黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦! 作:とんこつラーメン
部屋から出て行ったかと思ったら、いきなりモニターの向こうのフランスに移動していた船子。
ま…まさか…本当にワープをしたっていうんじゃ…?
い…いや…そんな事があるわけ…。
(と言いたいけど、あの船子ならマジでワープぐらいは出来そうだから怖い…)
破天荒もここまで行くと、もう異次元の領域だよな…。
もうツッコむのも疲れたわ…。
『な…なんなんだ君はッ!? 一体どこから来たッ!?』
あれがシャルルの父ちゃんか…。
見た感じは悪そうな人には見えないけどな。
つーか、実に当然な疑問を言ってる。
この時点で何故か信頼出来てしまう。
『うっせぇ! それよりも、オメェがシャルルの奴のとーちゃんかっ!?』
『シャルルだとッ!? 何故その名を…いや、それ以前に、君が着ているその制服は…まさかIS学園のッ!?』
あ、気付かれた。
『き…君はシャルルの事を知っているのか…?』
『知ってるだと…? あいつとアタシは、そんなチャチな関係じゃねぇ!! 『心』の『友』と書いて『心友』って呼ぶ関係だ!! わーったか! このでこっぱち親父!!』
『で…でこっぱちっ!?』
初対面の…しかもクラスメイトの父親になんつーことを言ったんだ…。
あと、そんなにでこっぱちじゃないと思うんだけど。
「き…金野さん…ボクの事を…そんな風に思ってくれて…? それなのに…ボクは…ボクは…」
「シャ…シャルル?」
さっきの船子の一言に感動してシャルルが涙を流してるんだがッ!?
確かに良い事を言ったとは思うけど、泣くほどかっ!?
「正体が分かっていたとはいえ…自分を騙していた相手にそこまでの事が言えるとは…」
「船子さん…なんて心が広い方なのでしょうか…」
「そうよ…それでこそ、アタシの好きな船子よ…」
あれー?
箒とセシリアと鈴も同じように感動してるんですけどー?
あの短い一文に、そんなにも泣く要素があったかなー?
『あたしはな! テメェに本当の事を聞く為に日本からやって来たんだよ! だからキリキリ答えやがれ!』
『ほ…本当の事だと? 何を言って…はっ!?』
シャルルの親父さん、ここでようやくモニターで日本と繋がっている事に気が付く。
船子があんな登場の仕方をしたら無理ないけど。
『シャ…シャルロット…?』
「お父さん…」
シャルロット…それがシャルルの本当の名前なのか。
『シャルロットだぁ? お前、本当は皇帝陛下じゃなくて、レイピア使いのツンデレ女騎士さまだったのかぁ? この分じゃいつか、どこぞの剛力侍にでも惚れちまいそうだな』
ちょっと難しいけど、船子がどの『シャルロット』を指しているのか分かった。
また懐かしいネタをブッ込みやがって。
『…バレたのか』
「はい…ごめんなさい…」
『そうか…』
怒ってない…?
もし本当にシャルルに対して酷い人間なら、怒号の一つであげそうなのに…。
『こちとら、とっくの昔にテメェがアイツに命令した事とは別の意図でシャルルを日本に送ったんじゃねぇかって推測してんだよ。だからほれ、とっとと白状しやがれ。自分の娘に本当の事を言えよな』
『し…しかし…それは…!』
なんだろう…今回の船子、いつも以上にグイグイとしてないか?
そんなにもシャルルの事を案じてたのか…?
『アナタ…もう観念しましょう。やっぱり、私達のやり方は間違っていたのよ』
『ロ…ロゼッタ…』
画面外から声がしたかと思ったら、今度は赤いスーツを着た女性がやって来た。
この人がシャルルの継母か?
『あなたは…あの子の…シャルロットのお友達なのね?』
『おう!』
『そう…いい友達を持ったのね…』
あ…あれ? この人…シャルルの話じゃビンタをしたって人なんじゃ…?
なんで、こんなにも優しそうなんだ…?
『モニターが付いてるって事は…やっぱり』
「お…お義母さん…」
『あの子も聞いているのなら都合が良いわ。話しましょう…私達の罪の…全てを。いいわよね? あなた』
『あぁ…そうだな。お前が決意を固めたと言うのに、私だけが反対をする訳にはいかんだろう』
『やっとか。最初から素直にそう言っとけばよかったんだよ』
『こちらにも事情があるんだ。察してくれ』
『事情…ね。実の娘にお粗末な男装をさせて日本に送り込む事に、どんな事情があるのか…聞かせて貰おうじゃあねぇか』
『…分かった』
こうして、シャルルの両親の口から『真実』が語られた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
『つまり…オメェ等はデュノア社の事を狙っていた女性権利団体の魔の手から娘を遠ざける為に、態と酷くしたり、適当な男装をさせて日本に送り込んだってことか?』
『あぁ…その通りだ』
女性権利団体…か。
ニュースとかでもよく聞くけど、マジで胸糞悪い連中だな…!
『アイツ等は、会社の経営が傾いてきたタイミングを見計らって、シャルロットを人質にして私達を脅迫し、この会社を乗っ取ろうと画策していたの』
『今更こんな事を言っても信じて貰えないだろうが、私達にとってシャルロットは何よりも大切な娘だ。だが、だからと言って、今までずっと苦楽を共にしてきた社員達を路頭に迷させるような真似も出来ない』
そうだろうな…。
俺には会社経営の事なんてのは全く分からないけど、それでも一緒に頑張ってきた仲間をそう簡単に切り捨てる事なんて出来ないよな…。
娘と社員…なんつー重い天秤を背負わされてんだよ…!
『勿論、どちらかを取って、どちらかを切り捨てる事なんて私には到底できなかった。会社も娘もどっちも守りたい。だから私達は…』
『敢えて、シャルロットに冷たくすることで『娘に人質としての価値は無い』と思わせようとした』
『だが…我々の考えは甘かった。奴らはこっちの関係などお構いなしに、シャルロットを利用しようと画策してきた』
「まさか…それが…?」
『そうだ。お前を日本に送り、噂の男性IS操縦者と接触させ、専用機か遺伝情報を盗ませる…と言う事だ』
元々は権利団体の奴等の仕業だったのかよ…!
これもう完全に、シャルルの両親も完璧に被害者じゃねぇか!
『当初、奴らはシャルルにハニートラップをさせようと考えていた』
『けど、そんな事を私達が許せるはずがない』
『だから、我々は逆に奴等の企みを利用することを思い付いた』
「それが…男装?」
『あぁ。私達の口から『男装をさせて接触させた方が警戒心を解かせて…』とそれっぽい言葉を並べて納得させ、その上でお前を日本に送った。わざと適当な変装をさせてな』
ってことは…シャルルの男装は最初から誰かにバレる事が前提だったのか…。
『IS学園には、あの織斑千冬もいると聞く。彼女ならばシャルロットの男装もすぐに暴き、事情を察して保護してくれると考えた』
『冷酷無比な両親によって虐げられ、したくも無い男装までさせられて異国に送り込まれた少女…そんなシナリオにするために』
「そんな…それじゃあ二人は!」
『お前の身の安全さえ確保出来たら、こちらとしてはもう後顧の憂いは無い。後は二人で相打ちになる覚悟で奴等とぶつかるつもりだったのだが…』
『まさか、こんな事になるとはね…思ってもみなかったわ』
そうだろうなぁ…。
船子と言う完全なイレギュラーがいたお蔭で、最悪のシナリオだけにはならずに済んだ。
『…………』
「船子…?」
さっきから船子が何も言わずに黙っている。
いつも何かを喋って、動いていないと気が済まない船子にしては非常に珍しい反応だ。
『すっげー…久し振りだわ…こんなにもマジでプッツンしちまったのはよぉ…』
ふ…船子が…超絶珍しく、マジのマジでキレてる…!
こんな船子を見たのは俺でも初めてだ…!
『…話は聞いてたか…? なぁ…』
え? いきなり誰に話しかけて…。
『江田島学園長』
「うむ!!」
「「おわぁっ!?」」
い…いつの間に部屋の中にいたんだっ!?
マジで全く気が付かなかったぞっ!?
「何を驚いてますの?」
「学園長なら最初からいたわよ? ねぇ箒?」
「全くだ。一夏…府抜けているんじゃないか?」
なんで三人は普通に学園長がいた事を知ってるんだよッ!?
お前達も何気に人間辞めつつないかっ!?
「アルベール・デュノアよ。話は全て聞かせて貰った」
『あ…アナタは…! まさか…あの伝説の…ヘイハチ・エダジマなのですか…?」
「ワシがIS学園学園長の江田島平八である!!!」
す…スゲー声量…!
でも、流石に夜中で室内だからなのか、講堂の時よりかは抑え気味になってる。
それでも普通に鼓膜に響いたけど。
「す…凄い声…!」
「最初はまぁ…そうだよなぁ…」
よかった…シャルルがちゃんとこっち側で。
「全ての元凶は、フランスにて跳梁跋扈している女性権利団体! それさえどうにかすれば、後はどうにかなる! 違うか?」
『そ…その通りです。権利団体の支部は世界中に存在しているが、欧州の連中は特に過激な思想を持つ事で知られている。時に最近のフランス支部の連中は、まるでフランスという国そのものの支配者であるかのように振る舞っている…』
『あいつ等がいるせいでフランス国内も荒れているわ…。だけど、奴らはもう既に政府の内部にまで侵入を果たしている…そう簡単には…』
「心配無用!!!」
なんちゅー自信だよ…。
やっぱ、この人はスゲェわ…マジで…。
「このワシが男塾から蒔いた可能性の萌芽は、決して日本にだけに留まらぬ! 今に見ているがいい…文字通り、あっという間にフランス国内を掃除し、人々に安寧をもたらしてやろうぞ! がーはっはっはっ!」
『おぉ…! あのヘイハチ・エダジマが我が国の為に動いてくれると言うのか…!?』
「当たり前だ! 貴様等の娘『シャルロット・デュノア』は立派な我が学園の生徒! 学園の生徒は即ち、我が子も同然!! 己の子を守る為に全力を尽くさぬ親がどこにいる!!!」
自分の子供を守る為に全力を尽くす…。
そうだよな…それが当然なんだよな…!
でも、それってつまり、この人は俺達の事も我が子のように思ってくれているってことなのか…?
やべ…ちょっとだけ感動しちまった…。
「安心するがいい、シャルロット・デュノアよ」
「学園長…」
「このワシが、そして…嘗ての我が教え子たちが必ずや、お前達家族を再び会わせてやろうぞ」
「はい…ありがとう…ございます…!」
シャルルが…泣いてる…。
俺には分かる…これは…嬉しくて泣いてるんだ…。
そりゃそうだよな…船子のお蔭で誤解は解けて、世界一頼りになる学園長が味方に付いたんだから。
こりゃ…フランスから女性権利団体が消えるのも時間の問題だな…。