黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦!   作:とんこつラーメン

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意外! それは、まさかのあいつ!

 遂にやって来た『学年別トーナメント』当日。

 学園内は物凄い賑わいになっていて、誰も彼もがてんやわんや状態。

 特に、試合が行われる各アリーナの観客席は満員御礼になっていて、這いきれなかった観客に至っては立ったまま観戦をしていたり、外部モニターで試合を見ようとしていたりと様々。

 

 そんな中、私は急いで一年生のトーナメントが行われる予定の第一アリーナへと向けて全力疾走をしていた。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…! 急がないと…大丈夫だとは思うけど、…どんな風になるのか全く予想がつかないから…!」

 

 私は生徒会長であり、同時に暗部の長でもある。

 だからこそ手に入れられる情報もあり、その中には『今回のトーナメントでランダム選出された生徒の組み合わせ』も入っている。

 殆どの生徒はちゃんと事前にお互いにペアを決めているが、中には中々に決めきれずに今日を迎えた子も少なくない。

 私のルームメイトであり、今じゃとても大切な存在になりつつある船子ちゃんも、自らの意志で敢えてペアを決めずに、当日のランダム選出に賭けていた。

 その理由はズバリ『面白そうだから』。

 なんとも、あの子らしいんだけど、問題はその相手。

 ほんの気紛れに、なんとなく今朝になって軽くランダム選出の組み合わせを調べてみたら、そこで驚くべきペアを見つけてしまった。

 それが猛烈に気になるから、私は今こうして必死に走っている。

 

「それにしても…まさか船子ちゃんの試合が一日目の第一試合だなんてね…! これもう確実に後の試合が霞んじゃうじゃない…!」

 

 今までに二回ほど船子ちゃんの試合を見てきたが、そのどちらもが圧巻の一言だった。

 奇想天外かつ奇抜、誰にも予想が出来ない動きをするのに、その実力は圧倒的。

 噂では、密かに今回のトーナメントの優勝候補最有力なんだとか。

 

 普段なら走ってはいけない廊下をひた走る生徒会長。

 これ、もし先生とかに見つかったら即座にお説教確定ね。

 

「つ…着いた! 試合は…!」

 

 第一アリーナの観客席に辿り着き、私は急いでステージの方を見る。

 すると、もう既に船子ちゃん達はスタンバイしていて、後は試合を待つだけになっていた。

 

「よかった…なんとかギリギリのタイミングで間に合ったみたいね…」

 

 私の試合が午後になっているのが幸いしたわね。

 お蔭で、少なくとも午前中はゆっくりと試合観戦できるから。

 

「それにしても…まさか、船子ちゃんが『あの子』とペアを組むことになるだなんて…流石に想像もしてなかったわ…」

 

 確率的には有り得るけど、でもその可能性は非常に低い筈。

 その低い可能性に見事にぶち当たったのが今になる。

 因果なんてもんじゃないわね…ホント。

 

「しかも、その対戦相手が…」

 

 チラリと反対側を見ると、そこには黒い専用機を纏うラウラちゃんと、訓練機である打鉄を纏う箒ちゃんの姿が。

 

「専用機持ち同士の対決…か。今年のトーナメントは最初から荒れ模様ね…」

 

 この際、勝敗なんてどうでもいいから、無事に試合が終わることを願うわ…。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 私は今、自分の置かれている状況に本気で戸惑っている。

 

「はっはっはー! いやー…まさか、あの楯無パイセンの妹と組むことになっちまうとはなぁ~! なんだこれ? もうアタシと更識家とは運命の赤い糸で繋がってんじゃねぇかッ!?」

「赤い糸以外は全部こっちの台詞なんだけど…」

 

 まさか、噂に聞く一年生最強レベルの実力者にして、一年生で最も破天荒と呼ばれている子とランダム抽選で選ばれるだなんて…。

 只でさえクラスで浮きがちだったのに、自分から誰かに『ペアになってくれ』なんて言い出せるわけもなく、同時に面倒くさかったから、トーナメント当日に行われるランダム抽選でいいやと思っていたら…こんな盲点があったとは…。

 この子と組む確立なんて、それこそ天文学的な数字な筈だけど、それに見事にぶち当たるだなんて…。

 

「アタシは金野船子ってんだ! オメーは…」

「知ってる。色んな意味で有名人だし、電光掲示板に書いてあるし」

「そっかー! アタシってば、そんなに有名人なのかー! サインいるか?」

「いらないから」

 

 って、なんか無理矢理に渡してきたし。

 うっわ…普通にサインが上手だ…。

 まるで本物の芸能人みたい。

 見た目は、そこらの女優とかが余裕で霞むレベルの超美人だけど。

 この子は典型的な『喋らないと美人』ってタイプだ。

 スタイルも良いし…髪も綺麗だし…同じ15歳とは思えない…。

 やっぱり神様は不公平だ。

 

「…更識簪」

「お?」

「私の名前。一応…自己紹介ぐらいはしておく。さっきはする暇が無かったし」

「おう! よろしくな簪!」

「よ…よろしく…」

 

 なんて馴れ馴れしさ…。

 お姉ちゃんとは、また違うベクトルのコミュ力の高さだ。

 ミスとは言え、こんな子と一緒に部屋に住むとか…少しだけお姉ちゃんに同情する。

 

「ま…まさか…一回戦から船子と当たるとは…これは幸運なのか、それとも不運なのか…」

「どちらでもいいだろう。当たった以上は戦うだけだ」

「それはそうだが…」

 

 向こうも向こうで大変そう。

 確か、どっちもこの子の知り合いなんだっけ。

 片方はドイツの候補生でもあるんだよね。

 最初から候補生相手とか…普通にツイてない。

 私も候補生なんだけどね。

 専用機は持ってないけど。

 

「金野船子とは私がやる。お前は、もう一人の方に専念しろ」

「い…いいのか? こう言っては何だが…船子はかなりの強敵だぞ?」

「そんな事は百も承知だ。あいつは織斑教官が認めるほどの女…相手にとって不足は無い」

 

 まるで軍人ってよりは武人の発言だ。

 見た目は小柄で可愛いのに…。

 

「お前の実力も認めてはいるが、機体の性能差はそう簡単には覆せん。専用機は専用機、訓練機は訓練機と戦うのが一番だ」

「適材適所…ということか…」

「その通りだ」

 

 ふーん…訓練機を使ってるってだけで侮られてるんだー…。

 いいよ。

 なら、その油断を存分に突かせて貰うから。

 

「さーて…もうすぐ試合が始まるけど、今回はどれにするかなー…なんて、実はもう決まってたりして」

「どれにするって…え?」

 

 なにそれ…どういう事?

 まるで、試合に応じて姿を変えてるみたいな…。

 もしかして、換装パッケージの話?

 それなら理解出来るけど。

 

『えー…もうすぐ試合開始となる学年別トーナメント一年の部! ここ第一アリーナでの解説役は、この私…新聞部副部長『黛薫子』と、特別ゲストとして来てくださった江田島学園長の二人でお送りします!! では学園長、まずはご挨拶を』

『うむ』

 

 うわぁ…あの人、あんな所で何やってんの…?

 自分の試合を放置して解説なんてやってていいの?

 

『ワシがIS学園学園長の江田島平八であぁぁぁぁぁぁぁぁぁるっ!!!!!』

「「「うわぁっ!?」」」

 

 す…凄い大声…!

 IS越しなのに、耳がキーンってなったんだけど…!

 本気で鼓膜が破れるかと思った…。

 

「あはははははははは! やっぱ江田島学園長は最高だぜ!!」

「なんで平気そうにしてるのッ!?」

「なんでって…もう慣れっこだしな。アタシはガキの頃からずっと聞いてるし」

「慣れるの…あれに…?」

 

 仮に毎日聞いてても絶対に慣れないよ…。

 

「何と言う声量だ…これが噂に名高い江田島学園長か…!」

「何度聞いても頭が割れそうだ…」

 

 なんか向こうも大変そう。

 気持ちは分かるよ…うん。

 

『盛大かつ派手なご挨拶、ありがとうございます! 流石は江田島学園長ですね!』

 

 なんで、あの人は真横にいたのに平気そうにしてるのッ!?

 あれもう耳栓とか関係ない威力だったよねッ!?

 

『早速ですが学園長。この試合はどちらが勝つと思いますか?』

『いつもならば船子を推すが、今のワシは学園長。故に一生徒を贔屓するような事は言えん。それに…』

『それに?』

『どいつもこいつも、良い目をしておる。これは本気で試合がどう転がるか分からんぞ? 思いがけぬ展開が待っておるやもしれん』

『おぉ~! これはなんとも期待させるお言葉! 私も試合開始のゴングが待ちきれません!』

 

 どう転がるか分からない…か。

 確かに、やってみるまでは試合がどうなるかは誰にも分からない。

 意外と凄い事を言う人なんだ…。

 

「…学園長から気合に入った激励も貰った事だし…そろそろアタシも戦闘モードになるかな」

 

 …雰囲気が変わった。

 そっか…これが彼女の本気ってことか。

 

「ドミネーター…今回は最初から飛ばしていくぜ」

 

 赤い…球体?

 それが段々と大きくなって…金野さんを飲み込んだッ!? えっ!?

 

「ここをこうして…こうだな。よし!」

 

 中で色々とやってるし…これが彼女の専用機…?

 不定形でスライムみたいだけど…。

 いや…違う。そうじゃない!

 ちゃんと形状が固定され始めて…何かの姿に…こ…これはっ!?

 

「ふぅ…やーっぱ…今回はこれっきゃねーよなぁー…」

 

 全身の殆どを締める赤い色…。

 マッシブなボディと白い装甲…その腰には一振りの刀が鞘に収まった状態で固定してある…。

 間違いない…これは…この機体は…!

 

「ガンダムアストレイ…レッドフレーム…!」

「おぉー…こいつの事を知ってたか。やるじゃねぇーか」

「そりゃまぁ…」

 

 派生が山ほどある超大人気機体だし…。

 私も幾つかプラモ持ってるし…。

 

「成る程…近接戦に特化した形態か…面白い…!」

「おいラウラ…もう分かっているとは思うが…」

「あぁ。承知している。金野船子の剣の腕は、織斑教官に匹敵する。油断をしたくてもさせてくれんさ」

 

 え? 金野さんって、そんなに超強いの?

 もしかして私…実は物凄い大当たりを引いちゃった?

 

「ちゃんとシールドもビームライフルもビームサーベルもあるけどよ…この試合じゃ、そのどれもが無粋だよなぁ…」

「まさか…使わない気? ガーベラストレートだけで戦う気?」

「おう。つっても、腰に差してあんのはガーベラストレートじゃねぇけどな」

「じゃあ何?」

「アタシが受け継いだ名刀…『一文字兼正』だ」

「…!」

 

 聞いたことは無い…無いけど…なんとなく分かる…。

 それ…絶対にすっごい名刀じゃん…。

 

「いっちょ本気で…」

 

 腰を低くして、左手で鞘を持って、右手は刀の柄に添えてある…。

 これは間違いなく『居合い』の構え…!

 

「やりますかね…!」

 

 これ…私が足を引っ張ることになったりしない…よね…?

 あと十数秒で試合開始なのに、急に不安になってきた…。

 

 

 

 

 

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