幻の夢を追いかける花 作:或る記憶
「蹄鉄は大丈夫か?」
「はい。しっかり打ち直してあります」
「体調は?」
「緊張はしていますが、それ以外は絶好調です」
「よし。それじゃあ、ライバルと、あの子と戦ってこい」
「はいッ、行ってきます!」
2人の逃げウマ娘がレースを引っ張り、そこから約3馬身程離れて先行の集団が走る。俺の担当であるアセビボタンは集団の中では先頭。彼女にとっては1番良いポジション。
そのまま流れに沿って走り、何事も無ければきっとアセビボタンは勝てる。
レースに絶対は無いけれどあの皇帝と同じ様に"絶対がある"と言えるポテンシャルがあると、俺は信じている。
【オネストワーズとアップツリーの2人が数多のウマ娘を引き連れて最終コーナーへと差し掛かります!!1つ目のティアラを手にするまでは後500メートルと少しの距離!!ウマ娘達にとって最も苛烈な勝負所です!!】
2人のウマ娘は今の所順位が変わらずに逃げている。
しかし、追込、差しのウマ娘はじわじわと脚を進め、先行集団もラストスパートをかける為にそろそろ勝負をかけ始めるタイミングだろう。
アセビボタンは未だ脚を溜めているが、バ群に囲まれたらどうなるのか経験のないボタンがどうなるか少しだけ焦る気持ちに襲われる。
落ち着け、走ってるのは俺じゃない。
俺は、この場所から彼女を応援するだけだ。
「……走れ、頑張れ、ボタン!」
強く握っていた手に一層の力が入る。
【最終コーナー曲がりまして、残り約474メートル!ここで先頭変わってアップツリー!オネストワーズの脚はもう伸びないか!!……おぉっと!アンチェンジングが凄い脚だ!!最後尾から一気に先頭へとやって来たぞッ!!1番人気のエーネアスはバ群に阻まれて少し苦しいか!!】
「行け、ボタン……アセビボタンッ!」
【このままアップツリーの逃げ切り勝ちか!……ここで1人のウマ娘が突っ込んで来る!?あれは、アセビボタン!!2番人気のアセビボタンがここで阪神ジュベナイルフィリーズと変わらない末脚で突っ込んで来る!!前に届くか、届いてしまうのかーッ!!!】
1人だけ違うエンジンを積んでいるかの様な末脚、ここまで音が聴こえてくるかの様な強烈な踏み込み。
黒い勝負服と、白い芦毛を揺らしたそれは遠い遠い先頭の影にすらきっと届く。
【ゴールッッ!!!1,600メートル、1つ目のティアラを手にしたウマ娘はアセビボタン!!このままトリプルティアラを手にするのか、それともアセビボタンを阻む1人が出てくるのか、今から見逃せないシーズンとなりました!!】
もう数えるしか咲いていない様な葉桜から、祝福する様に桜の花が舞った。
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「……お疲れ様、ボタン」
「お疲れ様でした。トレーナーさん」
優勝レイを肩に掛け、大方の写真撮影やインタビューを終えて控え室に入る。
これからは軽く身支度を整えてから、ウイニングライブとなっている。
「次はオークスか。良い状態で走れる様に、トレーニングをやっていこう」
「あの、トレーナーさん。その事なのですが」
俺の提案に、ボタンは困った様に表情を歪めて、おずおずと声を上げる。
ボタンの目標はあの子に勝つ事だから、もしかしたらティアラには興味が無いのかもしれない。
「私、オークス……もですが、ダービーにも、出たいんです」
「ダービー?」
「はい。ずっと昔から、ダービーにだけは出なければいけない様な気がしていて、ダービーに出ないとあの子と同じ土俵にすら立てない様な、そんな、感覚があるんです」
「……そうか」
「ご、御免なさい変な事言って!無茶ですから、どっちかに絞らないと駄目ですもんね!」
「嫌、そんな事は無いさ。ウマ娘が出たいレースに出て、勝てる様にサポートするのが俺の、トレーナーの仕事だ。だから、日本ダービーに出よう」
「本当、ですか!?」
「あぁ!勿論だ!でも、1つだけ約束してくれ。ダービーとオークスは感覚が短い。もし、オークスの後に疲れが残っていたり、少しでも問題があれば許可はできない。良いな?」
「分かりました。有難う御座います!」
「それじゃあ、まずはウイニングライブを終わらせよう。アセビボタンの晴れ舞台だからな!」
「はいっ!」
笑顔になったアセビボタンと次の目標を決めて、俺は彼女が着替えられる様に控室を出る。
扉に背を預け、目を閉じる。
日本ダービー。数多くのウマ娘が挑戦して、夢叶い、敗れてきた最高峰のレース。
そして、オークスから間隔の短過ぎるローテーション。
俺は、その頂点へ自分のウマ娘を導けるトレーナーになれるのか。
怪我をさせる事無くボタンが存分にパフォーマンスができる状態で持っていけるか。
「やってみなきゃ分からない。だな」
1:名無しが適当語り ID:iwBx2114O
この時期の阪神第11R芝1,600mG1を見る度にあの馬を思い出します
2:名無しが適当語り ID:N6OsY0YBT
映像も何も残ってないのにここまで語られるの稀有な存在やね
3:名無しが適当語り ID:D5lGwaM9I
>>2
ケウちゃん!?!?
4:名無しが適当語り ID:QNY0qt17G
>>3
おう、後ろに立って蹴られてこい
5:名無しが適当語り ID:Xqe2H23ZF
突然500台に体重減ってたから驚いたぞケウちゃん
6:名無しが適当語り ID:iFs5vz0kP
500後半の体重あるのに驚かれる馬も珍しいわ
7:名無しが適当語り ID:sQ4NfA1dw
それはそれ、これはこれなんですけど今日に合わせてボタンの桜花賞イベ見直して泣いた奴おる?
8:名無しが適当語り ID:k+Q9vbNbB
>>7
俺の話か?
9:名無しが適当語り ID:ypVPHiW7p
>>7
突然ワイの事話すなよ、照れるだろ
10:名無しが適当語り ID:bTrwDyLDR
ハゲデブの照れた顔とか見てらんないわ
11:名無しが適当語り ID:ga4t8dncX
>>10
なんだァ?てめェ……
12:名無しが適当語り ID:oTz2dLnRd
ウマ娘だとボタンが走った阪神3歳ステークスは今だと阪神JFになって格もG1だから桜花賞だと2回目の勝負服着用になるけど、史実準拠で行けば初めて着たピカピカの勝負服でお父さんに初めてのG1の景色を見せるっていうね
13:名無しが適当語り ID:8vI0aEHoP
しかもボタンの勝負服って色が本当に最小限で作りもシンプルだから、優勝レイを肩に掛けたら色が映えて満開の桜を見ている感じになるの良いよね
14:名無しが適当語り ID:b/57ClzLj
>>13
オタクにあるまじき語彙を見せるな
15:名無しが適当語り ID:SCUa/4Jkd
>>13
君、一歩半の才能あるよ
16:名無しが適当語り ID:bxTVij/5l
なんだよ一歩半の才能って
17:名無しが適当語り ID:3YY+ngJJ3
素直に「良いこと言うやん」でええやんけ!!!!
18:名無しが適当語り ID:X8qBdL3qS
桜花賞だとこんな泣けるストーリーなのに、この後が暫く曇り一辺倒なの本当に合ってます?
19:名無しが適当語り ID:rVDWjjzR5
>>18
史実準拠なので
20:名無しが適当語り ID:RobH3vmK7
>>18
アセビボタンは頂点から転げ落ちて再び頂点に上り詰める物語なので曇らせはある程度必要なのだ
21:名無しが適当語り ID:lMYKXjRFB
思ったけど、ウマ娘の中で日本ダービーに出走した事がある繋がりでウオッカとも何かあると思ってたんだけど、今の所匂わせどころか絡みも無いよね
22:名無しが適当語り ID:q348/xtAe
>>21
そこ欲しくて永遠と待ってるけど、永遠に何も起こらん
23:名無しが適当語り ID:ST7Yk9Rh7
ウオッカが勝った日本ダービーの映像を見る(or現地に行って見ていた)アセビボタンに何故か話し掛けるたづなさんとか欲しい
24:名無しが適当語り ID:Se4ksuMoN
どうしてたづなさんが……?
25:名無しが適当語り ID:wiXo86DQw
仲良しやからじゃない?(すっとぼけ)
26:名無しが適当語り ID:DdXJxufj0
そりゃあもう、たづなさんがトキ
27:名無しが適当語り ID:lgzJL3aAi
……あれだけ戸締りには気を付けろと
28:名無しが適当語り ID:LEIZZPA3y
>>26
死んだか
29:名無しが適当語り ID:sm0giJwkn
本当にワンシーンだけで良いんで、「こんにちは」「うっす!こんにちは!」一言だけのやり取りで良いんで欲しい
30:名無しが適当語り ID:nfSy7WDVo
>>29
それはそう
31:名無しが適当語り ID:K/QU3AdSk
>>29
ホンマに頼むわ
32:名無しが適当語り ID:/V0pA7njA
アセビボタン新衣装Verのイベントできたら良いなぁ
33:名無しが適当語り ID:GJ4Rpm3Yt
そういえば、ウマ娘の公式が投稿するイラスト見た?
34:名無しが適当語り ID:tR6Ek5Bxr
>>34
当たり前だよなぁ!?
35:名無しが適当語り ID:q+mTG2IgT
>>34
見ない人とかいるんですか!?
36:名無しが適当語り ID:cUIgaCPHf
>>34
デアタクと並んでるのが堪らないですよね
37:名無しが適当語り ID:eQ3wqPrWr
タクトとボタンが背中合わせに桜の花を持っている構図が美しくてな、お爺ちゃん額に飾ろうかと思ったんじゃよ
38:名無しが適当語り ID:C1TyyJesT
真ん中の「あなたに捧げる桜色」って文章でオタクの涙腺はボロボロ
39:名無しが適当語り ID:bQjuzJYzs
ボタンはお父さん(馬主)、タクトは三冠を一緒に獲った騎手かな?って考えて俺は勝手に死んだね
40:名無しが適当語り ID:f0qZKZMFL
黒白のデアリングタクトと白黒のアセビボタン、バランスが良い
41:名無しが適当語り ID:Y+0e2/nWB
和装と洋装で分かれてるのも好き
42:名無しが適当語り ID:UMkJFVVkt
運営的には絶対狙った訳じゃ無いんだけど、このしっくり感凄い
43:名無しが適当語り ID:NY1LOMEW1
今気付いたけど、記念イラストの2人桜花賞勝ち馬だけじゃ無くて、実装されているウマ娘の中では活躍した時代が最古と最新のキャラって繋がりもあるんか
44:名無しが適当語り ID:EPH7+DO/z
>>43
ホンマやんけ!!
45:名無しが適当語り ID:fYZx3f2UY
>>43
可愛い以外の繋がりがまだあったのか!
46:名無しが適当語り ID:VXbZu5GU7
経緯は全く違うけど、ボタンも1度勝てなくなってから復活の勝利を挙げたし、タクトももう1度って思ってしまう。レースがそんな簡単じゃ無いっていうのは百も承知で
47:名無しが適当語り ID:9qIiGbop8
>>46
分かる
48:名無しが適当語り ID:FlKdejfle
>>46
ワイもタクトがもう1度優勝レイを肩に掛けている瞬間を見たい
49:名無しが適当語り ID:yE9WY5lOO
ウマ娘を知ってからこんなんばっかりや
応援したい子が沢山いて時間が足らん
50:名無しが適当語り ID:usUVDHlCg
>>49
良い事やで!無理はしない程度にな!
思い出せば、今日はあの子が初めて大きなレースに出た日から丁度1年だ。時が流れるのは早いものだが、あの日見た景色も熱狂も昨日の様に思い出せる。
最近は私の体調が可笑しくなり始めていて、あの子の元へ顔を出す事すら難しくて歯痒い日々を過ごしている。死への恐怖は無いが、あの子と歩む道を途中で降りなければいけない事、珠子や蓮之介の成長を見守れない事、ミツ子さんを1人にさせる事、芳司君と酒を飲めない事、私の家に住む沢山の家族を置いて逝く事、それのどれもが惜しい。どれも取捨選択などできない大切なものだ。
せめて皆が、幸せにゆっくりゆっくり私の何倍も生きて死ねる様に降り掛かる全ての不幸を私が背負ってから逝きたい。
「もう、葉桜になっちゃったけど……私は綺麗な桜色を見せられたかな。ねぇ、先生」