幻の夢を追いかける花   作:或る記憶

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飛べ、その手が触れる前に

中山競馬場。

明日の大レースと比べると少し寂しい雰囲気のあるこの場所で年に2回しか演奏されない、少しだけレアなファンファーレが鳴り響いた。

うらは今日、出走の予定は無いが仲良くしている子達の応援の為、この場所にやって来た。

 

「頑張りな!怪我はしない様にね〜!」

 

ゲートへと向かう途中の2人に声を掛ければ芦毛の彼女は会釈を、鹿毛の彼女は今日も抜かすと意義込みをうらに残して歩いて行った。

何回か同じレースにも出走した2人は正しくライバルで、今日はジュウちゃんが勝ち星を上げるのか、それともデイトちゃんが才能を見せつけるのか。

4,250メートルの戦いが今、始まった。

 

 

【現在先頭のアップトゥデイトが5番目のハードルをジャンプしました!安定した飛越です!!……そして今、後続のオジュウチョウサンが5番ハードルをジャンプしました!打って変わって薙ぎ倒す様な荒々しい飛越です!】

 

一瞬だけ止めていた息を吐く。

最後尾の子が無事ジャンプしたのを確認して拍手を贈る。

ジュウちゃんとデイトちゃんは同分野の選手でありながら、攻略方法は正反対だ。

デイトちゃんは模範的で綺麗な飛越をロスなく行い、ジュウちゃんは殆ど跨いでるに近い怪我するギリギリを攻める飛越。

だからうらはジュウちゃんがハードルに差し掛かった時には息を止めてしまう。

もう少し経験を積んだら、ちゃんと跳べるようになれれば良いんだけどね。

 

 

【12番目のハードルをオジュウチョウサンが今ジャンプしました!リードを5バ身程付けてアップトゥデイトが追います!!】

 

最後の直線。中山の400メートルも無いターフをジュウちゃんが1人で独走する。

トレーナーさんが変わってからは正に才能開花としか言い様の無い、王者の走り。

デイトちゃんも必死に食らい付いているのにその差は絶望的で追い付けない。

 

オジュウチョウサン、1着。

アップトゥデイト、2着。

 

ゴール板を駆け抜けて、減速した2人が敵では無くライバルとなって戻って来る。

 

「お疲れ様、なんだね」

「今日も俺の勝ちだな!」

「そうね、おめでとう。でも、相変わらず飛越は下手ね」

「は、はぁ!?勝者に対する第一声がそれかよ!?」

「気を付けなさいって言ってるの」

「んだとぉ!?」

「まーまー、2人共良く頑張りました。だから今日は、そういうの無しでお祝いをしようと思ってるんだけどね?」

「マジ!?ゴチになります!」

「全く……貴方ってば」

「んふふ。良いライバルは、素晴らしいね」

「ライバル?」

「貴方が?」

 

性格も、レーススタイルも、生き方も違う2人が見つめ合ってギラギラとした闘志を目に写す。

 

「「次()勝つ」」

 

「……あっ!でも、ジュウちゃんは打ち上げ前にちゃんと、危険な飛越をした事をトレーナーさんから絞られて来るんだよ〜」

 

「オジュウ〜、こっちおいで〜」

 

「げぇ!もう来やがったのかよ!?」

 

「ほら、早く行きなさい」

 

「……ちっ、こうなったら投げ飛ばしてでも逃げるしかないか……!」

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