幻の夢を追いかける花   作:或る記憶

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心を震わせる力はきっと、皆が持っている。

 

うら達ウマ娘が走るレースは基本的に芝で走る平地レースが基本だ。その昔はダートも芝と比べたら格下のレースなんて思われている時期もあったけど、最近は「ダートは魔境」と呼ばれる程に強い子が沢山集まっている。

しかし、うらが走る障害はそうでは無い。

芝の上では息をする事が出来なかった子達の最終受け取り口、それが障害レース。

芝では二十三戦走ったけれど、重賞レースに申請すらも出来ない条件戦止まりで、未勝利を抜けるのに十三戦。然も勝ち鞍はその十三回目の未勝利戦のみ。なんて子が、障害に転向した途端十二戦走って連帯率百パーセント、つまり一着と二着しか取らなかったという素晴らしい成績を記録した事実と、障害に転向してから才能開花したウマ娘の歴史は意外とある。

それなのに、知名度が低い。見て貰えない。

日本は平地レースの三流、四流扱いだし遠征先であるヨーロッパは障害の方が主流だけど、日本と比べて距離・馬場などが違い過ぎて目標にすら出来ない。そもそも地方レース場に障害コースが無いから重賞全てを合わせても年間で全十レース。平地が約百三十レースある事を考えたらその差はお察しである。G1に至っては年二勝って、URAにはもう少し頑張って貰いたいね。

 

「って、事で。うらは君達に期待しているんだね?」

「突然何だよ、後君“達”って何だ」

「君達は〜、君達。だね?目の前のジュウちゃん、そして、デイトちゃん」

「は?彼奴に期待してるゥ?」

「うん。あの子は正に模範。綺麗に飛ぶ」

「あんな奴がねぇ〜」

「君は、荒々しい。見ていて心配になる、だけど、その強さはきっとヒトを惹き付ける。デイトちゃんと二人で障害レースの二代巨頭になるはずだ」

「ふーん・・・・・・」

 

制服のうらと違って、体操服に身を包むジュウちゃんことオジュウチョウサンは、つまらなさそうにストレッチを進める。目線の向こうでは、デイトちゃんことアップトゥデイトが既にウォーミングアップのランニングを始めている。飛越だけでは無い、走る姿すら綺麗な姿勢。

思わず見惚れそうになるのを抑えて、目線を戻し、ジュウちゃんの周りにある高さの違うハードルを見つめる。もう少しで障害レースの重賞、東京ジャンプステークスなのに天下のトレセン学園ですら障害の練習にはこれ程の物しか用意出来ない。

芝のメイクデビューと比べ、障害の転向した後の未勝利戦だとURAが定める最低人数の五人でスタートする事もザラな事を考えれば設備にお金を掛けていられないという事も理解しているが、この現状を変えられないうら自身にうらは失望する。

 

「・・・・・・そういえば、先輩は期待しねぇの?」

「へっ?期待って、何にかな?」

「自分自身」

「・・・・・・あー、えっと、うらはそこまでの力無いし〜ヘヘッ」

「そうか?俺とアップは、先輩の大障害見てこのガッコー来たのに」

「それは初耳だね!?」

「今初めて言ったからな」

 

サラリと告げられる初めての告白に思わず顔が熱くなる。

まさか、ジュウちゃんからこんな事を言われるなんて思ってもいなかったから、どう反応すれば良いのか分からない。

うらの走りに影響を受けてくれたのか、それは、とても、嬉しい事だね。

 

「うん。とっても嬉しいね。初めて言われた感じだ」

「そうか、言わない方が良かったか?」

「ふふっそんな事無いね!これからの障害界を宜しく頼むんだよ!」

 

うらが走った所で脚を止めるのは片手に収まる程度だろう。それも普段は見慣れないものだからという好奇心から。

だが、デイトちゃんとジュウちゃんなら両手を飛び越えて何万人が目を止める存在になる筈だ。

圧倒的なカリスマ性と実力。平地レースで手に汗握る勝負を見る時と同じ熱狂で。

 

それだけの力が二人にはある。

 

ねぇ、未来の王者達よ。

こんな背中なんて軽々と追い越してさ、日本中から愛されるウマ娘になっちゃってね。

 

「それは先輩もだろ」

「ありゃ?声に出てた?」

「バッチリな」

「オジュウ!あなた、まだ準備終わってないの?」

「げぇ、五月蝿いのが来た」

 




 
 
 
 
 
「彼女だって障害ウマ娘の象徴となれる筈なのにね」

「アイツも俺程じゃねぇけど、まぁ、良い感じだろ?」
 
 
 
 
 
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