幻の夢を追いかける花 作:或る記憶
夏の蒸し暑い空気の中、漸く暗くなった世界の中で1人の人間と、6人のウマ娘が何個かのバケツを用意して楽しげに火薬へと火を点ける。
パシパシと音を立てた火の粉が暗闇へ鮮やかな色を足す。
あいうえお
ねぇ、スーちゃん。
スーちゃんは、どんな花火が好き?
ア?そんなんネーヨ。
えぇ?本当に?
……ハァ。
強いて言うナラ今持ってるコレだ。
線香花火?
アァ。コイツはアタシと同じだ。
ほんの少し煌めいて、ソノ後は地面に落ちる。
アタシは、ダービーを勝ったウマ娘。だが、アタシの名前は後世にキット伝わら無イ。日本中を探したとしても、数年後ニハ、アタシの名前なんて消エ去ってイルサ。
そんな事無いよ。
知ってる?
人間も、ウマ娘も以外と記憶を覚えているものなんだよ。
だからね、何十年先の未来でも、小さな少年が皺々のお爺ちゃんになったとしても、きっと、覚えているんだ。
ハッ!そんな奴ガ本当にいるのなら、ソイツは相当な物好きだ。
ルーちゃんも花火、楽しんでる?
およ?えぇ、楽しんでいますねー。
ルーちゃんはどの花火がお気に入りかな?
ピューンって飛んで行くのがルーちゃんみたいなので、お気に入りはーロケット花火なんですけどー、ロケット花火は危険なので駄目ですって言われちゃいましたー。
そっか。残念だったね。
本当ですよー。だから、次はしがらみを受けずに、皆でもう1度、楽しみたい。ですねー。
うん。またやろうね、絶対。
はいー!絶対。ですねー。
ローちゃんは、あんまり花火好きじゃないの?
へ?そんな事は、無いんですけどね?
本当?さっきから、あんまり手に持って無いみたいだったから……。
あぁ、それは、うらはどちらかと言えば打ち上げ花火派なので。
あれ?そうだったの?
そうですねぇ。そっちの方が浪漫がありますからね?
浪漫?
えぇ。
空に咲くのはのは一瞬でも、大きな音と美しい色彩で沢山の目を奪う。
うらも障害レースをそんな世界にしたいのでね。
意外とロマンチスト?
今更ですかね?
ツーちゃん。楽しんでる?
ツバキ様!……えぇ、楽しんでいます。
ツーちゃんはどの花火が気に入った?
そうですね。吾は、この花火が。
沢山の色が変わって吾の知る花火のイメージと違っていて、新しく、とても心惹かれます。
本当?
でも、確かに。ツーちゃんっぽいよ。この花火。
吾らしい、ですか?
うん。
目まぐるしく変わる色でも、全てが損なわれずに輝いている。
それはきっと、世界にすら名前を刻んだツーちゃんも同じ。
そんな!恐れ多い……。
恐れ多くなんて無いよ。
そもそも、元気に走れるだけで、私達ウマ娘は奇跡なんだから。
コーウーちゃーん。
はい!?えぇ!!コウロはここに!!
んふふ。
驚かせちゃってごめんね?楽しんでる?
えぇ!楽しんでいます!とても!素晴らしい程に!それはもう恭しく!
なら良かった。コウちゃんは、どの花火が楽しかったかな?
え、えぇ!そうですね!わたしは、やっぱりオーソドックスなこれ!!!がががとても、良く、て、ですね……!!!
そっかそっか。じゃあ、沢山用意して正解だったね。
楽しんでくれて、私も嬉しい。
ひゃい!トテモタノシミマス!!
うん。沢山楽しんで。
今度花火大会する時は、コウちゃんの活躍で奢って貰っちゃおうかな。
へ?え、えっと!きょ、きょ、恐悦しごくです!!!
嘘だよ。こういうのは年長者に払わせて。
でも、コウちゃんの活躍をお祝いしたいのは本当だからね。
は、はいぃ……!!
なぁ、ボタンはどの花火が好きなんだ?
えー?そうですねぇ。ヘビ花火、でしょうか?
そうなのか?なんと言うか意外だな。
そうですか?まぁ、確かにキラキラしている訳ではありませんからね。
でも、例え地味だとしても、物好きしか買わなかったとしても、今でもこの時間の中に残っている。
それって凄い事だと思いません?
確かにな。それはそうだ。
……所で、トレーナーさんはどの花火が好きなんです?
花火か……そうだな。手筒花火、かな。
手筒花火?あの、物凄い火花を出して、ヒトが持っているやつですか?
おう。それそれ。
えー?なんでです?
アレって、無病息災とか武運長久、家運隆盛みたいな意味があるんだろ?
ウマ娘を手助けするトレーナーとして、これ程ピッタリな花火もそう無いだろ。
確かに、そうかもしれませんね。
あぁ、ツバキ。
この景色が君を祝福しているよ。
はっ!知らないね。テメーらの都合なんて!
大切なのはただ1つ。この場所でアセビスズナが1番強かった事実だけだ!
ルピナス、世代最強の最速息子。
んー?世代とかよく分からないけど、この僕が、1番速くて格好良くて強くて最強!ってことは一生変わらないよね〜!
ロード。おめでとう!
おー。ようやっと、自分でも納得できる走りが出来た気がするね?
君は強い。だからこそ、俺を乗せてくれて有難う。ツバキ。
別に、アナタを乗せたい訳じゃ無い。
アナタと、一緒に勝ちたかったの。
コウロの本当の強さ、見せられたね。
僕は強いからね!……なんか違うな。
えぇと、俺様が最強!……しっくりこない。
わたしの勝ち!……うん!なんかこんな感じする!!!
アセビさん。あの花火が見えるかな。馬に大きな音は駄目だと知っているけれど、あの美しい光景をアセビさんにも見て欲しいと、酷い人間だね。私は。
そんな事ないよ。大きい音はビックリしちゃうけど、つぶらやせんせいといっしょに過ごせるのはとても嬉しいもの。
だから。これからも同じ景色が見ていたいの。
成長も、お婆ちゃんになってからの毎日も、一緒にお祝いしたいんだ。