり素の顔を取り戻し、見事な仏頂面で腕組みをしながら渋い顔をして棒立ちしている。

 ぶっちゃけ言うと、さっきから何にもやってない。

 しかも、千冬姉は船子の方ばかり見て全く気が付いてないし。

 山田先生に至っては、気が付いてはいるけどラウラのオーラに気圧されて完全にビビってるし。

 

「あ…あの…ボーデヴィッヒさん…」

「なんだ」

「ISの実習…しなくてもいいの…?」

「知らん。貴様等で勝手にやれ」

「えぇ…」

 

 さっきからあの調子。

 一緒の班の子達も困惑しっぱなしだし。

 流石にあれじゃ可哀想すぎるな。

 でも、今朝の反応から察するに、俺から注意したんじゃ逆効果になりそうだよな…。

 ここはやっぱり、千冬姉に頼むのが一番確実か?

 

「む? あの班はさっきから何をやっている?」

 

 気付いたー!

 俺が何か言う前に奇跡的に自分から気が付いてくれたー!

 よし、これならなんとか…。

 

「姉御…ちょい待ち」

「船子?」

 

 ん? ラウラの班に行こうとした千冬姉を船子が静止した?

 あの顔は珍しいマジモードだ。

 

「多分だけど、姉御が注意しても大した効果は無いと思うぜ?」

「そうなのか?」

「あぁ。仮にここで姉御が『ちゃんとやれ』って言っても、アイツはそれを『命令』と捉えるだけだ。それじゃ根本的な解決にはならねぇ」

「確かに…」

 

 船子の言う事も一理あるな…。

 『命令』で従わせても、そんなのは一時的な解決にしかならない。

 今はそれで良くても、長い目で見た場合、結果としてアイツの為にはならないってことか。

 流石はクラス委員。

 伊達に中学の時に生徒会長をやってただけはあるぜ。

 

「アイツは自主的に行動するように促さねぇと意味が無い。じゃないと、これからも同じ事に繰り返しになっちまうよ」

「そうだな。だが、どうすればいい?」

「へっ…心配しなさんなって。タイタニック号にでも乗った気持ちで、この船子ちゃんにドーンと任せといてくれ!」

 

 それダメなヤツー!!

 思いっ切り海の藻屑となって消えるヤツー!!

 

「分かった。ここはクラス代表である船子に任せよう」

 

 任せるなー!!

 その船は間違いなく沈むぞー!!

 

 あぁぁ…船子がラウラのいる班に近づいていく…。

 

「オイオイオイオイオイオイオイオイ! ラウラちゃんよぉ~! オメーさんはさっきから一体な~にをやってやがりますですかコノヤロー!」

「貴様はさっきの…何の用だ」

「『何のヨーダ』じゃねぇ! アタシはジェダイの騎士じゃねぇッつーの!」

 

 開始五秒で話が逸れてるんですが。

 

「おめぇよぉ…今が何の時間かわーってんのか? あぁ~?」

「授業の時間だろう。それがどうかしたのか」

 

 こっちもこっちで全く怯まないな。

 それはそれとして、どうして船子は顎を出した城之内みたいな顔になる?

 

「だったらちゃんとやるべき事をやれってんだよコノヤロー!」

 

 船子にだけは言われたくはないだろうけど…こいつはそれを知らないからノーカウント…か?

 

「知らん。私は、こんな下らんことをする為に日本に来たわけではない。そんなに言うなら、貴様がやればいいだろう」

 

 うっわ…言いやがったよコイツ…。

 それ、千冬姉の前で言うか普通…。

 

「はぁ…おめぇさんよぉ…なーんにもわーってねぇんだな。姉御から特殊部隊の隊長だって聞いてたけどよぉ…意外と大したことねぇンだな」

「なに…?」

 

 ふ…船子…ド直球な挑発かましやがった…!

 

「貴様…もう一度言ってみろ…!」

「何度でも言ってやるよ。オメェは今の状況も碌に把握出来てないヘッポコ軍人だって言ってんだよ」

「言ったな…! 容赦せんぞ!!」

 

 ちょ…こいつ専用機を展開しようとしてないかッ!?

 これは流石にヤバすぎるんじゃッ!?

 

「ちょっと挑発されただけですぐキレて暴力に訴えようとする…論外過ぎてヘソで茶が湧いちまうぜ。ポッポー! ってか?」

 

 船子の言いたい事は分かるし共感もするけど、そこまでにしておいた方いいんじゃないか?

 

「そもそもよぉ…今の自分の立場をちゃんと理解してんのか? あぁ?」

「立場だと? 当たり前だ。私はドイツの代表候補生であり、ドイツ軍特殊部隊『シュバルツェア・ハーゼ隊』の隊長だ」

「ちっげーだろーが!! マジのマジで大馬鹿で間抜け野郎かテメェ様よぉ!!」

 

 少なくとも『野郎』じゃないな。

 いや…俺も俺で何にツッコんでるんだ?

 

「今のテメェは『IS学園一年一組』の生徒だろーが! そんでもって、一組の担任は織斑千冬! オメェの尊敬する織斑教官殿様だ! この意味が分かるかッ!?」

「さっきから何が言いたい! ハッキリと言ったらどうだ!」

「じゃあ言ってやんよ! オメーがここでちゃんとしねーと、担任である千冬の姉御の教師としての能力が疑問視されちまうっつってんだよ!」

「教官の能力が疑われるだとっ!? それはどういう事だっ!?」

 

 あ…なんか段々と船子の作戦が分かってきたかも。

 もし俺の予想通りだったら、船子は相当な策士って事になる。

 

「今のテメーは一組の生徒で、姉御は一組の担任。自分のクラスの生徒が授業中に自分勝手な行動をしてたら、そりゃ能力が疑われるのは当然じゃあねぇーか」

 

 そりゃ…な。

 少なくとも、詳しい事情を知らない第三者からしたら、お世辞にも良い印象は持たないわな。

 

「もしこの事が学園側に知れたら、ほぼ確実に姉御は学園長に呼び出されちまって、何らかの処分を受けることになるだろーな」

 

 あの江田島学園長の場合、処分で済めば寧ろ御の字なんじゃ?

 

「減給とかも十分に有り得るし、下手したら教育委員会とかにも知られて最悪…クビになっちまうかもなぁ…」

「きょ…教官がクビ…私のせいで…クビ…? い…いや! 別に構わん! 私の本来の目的の為ならば、むしろ好都合…」

「あぁ? どこがだよ? 大方、千冬の姉御をドイツに連れ戻す為にー…とか考えてたんだろーがよ…意味ねぇぞ?」

「どういう意味だ…!」

「姉御がもしクビになったら、当然のように学園から出て行く。でも、お前はまだ学園の生徒だ。つまり、その時点で普通に離れ離れになる」

「それがどうした。その時は私も学園を辞めればいいだけだ」

「お前は本当に馬鹿ですかコノヤロー。IS学園をクビになって、その理由が生徒の指導不足な人間をドイツ軍が再雇用なんてするわけがねーし、ドイツ軍の方も自分勝手な理由で学園を辞めるような奴を欲するかよ。普通に呆れられるわ」

「そんなことはない! 事実、織斑教官はこの私の事を…!」

「そのオメーが原因でクビになってるんだから、オメーが何を言っても説得力なんて皆無だっつーの」

 

 御尤も。

 つーか、完全に狂言だって思われるのがオチだよな。

 

「要するに、ここでオメーが好き勝手すればするほど、姉御の評価は下がっていく一方なんだよ。オメーは自分の尊敬する教官を自分自身の手で追い詰めてーのか? 割とマジで何を考えてんだ? こんなの、普通に考えれば一瞬で分かるもんだろーがよ。今時ちょっと勘のいい小学生でも、これぐらいの事は分かるぜ? うちの近所に住んでる小学一年生の、赤い蝶ネクタイと眼鏡を掛けた無駄に推理力のあるガキンチョだけどよ」

 

 それって、もしかして『あの人』ですかー!?

 薬で子供になってしまった高校生名探偵ですかーっ!?

 

「わ…私の行動が…教官を貶めていく…というのか…!」

「おう。勿論、そうなれば姉御の方もオメーの事を良くは思わなくなるだろーな。クラスの和を乱した挙句、自分に迷惑しかかけない奴の事を誰が好きになるもんかよ。今のテメーの行動は、姉御にめっちゃ迷惑を掛けているばかりか、自分自身の首すらも締め付けてんだよ。いい加減に分かりやがれ!!」

「ち…違う…! 私は…そんなつもりじゃ…!」

 

 船子に完全論破されて、ラウラは顔面蒼白になって狼狽え始める。

 この勝負は船子の完全勝利だな。

 

「き…貴様ら!」

「「「「は…はい!」」」」

「とっとと終わらせるぞ! 私の指示に従え! いいな!」

「「「「わ…分かりましたー!」」」」

「よし! まずはお前からだ!」

 

 おぉー…!

 見事に生まれ変わりやがった…。

 

「あれ? もうおしまいかよ? もっと言いたいことあったのにな…。『素人もまともに指導出来ない奴が隊長なんて知れたら、部隊全体がバカにされる』とか『そうなれば、部下たちからも見放される上に、最悪の場合は全員が路頭に迷うかもしれない』とか…」

 

 その辺で勘弁してやってくれ…。

 これ以上は流石にオーバーキルすぎる…。

 

「船子」

「お。姉御」

「よく言ってくれた。かなり激しい言葉ではあったが、アイツにはあれぐらいが丁度いいのかもしれん。実際、ボーデヴィッヒは自主的に動くようになってくれたしな。これで私も江田島学園長に説教を受けたり、クビになったりせずに済むわけだ」

 

 あ…気にはしてたのね。

 それとも、千冬姉なりの冗談なのかな?

 

「んじゃ、アタシは自分の班の方に戻るぜ」

「あぁ。しっかりな」

「あいよー」

 

 こうして、船子は自分の班の方へと悠々と戻っていった。

 やっぱ…言う時は言う奴なんだよな…あいつ。

 基本的に根っこの部分が真面目なのが全く隠しきれてないよな。

 この場にいる、ラウラの班の奴ら以外の全員が船子に注目して、セシリアや鈴、箒や布仏さんを初めとした一部の面々に至っては、船子の方を見て顔を赤くしながらうっとりとしてるし…。

 船子の奴…この実習の間に一気に撃墜数を増やしやがったな。

 本人は完全無自覚だろうけど。いつもの通り。

 

 

 

 

 

   

 

 

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