黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦! 作:とんこつラーメン
誰だあの美少女は!?
普通にめっちゃ可愛いじゃねぇかコンチクショウ!!
てなわけで書きます。
三時間目になり、今度は今までとは違って千冬姉が教壇に立っていた。
千冬姉の授業か…どんな事をするんだろうか。
「三時間目は、実戦にて使用する各種装備の名称や使用方法、特性などについての授業をしようと思う」
要は、ISの武器に関する授業って事か。
なんとも千冬姉らしい授業だけど、これはこれで重要そうだ。
どこまで着いていけるかは分からないが、せめて授業の内容をノートに書くぐらいの事はしておこう。
後で船子に勉強を教わる時、少しでも負担を軽くするために。
「…っと、その前に一つ、忘れている事があったな。本当ならば朝のSHRでやっておくべき事だったが、どこぞのアホが大騒ぎしたせいで決められなかったからな」
…その『アホ』が誰なのかは敢えてツッコまないでおく。
さっき見せて貰ったメールで、この言い方も千冬姉なりの『愛情表現』だって分かったばっかりだしな。
「今から、この一組の『クラス代表』を決めようと思う」
クラス代表? なんだそれ?
学級委員長的な物だと思えばいいのか?
「クラス代表とはなんだ…と言った顔をしているな。まぁ、簡単に言えばお前達もよく知っている『学級委員』や『クラス委員』と同じような役職だと思えばいい」
やっぱりか。
単純にIS学園では言い方が違うってだけだったんだな。
「クラス代表とは、定期的に生徒会にて開かれる会議に出席したり、各クラスの委員が集う委員会への出席。後は文字通りクラスの代表として『クラス対抗戦』に出場することになる」
んん~? ま~た聞き慣れない単語が飛び出したぞ?
クラス対抗戦ってなにさ?
「『クラス対抗戦』とは、入学時点や現時点での実力の推移を測る為に学園内にて行われる大会だ。今の時点では大した違いは無いかもしれないが、それでも競争心と言うのは須らく向上心を生み出す」
それってつまり、IS学園流『実力テスト』って思えばいいのか?
クラスの代表としてそれに出場とかイヤだなぁ~。
それ以前にクラス代表ってもの嫌だ。
俺にはそっち系の仕事は向かないんだよ。
「当然だが、一度決まれば最低でも一年間は代表の変更は出来ないので、そのつもりで。自薦でも他薦でも構わん。誰かいないか?」
そりゃそうだよな。
そう簡単に変更で来たら代表の意味ないし。
しっかし、他薦はともかく、自薦なんてする奴いるわけが…。
「は―――――――――――――――――――――――――い!!!!!!!」
……いたよ。すっかり忘れてた。
船子はこういうのには絶対に自ら突き進んでいく質だからな…。
「あー…誰かいないか?」
「はい! はい! は―――――――――――い!!! 船子ちゃんがやりまーすっ!!!」
「「「「「…………」」」」」
どうして、この空気の中で全力全開の挙手が出来るんだよッ!?
お前の心臓は超合金Zで出来てるのかッ!?
千冬姉だって目を逸らして見ないようにしてるしー!
「誰でもいいぞー。誰かー…」
「アタシがやるって言ってんじゃねぇかよ――――――っ!!!」
「おーい…お前らー…」
「アタシがやるって…ぐぼはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「誰かー…」
「うぼあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「おーい……」
「ナマステー」
「手を上げろー…」
「左舷!! 弾幕薄いぞ何やってんのっ!?」
「…………」
船子の奴…千冬姉がとことんまで反応しないのをいい事に好き放題してやがるな…。
千冬姉…マジでそろそろ見て見ぬふりを辞めないと、どうなっても知らないからな…?
「…………金野船子か。他には誰かいるか?」
「おっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
あ。遂に根負けした。
「ちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっと待ってくださいましッ!!!」
「オルコットか。どうした?」
お? さっきのサロメ嬢のコスプレっ子か。
いきなり大声なんか出してどうしたんだ?
「確かに金野さんは優秀な人物かもしれませんが、こんな性格の人がクラスの顔とも言うべきクラス代表になるなんて、とてもじゃないですが見過ごせませんわっ!!」
「ほぅ…? ならば、どうすると言うんだ?」
「決まっていますっ!! 私も自薦しますっ!!」
「いいだろう」
おぉ~…船子に対抗勢力が誕生した。
さて、アイツはどうするのかな?
「んおっ!? テメェがアタシとヤるってのかっ!? いい根性してるじゃねぇかっ!! 船子ちゃんは、いつでもどこでもどんな奴の挑戦も喜んで受けてやるぜっ!!」
「ふん…そう言ってられるのも今の内ですわ」
「えー…じゃあ、ここでアタシがクラス代表になった時の公約を発表しようと思いまーす」
「こらそこ! 無視しない!!」
船子にそんな事を言っても無駄だぞー。
つーか公約? クラス代表にそんな事が出来る権限ってあるのか?
「ワタクシ、金野船子がクラス代表になった暁には……」
「食堂のメニューにビールを追加する事をお約束しまーす」
……今、なんつった? ビール?
「よし。金野船子をクラス代表に決定する」
「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」」」」」
ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!? 織斑センセェェェェェェェェッ!?
仮にも教師がめっちゃ簡単に酒に釣られてるんじゃねぇぇぇぇぇぇっ!!
「フッ…流石は千冬の姉御。話が分かるじゃねぇか。そんな姉御には…船子ちゃん特製のおつまみもお付けするぜっ!!」
「な…なにっ!? それは、この間作ってくれた、あの『チーズちくわのベーコンマヨ巻き』とかかっ!?」
「それだけじゃねぇぜ!」
「で…では…ピリ辛で美味い『もやしナムル』も…」
「当然ッ!!」
「『ガーリックバターしいたけ』と『ちくわの枝豆チーズ焼き』も…?」
グッ! っと船子は最高の笑顔でサムズアップした。
そうなんだよ…あいつって料理もめっちゃ上手なんだよ…。
俺も何度も参考にさせて貰ったレベルで。
千冬姉が言ってたメニューも、どれもこれも聞いてるだけで美味そうだったなぁ…。
「え…? 金野さんって料理も出来ちゃうの…?」
「話聞いてるだけでお腹空いてきた…」
「ゴクリ…!」
「やっば…段々と金野さんにクラス代表をして欲しくなってきたかも…」
俺が言うのもあれだが、船子の女子力は恐ろしく高い。
それこそ、今からでも嫁入りできるって思えるほどに。
まぁ…あいつが誰かの嫁になってる姿なんて想像もしたくないけどな。
普通に俺は嫉妬してしまうと思う。
「お…お待ちください…。金野さんは…その…お料理もお得意なんですの…?」
「おう。暇潰しにやってたら、いつの間にか上手になってた」
あの実力で『暇潰し』って言える辺り、船子って本当にぶっ飛んでるって実感するよなぁー…。
「本当は織斑君を他薦しようと思ってたけど…」
「なんかもう言える空気じゃなくなったね…」
危なかった――――――!!
船子が自薦してなかったら、危うく俺が推薦されてる所だったー!!
よし。後で船子にはお礼に何かお菓子でも作ってやろう。
「つーか、むっちゃ普通の事を言うけどさ…学校の食堂に酒を置いちゃダメだろ…」
「何を言う。教師だって人間。時には酒が飲みたい時だってある」
「だったら、別に食堂じゃなくて自分の部屋で飲めばいいだろ?」
「昼間に飲むビールの美味さを知らんから、そんな事が言えるんだっ!!」
「休日の昼に飲めばいいだろッ!?」
「平日の昼に飲むから最高なんだろうがっ!!」
もうダメだ、この教師!! 色んな意味で終わってるっ!!
山田先生からも何か言って…と思っていたけど、なんか千冬姉の隣で唇に人差し指を当てながら涎を垂らしてなんか想像してたので、この人もダメだと即座に悟った。
「フッ…何も、私が伊達や酔狂で金野をクラス代表にすると言っている訳ではないぞ?」
「いや…明らかに酒に釣られてたじゃねぇか…」
一体どんな理由があるって言うんだ?
是非ともお聞かせ願おうじゃねぇか。
「その理由は織斑…お前もよーく知っている筈だ」
「俺が?」
「そうだ。お前と金野は同じ中学校出身だ。あいつの中学時代を思い出せ」
「あ」
…そうだった。
他の皆の事は知らないけど、少なくとも船子は普通の中学生がまず絶対にしないような『偉業』をやってるんだった。
船子の言動とテンションに振り回されて完全に忘れてた。
「織斑君…金野さんと同じ学校だったんだ…」
「っていうか、理由って何?」
「それなー…」
言っていいのか少しだけ迷って思わず船子の方を見ると、アイツは何故か一人でバトルドームをやって盛り上がってた。
「よっしっ!! 船子ちゃんの一人勝ちだぜぇぇっ!!」
一人でやってるんだから一人勝ちも何もないだろ。
少しでもアイツの過去を掘り下げる事を心配した自分がバカだった。
「…船子は中学の時、実は生徒会長をやってたんだよ」
「「「「「うそぉっ!?」」」」」
「マジもマジ。大マジ。しかも、普通に生徒会長をやってたんじゃないんだよな…」
「ど…どういうこと?」
「アイツさ…中一の時に生徒会長選挙に立候補しやがってさ、さっきみたいな滅茶苦茶な公約を言って、それを本当に実行した結果…圧倒的な得票数で大勝ちしやがったんだよ」
「因みに、その『公約』って…?」
「…学校の蛇口全部からオレンジジュースが出るように改造したり…とか」
「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」」」
今のは単なる一例に過ぎない。
他にも生徒会長になった船子がやった事は沢山ある。
全部言ったら本当にキリが無いからここでは伏せるけど。
「アイツのモットーは『世界一楽しい学校にする』でさ、それを本当に実現してみせたんだ。実際、船子が生徒会長をやってた三年間は、学校が楽しすぎて病欠とか以外の欠席者は誰もいなかったし、不良やってた連中も全員が無事に更生して、今じゃ普通に学校に通ってる。卒業式の時、皆が声を揃えてこう言ってたんだ。『最高に楽しい三年間だった』って。それは俺も同感だったし、本当に笑顔が絶えない学校生活だったのはよく覚えてる」
船子って調子に乗る時と真面目な時が完全に分かれるから、そのギャップにやられてファンになった奴もかなり多いんだよな。
俺の知らない所で男子達からラブレターを貰いまくっていたのにはブチ切れかけたけど。
「つまり…金野さんには実績があるって事…?」
「そうなるな。船子には不思議なリーダーシップがあるんだよ。破天荒ではあるけど、やる時はやって、決める時はちゃんと決めてくれる奴だから、俺は船子でもいいと思うよ」
あ…なんか知らんうちに俺が船子の応援演説をしたみたいになってる。
まさか、これも千冬姉の狙いか?
「織斑が言った通りだ。金野には人々を引っ張っていた経験がある。これはクラス代表として非常に大きな才能だ。オルコット、これでもまだ金野に対抗するか?」
なんかもう完全に千冬姉が船子の味方になってる件。
やっぱ船子の事がめっちゃ好きなんじゃねぇか。
どうして素直にならないんだ?
「そう…ですわね。認めましょう…確かに金野さんはクラス代表として相応しい才能を持ち合わせているのでしょう。ですが! ここまで来て引き下がる事なんて出来ませんわ! 私にも代表候補生としての意地がありますの!」
「では、どうする?」
「決まっています!! 金野さん!!」
「ん~? どした? あたしのサインでも欲しいのか?」
どうして、そうなる。
こいつ…絶対に今までの話を全部聞いてなかったな。
「クラス代表の座を賭けて、この私と勝負ですわっ!!」
「アタシと勝負…? いいぜ…受けて立ってやろうじゃねぇかっ!!」
いつもは面倒くさいことはやりたがらない船子が珍しくやる気だっ!
良くも悪くも、その時の気分次第だからなぁ…。
今回は偶然にも、気分的にやりたいと思ったんだろう…多分。
「じゃあ、アタシはこの『エルドリッチ』デッキを使うぜ!!」
「私は当然、この『ブルーアイズ』デッキを…って、違いますわよっ!!」
「え? デュエルで決着をつけるんじゃねぇのかよ?」
「当たり前ですっ!! ここはデュアル・アカデミアじゃなくてIS学園ですわよっ!! でしたら当然、ISで決着をつけるに決まってるでしょうっ!!」
「んだよ~。それならそうと早く言えよな~。勘違いをしちまったじゃねぇかよ~」
何をどう勘違いをしたら、ISでの試合がデュエルになるんだ?
因みに、俺が愛用してるのは『ギア・フリード』デッキだ。
つーか、オルコットさんも何気に遊戯王を知ってるんだな…。
「別にいいぜ。ま、ISでもアタシは負けねぇけどな!」
「実技試験で織斑先生と互角に渡り合ったという実力…この目で確かめさせていただきますわっ!」
「上等だっ! IS学園の制服のままカレーうどんを食う時ぐらいの覚悟を持って掛かってきやがれってんだっ!!」
IS学園の制服って真っ白だから、絶対にミートソース系のパスタとかカレーうどんって容易には食えないよなー。
あれって一度でも染み付くと、中々汚れが取れないんだよー。
「決まりだな。では、二人の勝負は今日から一週間後になる来週の月曜の放課後。場所は第三アリーナで行う事にする。金野とオルコットは各々に準備を進めて置くように」
「はい!」
「りょーかーい」
なんつー気の抜けた返事…。
船子の実力は疑ってねぇけど…本当に大丈夫か?
「少し時間が押してしまったが、これより授業を開始する」
まぁ…俺がクラス代表に選出される切っ掛けを潰してくれた事にだけは感謝してるけどな。
だから、自分に出来る事なら精一杯、船子に協力してやろう。
アイツの友人として…幼馴染として…な。
一夏、無事にクラス代表を回避。
と同時に船子がセシリアと戦う事に。
果たして、どんな試合になるのやら。