さよならはまだ言えない   作:芦毛スキー

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そんな訳ないでしょ。



惚れた欲目?

たしかに好きだった。

けれど、自分は相手の幸せを遠くから眺められたら、それでよかった。

あの人の隣に自分がいるなんて考えられなくて、そんな大それたことを自分が望むなんて、思い上がりも甚だしくて。

でも。

それでも、もし。

あの人の幸せの中に自分がいることができるなら。

あの人が自分を選んでくれるなら。

そんな夢を見なかったかといえば、嘘になるけれど──。

だから、自分は。

その夢を諦めて。

その夢を見ないようにして。

あの思い出を胸の奥深くにしまいこんだのではなかったのか。

 

(……あぁ、そうか)

 

と、そこで気づいた。

 

(……だから……か)

「───███?」

 

あの人が自分の名前を呼ぶ。

遠くから眺められるだけでよかったその人は何をどう狂ったのか、自分を愛してくれた。

驚くことに、告白してきたのもこの人の方だ。

自分は、それを断った。

理由は、自分がこの人に釣り合っていないと思ったから。

そして、もう一つは。

この人が自分と幸せになるのを、その隣で祝福する自信がなかったからだ。

だから自分は、この申し出を断ったのだ。

でも。

 

『好きだ。好きなんだよ……!』

 

いつものあの人とは思えなかった。

驚くこちらが目に入っていないとまで思えるような必死さ…というよりかは。

自分より上背と筋肉があるあの人の手が震えているのを、自分は初めて見た。

だから、だろうか。

この人が自分を求めてくれるのなら。

こんな、くだらない自分を求めてくれるなら、と。

 

・

・

・

 

一目惚れしたあの子は、自己肯定感が低かった。

そりゃあまぁ、あんな有名な一族に生まれて、他の親族に比べると…な戦績だと、自己肯定感も低くなるだろう。

そうはいっても、だ。

 

((((ひそひそ…))))

 

あの子は、人気だった。

戦績は伴わずとも、容姿があの一族と一目で分かるぐらいに綺麗だったから。

髪色こそよくあるものだったがそれ以上に。

……まぁ、あの子がそれを鼻にかけている様子はなかったし、それどころか自己肯定感が低くて自分の見た目すらも過小評価しているきらいさえあったのだが。

だから自分は、そんなあの子に一目惚れした自分は。

まず最初にあの子に友だちとして近づいて。

それから徐々に距離を詰めていって。

あの手この手を使ってようやく恋人の座についた。

……『素敵な人』だと思ってくれたのはいいが、それでフラれた時は肝が冷えたが。

 

『…あぁ、何でもない。──愛してるよ』

 

愛しいあの子は、今日も愛の言葉に慣れない。

 

(……可愛い)





あなたが知らないだけ。
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