黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦!   作:とんこつラーメン

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意外とトラブルって無いもんだ

 午後になり、予定通り俺達1組2組の合同授業メンバーは千冬姉に言われた通り、昼休み終了後に格納庫に集合し、先生達主導の元で午前に使用した訓練機の整備の実習を行っていた。

 専用機を持っている俺達は、自分の機体の整備をしつつ、同時に班の皆の機体も見なくてはいけないので、自然と仕事が倍になる。

 これが専用気持ちになった責任って奴なのか…。

 

「えーっと…ここはー…」

「あれ? この配線って、これでいいんだっけ?」

「ちょっと待って。今、マニュアルを見るから」

 

 どれだけ勉強をしていても、実機の整備なんて滅多にやらないせいか、皆が俺と同じように四苦八苦していた。

 けど、他の専用機持ち…主に候補生達は流石と言うべきか。

 同じクラスの仲間と思えない程にスムーズに作業を進めていた。

 

「ここを抑えていてくださいまし。ここは…こうやって…っと」

「おぉー…さっすがー…」

 

 典型的なお嬢様であるセシリアが、慣れた手つきで顔を油で汚しながらも器用に訓練機の整備をしていく。

 ああいう姿を見ると、やっぱり凄いなーと実感する。

 

「ねぇ…凰さん。ここのやり方が分からないんだけど…」

「んー? どこよ? あー…ここはね…」

 

 あの鈴も、昔からでは考えられないような手つきで見事に訓練機を整備して、皆がやっている隙に自分の機体も整備していく。

 なんつーか…急に遠い存在になっちまったよなぁ…。

 

「シャルルくぅ~ん…ここなんだけどぉ~…」

「ん? どこかな?」

 

 シャルルもシャルルでちゃんとやってるし…。

 同じ男でも、ここまで差が出るのは普通にキツい。

 

「ボ…ボーデヴィッヒさん…あのー…」

「なんだ…またか。仕方があるまい…。見せてみろ」

 

 そして、なんと午前中にあれだけ渋っていたボーデヴィッヒが、午後からはちゃんと自分から作業に参加している。

 船子の説教が相当に身に染みたと見える。

 あれは中々に強烈だったからなぁ~。

 

 んで、その船子はと言うと…。

 

「ふんふんふん♪ ふふん♪ ふふふん♪」

 

 鼻歌交じりに物凄く手慣れた感じで訓練機を整備してる。

 その隣じゃ、箒や布仏さんを初めとした面々が目を大きく見開きながら驚いていた。

 

「す…凄いな船子…。ISの整備まで出来るとは…」

「ふねふね~。どこかで整備のお勉強とかしたの~?」

「うんにゃ? フツーに整備の本を読んだだけだけど?」

「「「本を読んだだけでここまでっ!?」」」

 

 相川さん達三人がめっちゃ驚いてるが、それも当然だ。

 普通に本を読んだだけでISの整備が出来れば誰も苦労なんてしないんだよ。

 事実、俺は全く分からない。

 本の内容ですら未だにチンプンカンプンなのに。

 

「…船子」

「どした箒? え? 船子ちゃんの美貌を保つ秘訣? 悪いな…そいつは機密事項だ。もし教えたら、アタシは刑法1兆飛んで4条により、今日から一週間ほど『たけのこの里』が食えなくなっちまう」

「そ…そうなのかっ!? じゃなくて」

 

 箒がノリツッコミしやがった。

 珍しい光景を見たな。

 あと、日本の刑法はそんなに数は無い。

 

「船子…歌が上手なんだな」

「そーだねー。ふねふねの歌声、まるでプロの歌手さんみたいだよ~」

 

 そういや、昔から船子は歌も凄く上手だったな。

 音楽の授業じゃ、いつも先生から絶賛されてたし。

 普段の破天荒さが災いして、結果として+-ゼロになってるんだけど。

 

(中学の時、俺や鈴の目の前でアイドル事務所からスカウトされたこともあったっけ…)

 

 確か…346プロ…だったっけ?

 妙に強面で迫力ある人だったな…。

 船子は即座に適当な言葉を並べて断ってたけど。

 

「ま、船子ちゃんの歌声は天使の歌声だからな。その気になれば、飢えたゴジラの群れも一瞬でおねんねよ」

「「「いや! ゴジラはまず群れで襲来しないから!」」」

 

 そうなったらマジで世界の終わりじゃねぇか。

 ISでも絶対に太刀打ち出来ねぇよ。

 

「そーか? でもそっか…ゴジラは流石に群れじゃこねぇか。ガメラなら有り得るけど」

「「「ガメラも無いからっ!?」」」

 

 なんだろう…船子なら本気で、ゴジラが来てもガメラが来てもどうにか出来そうな気がする…。

 根拠とかはないんだけど。

 

「船子さんは本当に多彩な才能をお持ちなんですのね…」

「そーよ? なんたって、前に一度、あたし達の間の前でアイドル事務所にスカウトされたことがあるぐらいなんだから!」

「「「嘘ぉッ!?」」」

 

 あ…鈴が言っちまった。

 別に隠しておくような事でもないけどさ。

 

「なん…だと…!? 船子が…アイドル事務所にスカウトされた…だと…!?」

「お…織斑先生?」

 

 なんか急に千冬姉の顔が久保帯人先生の画風みたいになった。

 別に船子の霊圧は消えてないぞ?

 

「アイドルになった船子………アリ寄りのアリ!」

 

 アリなのかよっ!?

 てっきり『船子が遠い存在になるのなんて嫌だ』なんて言うかと思った。

 

「もし船子がアイドルになったら、私がマネージャーをする。そして、ゆくゆくは…」

 

 ゆくゆくは…なんだよ。

 そこで途切れさせないでくれよ。普通に不安になるから。

 つーか、普通に先生を辞める宣言したぞ、この人。

 

 結局、午後の授業も午前と同じように、半分がグダグダで幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 夕飯を食べ終え、夜になってから俺は寮の自分の部屋に戻る。

 けど、部屋にいるのは一人じゃない。

 今日からはシャルルも同じ部屋の住人だから。

 理由は単純明快で『同じ男同士だから』。

 うーん…シンプルイズベスト。

 

「改めて、今日からよろしくな」

「うん。こちらこそ」

 

 一人部屋ってのも悪くは無かったけど、やっぱり話し相手がいるのは良いもんだよな。

 少し前までは箒と一緒だったけど、アイツはシャルルが来るのに合わせて部屋が移動になった。

 そのこと自体には全く不満を漏らしてはいなかったけど、せめて船子の部屋の近くが良かったと嘆いていた。

 船子は二年の先輩…しかも生徒会長と一緒の部屋だからなぁ…。

 アイツの部屋って、ここからじゃ割と遠い位置にあったりする。

 気軽に会いに行けないのは普通に痛いな。

 

「そう言えば、一夏って金野さんと仲がいいの?」

「仲がいいって言うか…アイツとは幼馴染なんだよ。それを言ったら、鈴や箒も幼馴染なんだけど」

「幼馴染…」

 

 つっても、まだまだ船子に関して知らない事は多いんだよな。

 俺達が全く知らない交友関係とか一杯あったし。

 主に江田島学園長とか。

 

「金野さん…凄い子だったよね…。色んな意味で驚かされたよ…」

「だろうな。それが普通だよ」

 

 寧ろ、あれで驚かない方が凄い。

 そんな奴がいたら是非とも見てみたいわ。

 

「代表候補生でもないのに専用機を持っていたり。その専用機も今まで見た事が無いような奇抜な機体だったし。かと思ったら、意外と真面目に授業を受けて教えるのも凄く上手だったり。あのドイツの子にも臆せずに説教をしてたし。しかも、歌も上手だったし。作ってくれたラーメンが絶品だったし…。錆びた剣で丸太を切ってみせたし…」

 

 シャルルが今日一日の船子の行動を一つ一つ言っていく。

 こうして箇条書きにすると、今日だけでどんだけ好き放題やってんだ…。

 

「ついでに言うと、交友関係も凄いぞ?」

「例えば?」

「まず、船子のルームメイトはウチの生徒会長だ」

「最初から凄いねッ!?」

「だろ?」

 

 それに関してはIS学園に来てからの関係になるんだけどな。

 けど、俺から見ても、もう既に長年の友人みたいになってる。

 船子のコミュ力が枯渇する日は来るんだろうか。

 

「しかも、うちの学園長とも知り合いらしい。しかも、幼い頃からの」

「学園長って…あの凄い迫力の人…だよね…?」

「あぁ。自己紹介するだけで防弾ガラスを普通に破壊する人だからな」

「それを人間認定しても良いの…?」

「いいんじゃないか?」

 

 流石に声で窓ガラスは割れないけど、千冬姉も割と大概だしな。

 ハリウッドスターもビックリなアクションを平気で出来るし。

 

「あと、あの束さんとめっちゃ仲がいい」

「束って…ISの開発者の篠ノ之博士っ!?」

「そ。その篠ノ之博士。因みに、箒の姉さんでもある」

「ボクが言うのもアレだけどさ…一組って…」

「言わないでくれ…」

 

 それに関しては、俺達全員が自覚してる事だから。

 ある意味、口に出したら負けとすら思ってるから。

 

「そう言えば、出会って早々に変な事も言われたっけ…」

「あー…あれなー…」

 

 同じ名前だからって理由で、いきなりブリタニア皇帝呼びだしな…。

 そりゃ驚くのも無理ないって。

 つーか、船子は世界中のシャルルさんに謝った方がいい。

 アイツの理論だと、シャルルって名前の人間は全員がブリタニア皇帝になっちまうぞ。

 

「あんまし気にしないでくれ。悪気は無いんだ。あいつなりの歓迎の挨拶だと思ってさ」

「あれで歓迎なんだ…。まぁ…ボクから見ても悪気は感じなかったけど…」

 

 船子の最も恐ろしい所は、まさにそこなんだよな。

 計算とか損得勘定とか一切無し。

 その時のノリと感情に任せて行動する。

 でも、それが不思議と言い方へと向くから凄い。

 セシリアの時もそうだったし、朝のHRの時もそうだった。

 船子が騒いでくれたお蔭で、教室から転入生が来た時に起きる独特の緊張感が薄れて、シャルルもクラスに馴染みやすくなった。

 それだけじゃ無く、あのボーデヴィッヒって奴の行動まで止めてくれた。

 もし、あのままアイツの動きを許していたら、きっと碌な事になっていないに違いない。

 

「何か困った事があったら、俺だけじゃなくて船子にも遠慮なく相談しても良いと思うぞ。なんだかんだ言って、アイツは来る者は拒まずの精神してるし。困った奴は絶対に見捨てない。それが友達なら尚更な」

「そう…なんだ。金野さんって本当に凄い子なんだね…」

「つーか、船子は一組のクラス代表だしな」

「そうだったんだっ!?」

 

 実に予想通りのリアクション。

 あのラウラって奴も、船子がクラスのリーダーだって知ったら、もっと大人しくなるんだろうか?

 

「ところで一夏。ずっと気になってる事があるんだけど…」

「なんだ?」

「一夏ってさ、金野さんの事を話す時、妙に楽しそうにしてるよね。いや…楽しそうってよりは…嬉しそう? もしかして、一夏って金野さんの事を…?」

「うっ…」

 

 す…鋭いな…。

 別に俺は、そこまで嬉しそうにしてるつもりは無いんだけどな…。

 

「…本人にはまだ一度も言った事は無いんだけどな。ほら、アイツってソレ系の話をしても絶対に適当な事を言って話が別方向に行きそうだし…それに…」

「それに?」

「…船子は本当に凄い奴だから…今の俺とじゃ釣り合わない。少なくとも、もっと俺が強くなって、自分自身を誇れるようになってからじゃないと…駄目な気がするんだ」

「一夏…」

 

 って…あれ?

 俺ってばいきなり何を話してるんだ?

 今日会ったばかりの奴に…ハハハ…。

 学園内で男友達が出来たからテンションが上がっちまってるのかな?

 

「と…とにかく、これからよろしく頼むな」

「うん。こうして一緒に部屋になったんだし、仲良くしていこうね」

「だな。それじゃあ、寝る前にまずは色々と取り決めとかしておくか。シャワーの順番とか…」

 

 そうして、その日は寝る直前までずっとシャルルと話し込んでいた。

 やっぱ…同性からしか得られない栄養って…あるんだなぁ…。

 こんな発言すると変な誤解を受けそうだけど。

 

 

 

 

 

 

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