黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦!   作:とんこつラーメン

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バレてないと思ってたの?

 それは本当に突然の事だった。

 専用機に関する書類を書くために職員室に呼ばれた俺は、シャルルに先に部屋に戻ってくれるように言ってから用事を済ませに行った。

 少し時間は掛かったが、何事も無く書類を書き終えた俺は、そのまま自分の部屋へと帰った。

 そこまでは良かった。そこまでは。

 

 部屋に入ると、シャワー室の方から水の音が聞こえてきた。

 恐らくはシャルルがシャワーでも浴びているんだろうと推察した俺は、そこであることを思い出す。

 シャワー室にあるボディーソープの中身が無くなりかけているということを。

 すぐに棚から詰め替え用のボディソープのパックを取り出してから、シャワー室をノックしようとした…その時だった。

 

「「あ」」

 

 いきなり、シャワー室の扉が開き、中からシャルルと同じ顔をした金髪の女の子が姿を現した。

 いや、シャルルの本当の性別は女だったと言うべきか。

 

 ともかく、俺は図らずもシャルルの決して人に見せてはいけないであろう秘密を事故に近い形で知ってしまった。

 

 どうしていいのか分からずに混乱した俺は、咄嗟に自分の知る中で最も頼りになるであろう人物…即ち、船子の事を呼び出す事にしてから今に至る。

 

「えっと…誰に連絡したの?」

「船子」

「え? 金野さん?」

「あぁ。ああ見えて、船子はマジで頼りになるんだよ。中学の時も、よく色んな奴の悩み相談とかしてたし。俺も良く悩みとか言ってたしな」

「そうなんだ…」

 

 シャルルはまだ船子と知り合ってから時間も経過してないから分からないだろうな。

 だからこそ、今回の事で船子の頼もしさってのを知るだろう。

 こんな形ってのが皮肉だけどな。

 

 なんてことを考えていたら、部屋の扉がノックされた。

 

『ノックしてもしもーし。一夏きゅんはいますかぁ~?』

 

 船子だ。本当に待ち侘びたぜ。

 

「今開けるから少し待って…」

「なんて油断をさせといてからの上からドーン!! 困った時のスペイン宗教裁判!!」

「うぉぉぉぉぉぉっ!?」

「きゃぁぁぁぁぁっ!?」

 

 いきなり部屋の天井をぶち悔いてからやってきやがったッ!?

 さっきの声は一体なんだったんだよッ!?

 

「ったくよー。この程度でビビってんじゃねぇーよ」

「いきなり天井から出てきたら誰だってビビるわ!!」

 

 寧ろ、こんな登場のされ方をして驚かない奴の方が希少だろっ!!

 ほら、シャルルだって驚きの余り少し涙目になってるじゃねぇか!

 

「ちょ…ちょっと待ってよ。金野さんが天井から出て来たって事は…ドア越しに聞こえてきたさっきの声は一体…?」

「あぁ…あれか? あれはだな…」

 

 徐に船子がドアを開ける。

 すると、そこに立っていたのは…。

 

「どうやら、船子のドッキリ大作戦は見事に成功したようだな」

「流石は船子さん。素晴らしい手際ですわ」

「本当よねー。動きは完全に忍者になってたし」

 

 和気藹々としている箒とセシリアと鈴の三人だった。

 箒の手には、どこかで見たことがあるようなボイスレコーダーが握られていた。

 

「ほ…箒? そのボイスレコーダーって、もしかして…」

「もしかしなくても、こういうことだ」

 

 箒がレコーダーのスイッチを押すと、そのスピーカーから船子の声が流れてきた。

 

『ノックしてもしもーし。一夏きゅんはいますかぁ~?』

「やっぱりかぁ~…」

 

 まさか、こいつ等もグルだったとは…。

 ホントもう、最近は三人揃って船子と同じノリになってきてるよな…って、そうじゃなくて!

 

「なんで三人も一緒にいるんだよッ!? 呼んだのは船子だけの筈なんだけどッ!?」

「んなの、理由は一つだけに決まってるじゃねぇか」

「え?」

「お前がアタシにLINEした時に、箒たちも一緒にいたからだよ」

 

 そういうことだったのか…。

 確かに、この三人なら船子が行くって言ったら『自分達も一緒に』とはなるわな…。

 

「一体どうして船子を呼んだのよ…って言いたいけど…」

「まぁ…大体の想像はついたな」

「やっぱり…って感じですわね」

「え? ええ?」

 

 想像がついた? やっぱり?

 それはどういうことだ?

 

「えっと…?」

「アタシも、箒たちも、オメェが女だって最初から知ってたって事だよ。シャルル・デュノア」

「「えぇっ!?」」

 

 し…知ってたのかよッ!? 最初からッ!?

 

「ど…どうして…?」

「気配」

「体幹」

「匂い」

「仕草」

 

 か…完膚なきまでに看破されてんな…。

 

「つーかよぉ…他の連中はともかく、あたし等をコルセットで胸を隠した程度で騙せると本気で思ってたのかよ? だとしたら、そいつぁちぃーっとばっかし舐め過ぎじゃぁねぇか?」

「そ…それって…どういう…?」

 

 ちょ…ちょっと待てよ?

 船子や箒たちは…えーっと…?

 

「セシリアや鈴は現役の代表候補生。箒は武芸者で中学の時に剣道の全国王者にまでなってる。アタシだってガキの頃から男塾で嫌って程に男達を見てきた」

「あ……」

「分かるか? その気になりゃ、些細な所から簡単に相手の正体ぐらいは見抜けるんだよ」

 

 珍しく船子がマジモードで完全論破してきた…。

 確かに、船子が言ってる事は全部正しい。

 代表候補生ともなれば、それこそ俺じゃ想像出来ないような訓練や勉強を沢山してきたはずだし、箒のような凄腕の武芸者なら歩き方とかで相手の性別を見抜く事だって可能な筈だ。

 船子に至っては、武芸者な上に男塾って場所で数多くの真の男達に囲まれて成長してきたから、男装なんて簡単に見抜いてしまうだろう。

 あれ? ってことは…。

 

「もしかして…千冬姉や江田島学園長なんかも…?」

「とーっくの昔に見抜いてんだろうなー」

 

 デスヨネー…。

 

「千冬さんほどの人物なら、一目見ただけでデュノアの正体を見抜いていただろうな」

「江田島学園長に至っては、写真を見ただけで看破してたかもしれないですわね」

 

 あの二人なら普通に有り得そうだ…。

 俺からしたら、二人共が完全に人外の領域に至ってるからな…。

 

「ってなわけで、まずは詳しい事情を聞かせて貰おうじゃあねぇか。なぁ?」

「う…うん。分かったよ…」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 かくかくしかじか。

 かくかくうまうま。

 しかのこのこのここしたんたん。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「成る程ねぇ…やっぱりオメェはデュノア社の関係者だったか」

「うん…そういうことなんだ…」

 

 あれ―――――――!?

 なんか簡単に終わったんだけど―――!?

 俺の時は長々と話を聞いたんだけど、今回は呆気なく終了したぞっ!?

 かくかくしかじかって!

 それでいいのかっ!?

 

 っていうか、最後の方はなんかどこぞのアニメのOP曲みたいじゃなかったかッ!?

 

「なんとなーく予想はしてたけどよぉ…ま、そう落ち込むなや。ほれ、カツ丼食うか?」

「うん…ありがと…」

 

 なんで急に取り調べっぽくなってるんだ?

 よく見たら、刑事ドラマとかでよく見るライトもあるし。

 

「箸じゃ食い難いだろ。ちゃんとフォークとスプーンも用意しといたぜ」

「美味しい…お母さんの味だ…」

 

 これ…ツッコむべきか?

 フランス人のおふくろの味がカツ丼ってどういうことだっ!?

 俺が知らないだけで、フランスじゃ密かにカツ丼がブームなのかッ!?

 

「しっかしよぉ…オメェのとーちゃんよぉ…なーんかくせぇな…」

「くさい…?」

 

 船子が顎を擦りながら何かを考えてる…?

 ぶっちゃけ、俺個人としちゃ許せないけど、船子がこうしている時は必ず何かあるって今までの事で学んでるからな。

 

「船子…なんか引っかかってるの?」

「まぁな。一夏の奴を狙って…ってのは分かったけどよ…どーして男装なんだ?」

「そ…それは同じ男だら近づき易くて…」

「いや、それはおかしいだろ」

 

 おかしいって…なんでだよ?

 やった事はともかく、男装して俺に近づくってのは道理に適ってるような気がするけど…。

 

「そもそもよぉ…男に近づいて何かをするってんなら、男装するよりも普通に女としてハニトラした方が遥かに簡単だし手っ取り早いじゃねぇか」

「「あ」」

 

 それは…確かに…!

 その方がずっと油断は誘えるし、下手に変装するよりは遥かにリスクは小さい…。

 

「これは船子の言う通りだな。服装だけで性別を偽ると言うのは、これで中々に難しい。それこそ、歌舞伎の女形ぐらいにならないと不可能だろう」

「そうですわね。細かい仕草に骨格、他にも沢山の違いがありますわ」

「それら全てを完璧に模倣しようとすれば、もう殆ど全身整形に近いことをしなきゃ不可能よ」

 

 だよな…。

 じゃあ増々分からねぇ…。

 どうしてシャルルの父親は娘に男装なんてさせたんだ…?

 

「なんか、考えれば考えるほどに謎が増えていってない?」

「一番手っ取り早いのは、本人に話を聞く事だが…」

「日本からフランスはかなりの距離がありますわ。とてもじゃないですけど現実的じゃありません」

 

 うーん…論点がずれてるような気がするけど、こうなると俺も気になって仕方なくなってきたぞ?

 

「あの…実は父さんと連絡をする為の通信機があ…」

「よぉーし!! わーったぁっ!」

「「「「船子?」」」」

 

 シャルルが何か言いかけてたけど、何が分かったんだ?

 

「シャルルの奴の親父に直に聞いてやろうじゃあねぇか!」

「どうやってだよ? セシリアも言ってたろ? 今からフランスに行くのは不可能だって」

「いやだから…通信機…」

 

 何を思ったのか、徐に船子はドアに向かって歩き出す。

 トイレにでも行くのか?

 

「うっし。ここはいっちょ、船子ちゃん自慢の『船子ワープ』でも使うか!」

「「「おぉー!」」」

「「ふ…船子ワープ?」」

 

 じょ…冗談だよな?

 本気でワープなんて出来ないよな?

 いやでも…船子なら何故か普通に出来そうな気がするのはなんでだろう…。

 

「ひぃぃぃっさつ! 船子ワァァァァァァァプッ!!!」

 

 そう叫びながらドアを閉じた船子。

 急に部屋の中が静かになった。

 

「ま…まさかっ!?」

 

 急いでドアを開けると、そこに船子の姿は無かった。

 マジでワープをしたってのか…?

 

「う…嘘でしょ? そんな事なんてあるわけが…」

 

 ん? シャルルが手に持ってる機械を使ってる?

 おお? なんか急にモニターが付いたぞ?

 

『お…おい! いきなりなんだ君はッ!? どこから現れたんだっ!?』

『うっせぇ! オメェには色々と聞きてぇことが山ほどあんだよ! 大人しくしやがれ!』

「「「「「えぇ――――――――――――っ!?」」」」」

 

 本当にフランスにワープしてる――――――っ!?

 どーやってしたんだ――――――っ!?

 

 

 

 

 

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