黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦!   作:とんこつラーメン

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モテるって辛いわぁ~…

 それは、アリーナからの帰り際に突然起こった。

 

 第三アリーナで起きた、謎の『代表候補生三人による丸太割り合戦』は、船子のお手本の凄まじさに感銘を受けた三人の自爆で幕を閉じた。

 なんかもう練習する空気じゃなくなってきていたので、俺達はそのままUターンをして帰ることに。

 鈴やセシリアはともかく、何故かラウラも一緒だった。

 別に害はないから気にしないけど。

 

「一体どれぐらい練習すれば、船子や箒みたいに錆びた刀でスパっと丸太を斬れるようになるのかしら…」

「素人目で見ても分かりますわ…あれは間違いなく達人の領域…。生半可な覚悟と修練では到達は不可能ですわね」

「教官たちの場所まで辿り着くためには、我々も努力あるのみ…と言う事か…」

 

 真剣に何かに取り込む事は非常にいい事だとは思うが、それが錆びた刀での丸太割りってのは、年頃の女子高生としていかがなものかと…。

 

「ま、そう簡単に出来れば誰も苦労はしねぇよなぁ~…な、箒?」

「船子の言う通りだな。こればかりは近道など存在しない。地道な鍛錬しかない」

 

 うーん…実に正論。

 因みに、俺も試しにやってみたが、見事にビクともしない。

 下手に力を込めると、錆びた刀が折れそうで怖いんだよな~。

 あれで普通に斬ってみせる箒や千冬姉、船子が改めて凄いって実感したぜ…。

 

「お? なんだぁ?」

「どうしたのよ船子?」

「あそこ…掲示板の前。なんか皆が群がってやがる」

「本当ですわ…」

 

 船子が指さした場所には、確かに学年問わず沢山の生徒が群がっていた。

 何か重要な事でも張り出されたのか?

 

「こいつは…きっと『アレ』だな」

「あれ?」

 

 もしかして…今度ある学年別トーナメントのことか?

 その事で何か重要な事が発表されて…。

 

「今度ある『ボボボーボ・ボーボボ』の舞台に関する告知に違いねぇ! やっぱ、一流のハジケリストになる為には必須事項だよな…」

「んな訳ねーだろっ!?」

 

 なんでこの状況でボボーボが出てくるッ!?

 いや…船子との相性は抜群かもしれないけどさ。

 

「本当にボーボボかどうかは分からないけど、あれじゃあ掲示板を見る事が出来ないわね…」

「なんて言ってたら、皆さんが一斉に去って行きましたわ」

「心なしか、焦っているようにも見えたが…」

 

 あの掲示板には、皆を焦らせるような事が書いてあったのか?

 どれ…俺達も試しに見てみるか。

 

「どれどれ…? え?」

 

 こ…これは…マジか…?

 

「えー…なになに? 『今度の学年別トーナメントは、より実戦的な戦闘状況を想定し、二人一組での参加を必須とする。もし開催日までにペアが組めなかった生徒は、当日にランダム抽選によって即席のコンビを組むものとする』だってぇ~?」

 

 二人一組…つまりはコンビ戦って事になるのか…!

 単に強くなるだけじゃなく、連携する事も考えないといけないのか!

 もしかして、これもあの江田島学園長が考えたのか?

 だとしたらマジで侮れないな…!

 てっきり、あの人は典型的なタイマン主義な人かと思ってたけど、ちゃんと誰かと協力する事の大切さを教えようとしてくれてる…!

 

「なぁ~るほどなぁ~…こーゆーことだったのかぁ~…」

「金野さん? この告知に何か心当たりでもあるの?」

「いやな。少し前からどーも学園長がテンション高くしてたもんでな。どうしたのか尋ねてみたらよ…」

 

『がーはっはっはっ! 船子よ! 今度の学年別トーナメントは少し面白い趣向にしておいたぞ! 楽しみに待っておるがよいわい!』

 

「…って」

 

 それもう完全に特殊ルールにする気満々じゃあねーか!

 新任早々に飛ばしてるなー…。

 

「と言う事は、優勝商品もコンビそれぞれに進呈されると言う事か?」

「多分な。その辺の事はちゃんとしてるからな」

 

 成る程な…これは確かに皆のやる気も上がるわな。

 なんせ、優勝する確率が一人の時よりも大幅に跳ね上がってるんだから。

 

「アタシはどーっすかなー…」

「船子はドミネーターの特性上、誰と組んでも問題無いでしょ」

「そうですわね。前衛に後衛、射撃戦も近接戦も援護も何でも出来ますものね」

「だよなぁ~」

 

 そっか…船子のドミネーターは『万能型』。

 誰と組んでも、その相手に適した動きが可能になるのか。

 だからこそ、選択肢が無駄に多くなっちまうのか…。

 万能すぎるのも考えもんだな。

 

「だったら船子。アタシと組みなさいよ。アタシの甲龍で前衛をして、船子が後衛をしてくれれば完璧だわ」

「何を言ってますの! 船子さんは私と組みますのよ! 私の射撃とビットで船子さんの背中を完璧に護ってみせますわ!」

 

 どっちとも普通に相性が良さそうだから怖い。

 割とマジで相対したくないな…。

 

「そんなん言うんだったらよ、セシリアと鈴でコンビを組めばよくね?」

「「え?」」

 

 言うと思った…。

 実は、俺もそれを思ってたりして。

 

「…どうする?」

「船子さんから、そう提案されたら…何も言えませんわね…」

 

 相変わらず船子の言葉には弱いなぁ…。

 でも、これでコンビが一つ出来上がったな。

 

「ボクはどうしようかな…」

「オメーは一夏と組めばいいじゃねぇか。同室なんだしよ。『今』はまだ男なんだし」

「それもそっか…」

 

 あれ? なんか少しだけ残念そうにしてる?

 もしかして、俺と組むのが嫌だったり…?

 

「…本当は金野さんと組みたかったな」

 

 あ…そゆことですか。

 そりゃ、シャルルにとっちゃ船子は自分と家族と会社を救ってくれた大恩人だもんな。

 好感度メーターも一発で振り切れるってもんか。

 

「はい。つーわけで一夏&シャルルペアも完成だな」

「お…おう…」

 

 いや…流れとは言えペアを組めたのは良いけどよ…素直に喜べねぇ…。

 実は、俺も船子と組みたかったなんて…今更言えないよなぁ…。

 

「むぅ…私はどうするべきか…」

「私もだ。正直、射撃が苦手な以上、後方支援は殆ど出来ないしな…必然的に組むべき相手は厳選されてしまうのだが……チラリ」

 

 おう箒さんや。

 しれっと『自分と組め』アピールするのやめーや。

 アピールするなら、他の二人みたいに堂々とやりなさい。

 

「んー……よし! 決めた!」

「「お?」」

 

 遂にか…。

 船子は一体誰とコンビを組む気なんだ?

 

「アタシは…」

「船子は…?」

「当日まで誰とも組まない! ランダムで選ばれた奴と組む事にするぜ!」

「な…なんだとぉ~!?」

 

 おっと…そう来たか。

 でも、その方がなんか船子らしくはあるな。

 

「で…では私はどうしたら…!」

「いっそのこと、隣にいるラウラと組めば?」

「「へ?」」

 

 ほ…箒とラウラ…?

 これまた珍妙なコンビだな…。

 

「わ…私がこいつと…?」

「おう。箒と組めば、丸太斬りの極意を見極められるかもしれねぇぞ?」

「なにっ!? それは本当かっ!?」

「お前の頑張り次第だな」

「そ…そうか…私次第か…当然だな…」

 

 一気に食い付いたな。

 船子の口車に踊らさせて、なんか可哀想になってきたな…。

 

「仕方あるまい…篠ノ之箒! 私と組め! その剣の極意…見極めさせて貰うぞ!」

「船子がそう言うなら…致し方あるまい」

 

 なんだろう…結局、全部が船子の鶴の一声で決定したような気がする。

 この不思議なカリスマ性こそが、船子の最大の武器であり魅力だよな…。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 夕方になり、部屋に戻ってきた船子ちゃん。

 この子にしては珍しく、少し疲れたような表情をしているけど、愁いを帯びた船子ちゃんの顔もまた凄い破壊力ね…。

 

「ふぅ…今日も一日よく頑張ったぜー…船子ちゃんエライ」

「自分で自分を褒めてる…。良かったら、頭ナデナデとかしてあげましょうか?」

 

 なーんて、ダメ元でちょっと言ってみたりして。

 

「え? マジ? じゃあ、ちょっと頼もうかなー」

「ふ…船子ちゃん? きゃっ!?」

 

 いきなり隣に座って来たかと思ったら、ゴロンと私の膝の上に頭を乗せてきたぁッ!?

 う…うわぁ…船子ちゃんの髪…すっごく綺麗でサラサラしてる…。

 気のせいかしら…窓から差し込んでくる夕日の光に反射して、キラキラと光っているように見えるわ…。

 

「どーしたんだよ楯無パイセン? アタシの頭を撫でてくれんじゃねーのか?」

「え? あ…そうだったわね。よ…よしよし…」

「ん…」

 

 あぁ…何この船子ちゃん…。

 まるで子猫みたいに丸くなって…か…可愛過ぎる…♡

 笑顔いっぱいで破天荒な船子ちゃんや、時折見せる凛とした表情の船子ちゃんとも全く違う顔…。

 もしかしたら…これが船子ちゃんの素だったり…?

 

「なんだろうな…パイセンにこうして貰うと…なんか落ち着くな…」

「そ…そう?」

「うん…めっちゃ瞼が重たくなる…」

 

 こ…これはもしや…船子ちゃんに心を許して貰ってるっ!?

 じゃないと、こんな大胆な事は出来ないわよねッ!?

 

「と…ところで船子ちゃんは、もう今度の学年別トーナメントの話は聞いた?」

「あー…特別ルールでコンビ戦になったって話だろー?」

「そうそれ。もう誰かとコンビを組んだりした?」

「んー…それなー…。誰とも組まずに、当日のランダム抽選に任せようと思ってるー」

「え? そうなの? 織斑君達は?」

「アイツ等はアイツ等で組んだからなー」

「あー…成る程ねー…」

 

 恐らく、船子ちゃんがそれぞれにコンビを組むように促したのね…。

 その時の光景が目に浮かぶようだわ。

 

「船子ちゃんのドミネーターなら、誰と組んでも問題無いでしょうね」

「まーなー」

 

 文字通りの変幻自在の動きをするドミネーター。

 なんでも出来るし、操縦者である船子ちゃんもまた万能タイプ。

 もし…もしも…私が一年生で…船子ちゃんとペアが組めたら…。

 

(きっと…ドミネーターを私の専用機に合わせた形に変化させるんでしょうね…)

 

 唯我独尊のように見えて、実はいつも誰かに合わせてくれている船子ちゃん。

 ドミネーターの変幻自在さも、この子のそんな優しさの表れなのかもしれないわね…。

 

「ねぇ…船子ちゃ…ん?」

「すー…すー…」

「あらら…寝ちゃった」

 

 よっぽど疲れてたのかしらね…。

 自分の事だけじゃなくて、織斑君の勉強やISの練習を見たり、他にも色々…。

 

「本当に…アナタは頑張り過ぎよ…船子ちゃん。偶にはお姉さんにも頼って欲しいわ…」

「んー…」

 

 それはそれとして…船子ちゃんの寝顔が天使の寝顔なんですが。

 いやね…実は今までにも何度か夜中にこっそりと起きて、船子ちゃんの寝顔を見たことがあるのよね。

 その破壊力ったらもう…凄かったんだから。

 綺麗さと可愛さが絶妙に同居してるんですもの!

 あんなの絶対に反則よ…誰も勝てないって…。

 

「夕飯まで少ししか時間が無いけど…それまではゆっくりとお休みなさいな…」

 

 はぁ…この時間がいつまでも続いてくれたらいいのに…。

 船子ちゃん…お姉さん…本気になっちゃうかも…。

 

 

 

 

  

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