黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦!   作:とんこつラーメン

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この作品世界におけるゴルシ系主人公『金野船子』は、本当にごく普通の人間の美少女です…見た目だけは。
中身は皆さんももう既にご存じの通り、完全完璧なゴルシ様です。
ウマ耳が無い代わりにヒト耳があり、例の装具を外した状態、所謂『髪下ろしゴルシ』状態になっています。
なので、容姿だけで言えばマジで美しさに全振り状態です。
ハジケリストな言動のせいで全てを台無しにしていますけど。









数年振りに会った幼馴染が激変していた件

 お世辞にも他人には言い出せないような諸々の理由により、IS学園へと入学する羽目になった私『篠ノ之箒』が自分のクラスである一年一組の教室で見たのは二つの衝撃だった。

 まず一つは、私の唯一の異性の知り合いであり幼馴染でもある『織斑一夏』が同じクラスだったこと。

 ニュースでISを動かしてしまった事は私も知ってはいたが、まさか同じクラスになるとは想像もしていなかった。

 表情には出していないつもりだが、私だって自分の意志が介入しない所で半ば強制的にこんな場所に放り込まれたことで、憤りと共に緊張感を感じていた。

 それもこれも、元はと言えばウチのあの『姉』が原因なのだが、今は一先ずは置いておこう。

 

 もう一つの衝撃は、私のもう一人の幼馴染である『金野船子』もIS学園に入学していて、一夏と同様にクラスメイトになっていたこと。

 私の席は窓際の一番前にあるのだが、船子はその列の一番後ろの席に座っていた。

 最初見た時、その美しさに本気で見惚れてしまった。

 幼少期から船子は同性すらも羨むほどの可愛らしさを誇っていたが、成長するとこれ程までの美女へと変貌してしまうのか。

 あれこそまさに万人が認める美少女と言う奴なのではないのか?

 世の男共は決して放ってはおかないだろうな…。

 実際、他の女子生徒達も船子の美しさを見て口々に噂をしていた。

 

(ふふふ…そうだろう、そうだろう。私の幼馴染は美しいだろう)

 

 自分の事じゃないのに、何故か嬉しくて仕方が無かった。

 自慢の幼馴染が褒められたのだから当然かもしれないが。

 こうして久方ぶりに船子の姿を見て、初めて昔の一夏の気持ちが理解出来たような気がした。

 

 嘗て、私は一夏に対して密かな恋心を抱いていた。

 その理由は『私が苛められていたところを助けてくれたから』という、我ながらなんとも言えない事が切っ掛けなのだが。

 

 けど、当時の私は幼心ながら知っていた。

 一夏の気持ちが船子に向いていた事を。

 あれだけ綺麗で可愛らしい少女が目の前にいたら、私のような剣道しか能のない女なんて眼中にすら入らないのは当然だ。

 もし私が男だったら、船子のような彼女が欲しいと思ってしまうだろう。

 

 ……女同士の恋愛って…ありなのかな…。

 

 ゴ…ゴホン! 変な事を言ってしまった…。

 と…兎に角、そんな事もあってか私は誰にも何も告げないまま身を引き、一夏と船子の間を応援する事に決めた。

 あの二人ならばきっとお似合いのカップルになるだろうから。

 本格的に応援する前に私が諸事情により転校してしまったのだが。

 きっと、高校生になった船子は昔以上に清楚な少女へと成長しているのだろう。

 

 ……そう思っていた。ほんの数秒前までは。

 

 山田真耶という副担任の先生が入って来て、軽く挨拶をしてからの各々の自己紹介が始まった。

 私の場合は『し』だから、中盤ぐらいか。

 適当に名前と趣味とか言っていれば問題無いか。

 それよりも、船子がどんな自己紹介をするのかが凄く気になる。

 因みに、一夏が私から見ても物凄く無難な自己紹介で終わった。

 

 そして、遂に船子の番になったのだが……私は自分の目を本気で疑った。

 

 あろうことか、座ったままの姿勢で飛び上がって机の上に着地したかと思ったら、いきなり意味不明な言葉を凄まじい速度で言いまくったからだ。

 正直、アイツが一体何を言っていたのかさっぱり分からない。

 その見た目の美しさからは微塵も想像出来ないような荒々しい言動に、私は思わず口をポカーンと空けたまま呆けてしまった。

 そう言えば…船子は昔からなぜか姉さんと仲が良かったな…。

 もしや、その影響でこんな風になってしまったのか…!?

 

 それから担任としてあの千冬さんがスーツ姿で現れ、またもや私は驚くことになった。

 一夏の実姉であるあの人がISの業界でも世界的な有名人となっている事はよく承知していたが、まさかIS学園で教職についているなんて誰が想像するだろうか。

 どうやら驚いたのは私だけではなく一夏も同じようで、私と似たようなリアクションをしていた…が、それらも全て船子と千冬さんとの会話で遥か彼方へと吹き飛んでしまった。

 走って海を渡るとか、泳いで南極まで行くとか冗談…だよな?

 しかも、自力でロケットを作って月まで行ったとか、普通に考えて絶対有り得ない…有り得ない筈なのに、どうしてか『今の船子ならできるかも』と思ってしまう自分がいた。

 この僅かな時間で私も船子の出す空気に侵食されてしまったのか…?

 

 昔の可愛らしい美幼女だったお前はどこに行ってしまったんだ…?

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 IS学園は基本5教科以外にもISの授業もしなくてはいけないので、入学式初日から授業が開始される…らしい。

 そんなわけで1時間目の授業である『IS基礎理論』の授業が始まったのだが、私はこれまでにISの事を勉強してきたことがあんまりない。

 一時期は『少しでも姉さんの事を理解する為にも、ISの事を勉強してみるか』と思ってやってみた事はあるが、殆どが理解出来ずに終わった。

 なので、知識だけで言えば私は殆ど初心者と大差はない。

 これから皆と一緒に勉強していかなければいけない立場だ。

 故に、最初の授業だからと言って決して気は抜かない。

 自分なりに頑張ってみせる!

 

 因みに、一夏の奴は教科書を見ながら頭を抱えていた。

 ある意味、私以上にヤバいだろうから無理はないが…。

 

 そして、一番の問題児であろう船子の様子はどんな感じだ?

 僅かな隙を見てチラっと後ろを見てみると…。

 

「グゴー…グゴー…」

 

 …腕組みをしながら鼻提灯を膨らませて爆睡してる…。

 最初からそれでいいのか船子…。

 その後ろには千冬さんがピキピキと血管を浮かび上がらせながら体を震わせている。

 久し振りに会った私でも分かる…あれは本気で怒っている顔だ!

 船子ー! 早く起きろー!!

 

「この……いい加減に起きんか!! このバカ者が!!!」

「グゴ…」

 

 千冬さんが怒りを込めて振り下ろした出席簿を寝たままの状態で避けた…だと…っ!?

 そんな事があり得るのかッ!?

 攻撃をした千冬さんも本気で驚いているぞっ!

 

「あのー…織斑先生?」

「私の事は気にせずに授業を続けてくれ。まずは、このバカを起こさなくては」

「は…はぁ……」

 

 教壇に立って授業をしてくれている山田先生が完全に委縮してしまっている。

 なんだか普通に可哀想になってきたぞ…。

 

「このっ…!」

「グゴ…」

「どうして…!」

「むにゃ…」

「当たらんのだっ!?」

「しゅぴ~…」

 

 ま…まさかの全弾回避…だと…!?

 寝ながら、あの攻撃を全て回避とか信じられん!

 船子は本当に人間なのかッ!?

 周りの女子達も絶賛爆睡中の船子にどんな反応をしていいのか困惑している。

 大丈夫だ。私も山田先生も分からないから。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…! こいつめ…少し見ない間にまた一段と強くなっている…! 全く…冗談でも笑えんぞ…!」

 

 な…なんだとっ!?

 また一段と…ということは、前々からこれぐらいの実力があったのかっ!?

 

(…もしや、私が見ていた船子は本当の姿ではなかったのか…?)

 

 大人しかった船子と、今の好き放題している船子。

 一体どっちが本当にアイツなのか、もう私には分からない…。

 姉さんならば知っているのだろうか…?

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 一時間目の授業が終わり、私は頭の上から知恵熱で煙を出している一夏の元まで行こうとしたら……。

 

「おっす一夏! 大丈夫か? 頭の上から煙が出てるぞ? もしかして、あれか? 遂にお前も火属性に目覚めたのか!? よし一夏! お前に決めた!! 火炎放射だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「んなもん出てたまるか!」

 

 一番後ろの席にいた筈の船子がいつの間にか先に来ていた。

 い…いつ移動した…? 全く見えなかったぞ…!?

 

「つーか、授業中お前ずっと寝てたじゃねぇか。そっちの方こそ大丈夫なのかよ?」

「ヘーキヘーキ! この天才美少女船子ちゃんに不可能はぬわぁいっ!!」

「お前…頭いいからなー…」

「あったり前田さん家の犬の尻尾は100メートルってな! 入学式までめっちゃ暇だったから、教科書と参考書の内容を一字一句漏らさず全て頭に叩き込みながらエベレストをブリッジの態勢で登りつつスイッチでモンハンしてたお蔭で全く問題ナッシングだぜいっ!!」

「入学前にお前はマジで何やってんだよッ!? つーか、どうやって現地まで行ったッ!?」

「普通にワープしただけだけど?」

「そんな『当たり前だろ』的な顔で言われても困るんだよ…。こちとらお前みたいな超サイヤ人もどきじゃなくて普通の人間だから、生身でワープとか絶対に不可能なんだわ…」

「マジでッ!? お前…なっさけねぇなぁ~! 高校生になったら瞬間移動の一つぐらいマスターすんのが常識だろうがよぉっ! じゃねぇと、時代に乗り遅れちまうぞっ!?」

「別に乗り遅れてもいいよ…」

 

 …完全にタイミングを失ってしまった。

 船子のこのマシンガンのようなトークの一体どこに割り込めばいいのだろうか…。

 

「おっ!? そこにいる、どこかで見た事があるようなポニーテールは…もしかして箒かっ!?」

 

 み…見つかった…しかも船子に。

 いや、これで良かった…のか?

 

「あ…あぁ…久し振りだな。二人とも。元気か…って、聞くまでも無いか」

「当然だろうがよ! 船子ちゃんはいつでもどこでも一年365日ずっとトランザムでエグザムでハデスでハイパーモードでPXシステム発動でデストロイモードでFXバーストで阿頼耶識リミッター解除状態だぞっ!」

「幾らなんでも盛り過ぎだッつーの!! どんだけ自分を強化する気だ!!」

 

 船子が何を言っているのかはよく分からんが…元気な事だけは確かみたいだな…。

 本当に、あのころの面影が見事に微塵も残っていない…。

 見た目だけで言えば、私の想像を遥かに超越する美人になっているのに…。

 

「船子の言ってる事は気にしなくてもいいぞー。それよりも、久し振りだなー箒」

「ひ…久し振りだな」

 

 少しだけ一夏の表情が明るくなった。

 船子のあのテンションを傍で味わったら無理もないが…。

 

「そういや箒! お前…剣道で全国取ったらしいじゃねぇか!」

「何で知っているッ!?」

「だって、実際に試合を見に行ったし」

「だったら『らしい』とか言うなっ! 紛らわしいだろうが!」

 

 というか、見られていたのか…?

 幾らなんでも神出鬼没過ぎるだろ…。

 

「いやー…凄かったよな! 立ち塞がる相手を全員根こそぎ面と言う名の真っ向唐竹割りで一人残さず真っ二つに…」

「「竹刀でそんなこと出来るか!?」」

 

 一体いつから剣道の試合はそんなに物騒になったッ!?

 どれだけ強く打っても相手が少し怪我するぐらいだ!!

 いや…ちょっと待てよ?

 

「「それもう普通に事件だろうがっ!!」」

 

 剣道の大会どころじゃないぞ!! 

 そんな事が起きたら即座に大会自体が中止になるわ!!

 

「つーか、ンな事が出来るのは千冬姉かお前か束さんぐらいだッつーの」

「全くだ…え? 船子は出来るのかッ!?」

「出来るけど?」

「嘘だろッ!?」

 

 い…いや、百歩譲って千冬さんや姉さんならば出来るかもしれないが、船子も同じ領域に達しているのか…?

 

「いつの日か、爪楊枝で富士山を真っ二つにするのがアタシの夢なんだ…」

「出来てたまるか!!」

「仮に出来ても絶対に実行させんわ!!」

 

 日本の象徴たる山を何だと思っているんだっ!?

 

「うぅ…船子ぉ…昔はあんなにも大人しかったのに…どうして、そんな風になってしまったんだぁ…?」

「あー…あの頃はまた別の遊びをしてたからなー」

「「別の遊び?」」

「おう。普段は大人しく見せかけておいて、皆の死角になる所で変顔をするって遊びだ。皆が真面目にやってる時にアタシ一人だけが阿修羅みたいな顔とかして『アタシが実は裏でこんな顔をしてるとか想像もしてねーだろーなー』って考えながら遊んでた」

 

 し…知らなかった…。

 ということは、私が知らなかっただけで、昔から性格は全く変わっていないのか…?

 

「でもよー。箒が転校しちまってタイミングでなんか急に飽きちまってな。で、今までずっと大人しい振りをしていた分の我慢を一気に大爆発させた。そしたらまた皆がめっちゃ面白い反応をしやがるからよー! もうそれ一本で行くことに決めたんだわ」

「まるで若手お笑い芸人みたいな思考回路してやがるな…」

 

 私が転校してからということは…私がいなくなったから心境が変化したと受け取ってもいいのか?

 それは…あれだな。悲しいような、嬉しいような…複雑な気分だな。

 

「しっかしよー。何年か振りだッつーのに背の高さと胸のデカさ以外は殆ど変ってねーなぁ! お蔭で一発で箒だって分かっちまったぜ!」

「む…胸は余計だ! そういう船子だって人の事は言えないじゃないか!」

「へへん! 船子ちゃんだって立派な乙女なんだぞ? ちゃーんとスタイルの維持とかお肌の手入れとかは完璧だッつーの! ほれ! 実際に触って確かめてみやがれ! このアタシの玉のお肌をよ!」

「うわっ!?」

 

 いきなり船子に手を取られて、それを頬に持っていかれた。

 うぐ…近くで見ると増々、船子の美人具合が分かってしまう…。

 なんだか恥ずかしいぞ…。

 

「どーだ? 超スベスベだろ?」

「う…うむ…確かに触り心地が良いな…」

「だろだろー?」

 

 同じ女として、悔しいやら羨ましいやら…。

 それ以上に、間近で見る船子の顔が本当に綺麗で直視できない…。

 

「おー……」

 

 おい一夏! 何を呆けている! もうそろそろ船子を止めろ!!

 このままじゃ恥ずかしすぎて、こっちが持たん!!

 もしくは周りのお前達! 近寄り難くなる気持ちは十分に理解しているが、それでも頼む! 船子を止めてくれ!!

 

「ゆ…百合の花だわ……」

「うん…ぶっちゃけ、織斑君一強だと思ってたけど……」

「金野さん…だっけ? 性格はアレだけど…」

「超美人でスタイル抜群で背も高くて…」

「見た目だけなら女としてほぼ完璧よね…」

「絵になるわぁ~…」

 

 まさかの止める気ゼロッ!?

 こ…このままだと変な扉を開いてしまいそうになる!

 不意に考えてしまった事を現実にしてしまいそうになってしまう!

 

「「「あ」」」

 

 チャ…チャイムが鳴った!

 これでようやく船子から解放されて…。

 

「お前達、とっとと席に着け。二時間目の授業を始め……」

 

 教科書片手に入ってきた千冬さんこと織斑先生と目が合った。

 物凄くこっちを見ている……。

 

「…IS学園は殆ど女子高みたいなもんだからな。同性同士の恋愛も珍しくは無い。私は別に否定はせんぞ。ちゃんと限度さえ弁えてさえいれば、後は当人同士で好きにするといい」

「織斑先生ッ!?」

 

 まさかの肯定っ!?

 この人だけはどうにかしてくれると信じていたのにッ!?

 

「よっしゃぁぁっ!! なんか知らねーけど千冬の姉御の許可も出たことだし、これからはアタシとイチャイチャしよーぜー?」

「ふ…船子ぉっ!?」

 

 じょ…冗談だよな? わ…私はお前と一夏との仲を応援するつもりであって、決してそんなつもりは……。

 

「お幸せにー」

「一夏ぁっ!?」

 

 一部始終全部見ていたくせに、一夏まで完全肯定だとっ!?

 この姉弟…妙な所で似ている…!

 

「そういうのは次の休み時間にしろ。今から授業だ」

「は…はい…」

「ほほーい」

 

 や…やっと船子から離れられた…。

 けどなんだ…この妙な寂しさは…。

 

「言っておくが、また居眠りとかしたら容赦せんからな」

「フッ…千冬の姉御にこのアタシが起こせるかな?」

「その前に寝るな。そして、私の事は織斑先生と呼べ」

「へーい」

 

 し…心臓がドキドキして止まらん…。

 これは一体なんだと言うんだ…。

 こんな状態でちゃんと授業が受けられるんだろうか…。

 

 

 

 

 

 

 




今回は箒視点でお送りしました。

恐らく、三人称視点はあっても、船子ことゴルシ視点は無いと思います。


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