俺の経験からするとこの無秩序さは多分格ゲー   作:胡椒こしょこしょ

7 / 7
格ゲー、エッチなママキャラどんどん出して欲しいと思うので初投稿です。


格ゲーの問答、大抵自分が何者か聞かれがち

第六都市アイノン。

言うならば水の都と言った感じで、町の中心部を大きな運河が流れていてそこから枝分かれするように水路が環状線状に広がっているらしい。

ここに来るまでに見たどの場所よりも活気のある街である。

 

道行けば橋が散見されて、道路や歩道も石畳。

周辺の家屋も多くが石や煉瓦で形成されているものが多い。

石畳の道に沿うように街路樹が植えられており、涼し気な木陰を作り出していた。

大きなコンサートホールがあるらしく、芸術の街とも呼ばれているらしい。

 

水の都と言うだけあって、見ていると西洋の方の街並みっぽいなと感じた。

なんていうかほら...なんとなくだが、この街自体ヴェネツィアとかそこら辺をモチーフにしてそう。

...まぁ、正直言えば今まで考えていたことはマリーさんの受け売りでしかないんだが。

 

その受け売り元であるマリーさんと言えば、俺を先導するかのように前を歩いている。

周りでは道行く人やお店に呼び込もうとする人、噴水の方では大道芸人らしき人が芸を披露してそこに人が集まっているなどあからさまに今まで見てきた場所と違って活気溢れていた。

 

「結構栄えてるんですね....街並みも綺麗だし。」

 

「まぁ、ここら辺における主要な都市ですから。芸術の街と言ったように景観とかも定められた基準があって建物が建てられてるんですよ。」

 

「なるほど....。」

 

景観とかも考えられているのか、

...京都とか景観意識されてファストフード店とか和風っぽくなってたりするし、それみたいなもんかな。

そんな詮無いことを考えていると、彼女が不意に足を止めた。

顔を上げると、そこには整った庭園にまっすぐ伸びた道。

そして、向こうには聳える白壁に世界史の授業とかで習った覚えのある何とか様式みたいな感じの曲線を描いた柱の意匠が施された建物。

それはなんていうか、テレビでしか見たことないけど....西洋の方の大聖堂のようであった。

 

「そしてここが管理機関嘱託組織、『聖詠教会』です!...まぁ、私からしてみたら里帰りって感じなんですけどね。」

 

彼女は振り返るとそう言って笑いかけてくる。

それに対して俺は笑い返すことが出来なかった。

聖詠教会...管理機関の嘱託組織。

どうやらここで一応俺という存在を連行するという旨をまとめた調書を作る必要があるらしい。

 

パッと見でなんか高庭鋏を持って庭木の手入れしてるシスター服の女の子が何人か居るの見えるし、平時は普通に教会なんだろうか?

なんにせよ、気を緩めるわけにはいかないな。

 

「取り敢えず行きましょうかナナイさん。」

 

「...うす。」

 

歩き出すマリーさんに追従して一歩踏み出す。

...こう、なんていうかこういう庭園風景?の所を歩くのは初めてなので結構新鮮な気分だ。

すると、敷地内に入っていくマリーさんに気づいたのか作業中だったシスターさんが顔を上げた。

 

「あ、マリーおねーちゃーん!帰ってきたんだ―!!」

 

その中で大体...多分小学生高学年くらいの年齢っぽい栗色の髪の少女がマリーに対して手を大きく上げて手を振る。

するとその少女と同じくらいの年齢のシスターたちもその声でマリーさんに気づいたのか顔を上げてぴょんぴょんと飛び跳ねたり、手を上げたりしていた。

年下の子に慕われているようである。

ここで育ったって言ってたし、あの子たちからすれば上京したお姉ちゃんが帰ってきたみたいな感じだろうか?

 

俺にはよく分からない感覚であるが、友達の中には一人暮らしをしていた兄が里帰りした時に、文句を言いながらも律儀にパーティの準備があるからと早めに帰っていた。

兄や姉が居る家庭はそういう感じなんだろう。

 

「ふふっ、ただいまみんな。お姉ちゃん、ちょっとこの人の事でマザー・テレジアと話をしなくちゃいけないから...」

 

そう言うと、栗毛の少女の目線がこちらを向いた。

そして呆気に取られたような表情になる。

他の少女達も同じ反応だ。

なんなら庭の手入れをしていた少女はその辺に高枝鋏を手放していた程だった。

え....な、なに?なんなの....??

 

「お、お姉ちゃんが男連れてきたぁぁぁ!!」

 

「ま、マザーに報告しないと~~~!!!」

 

「えっ、ちょっ...ちょっと!そんなんじゃないって!!ねぇ、待っ...待って、待ってたらぁ!!」

 

蜘蛛の子を散らすように大聖堂へと入っていく彼女達。

そんな少女達に手を伸ばして制止の言葉を掛けるも、その頃には既に少女達は大聖堂の中へと入っていた。

そして伸ばしていた手をだらりと落とした。

 

...もしかしたら、ここってシスターしか居ない...とか?

だとしたら他所に居た姉代わりがどこぞの馬の骨とも知らない男を連れてきたら騒然となるに決まっている。

寧ろあのくらいの年頃の子だと変な勘違いとかしてそうである。

....いや、これは自惚れとかじゃないよ?

論理的に考えた上で導き出したことっていうか....いや、なんか色々言い訳してる時点で気持ち悪いな。

 

それに、俺はこの世界で何の背景もない。

寧ろ自分の実家ともいえるところで変な勘違いされたマリーさんの方が気の毒だろう。

しかも相手は自称異世界人のよく分からん奴で、ここに連れてきたのは仕事だからと来てる。

まぁ、何はともあれ目の前で肩を落としているマリーさんに掛ける言葉は一つしか思いつかなかった。

 

「...なんか、すんません。」

 

「いえ....あの子たちが居るってことはこれ、起きるべくして起きたっていうか...覚悟は出来ていたはずの事っていうか....ハハッ.....。」

 

マリーさんはたどたどしく言葉を紡ぎながら力なく笑う。

結構来てんな...心に。

 

「えーと、まぁでも!結局は調書を書く上でマザー・テレジアには貴方の事を説明しないといけないわけですし!だから、気にしないでください!上役への最低限の説明を済ませてから面会となりますから、その間応接間で待ってもらうことになると思います!」

 

「あ、うす....分かりました。」

 

大聖堂なのに応接間とかあるのか....まぁ管理機関の嘱託だからそりゃあるか。

マリーさんは俺に対して明るく振舞うが、自分の中で折り合いをつけようとしているのが分かる。

なんというか...こう、お労しいなマリーさん...。

 

「それじゃ、ついて来てくださいっ!」

 

「う、うす!」

 

なんというか、まぁ...こうなってるのは紛れもなく自分のせいでもあって...。

その上で、この人から逃げないといけないんだよなぁ....。

何度目になるか分からない罪悪感を感じながらも、それを振り払うように声を出して彼女の後に続いて大聖堂の扉へと一歩踏み出した。

 

 

 

 

 

 

応接間。

一応宗教施設にあるからか、壁面にステンドグラスがあったり十字架の意匠が部屋の中で見受けられる。

俺はそんなソファに座り込むと背もたれに身を委ねた。

今、マリーさんはそのマザー・テレジアとやらに事情を説明している所だろう。

 

「...結局夢は見なかったな。」

 

二日前に見た残穢さんの過去。

まぁ個人的には寝る度に残穢さんの過去を見ることになるのは困るということで、昨日の夜は実験として俺が寝てる間に残穢さんには起きていてもらったのだ。

その結果が...夢一つ見ない快眠というわけだ。

 

『良かったじゃろ。それとも何か?やっぱり儂の過去を覗き見たくなったか?まったく...物好きな奴よの。』

 

「そんなんじゃないですから...やれやれみたいな感じ出すの辞めてください。...ただ、貴方の予想通りだったなって思っただけです。」

 

契約によって作られた経路を通して残穢さんの記憶が意識の沈んだ俺に流れ込んだ。

本当にそうなのかは俺には分からないが、現状からして残穢さんの予想が当たったのだろう。

なんにせよ、俺の快適な眠りは守られたというわけである。

 

『何はともあれ、これからどうするつもりじゃ?ここは敵の領域ぜよ。このまま手をこまねいていればそのまま飛空艇に乗せられて管理機関に連れていかれかねんぜよ。』

 

「それはそうなんですけどね....。」

 

確かに今の状況的に俺は応接間に一人。

一番望ましいのは街などで雑踏に紛れることなのだが、逃げるには良い状況であると言える。

しかし、ここは相手の領域であることは確か。

 

この部屋に通されるまでに何人ものシスターと擦れ違って、それでいて彼女達は俺に注目していた。

まぁ、身内が連れてきた知らない人間であるからっていうのもあるだろうが。

だからこそ、ここで下手な行動を取れば目につくのではないだろうか?

それに....。

 

「出入口、扉しかないしなぁ....。」

 

窓の類はなく、出入り口は両開きの一つの扉。

扉の前には人が立っていた。

流石に参考人だからだろう。

 

『なんじゃ、ならそこの万華鏡のようなもんからぶち抜けばよかろう。』

 

「万華鏡....アンタ、もしかしてステンドグラスのこと言ってる...!?いや、流石にそれは...つーか結局割れる音で悟られるじゃないっすか。」

 

正直、その発想はなかった。

ステンドグラスは何か宗教的な物語かなんかの一場面を表しており、結構凝った感じの作りをしていた。

間違いなく金も手間暇もかかっている。

これをぶち破るのは忍びないと感じる程だ。

 

それに一応ガラスであるが故にぶっ壊したら音で一発で逃げ出したことがバレるだろう。

忍びなさを乗り越えたとしても、うまみが少なすぎる。

俺はこの建物の構造を知らないどころか、ここら辺の地理も分からないのだ。

だからこそ、出来れば人が見ていない間にまるで蒸発するかのように失踪したいものである。

...なんか親みたいなことをせねばならんと思うと、凄い複雑な気分なんだが。

 

げんなりとしていると不意に扉をノックされる。

ビクリと肩を揺らすと、扉が開く。

一人のシスター服の少女。

扉の前で見張っていた子だろう。

杖のような物を持ち、顔には布が掛かっていて表情を伺うことは出来ない。

 

「ナナイ・マドカ様、マザーがお呼びです。...ついて来て頂けますね?」

 

「あっ、はい。」

 

顔布の少女に促されるままに、俺は彼女の後をついてゆく。

しかし、前を歩く彼女を見ているとどうしても考えてしまうことがあった。

 

...背中、やっぱり見えてるんだよなぁ。

 

マリーさんのようにミニスカートではない。

しかしそれはそれとして背中は結構開いたデザインをしていた。

マリーさんのスカートが短い上にスリットまで入っているのは執行官故に動きやすさを考えられているからだろうか?

....まぁ、流石にマリーさん自身の趣味とは思えないし、正式な制服であるならそういう理屈付けがされているだろう。

....されてるよね?

 

「...こちらです。」

 

そんなことを考えていると、少女は足を止める。

そこは一つの扉。

俺が居た場所と同じ様な両開きの扉。

そこで、少女は足を止める。

 

この先に、マザー...多分マリーさんが言っていたマザー・テレジアが居るってことだろう。

マザー・テレジアっていうくらいだし、おばあちゃんが居るんだろうか?

なんとなく宗教関係の権威って聞くと、お年を召した方がやっているようなイメージがある。

....あんまり宗教に関わっていない俺の貧相なイメージから来た偏見でしかないのだが。

 

「どうぞ、お入りください。」

 

「わかりました。」

 

俺は言われるままに扉を開いて中に入る。

まず最初に見えるのは壁に掛けられた巨大な十字架と三枚の巨大なステンドグラス。

ステンドグラスの意匠は俺の居た部屋の奴とは違ってなんか剣を持って居る人やなんかふにゃふにゃした感じの物。

何か宗教的な意味を持って居そうだし、この教会の関係者だったらそれの意味するところが分かるんだろうな。

 

両脇には長いすが道を開けるように並べられており、真ん中には一番前の台座まで明確な道が出来ていた。

そして十字架の真下、こちらを高みから見下ろせる段差の上に祭壇のような物を背にして一人の女性が立っていた。

 

「マザー、お連れ致しました。」

 

「...ありがとう。貴方はそこでお控えなさい。」

 

「はい。」

 

顔布の少女はその女性に言われると、頭を一度下げて扉の横に立った。

なんていうか、後ろから俺を見張られているような...そんな感じだ。

まぁこの場所の宗教的権威にどこの馬の骨とも分からない男を合わせるんだったらそうなるのも頷ける。

...まぁ、俺の考えすぎかもしれないけど。

 

どうやら前方の女性がマザー・テレジアであっているようだった。

周りにはマリーさんは居ない。

説明を終えたのだろうか?

それはさておき、正直俺は今驚いている。

未だかつてない程。

 

俺はなんていうか、おばあちゃんじゃないとしても結構歳行ってる女性かなとは思っていた。

だってマリーさんが子供の頃からの母代わりと言っていた。

だとしたら結構年配の人なんじゃないかと考えるのは至極当然のこと。

 

しかし、今目の前に立っている女性は母と言うよりは姉と言った方がしっくりきた。

...20代後半?、なんなら20代前半と言っても頷けるような女性だった。

肌はここから見てもきめ細やかで白磁のように白く、髪は艶のある金髪。

十人中十人が美人だと口を揃える、陳腐な表現だがそう断言できるような容貌だ。

 

頭に被っているベールは腰もとに届きそうな程長く、彼女の長い髪を覆っているかのよう。

修道服は彼女自身の豊かな体つきが衣服越しに激しく主張して寧ろ修道服のような形をしたドレスなのではないかと思ってしまう程。

黒い前掛けの胸元に大きく金色の枠組みで十字架の形に穴が開いていて、谷間と共に首に掛けてあるロザリオが見える。

 

...相も変わらず癖が見えるデザインである。

露出は確かに胸元の十字架の穴を除けば最低限ではある。

でも正直穴が開いている時点でそういう点ではおつりが来ると思うし、つーか女聖職者の胸元に穴開けるにしても十字架に開けるってどういう精神してんだろう?

デザインした奴、イカレてんのか?

本職の人が見たらこれこそ怒るでしょ...。

あぁそうか、この世界ではそんな服着てる本人が本職の人だったんだね....。

こう...俺の立場からしてみれば眼福だけどそこら辺を考えると何とも言えない気分になる物である。

というかこの服この人がデカいから着れてるだけで貧乳だったら見えちゃうよね!?

 

「...貴方が、ナナイ・マドカ...で間違いありませんね?」

 

「は...はい!」

 

俺はビクリと身体を撥ねさせる。

こちらを見下ろす彼女の瞳、そこには冷たい光が宿っている。

顔には表情がなく、悪く言えば仏頂面である。

だからこそ、目つきからどことなく怖い印象を受けた。

 

「お初にお目にかかります...テレジアと申します。未熟な身なれどこの管理機関嘱託組織『聖詠教会』の顔役をやらせていただいておりますわ。立場上、ここではマザーと呼ばれております。以後、お見知りおきを。」

 

『っ.....!』

 

彼女がその名を口にした瞬間、一瞬影がぶわっと騒めいた気がした。

な、なんだ....?

一瞬足元を見ると、影はさっきまでと変わらず凪のまま。

...なんなんだ?

どうしたのだろうか、残穢。

...気のせいか??

 

「は、はぁ...ご丁寧に。俺は七井円って言います。...えーと、いやそれは知ってるか...と、とにかくよろしくお願いします!」

 

俺は内心さっきの影が騒めいた気がしたことに首を傾げながらも、頭を下げる。

顔を上げても、彼女の表情に変わりはない。

感情が読みにくい人だった。

 

「...先ほどから目を丸くしてどうなさいましたか?何か気になることでも??」

 

「あ、いやその...えーと.....。」

 

すると、テレジアさんは俺の目を真っ直ぐに見ながら首を傾げた。

どうやら視線を悟られたようだ。

....まぁ真正面から向かい合っているのだから当然か。

しかし、ここの責任者の方にいやらしい服着てると思いましてとは口が裂けても言えない。

なんなら後ろのココに連れて来てくれた少女に殺されかねないだろうな、そんなこと言ったら。

 

だったらどうするべきか...。

現状俺は怪しい人物なのだ。

なんでもないと言っても不信感を煽ってしまうだろう。

思い返せば先ほどからと言っていた。

それならまぁ、彼女の事を若いなって思ったことを口に出せば当たり障りないのではないか?

そもそも嘘を言っているわけでもないしな、ちゃんと俺が思っていたことだし。

 

「マリーさんから母代わりだってことを聞いてたんで、正直その...気を悪くされたら申し訳ないんですけど、なんていうか母代わりじゃなくて姉代わりって言われた方がしっくりくるっていうか...こう、若々しい人がいらっしゃったので普通にびっくりしちゃったって言うか...。」

 

「....貴方と言う人は世辞を言うのがお得意なのですね、覚えておきましょう。」

 

テレジアさんは目を細める。

やば....気に障ったのだろうか?

よくよく考えてみれば若いんですねとかは分かりやすいご機嫌取りでよく用いられる言葉じゃないか。

マリーさんから聞いていた感じや今相対している感じからして、なんかそういう媚び売りは嫌いそうである。

いや、俺はそんなつもりはなくて普通に驚いたってことを伝えようとしてただけなんだけど....。

 

正直、この人はなんていうか現状までの印象ではあるが少し苦手だ。

なんていうか相対して、どことなく圧を感じるっていうか。

これは...そう引き取られる前に施設に居た頃に厳しい先生を前にした時みたいな、そんな感じ。

大人の目の前に晒された負い目のある子どもの気持ちだった。

...彼女がここの管理機関に繋がりのある組織を取り仕切っている存在で、それでいてマリーさんの母代わりだとすればなるほど、そんな感覚になるのも頷ける。

俺は、マリーさんを撒こうと機会を窺っている。

負い目なら、ちゃんとあった。

 

「えぇっと、それで...どういう要件で呼ばれたの..でしょうか?そのっ、マリーさんから俺の事説明はされてる....って認識で間違いない...ですかね?」

 

恐る恐るであるが、ここに呼ばれた理由とやらと説明はされているのかを聞く。

マリーさんから事前に面会があるって聞いたし、必要な段階なんだろうなとは予想してるんだが....。

それに気になるのは俺についてどういう説明がなされているかだ。

正直、マリーさんに言っている素性は馬鹿正直に言えば信じてもらえるはずのないことだ。

だからこそ、今どういう話の運びになっているのか気になるのは当然の事だろう。

...それに、こう...世辞がどうこうとかいう話題から早く離れたかったのもあるしな。

 

「マリーから、貴方のことについて大まかなことについては聞いています。...本来、この面会は報告だけでなくその当該人物がどのような人物であるか私が判断する為の物。」

 

彼女はそう言うと、ゆったりと一歩踏み出す。

なるほど...一応最終確認的な意味合いを持って居るのか。

それならそんなに重要な事は聞かれないのか。

であれば一安心...か?

 

ゆっくりと...しかし着実にテレジアさんがこちらに歩み寄ってきている。

何を思ってか、どういうつもりか....まったく分からない。

びくつきながらも身構えてしまう。

情けないことに、俺はテレジアさんに気圧されていた。

 

内心おっかなびっくりな俺を他所にテレジアさんは遂に俺のすぐ真ん前まで来ていた。

でっっか....。

片方で小顔の美形の顔一つ分くらいあるんじゃね?と思う胸。

そして背も俺よりも高い。

俺の身長は一般的な男子高校生のソレなので女性と考えれば結構な高さである。

彼女は俺を見下ろしている。

 

「っ..あ、あの....な、なんですか.....?」

 

「...やはり...この感じ....。」

 

テレジアさんは突如俺に手を伸ばすと、俺の頬に手を添える。

そしてボソボソと何かを呟いた。

な....なんだ....!?

何を言ってるのか聞こえなかったし、正直に言うとちょっとドキッとしてしまった。

テレジアさんは俺の目を見つめ、口を開く。

 

「...私は貴方に問わなければならない。....貴方は、何者ですか。一体、どこから来たのか?」

 

「え?でも、そういうのはマリーさんから俺について説明を受けたって....。」

 

「その上で、私は貴方に問うているのです。貴方は...私に対して、自分をどう定義するのか?重要なのはそこです。」

 

その上で問う...?

疑問符を浮かべるも、彼女と目が合うとやっと事態が飲み込めた。

俺は今測られてる。

大人が子供を測る時に向ける目つき、前の世界でも度々向けられたことのある視線。

そして、個人的に勘弁してほしい視線である。

誰かに測られるのは気分が良くない。

...それもあるがもしお眼鏡にかなわなかった際の失望、それが俺には正直キツイ。

 

確かにどこぞの馬の骨である俺がどういう人物か分からない。

でも彼女が聞いているのはそう言うことじゃないだろう。

マリーさんが俺をどう説明したのか分からない。

その上で、俺は自分をテレジアさんにどう表現するのか。

それを彼女は見ようとしてる。

 

もしかすればマリーさんは当たり障りのない説明をテレジアさんにしたのかもしれない。

よくよく考えれば異世界から来たとか言う人連れてきたとか言ってもイカレてんのか?と思う程だろう。

しかし、であれば俺も取り繕えば良いのかと言われればそうでもない。

マリーさんがどう取り繕ったかしらないし、そもそも俺の事を分かっていることそのまま伝えている可能性もあるのだ。

 

二者択一。

それでいてもし当たり障りのないことを言おうとしてそれがマリーさんと食い違っている場合、俺は自分を偽ろうとしたとして信用を失い、もしマリーさんが当たり障りのない説明をしていて俺が異世界から来たとか言ったら最早わけわからないことになるだろう。

 

それでいて、お前は何者か?という問い。

改めてあなたはどんな人ですか?と聞かれたら正直困る。

...なんか似たようなことを就職活動でやるらしいな。

自己PRかな?

 

張り詰める空気。

なんか....そんなことを延々と考えていると、ふと思ってしまった。

どちらにせよ、俺はマリーさんの言葉を把握していない。

であれば、どっちにせよ食い違ってボロが出る可能性があるのならそのまま伝えるべきなんじゃないか?

そっちの方がこう良いっていうか....この状況で取り繕おうとしても言葉が出てこないっていうか。

 

彼女が聞いているのは自分をどう定義するかだ。

であれば、それに対しての答えは一つしか持ち合わせていない。

問題は、それを口にした後。

それを考えると、躊躇ってしまう。

 

「....このまま押し黙るようであれば、沈黙が答えであると私は受け取りますが。」

 

痺れを切らしたのかそう口にするテレジアさん。

このまま俺に付き合ってくれるほど、甘くはないみたいだ。

....だったら、もう...言うしかない。

腹を括れ....七井円!

 

「...俺は、俺は。」

 

俺は、真っ直ぐにテレジアさんの目を見つめ返す。

そして、ゆっくりと...それでいて着実に口を開いて言葉を紡いだ。

 

「...俺は、異世界から来ました。どうして、どうやってここに来たのかなどはまったくわかっていません。俺は...七井円です。見ての通り...それ以外何も持ち合わせていない。...それが俺です。」

 

俺はこの世界で、自らを証明するものなんて何一つ持ち合わせていない。

戸籍もなければ、住所もない。

そもそもこの世界の常識に俺の認識が即しているわけでもない。

名前しか....持って居ない。

だからこそ、自分を定義しろとなると名前になるのだ。

名前しか持ち合わせていないのだから。

 

「...荒唐無稽に聞こえます。貴方は...そのような言説で私が納得するとお思いで?」

 

「...簡単に信じられるようなことを言ってはいないなんてことは自分でもわかっています。..でも、俺にはこれ以外の答えを持ち合わせていません。だから...納得してもらえなかったら...あー、その、困ります....。」

 

結局締まらないな....。

でも、正直テレジアさんが言っていることはぐうの音も出ない程の正論。

だからこそ、最後らへんなんて語気を失ってしまっていた。

情けねぇ....。

 

テレジアさんは添えていた手を離すと一歩引いて距離を開ける。

沈黙。

押し黙る彼女とその圧から冷や汗まで出し始めた俺。

その緊迫を打破したのは他でもないテレジアさん本人だった。

 

「...調書が用意出来るまでは3日。飛空艇自体最近情勢不安定で遅延が入る可能性はありますが...それまでの間は、この施設を使っていただいて構いません。」

 

「え....?」

 

それってつまり....。

まだ理解できていない俺の顔を見て、再度テレジアさんは口を開く。

 

「...貴方を客人として見なしたということ。貴方の言葉には完全に納得しているわけではありませんが、拒むほどでもない。相手が何も持ちえぬ子どもであれば私達がすることは与えること....それだけです。」

 

「そ...そっすか...。そのっ、ありがとう...ございます。」

 

なるほど...宗教的な観点からか。

多分魔書と適合云々はマリーさんから聞いたんだろうな。

まぁ、なにはともあれどうやら怪しい人物として拘束される~とかはないようである。

荒唐無稽とは思いはすれど、俺が何も持っていないガキなのは事実。

そういう理由で俺の存在を認めたのだろうな。

こう、憐れまれたと思えば複雑だが敵を作ったわけでないのは良いことだろう。

現状、ほとんど拠り所もないのに誰かに敵視されるなんてごめんだからな。

 

それに客人ってことはある程度自由ということなんじゃないだろうか。

猶予は三日。

その間に自由に動けると考えれば願ってもない状況である。

だからこそ、俺は頭を下げた。

 

「....。」

 

ただ...頭を上げた時、テレジアさんの顔が見える。

その時、一瞬彼女が視線を下に向けていたように見えた。

今、この人....俺の足元を見た...のか?

俺の足元にあるのは影....残穢さんが居る場所。

 

...考えすぎか?

俺とテレジアさんの身長差だったら見下ろすことになるというのはさっきも言った通りだ。

視線を下に向けてるから、影を見ているように見えた...その可能性の方が高いだろう。

だって、マリーさんから魔書と適合したことを聞いていたとしても俺が影に残穢さんを宿しているなんてことが分かるはずないのだから。

 

「...面会は以上です。退室して頂いて構いません。...エイナ、空いた部屋の一つに案内して差し上げなさい。」

 

「畏まりました。...ナナイ様、こちらです。」

 

後ろから声を掛けられる。

顔布の少女...エイナと言う人が扉を開けてついてくるように促してくる。

テレジアさんの方へ振り返れば、彼女は既にこちらに背を向けて祭壇の方へと歩みを進めていた。

もう語ることも何もないといった感じか。

 

正直、気のせいだとは思うもなんともさっきのことが釈然としない。

...とはいえ、ここに居ても何があるというわけでもないだろう。

俺は、エイナさんの言うように後をついていく。

 

外は既に夕方を迎えており、窓ガラスからは茜色の光が入ってきている。

オレンジに染まる廊下で少女の後ろを歩く。

そこでようやく面会を切り抜けたということの実感を抱いた。

少し...ほっとしちゃったよ。

撒くこと考えると、これからなんだけどな。

 

そう思っていると、前方から見覚えのある顔が歩いてくる。

俺がこの世界に来て初めに見た人物の顔。

マリーさんだ。

目が合うと、こちらに駆け寄ってくる。

 

「ナナイさん!すいません、マザーに説明はしていたんですけど面会に立ち会うことが出来なくて....仕事をして終わり次第向かうつもりだったんですが、その...子供たちに捕まってしまって...大丈夫でしたか...?」

 

「そうですか、いやでも慕われてるってことじゃないですか。それに、こちらとしても問題はありませんでしたし。」

 

申し訳なさげにしているマリーさんに笑いかける。

確かに正直マリーさんがどのくらい説明したかとか分からなくて困ったのは事実だが、それでも今こうして問題なく終わらせることが出来ている。

寧ろマリーさんに金出してもらう機会も3日間?は前より少なくなるんだし、俺としては罪悪感を感じることが少なくなって良いかもしれない。

 

「それならよかったのですが....それで、今は何やってるんですか?エイナさん?」

 

「客人の彼が使用する部屋の下へと案内しようとしている所です。」

 

マリーさんは申し訳なさげな表情を俺に見せつつ、エイナさんに目を向ける。

正直エイナさんがどんな表情をしているかなんて顔が見えないから分からない。

...それでも、なんとなく俺と話していた時よりも声に気安さが伺えた気がする。

まぁ、知っている人が連れてきたよう分からん男相手にならそうもなるか。

すると、マリーさんは目を丸くした後に表情に喜色を湛えたまま一歩踏み出す。

うおっ、近っ.....!

 

「それって調書が用意できるまでの間、ここに居ることをマザーは許したってことですよね!?」

 

「え、はぁ...そうですけど...。」

 

「そっかぁ....よかったぁ。そこを心配してたんですよ~!でも、そっかマザーが...うん、マザーならそうするよね..分かってはいたけど、良かったぁ~...。」

 

何やら言っていることがよく分からないが、マリーさんは心配してくれていたんだと言うことだけは分かる。

ほっと安堵したようなふにゃとした顔。

今まで見ることのなかったような顔だ。

まぁ、実家に帰ったら誰だって気が緩むのは当然か。

そういう物だと思う...俺にはよく分からないことではあるが。

 

「短い間ですけど...良いところですから、ゆっくりしていってくださいね!」

 

そう言って彼女は俺に笑顔を向ける。

茜色の斜陽に照らされたその笑顔。

それはとても絵になっていて、一瞬鼓動が早打ちになる。

そういうのを藪から棒にしてくるのは、...少し卑怯だと思う。

 

「う...うす...。」

 

「....。」

 

だからだろうか、返事をする際に少しキョドってしまった。

そして、そんな俺にエイナさんは無言で顔を向ける。

どんな表情をしているのかは顔布で覆われていて分からない。

ただ、顔布の向こうにある視線が自分に突き刺さっているような気がして気まずさを感じていた。

 

夕暮れは佳境に差し掛かり、俄かに紫色へと移り変わる。

斜陽で照らされてはいるものの、辺りの暗さから夜の訪れを予感させた。

 

 

 

 

 

 

 

夜。

名も知れぬ虫の音が窓越しに響き、雲の切れ間から見える星が地を照らす

誰もが寝静まっているであろう真夜中、その中で一つ軋むような音が鳴る。

とある部屋のドアが、開かれた。

 

部屋の中ではスース―と寝息が聞こえる。

彼女は、その寝息の主の下へと音を立てないように歩みを進めた。

 

「すぅ....すぅ....。」

 

寝息の主....七井円はベッドの中で穏やかな寝顔を晒している。

彼女はじっと彼の顔を眺める。

そして短く切り揃えられた黒髪に手を伸ばそうとする。

 

『なんじゃ、聖母は少年が趣味か?まったくとんだ醜聞ぜよ。』

 

その瞬間、彼女の背後で声が聞こえた。

ゆっくりと彼女が振り返るとそこには黒い影法師。

普通であれば幽霊か何かだと思って動揺しても何らおかしくない。

しかし、彼女は...テレジアは表情を微動だにさせずに口を開いた。

 

「あら、やっぱり....お久しぶりですねヨミさん。そうなっていたことは知っていましたが...実際に目にするのは初めてです。」

 

『...なんじゃ、知らんなそんな名前。儂の名は残穢じゃ。二度とそれを口にするでない、手が滑りかねん。』

 

「彼にはそう名乗っているのですか?...押し込められた魔書の名が残穢だから...。」

 

テレジアが尋ねると、影法師は押し黙る。

そんな影法師を見て、まるで旧知の友人に会うかのように今まで能面のように微動だにしなかった口元が微かに笑みを見せる。

そして、円の黒髪に手を触れた。

 

「私がここに来たのは、貴方に会う為。久しぶりの旧友に相見えようというのはおかしな話ではないでしょう?」

 

『はっ、よく言うぜよ....。あの女...エヴァと共に儂をこの暗い箱に叩き込んだのは貴様じゃろうが。』

 

残穢はテレジアの言葉を鼻で笑い、憎々し気に言葉を口にする。

するとテレジアは口元に浮かべていた微かな笑みを消す。

 

「...確かにあれは、悪かったと思っています。けれど、エヴァが言うようにそれ以外の手段がなかったのは事実。それは貴方も分かっているでしょう?...だから、今だって私に刃を振るっていない。...違う?」

 

『...勘違いするな。あの性悪ならまだしも貴様には...わずかながら情がある。あの日...黙示を共に迎えた戦友の一人だからこそ振るわんだけじゃ。...そもそも、儂はあの時潰えても良かった。方法がなかったのは貴様らの中だけじゃ、儂はあそこで終わることを望んでいた。』

 

残穢の言葉を聞いた瞬間、テレジアの目つきが鋭くなる。

その視線は彼女のその言葉を咎めるようだった。

 

『もう、この闇の中で巡りゆく輪廻に囚われるのは沢山じゃ...おまんには分かるか?儂は愛する者の後を追うことすら許されずにこの中に縛られている。そして手遅れな地点から繰り返し繰り返し.....あの日から始まって大切な者を失い、おまんらと立ち向かった日々すら茶番に思えてくる、褪せていく悲しさがおまんに分かるのかっ!?はっ、分かるわけがない...儂は世界から切り離された身、眺める側にあの女に引きずり込まれたからの。...擦り切れる程の輪廻の中、儂はおまんらの手の中で何をするでもなく終わるか。破壊される書庫の中で終わるか。もう、うんざりぜよ。』

 

「だから、彼を使うのですか?...私達の手から離れて....。」

 

『そうじゃ。エヴァに何を期待しとるのか知らんが、おまんらは何も変えられん。儂は...知っている。エヴァも知っている。...知っておっても明確に行動を起こさん、怠慢以外の何者でもなかろう。奴はいつもそうじゃ、いつも...あの日だって眺めてばかりで、その癖.....っ!』

 

相対する二人。

どちらも譲る気はないと言わんばかりに圧を放つ。

張り詰めた糸のように緊迫する空気。

その糸を切ったのはテレジアだった。

 

「...近くで目を見つめて分かりましたわ。彼は、どこかエヴァの転生陣にも似た...何か力の残滓のような物を感じた。彼の言うことに納得するわけではないけれど、確かに特異であることはこの私にも分かります。」

 

『...そうじゃ、じゃから儂はマドカを選んだ。儂の記憶では幾重にも連なる輪廻の中に居なかった、あの忌々しいエヴァと類似した術式の小僧。此奴と相まみえた時、さながら地獄に差し伸べられた蜘蛛の糸のように儂には思えたものじゃ。』

 

「...それで一体何をしようというのですか、貴方は。」

 

テレジアは残穢に対して質問をする。

すると、残穢さんはその問いに間髪を入れずに答えていた。

 

『...決まっておる。輪廻の大元を断ち切る。今まで輪廻に居なかった此奴となら、それが叶うかもしれん。...さすれば儂の影の中にある得物も儂自身も、役目を終えることが出来よう。』

 

「そうですか。」

 

テレジアは顔を伏せる。

しかし納得したわけではなく、訥々と言葉を口にする。

 

「貴方が何かするつもりでも、私達に失望していようとも私はそれを咎めません。...私には貴方に対しての負い目がある。....けれど。」

 

テレジアは顔を上げる。

円の髪に添えていた手はとうに離れていた。

能面のような感情が伺えない表情で残穢を見つめる。

 

「彼を、一人の子供が苦しむ道を貴方の都合で行くつもりなのであれば...私は貴方を決して許しません。」

 

『...怖いのう。なんじゃ、やけにそやつに肩入れするではないか。くくっ...好きにでもなったか?ん??』

 

「何を言うかと思えば...子供は好きですよ。私は聖職者であり、この教会で多くの身寄りのない子供たちのお世話をしてきました。様々な子が色々な事情を持って居て一筋縄で行かない。辛いことや苦しいことも今まであって...好きでなければやれていません。子供は未熟で、それ故に可能性を秘めている。この子たちは、なんにでもなれるし、なんだって....。だからこそ私達が守らなければならない...私はそう思っています。」

 

茶化すように笑みを浮かべる残穢に真正面から対峙する。

暫しの視線のぶつかり合い。

そんな中で、残穢は肩を落とした。

 

『...まぁ、小僧は普通に若作りしたおまんに近寄られて鼓動を高鳴らせておったようじゃがの?』

 

「...そうやって、人を食ったかのような態度は変わっていないのですね安心しました。それと若作りじゃありません。...歳を取れないんです。貴方なら...分かるでしょう?」

 

『...そうじゃな。だからこそ儂はおまんのことをエヴァの共犯であるというのに、完全に嫌うことが出来ん。...故に儂はおまんが苦手なんじゃ。』

 

残穢は歯噛みするかのように言葉を吐き捨てる。

その心情の吐露を受けてもテレジアは何も言わない。

お互いの沈黙による静寂。

外の虫の音が空虚に部屋を響く。

 

『...言われずともマドカを徒に危険に晒すつもりはない。...儂はな、確かにおまんのように実際に育ててきたわけではないが、これでも一応母親だった女ぜよ。』

 

残穢は一瞬俯くと、どこか居た堪れないような声色ではあるものの言葉を口にした。

自身を母親であると言うことに対しての負い目、それが彼女の言葉から語気を削っていた。

テレジアは少しだけしょぼくれたように見える影法師を見て、口元に僅かに笑みを作る。

 

「...その答えが聞けたことを良しと致しましょう。」

 

テレジアは一歩踏み出すと影法師と擦れ違い、扉の前まで辿り着く。

そんな彼女の背中を見送る残穢。

すると不意にテレジアは口を開く。

 

「そう言えば....彼、貴方の伴侶にどことなく雰囲気が似てた気がするのですけれど偶然ですか?」

 

『どこがじゃ、おまん斬られたいんか?』

 

仏頂面のまま、ただどこか声に僅かな軽薄さを乗せた言葉がテレジアさんの口を衝いて出る。

それを聞いて残穢はテレジアを凄む。

そんな彼女の様子を見て、テレジアはどこか愉快そうに口を開いた。

 

「..ふふ、ジョークです。人を揶揄ったお返しですよ。」

 

彼女は首だけ後ろへ向ける。

そして無表情のまま、舌だけ悪戯好きな子供の様にペロッと出した。

旧知の中だからこそ、残穢にはそれがテレジアなりの茶目っ気であるということが分かる。

だからこそ、取り合わずに扉に手を掛けて部屋を出ようとするテレジアの姿を見送った。

 

ガチャリと扉が閉まる音が部屋を響く。

部屋の中は眠りこけている円と立ち尽くす影法師のみ。

影法師は円に歩み寄ると、円を見下ろす。

 

『...呑気な寝顔じゃ。にしても人一人部屋に入ってきて髪に触れられたにも関わらず、起きる気配すら見せんとは....。』

 

残穢は円を見ながら呆れ声を出す。

そして溜息を吐くように肩を落とすと、影法師はゆっくりと影の中へと沈んでいった。

 




3話から話に出ていた母代わりのテレジアさんが登場しました。
ママキャラで厳しいところは厳しいけど、親しくなれば冗談言ってきたりと遊び心を見せてくれる感じの女の人です。
デカい大人の女性に見下ろされる未成年男子っていう構図に凄い興奮したので書きました。
作中で残穢と彼女でツートップの胸のデカさしてます。
なんとなくラス〇オ〇ジンとかに出そうな頭身と3サイズだと思っていただければと思います。
ママキャラはやっぱデカくないとね!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。