幻の夢を追いかける花 作:或る記憶
これは、うらに必要なレースを走った日の話。
「ロード!次のレースは、根岸ステークスに決まったぞ」
「根岸、ステークスって、ダートの然も短距離じゃなかったかな?うらは障害レースに出ると思っていたのだけどね?」
「アセビロードが障害レースに行く事は決定事項だ。しかし、地面が殆ど芝とはいえ、ダートの場所もある。ロードが砂を走れるか、走れないか、言ってしまえば確認の為だな。勿論、勝ったら勝ったで大金星だ」
「勝つかー、ふむー、うら的にはプラス2,000欲しいね」
トレーニング後のストレッチ、チームの皆と一緒にクールダウンをしていればトレーナーに声を掛けられて、まさかの提案に珍しく驚いてしまう。
他の皆だってうらの適性外のレースへの提案で変な顔になっている。
だけど、訳を聞いてみれば案外納得できるもので、出走枠を1つ潰した気分になって少し申し訳なくなるが、これもうらが成長する為だ。ご勘弁、だね。
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「ダートを走れるかの確認だが、勝負には本気でな」
「勿論。そこは重々承知、本気で行くさ」
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【東京競馬場。第11R。根岸ステークスに出走する全16人のウマ娘がゲートへと向かいます。注目のウマ娘はシャバランケ、チーフパーサー、デュンナ。逃げと得意とする3人は一体誰が逃亡者となるのか】
係員さんに案内されて、ゼッケンと同じ8番のゲートに入る。
【そしてアセビロード。普段は長距離、芝のレースに出走している彼女ですが、まさかのどんでん返しを起こせるのか】
次々とライバル達がゲートに入るのを待つ中で、うらの事が紹介されて少し照れ臭くなった。
今日は初めての砂。それに距離もうらにとっては短過ぎる。
「確認だから」
そんな大義名分を掲げれば勝てなくても良いのだろうが、適性外でもうらは1人のウマ娘として、勝ちたい。
ゲートの中で怒られない程度に脚を動かして、その時を待つ。
【第××回、根岸ステークス。スタートしましたッ!!】
ガコンと開いたゲートと同じタイミングで飛び出す。
うん、良い感じッ!
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【残り200の標識を通過!現在先頭はチーフパーサー!その後ろをリードノベルが追っていて、その次ドュンナ、フリルドベリー!アセビロードは未だ最後方です!】
脚の感覚が違う、距離が足らない、経験も足りない!
やっぱり短距離の時間はうらには早過ぎる!
でも、でもでもでも!ここで諦めたら、障害レースで勝つなんて夢もまた夢。
まだ、道は見えていないけど、参考に見た過去の根岸ステークスでやっていたあのウマ娘さんみたいな追い込みを、やってみる。
【アセビロードが後方から一気に飛んで来たぞー!!凄い脚だ!!前に届くか!届くか!!届くか!!!】
少し無理矢理に脚を使った所為で、1,400メートル走っただけなのに珍しく息が上がった。
流れる汗を拭って掲示板を見ればうらの番号である8は掲示板に入っていなかった。
判定の映像を見る限り、どうやら5着のウマ娘さんと頭の差で負けたらしい。
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「根岸ステークスお疲れ様、ロード。凄い脚だった」
「うん。でも、負けてしまったねー」
「それはまぁ、悔しいけれど、仕方のない所もあるさ……ダートでも走れそうか?」
「そーだねー。うらは、走れる。と!思うね」
「そうか。では、疲れが取れてから本格的に障害の練習を始めようか」
「あいあいさ!宜しく頼むね、トレーナー」
そんな話をして、ちょっとの休息を挟んで始まった障害レースの練習。
流石に本番と同じ障害は用意できないので、簡素な物にはなっているが種類の違う障害を並べて、芝の上にどこかからトレーナーが持ってきた砂を撒く。
「トレーナー?あの、これは?」
「簡易版、芝とダートの境目だ」
「境目……?」
「俺も噂でしか聞いた事無いが、障害レース中の芝とダートが切り替わる部分で怪我やミスをするウマ娘が時々いるらしい」
「えー、本当なのかな」
「正直俺も半信半疑だ」