幻の夢を追いかける花 作:或る記憶
わたしの目指すレースは、さきたま杯と浦和記念です。
わたしは今、船橋にある千葉ウマ娘フナバシトレーニングセンター学園に通う平凡なウマ娘です。
目指すレースはわたしの地元でもある浦和で開催されるさきたま杯と浦和記念です。
どうして浦和のトレセン学園に通っていないかは、まぁ、後々教えるという事で……。
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【今、先頭でゴーールッッッッ!!!第 回、浦和記念の勝者は船橋からやって来たアセビコウロ!!2,000メートルの大どんでん返し!素晴らしい末脚と、追い込みでした!】
「……あ、あわわわ!?!?!?!?やった……!やってしまいました!!!
「おー、オメデトー。コウロ、ようやっとるわぁ」
「な、なんですかその!やる気の無い言葉は!」
「何て言うかコウロが喜び過ぎてるからか、1週回ってあーしは虚無だわぁ。……でも、なんか凄い事をしたんだぁってのは分かるよ〜。あーし、いつまでも、どんな時もどんな場所でも、コーロを応援してっからねぇ」
「も、もっと喜んでくださ〜い!!」
「喜んでるよぉ」
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携帯電話に入れて貰ったウマッターを開く。
これは、SNSと呼ばれるもので様々なウマ娘が利用していたり、レースの情報が見れたりする便利なものだ。
私はインターネットに詳しく無いから、アカウントも作って貰ってフォロー?だったり、私が呟いた事は1度も無い。
フォロワー?の数字だって1桁で、名前も全て知っている方々だけだ。
「浦和記念、新進気鋭のウマ娘が新たな勝利へと!……か」
画面に映るのはローカル・シリーズと呼ばれるレースの1つで、私は経験の無いダートのレースである。
画面に大きく汗を光らせて、笑顔で笑う黒髪の少女と、隣で薄く笑うトレーナーらしき女性。
目指すのは、次のさきたま杯。今はJpnIIに設定されているものの、もう直ぐJpnIに格上げされるレース。
浦和記念より600メートルも短い1,400メートルで、アセビコウロが見せた脚が次のレースでも通用するかが鍵。
「……うん。この子、強いな」
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アセビコウロ、それがわたしの名前。
戦績は8戦3勝、昨日の浦和記念を入れれば9戦4勝。
重賞は勝たせて頂いたものの、至って普通の、平凡なウマ娘。
オグリキャップさんや、ユキノビジンさんの様な地方から中央へ移籍して人気のまま結果を残す様な夢も見るが、それは本当に限られたウマ娘が出来うる事で、わたしなんかが
「私。貴方をスカウトしに来ました」
「……へ?」
「特別移籍、と言えば良いのでしょうか。アセビコウロさん。共に切磋琢磨する1人として、中央に来る気持ちはありませんか?」
と、思っていたんですけれど……。
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お父さん、お母さん、私。アセビコウロは元気に頑張っています。今年の冬は、実家に顔を見せられなかった事は御免なさい。
今回はとても大切な用があり、久し振りに手紙を書きます。
今日、練習中にとあるウマ娘さんから声を掛けられました。あの中央で活躍しているアセビボタンさんです。
そんな凄い人が、わたしを中央のトレセン学園にスカウトしたいそうです。正直、今も手が震えています。
次の3連休の日、実家に帰ります。
中央の役員さんと、アセビボタンさんがお話をしたいそうです。
勿論。わたしのトレーナーさんも一緒です。
何故わたしに声が掛かったのか。周りのウマ娘さんを差し置いて何故わたしだったのかは分からない。それでもわたしは、結果がどんなものであれ頑張れるのなら頑張りたいです。
だから、今の気持ちは、わたしだけの気持ちとしてはスカウトのお話を受けようと思っています。
どうかスカウトのお話や、相談を聞いてくれると嬉しいです。
アセビコウロ
「コウちゃんってさ、地元のレースを目指してたのにどうしてトレセン学園は船橋だったの?」
「……あー、えぇと、ですねぇ!本当は浦和のトレセン学園に行きたかったんですけど……受験日前に、緊張からか風邪を、引きましてー……アハハ」
「そっ、かー、うん。しょうが無い……?」