宵明けのコンチェルト   作:ブラック5930

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エピローグ「悔やむと書いてミライ」

 

 

『戻ってきた!みんないる?』

 

『あぁ』

 

『うん、ちゃんと戻ってる』

 

『雪は……』

 

 

『『『『…………』』』』

 

 

 緊張に包まれるボイスチャット。

 沈黙を突き破るように、最後のメンバーの声が響いた。

 

 

『……いるよ』

 

 

『雪!』

 

『そっか、よかった』

 

『戻ってこれて何よりだ。

……それじゃ、俺はここで落ちる』

 

『オッケー、また明日ね、ZERO』

 

『お疲れさま』

 

 

 雪の安否だけを確かめて、すぐにボイスチャットの接続を切る。

 静けさに包まれた部屋の中で一人、俺はぼんやりと椅子に背を預けていた。ひどく疲れた。

 

 

「……………」

 

 

 瞼を閉じれば浮かぶのは、セカイでの出来事。

 柄にもなく骨を折った甲斐があった。奏は確かに雪を、否。朝比奈まふゆを死の淵から救ってみせた。流石は奏だと思う。

 だが同時に、素直に喜べない自分がいる。

 皆の想いを否定する訳ではないが、奏に更なる呪いを背負わせる結果になったのも確かだ。これが()()なのか、俺には解らない。

 

 

「……ん」

 

 

 上の空でナイトコードのログを整理する作業中、何気なしに開いた共有ファイルが目に止まる。固定しておいた例の音楽ファイル、『Untitled』の題が変わっているのだ。

 

 編集した跡は無い。

 さも最初からそうであったかのように、曲には題が付けられていた。

 

 

「《悔やむと書いてミライ》」

 

「……なるほどな」

 

「……ふ……く……っ、ははは……」

 

 

 乾いた笑いが溢れ出る。“題無し”の曲に名前が生まれた。それはつまり。

 

 

「雪は……“本当の想い”を見つけたらしい」

 

 

 セカイで白いミクは口にした。

 何も見つけられていないのに、と呟いたまふゆの言葉を否定したあの言葉は真実だったらしい。

 ともすれば、ずっと本当の想いを探していたまふゆにおける“本当の想い”とは、自分を見つける為に他者と想いを共有する最初の一歩だったのだろうか。

 これを真相だとするのならば、何とも皮肉な話だろう。

 

 

 ナイトコードをログアウトして、靱はスマホを手に取る。パソコンの画面が消えて、暗闇に包まれた部屋の中で唯一、スマホの画面のみが輝く。

 その光は弱く、室内は未だ暗がりのままだ。

 

 

「……全てまやかしだった方がよほど楽だというのに。ままならんものだ」

 

 

 やがて靱はスマホを放る。

 机にも寝台にも掠らずに床に落ちたソレを気に留める事なく彼は寝台に身を沈め、意識を手放す。

 すぐに靱は眠りについた。

 

 

 無音。

 真っ暗な部屋の片隅で、転がったスマホは小さな光を灯し続ける。誰も見る者のいない場で映された画面の真ん中に、

 

 

 ———“Untitled”の題が怪しく輝いていた。

 

 

 

 




ユニットストーリー編はこれで終わりです。
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