幻の夢を追いかける花 作:或る記憶
「……あぁ、緊張するな。全く。凄い日だ」
こがねいじょっきー?どうしたのかな。
いつもとは違って、そわそわしているみたい。
「気張らなくて良いからな、ボタン。って、気張っているのは俺の方か」
「今日。勝ちたいな」
うん。ひさしぶりにわたしも1番になりたい。
何となく、だけれどね、わたしもめずらしく“勝ちたい”って思っているよ。
走る相棒の背に乗って、呼吸を合わせる。
G1の舞台は他の重賞、レースと比べても緊張感があるものだが、今日は一層その気が強い。
誰しもが勝ちたいと願い、天上人へ勝利を捧げる栄誉を狙っているが、それは馬には分からない。理解出来ない概念だ。
だからこそ俺は、何時もの様に、彼女がすっと気持ち良く走れる様にアシストをするだけ。
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2,000メートル。最後のコーナー前。
彼女のラストスパートを邪魔されない様に進路を取ろうと手綱を握り直せば、誰かから「まえにいきたい」と言われて思わず顔を不自然に上げてしまう。
目を動かして声の主を探っても勿論、そんな事を言う騎手はいない。
幻聴かと思い、レースへと今一度集中すれば再び「だいじょうぶ、いけるよ」と声が聞こえた。
初めての感覚と体験。
もしや馬の声が聞こえたのかと思って、相棒の表情を窺えば今までとは違う、ギラギラと焼け尽くされる様な闘志を感じる。
「そうか。なら、信じよう……!」
鞭を1発、合図を送れば、それだけでスルスルと加速し小さな隙間を撃ち抜いて前に出る。
もう大丈夫だな。と、頭の片隅で感じる。
彼女は最高だ。と、確信する。
此処まで来たなら、俺ができるのは、たった1つ。
アセビボタンから振り落とされない様にする事だけだ。
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あの日の天覧競馬を見たファンは口を揃えてこう言った。
「凄いものを見た」
最終コーナー前からの無鉄砲なラストスパート。
馬群の中をスルスルと飛び出す少し小柄な馬体。
最強だと言われた彼女が、最強のままファンと、チームと、あの最上階からご覧になっている2人へ魅せた走り。
かのヘブンリーロマンス、かのエイシンフラッシュとはまた違う敬意の示し方。
ゴール板を過ぎ去って先程とは違う、緩めた足取りで芝の真ん中へ綺麗に止まった未だ黒い馬体、鞍上がヘルメットを外しその首筋へ軽く2回「そのままでいてね」と合図を送り噛み締める様に頭を深く、長く下げる。
それを真似たのか、只偶然そうなったかは誰にも分からないが、鞍上が頭を下げるその下で最強で最高の相棒も前脚を軽く曲げ、その頭を深く下げた。
ヘブンリーロマンスが礼儀正しいお辞儀。
エイシンフラッシュが格好良いお辞儀。
そう例えるとしたら、アセビボタンは少女がカーテシーをする様な「美しいお辞儀」だったのだ。
湧き上がる完成と拍手、それは人馬が共に検量室へと消えて尚、1人と1頭へ向けられ続けた。
123:名無しが適当語り ID:oTHftG6YY
アセビボタンの天覧競馬好き
124:名無しが適当語り ID:UvQceGl1Q
分かる
125:名無しが適当語り ID:wPixmkV09
1日に1回見直してる気がする
126:名無しが適当語り ID:oyaW+cnT/
レース自体も最高だけど、その後がもっと最高
127:名無しが適当語り ID:YPXsxYcTs
騎手が馬上敬礼した後にアセビボタンも釣られてお辞儀する流れが美しいんだ……
128:名無しが適当語り ID:ntAEBXI6d
多分落ち着かせる為の首ポンだとは思うんだけど、結果的にお辞儀しようねの合図に見えて可愛い
129:名無しが適当語り ID:/VqqQDpdM
>>128
ボタン「オーミがお辞儀してる!私もやらなきゃ!」
130:名無しが適当語り ID:GFhvA6R7a
>>129
可愛い
131:名無しが適当語り ID:GcBjUVodh
近江騎手勝利を噛み締め過ぎて10秒くらいお辞儀してたけど、ボタンの方もずっとお辞儀してたの、ほんま、ほんま、
132:名無しが適当語り ID:gvvreoPRE
ボタン、お前本当に馬か?
133:名無しが適当語り ID:FlV8Ak1DE
UMAかもしれない
134:名無しが適当語り ID:H+3lb8JNu
少なくてもアセビボタンが可愛くて頭が良いという事は間違いない
135:名無しが適当語り ID:vk46ronSE
>>134
それだけは正しい
136:名無しが適当語り ID:dgg7LVhB2
>>134
ベストアンサーにしますね……
謎世界線。
思い付き幻覚シリーズはこれにて。