幻の夢を追いかける花   作:或る記憶

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「あっ、そうだ。今日は特別にトキちゃんのレース映像を、ボンちゃんに見せてあげる」

「……えっ」
 


◇下賜されるは、圧倒的な記録

 

最近ではもうあまり姿を見なくなったらしいVideo Home System、略してVHS。コンパクトカセットを大きくした様な見た目のそれを突然家にやって来て、突然渡してきたチカラちゃんに困惑しながら機械に入れ、読み込ませる。

そして、読み込みが終わり再生ボタンを押せば少しノイズの混じった音と映像がテレビに流れ始める。

 

【第繧阪¥回天皇賞-春-!今回のレースは異例も異例!阪神競馬場、-・ ・・ ・--・- ・・-・・の3,200メートルにて行われます!!まずは出走ウマ娘を見ていきましょう!】

 

所々聞き取り辛い部分があるが、私とチカラちゃんの年齢差を考えてもそんなに驚く程の変更はされていない筈だ。

それにしても天皇賞という大きなレースで出走ウマ娘が7人とは、確かに異例も異例である。

 

【1番人気はこの娘!GI、菊花賞を含めた現在9連勝中の繝槭Νタケ!今日のレースで10連勝という記録に昇華できるのか!2番人気はトキノチカラ!GI勝利こそありませんが、特別ルールでの中山記念制覇や阪急杯でのレコード勝利など、長距離レースで素晴らしい結果を残しているウマ娘です!】

 

画面に水色を基調として差し色に所々紫の入った勝負服を見に纏うチカラちゃんが、お客さんへとファンサービスをしている。

映像越しに見ても仕上がりは絶好調といった風で、ありきたりだが「強そうだ」という感想を覚える。

 

「ねぇ、チカラちゃん。アナウンサーさんが言っていた特別ルールって?」

「あぁ、それね〜。なんかURAが先取りレトロブームだったのか昔のレース状態でやってみよう!ってなったらしいよ……だから、中山記念も今は冬の1,800メートルだけどあの時は春と秋開催で3,200メートルだったし、阪急杯だって今は芝の2,400メートルだけどトキちゃんはダート3,400メートルで阪神記念?って名前だった。この時の天皇賞も昔のルールで!って感じだったから、色々違ってて、だからGIなのにウマ娘集まらなかったんだよね〜」

「……もしかして、ルールが今と違うから私に天皇賞勝った時の話してくれなかったの?映像が残ってないって嘘までついて」

「わはは!バレちゃったなー!」

「自分からバラしたんだよぉ!!」

「んふふ……まー、ま!お嬢様、続き見よ?」

「もう……」

 

何時もの様に飄々とした様子で、大事な所を有耶無耶にされ少し呆れた感情が湧き上がるが、仕方無く促されるままに画面へと視線を戻す。

 

【3番人気は繧ッ繝「繝上ち!今年のダービーウマ娘ですが、長距離のレースとダートでの実績が少ない事から3番人気に落ち着きました。4番人気は・-・- ・--・ -・-・・ ・--・- -・・-・ --・-- ・--・-。新時代の先駆けとも称される彼女ですが長距離レースの実績、トキノチカラが2着となった中山記念での失格などが尾を引きこの人気に落ち着きました。5番人気はゴーフ繧ェ繝シ縺ゥ!日本ダービーにも出走しましたが、2桁順位と結果が振るわず人気も伸び悩んでしまっていますね。大どんでん返しを起こせるのか!6番人気は--・・ ・・- -・-- ・・ ・--・。オークスから菊花賞というティアラからクラシックへの果敢な挑戦で、天皇賞という頂へ手が届くのか!7番人気は繝輔け繧サ繧、繧ウ。オークス3着と好走しましたが、他のウマ娘と比べ物足りない評価となりました】

 

7人しかいないGIレース。

緑では無く、茶色の地面。

ノイズが入る画面と音声。

全てが私にとって馴染みの無い光景で別の意味で楽しみなレースが今、始まった。

 

 

【さぁ!異例尽くしの阪神競馬場、天皇賞という大舞台は残り1,000メートルを切りましてこのままトキノチカラが独走してしまうのか!】

 

アナウンサーさんが興奮した様に叫んでいるが、流れている映像は言葉通りの独走。

これはきっと、能力差というよりもダートへの適性、トレーニングで得たスタミナの差が出ているのだろう

 

【あぁ!!トキノチカラが逃げ切るぞ!後ろも懸命に追うが追いつけない!これはもうセーフティリードだ!】

 

沢山の土を巻き上げてチカラちゃんだけの蹄跡だけが刻まれる。

確かにこれは、私の走りに取り入れられ無い。

見慣れない必死な顔で汗を流しながらチカラちゃんがゴール板を駆け抜ける。

 

【天皇賞-春-の勝者はトキノチカラ!トキノチカラです!勝ちタイムはなんとレコードの3.25.2!着差にして実に4バ身以上!2着には・-・- ・--・ -・-・・ ・--・- -・・-・ --・-- ・--・-!更に3バ身開いて3着は繧ッ繝「繝上ち!クビ差4着は繝槭Νタケ。大きく離されて繝輔け繧サ繧、繧ウ、ゴーフ繧ェ繝シ縺ゥ。--・・ ・・- -・-- ・・ ・--・は途中で競走中止しています】

 

終わってみれば、レース結果も異質なものとなった天皇賞は矢張りというべきか特別ルールによって見た事が無い結果となった。

レースから意識を戻し息を吐き、お茶を一口飲んで純粋な感想を口に出す。

 

「これは……参考にできない、かも」

「でしょー?」

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