幻の夢を追いかける花 作:或る記憶
「……それじゃあ、乾杯」
「ンー」
「乾杯、ですー」
「かんぱ〜い」
「乾杯」
「か、かかか、かんぱい」
チームシェアトに充てられた部屋の中で机を囲み、各々のお菓子を持ち寄って好きな飲み物で乾杯をする。
私はお茶を、スーちゃんは紅茶、ルーちゃんは牛乳で、ローちゃんは水、ツーちゃんがコーヒーのコウちゃんが人参ジュース。
6人が全員バラバラで、机に広がるお菓子だって自分が飲む物に合わせてるから何処か不思議な組み合わせ。
それでも皆と過ごせるのが楽しくて、思わず頬が緩んだ。
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「ローちゃんは、有馬記念を見に行くんだっけ?」
「はい〜。後輩が、出るらしく」
「後輩って、ロードの後輩も障害の選手じゃ無かったか?」
「そうだね。うらもビックリしたねぇ、でも、投票で選ばれたらしいンだわ〜」
「成る程な……」
「あれ?投票と言えば、スーちゃんも投票で選ばれてなかったっけ?」
「ア?アタシはダービー勝ったからパス。それに、ファルコン先輩が来いってウルセーから、園田行ってくる」
「あら、気を付けて行くんだよ」
「オー……って、子供扱いスンナ!!」
「コウちゃんは?」
「無視スンナ!!」
「わ、わわわたくしはですね!?えぇと、そのぉ〜学園に残ってトレーニングでです!!!」
「ルーちゃんと、一緒。ですねー」
「へェえ!?!?!?」
「そっか、怪我だけはしない様にね」
「先輩として、ちゃんと責任。持ちますねー」
「うん。お願いね」
「あわわわわわ……」
「ツーちゃんは?」
「吾は、そうですね……実家に帰省しようかと」
「ツーちゃんはきっとそれが良いね。ちゃんと顔を合わせて、話しておいで。今年は凄い結果を出したんだしね」
「……はい!」
一通りメンバー全員の予定を聞いて少し温くなったお茶を飲む。
もし、1人で冬休みを過ごす様な子がいれば一緒にいようかと思ったけれど、杞憂で終わったみたい。
持って来たお煎餅をもう1枚手にして口に入れれば、スーちゃんが何やら企んだ顔で私と肩を組む。
「っテ、言うけどヨォ。先輩はドウするんだ」
私は、どうするか。
考えながら口の中のお煎餅を咀嚼して飲み込んで、また考える。
「そうだね。実家に戻って、いつもみたいに宴会。かなぁ」
「フーン。面白くねぇの」
実は、このチーム。他のチームと違って家族レベルで名前が似ているウマ娘達が集まっている割に、共に過ごすという事が殆ど無い。
一緒にトレーニングはするし、お出掛けもする。だけど、こうしたイベントや節目のタイミングで揃う事は今まで1度も無い。
まぁ、でも、今日の机の上くらいバラバラでも仲良しなのに変わりは無いから、別に良いかな。
仲良しだからこそ、普段は一緒にいないっていう関係性も素敵だよね。
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「すまん。遅れた、まだ間に合うか?」
そう言いながら、トレーナーさんが扉を開ける。
その手には缶に入ったコーンスープと、おつまみみたいなお菓子が入った詰め合わせ。
「ふふっ」
「?どうした?」
やっぱり、このチームは皆個性が強い。
まぁ、こんな十人十色な皆が大好きなんだけどね。