幻の夢を追いかける花   作:或る記憶

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連日30°を超えるのが当たり前となった今、旬を逃さない様に、少しだけこんな話をしようと思います。

これは、私が体験した昔の話。
 


ヒトの子は昔の失恋を引き摺らない

 

私は今は引っ越して東京に住んでいますけど、幼少期は別の県、別の土地に住んでいました。

そこは田舎過ぎる事も無く、地方都市と呼んで差し支えないだろうなぁ?といった風の土地で、バスもあればコンビニもあり、スーパー、ドラッグストアも一通り揃っている便利な場所でした。

 

だけど都市部では無いので、家の周りには畑があって竹林があって、森がありました。

森は幼少期の私にとって、格好の遊び場です。

ある夏の日、危ないからと大きな水筒を持たされて、2時間経ったら帰りなさいと親心からの制限がキツくなっていた日。

 

 

 

私は、神様に出会いました。

 

 

 

信じられないのは当たり前で、私だって今でもあれは夢だったんじゃないのかって思う事もあります。

でも、あの日の風景が目に焼き付いて離れないんです。

 

私の住む場所の近くには1つの神社があります。

神主さんもいない様な、名義上管理する人がいる程度の小さな神社で私は生まれてからあの日まで気にした事も無かった場所です。

私が遊んでいたあの日、休憩しようと思って偶々日陰になっていた神社へ行きました。

お母さんから持たされた水筒に口を付けて次は何をしようかなって考えている時に、真っ白い神様がいたんです。

 

神様は美しい声で「何をしているの」って聞いてきました。

私が「遊んでいるの」って返したら、「気を付けなさい」って頭を撫でてくれたんです。

一緒にいたのはほんの数分だけだったんですけど、本当に綺麗で、優しい神様でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、久し振りに神様に会えました。

今回は一対一では無くて、私が一方的に見つけただけ。

神様はウマ娘の神様でした。

暇だからと付けたテレビの中で中継されていたウマ娘のレース。

そこに、神様がいたんです。

昔と何一つ変わらない美しい髪に、二つの瞳。

着ているものは違いましたけど、間違い無く私が出会った神様です。

神様はゲートに入っても静かで、ただ前だけを見つめていました。

ゲートが開いて、神様が走り出します。

神様は我々の心配なんて気にも止めずスッと前に出て、そのまま涼しい顔のまま後ろに何十メートルと差を付けてゴールをしてしまいました。

神様は美しくて、強いウマ娘の神様でした。

 

 

 

 

 

でも、最近、神様は死んでしまいました。

 

あの日から半年以上経って、また、神様に会いたくなりレース映像を見ました。

 

その中にいた神様は昔の様な静かな雰囲気は無くなって、応援する観客に手を振っています。

 

「神様は、ただのウマ娘になってしまった」

 

私はそう、理解しました。

そうなのだと理解してしまいました。

 

「もう……会えないんだ……」

 

私の神様は、いなくなってしまいました。

あの刃の様な冷たさを纏った静かなウマ娘は、ヒトの世に降りて来てしまったのです。

 

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