宵明けのコンチェルト   作:ブラック5930

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リメイク前には存在しない新規追加回
時系列は「囚われのマリオネット」直前


断章①「操り人形(マリオネット)演者(ピエロ)

 

 

 —— 4:30AM

 

 

『——ありがとう、雪。

雪が手伝ってくれたおかげで、どうにか形になりそうだ。この分ならあと数時間もあれば動画として出せるモノに仕上がる』

 

『どういたしまして』

 

『でも、あまり無理しちゃだめだよ?ZEROは体調崩してるんだから』

 

『……問題ない。俺が休んでいればその分Kが苦労する。作業に支障は出ていないしこの程度ならすぐに治る』

 

『もう、ZEROはそればっかりだね』

 

『それに、最近は雪が作業を手伝ってくれるようになったおかげで随分楽になったからな。以前程の負担はない。

作詞だけでも忙しいだろうに、苦労をかける』

 

『ううん。気にしないで。

私もみんなのためになにかしたいなって思ってたところだったから』

 

『……雪は、出来た人間だな』

 

 

 

 

『特に、新しくメンバーに加わった二人の相手をして貰えるのには、いつも助けられている。

アイツらは、どうにもな……』

 

『………?

ZEROは、えななんとAmiaのことが嫌い?』

 

『いや、嫌いではないが……。

会話量に付いていけない。どうしてああも無駄話をしたがるんだか』

 

『ふふっ……』

 

『……とにかく。今日は助かった。

この埋め合わせはいつかしよう。貸し1つとでも覚えておいてくれ』

 

『そんなに気にしなくていいのに。ZEROって、けっこう律儀だよね』

 

 

 それは、何でもない朝方の会話。

 ニーゴが五人になって間もない、ある日の一幕。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこは、一面が白で埋め尽くされたセカイ。

 どこまでも続く白の景色を飾るように点在する、鉄柱のようなモノや奇妙な形のオブジェが見る者に不思議な印象を与える場所だ。

 

 そんなセカイのある場所で、少女は佇む人影へと声を掛けた。

 

 

「……何してるの?」

 

「なんだ、誰かと思えば雪か」

 

 

 オブジェクトをまじまじと見つめていた人影、靱へと声を掛け、振り向いた少年はまふゆの姿を認めて息を吐く。

 

 

「何でもミクの話では、ここは雪の想いが形となって生まれたセカイ——つまりは異空間な訳だ。

こうも非現実的な光景が広がっていれば興味も湧く」

 

「……そう」

 

「雪の方こそどうしてセカイに?」

 

「別に。ただミクに会いにきただけ」

 

「そうか」

 

 

 その挙動不審な様子に、まふゆの声には多少の呆れが含まれていた。投げられた問いに答えを返せば、興味を失ったように靱は再びオブジェの観察を始める。

 

 

「……ねえ」

 

「なんだ?」

 

「聞きたいことがあるんだけど」

 

 

 丁度良い機会だ。ふと、思い立ったまふゆの問いかけに靱は顔を向けて応えた。

 

 

「靱は、奏とどういう関係なの?」

 

「とても他人には見えない」

 

「………ん」

 

 

 問いに、珍しく靱が詰まった。

 たっぷり数十秒ほど間を置いて彼は口を開く。

 

 

「……いつかは聞かれるかと思っていたが、まさか雪が最初に聞いてくるとは思わなかった」

 

「奏は、家族だ。血は繋がっていないが」

 

「やっぱりそうなんだ」

 

 

 返された答えに、まふゆは頷く。赤の他人というにはあまりにも近過ぎて、仲間というにはあまりにも執着が重い。

 二人の関係性は彼女の予想通りだった。

 その上で、問う。

 

 

「……じゃあ、靱は私を恨んでるんじゃない?」

 

「奏は私が私を見つけるまで、ずっと曲を作り続けなきゃいけなくなったから」

 

「………」

 

 

 頭の片隅に引っ掛かっていたモノを直接本人にぶつけて、まふゆは靱の反応を伺う。言葉を受けた彼は、普段と何も変わらぬ調子で先程閉じた目を開けた。

 

 

「……どうしてそうなる?

別に、俺が雪を恨む理由は無いだろう」

 

「原因の一端が雪にあるとしても、決断して行動したのは奏本人だ。アイツの選択を俺は尊重する」

 

「それにしても意外だな。

雪がそんな事を気にするなんて」

 

「………」

 

 

 言葉を吟味して、まふゆは目を細める。

 

 

「とにかく、俺は気にしていないぞ」

 

「(……ウソ)」

 

 

「それよりも雪が戻ってきて良かった。

調整役が俺一人ではサークルの活動にも支障が出るからな」

 

「(ウソ)」

 

 

「何かあれば相談すると良い。雪も、えななんも、Amiaも、既に全員がサークルにとって意味のある存在なんだ」

 

「(これもウソ)」

 

 

 朝比奈まふゆという少女は、己を偽り続けてきた人物である。故に、他人の心や真偽に対して鋭敏な一面を身に付けつつあった。

 常人には解らない、つらつらと語られる靱の言葉の空虚さをまふゆは見抜いていた。

 

 

「(ウソ、ウソ、ウソ。

やっぱり似てる。でも、私とは違う)」

 

「(どうしてそう感じるんだろう)」

 

 

 親近感と、決定的に違うナニカ。

 不快感にギリギリ至らないその奇妙な感覚にまふゆは内心首を傾げる。

 

 

「——あぁ、そうだ」

 

「雪。一つだけ言い忘れていた」

 

 

 会話を終えて別れる寸前、靱が振り向いた。

 

 

()()()()()()。これで貸し借り無しだ」

 

「………っ」 

 

 

 目を丸くしたまふゆの前で少年は踵を返し、そのまま去っていく。

 誰もいなくなったセカイで少女は独り、遅れて呟いた。

 

 

「……気にしなくていいって言ったのに」

 

 

 

 




GW挟むので次回更新まで結構日が開きます
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