黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦!   作:とんこつラーメン

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なんかリアルに一週間以上経過しちゃいましたね。

いやはや…遅れてすみませんでした。







時が過ぎるのは一瞬だ…本当に

「まさか、船子が修行に出るとはな…」

 

 朝の教室。

 俺は箒と昨日、船子が千冬姉に言っていた事を話していた。

 箒には部屋で会った時に教えていたんだけど、予想通り物凄く驚いていた。

 

「入学した次の日から修行で休むなんて前代未聞ではあるが…」

「同時に船子らしいって気もするんだよな」

 

 ふざけた意味ではなく、真面目な意味で。

 何事にも真剣に取り組むって姿勢だけは本当に尊敬できるから。

 

「問題は、たった一週間でどうなるか…だが」

「アイツの事だ。きっと『一週間しかない』じゃなくて『一週間もある』って考えて頑張ってると思う。発想の転換の仕方に関しては天才だからな」

 

 常人じゃ決して思いつかないような思想でいつも俺達を驚かせてくれる。

 お蔭で、中学時代は本当に暇しなかった。

 

「そもそもの話、あの千冬さんと剣で互角に渡り合ってる時点で並の連中では相手にならないと思うんだが…」

「俺もそれには激しく同感。でも、そこで妥協しないのも船子なんだよ」

「暫く会わない内に、随分と体育会系になったんだな…船子は」

「体育会系ってよりは…破天荒系?」

 

 何から何まで全てがカオスだから、誰もアイツの行動が読めない。

 船子に振り回された結果、疲労で倒れた先生がどれだけいた事やら…。

 

「まぁ…それでも一つだけ確定してる事はあるがな」

「待て。それは私にも分かる」

 

 だろうな。

 久し振りとは言え、箒も伊達に船子の幼馴染をやってない。

 

「「オルコット(さん)の敗北は必至になる」」

 

 真剣な顔をした時の船子は冗談抜きで自分を徹底的に鍛えあげてくる。

 バスケ部の助っ人をした時はダンク連発。

 サッカー部の助っ人でキーパーをやった時はゴールを完全死守。

 柔道部の助っ人の時は相手選手を全員一人で一本勝ち。

 吹奏楽部の助っ人の時は、その美しい音色で聞く者全てを感動させた。

 

 本当に船子の辞書には手加減という文字が存在していない。

 マジもマジ、超大マジで挑むのが金野船子という少女なのだ。

 

「なんだか、オルコットの奴が哀れに感じてきたな…」

「俺も」

 

 なんて言ってると、オルコットさんが教室にやって来た。

 いつもと変わらない様子に見えるが、その心境は如何に?

 

 それから少ししてから、千冬姉と山田先生もやって来た。

 

 

 

 

 

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・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 朝のHRの最中、当然ではあるが一つだけあいている席の説明をしてくれた。

 

「それと、昨日の今日であれだが…金野は今日から来週の試合の日まで学校を休むことになっている」

「なんですってっ!? それは一体どういう事なんですのッ!?」

 

 皆が『えーっ!?』って言う前にオルコットさんが慌てて立ち上がった。

 仮にも対戦相手なんだから、その反応は当然だけど。

 

「金野はお前との試合に向けて、外で己を鍛え直して来ると言っていた。つまり、それだけ奴はお前との試合に本気であり、遠慮なくお前の事を叩き潰す気満々でもあるという事だ」

「う……」

 

 おいおい…教師が生徒を脅すような事を言うなよ…。

 なんかちょっぴりオルコットさんに同情しちまうよ。

 

「確かに言動はふざけた奴かもしれんが、やる時は本当にやる女…それが金野船子だ。その並々ならぬ努力によって、これまでアイツは幾多の輝かしい戦績を残している。これが一体どういう意味か…お前には分かるか? オルコット」

「…………」

 

 あーあ。遂に黙り込んでしまった。

 

「貴様がどんな選民思想を持っているかは知らんが、下らんプライドなんぞに固執しているような状態では、船子には掠り傷一つすら与えられるかどうかも不明という事だ」

 

 おい…今、確かに『船子』って名前で呼んだぞ。

 俺の事も教室じゃ『織斑』って呼ぶのに、この差は一体何なんだ?

 まぁ…千冬姉が船子の事を好意的に見る気持ちは理解出来るけどさ。

 

「そ…そんなことは!」

「無い…と本当に言い切れるのか? 聞いているのだろう? 実技試験でのアイツの偉業を」

 

 よくよく考えてみると、確かに結構な偉業かも知れないな。

 だって、昔の事とはいえ一度は世界の頂点に立った千冬姉と互角に渡り合うって、それってつまり船子の実力も世界クラスって事だろ?

 冷静に考えて、それって凄すぎじゃね?

 俺なんて、秒で倒される自信があるわ。

 

「分かったなら、お前も来週の試合に向けて本気で準備をしたらどうだ? お前の事だ。どうせ『候補生でもない相手なんて楽勝』…なんて馬鹿げたことを考えていたのだろう」

「そ…そんなことは…ありませんわ……」

 

 逸らしてる。めっちゃ目を逸らしてるから。

 昨日、あれだけ船子の凄さを聞いたのに、よく『楽勝』とか思えるよな。

 逆にその余裕が凄いって思うわ。

 

「今回の船子の外での修業に関しては学園公認になっている。故に、今回は特別に授業に出席していなくても単位が取れるような処置になった。しかし、これは決して依怙贔屓とかそんな事ではない。船子にはそれだけの実力と知識があり、最初の授業程度ならば欠席しても今後の勉強に支障が無いと判断したからだ。その事をよく肝に銘じておけ。いいな」

 

 なんか尤もらしい事を言ってるけど、半分は依怙贔屓してるよな…きっと。

 だってもう普通に船子の事を名前呼びしてたし。

 

「それと、データ取得のために特別に織斑に専用機が用意される事になった」

「なんかついでみたいに言われても反応に困るんですけどッ!?」

 

 クラスの皆も『ポカーン』って顔になって叫ぶタイミングを逃しちゃってるし!

 

 

 

 

 

 

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 そして…あっという間に試合当日になった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

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・・

 

 

 

 

 試合会場となる第3アリーナ。

 俺と箒、千冬姉と山田先生の四人はAピットにて船子がやって来るのを今か今かと待ち続けていた。

 今朝になっても船子は帰ってこず、そのまま放課後になってしまった。

 

「山田先生…連絡は来てないか?」

「いえ…来てません。まだ金野さんはまだ……」

「…そうか」

 

 くそ…どこで何をやってんだよ船子!

 もう既にオルコットさんは向かい側のピットで準備を終えてるんだぞ!

 しかも、候補生の試合を見れるからって理由でアリーナの観客席には大勢の生徒達が集まってるし!

 

「落ち着け一夏」

「箒…でもよ!」

「幼馴染である私達が船子を信じないでどうするんだ」

「…そうだな」

 

 流石は剣道の全国制覇しただけはある…ってか。

 こういう時の心構えは流石としか言いようがない。

 

「けど、こもままだとオルコットさんが『不戦勝ですわー!』とか言い出しそうだな…」

「その時はその時だ」

 

 冷静にならなくちゃと頭じゃ分かっているけど、どうしても心がソワソワしちまう。

 別に自分が試合をする訳じゃないのに…なんでだろうな…。

 

「あと10分だけ待って、それでも来ない時はオルコットの不戦勝とする。アリーナの使用時間も無限という訳じゃないからな」

「10分か…」

 

 タイムリミットが刻まれ始める。

 俺は落ち着かなくて、何度も頻繁にスマホの画面で時間を確認してしまう。

 1秒1秒が物凄く感じる中、突如としてピットの入り口が開いた。

 

待ていっ!!

「「「「!!?」」」」

 

 船子が着たのかと思って全員が振り向くが、何故かドアからは沢山の煙が出ていて、そこに立っている者の姿が良く見えない。

 というか…今の完全に男の声じゃなかったか?

 しかも、猛烈にどこかで聞いたことがあるような…。

 

「草原を渡る風は、自分がどこで生まれたのかを知らない」

 

 え? 急に何? どこからかギターっぽい音が消えてきたし。

 

「だが、風は誰にも束縛などされず支配もされない」

 

 こっちに向かって歩いて来ているのか、徐々にその姿が露わになっていく。

 なんか妙に影が大きいような気が…?

 

「人、それを『自由』という!!」

 

 こちらに最も近付いたと同時に煙が晴れ、その姿が完全に明らかになる。

 いきなりピットに入ってきた、そいつの正体は……。

 

「「「「着ぐるみ―――――――――っ!!?」」」」

 

 なんかミカンみたいな顔をした着ぐるみが堂々と立ってるんですけど――っ!?

 つーか、よく見たらその腕に誰か抱えてないかッ!?

 

「お…おい一夏! あいつが腕に抱えているのは…」

「船子ッ!?」

 

 着ぐるみ野郎に制服状態でお姫様抱っこされていた船子だったが、かなり熟睡しているのか静かな寝息を立てていた。

 

(う…船子の寝顔…物凄く綺麗だ……)

 

 リアル天使の寝顔じゃねぇか…。

 こんな顔を見せられたら、大抵の男は一発で惚れちまうって…。

 

「彼女は、ついさっきまで壮絶な死闘を繰り広げていた。幾多の命の未来を掛けた死闘をな」

「なんだとっ!?」

「本当ならば、我々も船子にはゆっくりと休んでいてほしかったが、彼女にはどうしても果たさなければならない試合があるらしく、仕方がないのでこうして俺が彼女を運んできたのだ」

「そうだったのか…感謝する」

 

 理由を聞いて最初は驚いた千冬姉だったけど、すぐに着ぐるみ男が敵ではないと判断して、船子の身体を受け取った。

 それにしても…『死闘』って一体なんなんだよ…!?

 この一週間の間、お前の身に何が起きていたっていうんだ…!?

 

「ところで、貴様は一体何者だ?」

「我が名を問うか…いいだろう」

 

 船子の身体を近くにあったベンチに寝かせながら、千冬姉がずっとみんなが疑問に感じていた事を代弁してくれた。

 なんつーか…無駄に迫力があってめっちゃ聞きづらかったんだよな…。

 

「チャーミングなはっさくフェイス!!」

 

 は…はっさく? あれってはっさくだったんだ…。

 不思議な魅力はあるけど…。

 

「おしゃれな尾道ラーメン帽子!」

 

 あの頭に付いてるのってラーメンだったのかよッ!?

 つーか今、尾道って言ったかッ!?

 

「漁師の心意気…クールな長靴!」

 

 長靴って…クールか?

 

「イカしたナウい『ONO』トレーナー!」

 

 ナウい言うな。顔と声に全くに似合ってないわ。

 

「我こそは尾道の象徴……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小野ミチオ……推参!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「小野ミチオ―――――――っ!?」」」」

 

 小野ミチオの事は全く知らねーけど、この話し方やさっきの口上とかはどっかで聞いたことがあるぞっ!?

 も…もしかして、クロノス族の『あの人』なんじゃないのかっ!?

 なんで俺が知ってるのかとかは取り敢えず置いといて。

 

「そ…その小野ミチオが、どうして船子と一緒にいた…?」

「その事を話せば非常に長くなる。だが、今は余り時間に余裕が無いのだろう?」

 

 そういやそうだった! もうすぐオルコットさんとの試合が始まるんだ!

 け…けど、寝ている船子を無理矢理に起こすのは流石に気が引けるって言うか…。

 

「う…うん…い…一夏……」

「船子…?」

 

 起きた? いや…違うな。これは寝言だ。

 夢の中でも俺の名前を呼んでくれるのは嬉しいけど…。

 

「逃げろ…逃げるんだ一夏…! そうだ…こっちへ…アタシの方に急げ…!」

 

 船子…夢の中とは言え、俺の事を助けてくれようとして…。

 

「ここまで…ここまで……ククク…バーカバーカ! 引っかかりやがったなマヌケがぁ~!! どうだ! 船子ちゃん特製の地獄トラップはっ!!」

「船子さんッ!?」

 

 さっきまでの切羽詰まった口調はどこに行ったんですかねぇっ!?

 急に激変し過ぎだろッ!?

 

「うわっ!? 臭…くっさぁっ!? 一夏菌バーリアっ! えーんがちょー!!」

「夢の中でも好き放題だなオイッ!?」

「ガハハハハハハハ! 溶けろ溶けろ!! な…何ぃっ!? ジョグレス進化っ!? んな馬鹿なっ!?」

「一体どんな夢を見てんだよお前はッ!? いい加減にマジで起きろ!! 早くしないとオルコットさんの堪忍袋の緒が切れちまうだろーがッ!!」

 

 俺が船子の首根っこを掴んで体を揺らそうとしたら、急にこっちが首根っこを掴まれて頸動脈を絞められたッ!!

 

「もう一夏はダメだ…千冬の姉御! あたしが動きを止めている間にコイツにトドメを刺してやってくれっ!!」

「いだだだだだだだだだだだだだっ! 動脈! どーみゃくっ!! 思いっきり首が絞まってるからー!! 試合前に俺の方が殺される―ッ!!」

 

 ちくしょー!! 誰でもいいから助けてくれ…って千冬姉ッ!?

 なんかいきなり刀を持って構えてるんですけどッ!?

 

「いや…船子が一夏にトドメを刺せって言うから…」

「それは寝言だから! 本気にすんなよっ!?」

 

 なに考えてんだ、この姉はーっ!?

 幾ら好いてるからって寝言をマジで聞く奴があるかー!

 

「ならば私が代わりに…」

「箒もしなくていい!!」

 

 なんか最近、箒のノリが束さんに似てきてないかッ!?

 あの姉にして、この妹って事なのかッ!?

 

「では、この小野ミチオが責任を持って介錯を…」

「アンタはだーっとれいぃっ!!」

 

 見た目に反して真面目そうなミチオ君まで入ってくんなよッ!?

 完全に場の空気がカオスになっちまったじゃねぇかっ!!

 

「金野さーん。起きてくださーい。もうすぐ試合が始まりますよー」

 

 ここで、さっきまで少し影が薄かった山田先生が船子の体をゆすって起こそうとしてくれた。

 けど、この程度で起きれば誰も苦労なんてしな……。

 

「んん~…? んだよぉ~…もう朝かぁ~?」

「起きたしッ!?」

 

 さっきまで、あんなにも寝た状態で俺の首を絞めてたくせに、山田先生の一言で呆気なく起きてんじゃねーよっ!!

 さっきまでのドタバタは一体何だったんだっ!?

 

「あれ…? いつの間にIS学園に戻ってきてんだ…? さっきまで確か『ガミラス』にいた筈なんだが…」

「俺が君を此処まで連れてきた」

「ん…? おぉ~!! 小野ミチオ君じゃねぇーかっ!!」

 

 ガミラス? それって、もしかしなくても『ガミラス星』だったりする?

 この一週間で一体どこまで行ってるんだよ、お前はッ!?

 

「なーんか良い匂いと声がすると思ったら山田先生だったのか。お蔭ですっかり目が覚めたぜ。サンキューな」

「い…いえ…先生として当然ですから…」

 

 あ…船子の顔を超至近距離で見て山田先生が顔を真っ赤にしてる。

 起きて早々に秒で副担任を堕とすとは…。

 

「「ちっ!」」

 

 千冬姉と箒が忌々しげに舌打ちをしたっ!?

 

「起きたのなら、とっとと試合の準備をしろ。もうオルコットは待ちくたびれているぞ」

「うぉっ! 今ってまさか放課後かよッ!? なら急がなきゃな!」

 

 寝起きだというのに全くふらつく様子も無く立ち上がり、そのまま来ている制服の肩に手を当てた。

 

「んじゃ…とっとと行きますかっ!」

 

 と…取り敢えずギリギリ間に合った…ってことでいいんだよな…?

 なんつーかもう…マジでドッと疲れた…。

 

 

 

 




次回は遂に船子VSセシリアの試合。

そして、船子の専用機が公開!

その時、小野ミチオ君はっ!?
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