黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦! 作:とんこつラーメン
シャルルの正体が判明し、それと同時に江田島学園長という最強の味方を手に入れた日の翌日。
俺とシャルル、そして船子は箒たちと一緒に食堂にて朝食を食べていた。
「えっと…金野さん。昨日は本当にありがとう。君のお蔭で僕もお父さんたちも救われたよ…」
「なーに言ってんだ。まだまだこれからだッつーの。っていうか、アタシに礼を言うよりもまず、江田島学園長に礼を言いに行けよな」
「うん…そうだね。勿論、ちゃんと学園長にもお礼を言いに行くよ」
一時はどうなるかと思ったけど、何とかなんて本当に良かったぜ…。
今回は船子の行動力と、江田島学園長のカリスマに救われたな。
「あら…あれは?」
「どうしたセシリア?」
「食堂のテレビに、フランス関連のニュースが流れてますわ」
「あ…ホントだ。昨日の今日だから、ちょっと気になるわね」
フランス関連のニュース?
確かに気になるな…どんなのが流れてるんだ?
『えー…緊急速報です! たった今、入った情報に寄りますと、フランスにて女性権利団体が突如として一斉検挙され、全員が逮捕されたとの事です!』
「「「「「え――――――っ!!??」」」」」
いやいやいや!
幾らなんでも行動が速すぎやしませんかね学園長ッ!?
確かに『任せろ』とは言ってくれたけど、即座に行動に移すとは誰も予想すらしなかったんですけどッ!?
「あの権利団体を捕まえてる学ランを着た連中って…もしかして…」
「江田島学園長の嘗ての教え子の方々なんですの…?」
「まさに圧倒的だな…。今までISの威を借りて来た連中が成す術もなく次々と捕縛されている…」
す…すげー…。
同じ人間とは思えない程に強すぎるだろ…。
文字通り、権利団体の連中が手も足も出てない…。
「ね…ねぇ…一夏…」
「どうした?」
「あそこ…画面の端の方に移ってる二人って…まさか…」
「ヴぇあぁっ!?」
驚きの余り、思わず変な声が出ちまった!
だってよ…しれっと権利団体捕縛の様子を撮影した映像の中に江田島学園長と船子の姿が映ってたんだよ!
俺達の知らない所でさりげなく参加してたんかいっ!?
「あ…抵抗した権利団体の女がISを纏って学園長に突撃していきましたわ」
「けど、即座に学園長から背負い投げされて無力化されてるわね」
「流石は我等が学園長…見事な一本背負いだ」
いや…感心する所そこっ!?
ISって物凄く重たいんだよなっ!?
それを生身で一本背負いって普通じゃないだろッ!?
って言いたいけど、そういやあの人って俺の白式も普通に肩に担いで持って来てたっけ…。
(実に今更ながら…本当に江田島学園長は人間なんだろうか…)
ぶっちゃけた話、『実は究極生命体でしたー!』って言われても全く驚かないし、違和感も無い。
余裕であと百年以上は生きてそうな気がするのは俺だけじゃない筈。
「あ…今度は別の奴が船子に向かって突撃したぞ」
「けど、船子も船子でドミネーターを『ガンダムレオパルド・デストロイ』に変身させて、相手を蜂の巣にしたわよ」
「哀れですわね…。あの超重火力の前では、量産機如きでは無力に等しいでしょうに…」
む…むごい…!
画面越しに見ただけで分かる、碌に整備すらしていないであろうラファール相手に、あろうことかレオパルド・デストロイのフルバーストとか完全にオーバーキルだろ…。
「あ…全身が黒焦げになった挙句、アフロヘアーになって白目向いて気絶した」
これこそ本当に哀れだろ…。
全世界の自分の痴態を晒してんだからよ…。
ある意味、刑務所に行くよりも遥かに酷いわ。
「ふわぁ~…。夜にフランスで大暴れしたせいで、妙に眠たいぜ~。んなことなら、ロゼッタのおばさんのフランス料理でも御馳走されてくればよかったぜ」
さりげなく人の義母から飯を御馳走されようとするな。
いや…恩人だから良いかもだけどさ。
「はは…金野さんと学園長には、また恩が出来ちゃったね…」
「気にすんなよ。あれに関しては、別にオメーの為じゃなくて、アタシ等がやりたくて勝手にやっただけなんだからな」
ま…船子ならそう言うだろうな。
昔からコイツは、素直に人からの礼を受け取らない。
素直に褒められたり、お礼を言われたりするのが苦手だから。
要するに、こう見えて意外と照れ屋なんだよな。
そのギャップの破壊力に魅了された連中は星の数ほどいる。
かくいう俺もその一人だ。
寧ろ、あれで惚れない方がおかしい。
「フッ…流石は私の船子。異国の地においても無双するとは…」
「なんか自然な流れで千冬姉が会話に入って来てるっ!?」
というか、いつの間に来たマジでッ!?
「勿論、このニュースはちゃんと録画してるぞ。記念すべき船子のテレビデビューだしな」
記念すべき…なのかなぁ…?
(というか…さっきから皆して誰もツッコミを入れようとしないから、敢えて言わせて貰うけどさぁ…)
江田島学園長は、あれからどうやってフランスに行ったの?
つーか、そもそもの話、あの後どうやって二人はフランスから一晩で帰って来たの?
あと、短時間の間に、どっからあれだけの人間集めたんだ?
「…取り敢えず総合ツッコミ。なんでやねん」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「え? それ本当っ!?」
「うん! 間違いないよ! だって廊下の張り紙にも書いてあったし!」
朝食を食べて教室に行くと、妙に中が騒がしかった。
一体何があったんだ?
「んだぁ? 何を話してやがんだぁ?」
「あ! 金野さんに織斑君! おはよー!」
「おはよう。で、さっきから何で盛り上がってるんだよ?」
「実はー…これ見て!」
「「ん~?」」
そういって一人の女子が差し出してきたのは、今度開催される学年別トーナメントに関する一枚のチラシ。
「えっとー…なになに? 『本年度の学年別トーナメントの各学年の優勝者には、学園長から直々に豪華景品がプレゼントされる』…マジでッ!?」
豪華景品って何ッ!?
敢えて固有名詞を書いてない辺り、ちょっとだけ不安ではあるけど、それでもかなり引き付けられる言葉!
「成る程なー…太っ腹じゃあねぇか! 流石は天下の江田島平八だぜ!」
「船子には、この『豪華景品』の中身が分かるのか?」
「おう! ま、あくまでアタシの予想ではあるけどな」
「「「「是非とも教えて!!」」」」
箒の疑問に答えた瞬間、他の皆が一瞬で群がってきた…。
「多分だけど、この『豪華景品』ってのに明確な中身はねぇよ」
「と言うと…?」
「つまり、優勝したその場でリクエストした物をくれるって事だよ」
「「「「景品内容はこっちで決められるのッ!?」」」」
「恐らくな」
おいおい…それいいのかよ…。
優勝商品がこっちのリクエストって…それって、その気になればマジでなんでもいいって事になるんじゃないか?
よくチラシを見たら、それに関する事も特に言及されてない。
つまり、本当になんでもリクエストOKって事になるんじゃないのか!?
「今時の女子高生を動かすには、これぐらいはしないといけないって思ったんじゃあねぇか?」
「成る程な…」
少しでも皆のやる気をアップさせる為に、こんな事を書いたのか…。
確かにこれは効果覿面だな。
見事に皆のモチベーションが大幅に上がってやがる。
「だがしかし、いざ『なんでもいい』と言われると、逆に悩んでしまわないか?」
「そうですわね…選択肢が多すぎると言うのも考えものですわ」
「だよね…。それこそ『100万円欲しい』ってお願いでもOKって事になっちゃうしね」
うーん…言われてみれば確かになー。
けど流石に俗っぽい景品は個人的にも嫌だなー。
せめて、もっと夢のある景品が欲しい。
ならお前は何がいいんだって言われたら、何も思い付かないんだけど。
(俺の場合はー…新しい料理道具一式とか? いや…それは普通に貯金をすれば手に入れられるもんだろ。却下だ却下)
こーゆー時の原則は、基本的に『絶対に金じゃ手に入らない物』を頼むが一般的だ。
それを簡単に思い付ければいいんだけどなー…。
「船子さんは何か思いつきまして?」
「アタシか? アタシはー…そーだなー…」
そういや気になるな。
船子はどんな景品が良いんだろうか?
「…秘密だ」
「「「え?」」」
「この船子ちゃんの欲しいもんを、そう簡単に言える訳ねーだろー? 良い女ってのは秘密も多いんだぜ?」
誤魔化したな。
何も思い付いてないか、もしくはとんでもない物を思い付いたか。
船子の場合はどっちも有り得るからな。
「あ…予鈴が鳴った。そろそろ席に着かねぇとな」
じゃないと、また千冬姉の出席簿アタックの餌食になっちまうぜ。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
それは突然の事だった。
休み時間にいきなり、ドイツでの嘗ての教え子であるラウラから話しかけられた。
「…教えてください。どうして教官はここで教師などをやっているのですか?」
どうして…か。
それはこちらが聞きたい…と言いたいところだが、今は明確な答えが存在している。
「それが、今の私の『成すべき事』だからだ」
「危機管理意識の低い奴等の多い場所で…ですか?」
「勘違いをするな。確かにあいつ等はお世辞にも危機意識が高いとは言えないが、それはあくまで今年の一年生だけだ。少なくとも、二年や三年の連中は違う」
正直、こいつが自分の同級生たちに対して苦言を呈する気持ちは分かる。
私から見ても、今年の一年は浮かれすぎている節がある。
無論、例外も存在しているがな。
「逆に私から尋ねよう。お前から見て『危機管理意識』が高いと思う者は誰だいる?」
「…まずは代表候補生のセシリア・オルコットと凰鈴音。候補生と言う事もあり、その辺の分別はちゃんと出来ていると思われます」
「他には?」
「篠ノ之箒…あくまで私見ではありますが、あいつもその辺の事を分かっていると思います」
「それで終わりか?」
「いえ…もう一人」
「それは?」
「…金野船子。恐らく奴は…この学園で誰よりもISの恐ろしさを理解している…そんな気がします」
船子がISの恐ろしさを理解している…か。
否定は出来んな。
する理由も無い。
「同時に、奴が相当な実力者であることも…」
確かに船子は強い。
もしかしたら、このIS学園でもトップクラスと言っても過言じゃない程に。
だが…だがらこそ私は…。
「…教官の『成すべき事』…弟である織斑一夏がいるからと思っていましたが…それだけじゃ無いのですね? 金野船子…彼女も関係しているのですか?」
「そうだと言ったら? 船子を排除でもするか?」
「…いいえ。教官が懇意にしている相手に手を出すなど、私には出来ません。なにより…」
「なにより?」
「理由も無く、自分よりも『圧倒的強者』である相手に立ち向かおうとするほど愚かではありません」
「ほぉ…?」
この短い間で船子の『真の実力』を見定めたか。
その辺は流石と言っておこう。
「金野船子は未だに実力を隠している。いや…彼女が在学中に『本気』を出す気は本当に来るのかどうかすら疑問です」
「…そうだな」
もし船子が『本気』を出す日が来るとしたら、その時は…。
(一夏や箒を初めとした『友人』達を傷つけられた時…だろうな)
ああ見えて、船子は昔から家族や友人が悲しんだり傷ついたりすることを極端に恐れている節がある。
だからこそ貪欲に努力をし、強さを求めた。
それが今の船子を形成していると言っても過言ではない。
その辺の事は、あの江田島学園長も知っているだろう。
故に私はここから離れる訳にはいかない。
そんなにも臆病で、優しい船子の事を私達で護る為に。
姿を見せていないが、きっと束も同じ気持ちで今も動いているだろう。
昔から束は船子の事を溺愛していたからな。
「…もうそろそろ授業が始まる。教室に戻れ」
「はっ…」
「それと、ここでは私の事は『織斑先生』と呼べ。今回は特別に許すが、次は無いぞ」
「わ…分かりました…」
一応の釘を刺してから、ラウラは教室に戻って行った。
「船子…」
誰よりも他者を想い、守ろうと奮闘するお前に対し私は…。
「一体何が出来るんだろうな…」
その疑問に未だに明確な答えは出ていない。
船子と同じように、私もまた必死に足掻く…それだけだ。