というワケで「香取隊の狙撃手」で書くべき全ての工程を終えましたので、最後に挨拶をさせて頂きます。
前作「痛みを識るもの」とのクロスランク戦終了を以て、この作品は番外編を含めて終了となります。
計497話にも上る長編となりましたが、無事に書き切れて安堵しています。
さて、まず最後に書いたクロスランク戦についてお話したいと思います。
「痛みを識るもの」では他作品とのコラボで行ったクロスランク戦ですが、今回は自作品とのコラボになります。
他の方との都合が中々つきそうになかった事もありますが、個人的にこの組み合わせはやりたかったので。
というのも私はワートリの二次創作を書く時に、どうしても書きたい部隊が二つあったんです。
もうお分かりと思いますが、那須隊と香取隊です。
那須隊は原作でも隊長の那須さんが「エースと指揮官を兼任して負担が集中し過ぎて枷になっている」と明言されているので、それをカバー出来る主人公を投入すれば色々噛み合うんじゃないかと思っていたので、真っ先に手を出しました。
個人的に那須さんは好きなキャラですし、ある程度テコ入れすれば化けるチームだなという印象も持ったので、そこから前作「痛みを識るもの」が出来上がったワケです。
前作は王道も王道、重い過去を背負った主人公が自らの運命を乗り越え、仲間との絆を深めて力を合わせて最大の敵を打ち倒す物語でした。
ワートリキャラの中で最も好きだと断言出来る迅さんの抱える闇や葛藤、戦争経験者である玉狛の面々の悲哀と絆、今を生きる若者を見守る大人の視点等、とにかく「絆」に焦点を当てたストーリーだったと言えます。
矢張り男主人公でこういった世界観だとこのようなベクトルが映えるのと、ワートリでまずやりたかったのがこの路線なのでテンプレート、王道と言うべきものはこちらでやり切りました。
結果としてワートリファンの皆様にも好評を頂いたので、満足しております。
そして今作、「香取隊の狙撃手」ですがこちらも私が書きたかった部隊の片割れ、香取隊を主軸に置いた物語です。
香取隊は香取という
エースの香取の能力がどれだけ凄まじいかは原作最新話付近での香取の活躍を見ていれば分かるかと思いますが、原作香取隊は、若村が自分が集団戦でどう動くべきかを全く分かっておらずだからこそ自己判断で勝つ為に動いた香取を「独断専行」と揶揄して責任を押し付け、自らの怠慢を全く顧みない有り様でした。
自分が何も出来ない苛立ちから眼を背けたくて、独断専行という分かり易い問題行動を取っているように見える香取をあげつらう事で無意識に自分の現状から眼を逸らし続けていたんですね。
このような心情は全く以て何処までも一般的な「未熟な学生」らしい風潮なのですが、ワートリのキャラは精神が年齢不相応に成熟しているメンバーが大半なので、逆に年相応な彼が目立つ結果となっています。
責任を負いたくない、自分が無能であると理解したくない。
これは誰でも抱く心情であり、特に思春期の学生にとっては死活問題に等しいでしょう。
勿論社会人になればこんな考え方は一切通用しませんが、まだ学生である彼にそれを求めるのも酷ではあります。
ネットで若村に共感する声やヒュースの「指摘」を見て阿鼻叫喚になっているのは、きっと学生時代の自分の心情を思い出す人間が多かったからなのでしょうね。
しかし実際に生き死にがかかる戦場に立つ事を自ら選んでいるワケですし、上を目指すなら泣き言を言っている暇など無いのも事実です。
なので今作では香取側の行動指針や根幹の部分を外的要因によって変える事で、若村の自己改革を促しました。
前作の香取は「幼馴染と一緒に上を目指す」という漠然とした目標はありますが、独力で格上の実力者に勝てない事や若村の惨状を見て半ば諦観しており、モチベーションを失っている状態にありました。
これは原作ヒュースの言にも通じるのですが、彼女が切羽詰まっていなかった事にも原因の一端があるかと思います。
ヒュースの言う通り、修は時間がなく、余裕がありませんでした。
遊真の活動限界というタイムリミットがある中で余計な寄り道などしている暇はなく、失敗が許されない中で持ち得る手札を使い切り前へ進む必要があったからこそ、ありとあらゆる手を使ってランク戦を勝ち続けました。
それと同じように、香取にも「どう見ても大きな厄ネタを抱えたもう一人の幼馴染」を用意する事で尻を蹴飛ばす状況を作ったのです。
樹里は物語開始当初香取から距離を置いており、どうしても幼馴染と前と同じように一緒に過ごしたかった香取は何が何でも彼女を部隊に入れようと躍起になります。
そこで若村達を樹里の口から馬鹿にされる事でマジ切れし、チームを率いて樹里に挑み手痛い敗北を喫しました。
此処を、香取隊を成長させるターニングポイントとしました。
香取は原作で描写されている通り、表向きの言動とは裏腹に身内を非常に大切にしており、情も厚いです。
なので大切な幼馴染がどう考えても何かを抱えて困っていそうな状況で、多少突き放された程度で諦める筈がありません。
また、若村には何の言い訳も出来ない状況で明確に「自分の所為」でチームの脚を引っ張った敗戦を演出する事で、自らの現状を振り返る切っ掛けを作りました。
若村は無意識の恐れから自分の現状を直視していなかっただけなので、一度それをまざまざと見せつけてやれば自分がどれだけ駄目だったのかは理解出来ます。
そして根が真面目で善性なので、一度それを理解する事さえ出来れば前に進む事が出来るんです。
このように香取隊の問題点だった「香取のモチベーション不足」と「若村の現状の不認識」を一気に解決し、外部からのテコ入れで強化が入った事でようやく香取隊は停滞を止め、歩き出す事が出来たワケです。
これが香取隊でやりたかった事であり、少年漫画らしい成長物語とも言えるでしょう。
ワートリでは基本的に、普通の作品でやるような根性論や覚醒による逆転、といった展開は一切起きません。
あくまでもロジックの上で戦闘を行い、合理的な作戦と持ち得る手札の中から正解を選び取り、勝利へのパズルを組み上げるのがワールドトリガーの戦闘です。
戦闘中に覚悟の一つや二つで覚醒して強くなる事はまずありませんし、後だしじゃんけんのような展開も存在しません。
そのロジカルさが私がワートリを気に入っている理由の一つですが、香取は正直その常識の枠からはみ出しかねない存在です。
原作でも初見だった敵のスパイダーを利用して修を仕留める、相手のブレードの勢いを利用してジャンプして距離を取る、など初見のものに対する対応力が非常に高く、一度見ただけのスパイダーを自分のものとして使いこなす芸当も見せています。
そのラーニング能力の高さは上層部からも評価され、遠征選抜試験ではシミュレーションでそれが万能適正という能力として与えられるまでになっています。
そんな「戦いの中で成長する」という少年漫画でありがちな事をリアルに実現してしまっているのが、香取なんです。
精神の年相応さも相俟って、ある意味ワートリの中で最も少年漫画のキャラらしいキャラとも言えるのかもしれません。
クロスランク戦ではその香取の規格外の
本編ではチームワーク、作戦を重視する為、そういった香取の無双要素はやや抑えめにしていたので、クロスランク戦では存分に活かさせて貰いました。
また、クロスランク戦では本編でやろうとしてやれなかった「列車の上での戦闘」を行う事も目的の一つでした。
本編で市街地Fを実装したのは、実は列車戦闘がやりたいというのが理由にありました。
しかし脳内シミュレーションを行った結果、列車を利用する展開にはならず、泣く泣くお蔵入りになった経緯があります。
今回はその経験を踏まえ、意地でも列車戦闘を書く為に「痛みを識るもの」那須隊との対戦と相成りました。
香取隊がスパイダーを使う事を分かっている那須隊は、七海や那須の天敵であるこのトリガーの制約から逃れた上で優位を取る為に、列車を利用する事を思いつくワケなので自然な形で列車戦闘に持ち込む事が出来ると考えるだろうと思考しました。
普通にやると列車を樹里の爆撃で破壊されて終わりですが、七海という奇襲・狙撃無効の駒を用意する事で彼女の介入を牽制し、列車上での戦闘を実現したという経緯です。
動く列車の上での戦闘というのは非常に見栄えが良いですし、何らかの事情で脱線した際の混乱の隙を突くのも王道だと思います。
とにかく描写が派手に出来ますし、実際書いててとても楽しかったです。
若村にその発破の仕掛けをやらせたのは、どんなに小さな力でも使い方次第で強者を喰らい得る糧となる、というワートリの基本原則に則らせたまでです。
修がそうであるように、どれ程弱くとも工夫次第で格上すら倒せるのがワールドトリガーという世界の戦闘の面白い所です。
香取の無双展開を書きつつも、そこの基本はきっちり抑えさせて頂きました。
また、それぞれ初見の合成弾である
両者とも作中で大きな敵を打ち破る経験をしていますし、戦闘経験も非常に濃い内容を経ているので、このくらいは出来て良いだろうという判断です。
勝敗については悩みましたので、素直にシミュレーションを回してその結果に従う事にしたら、香取隊の勝利となりました。
先輩から後輩への
また、今回はいつもの三つ巴、四つ巴ではなく部隊同士の一騎打ちに形になりましたが、矢張りワートリ戦闘を書くなら三つ巴が圧倒的に書き易いなと思い知りました。
一騎打ちの形になると第三者からの横槍というのがやり難くなりますし、乱戦になる機会も相応に減るので盤面の調整が思ったより難しく、普段のワートリの三つ巴がどれくらい書き易いかを思い知りました。
戦場で格上を倒す場合、「敵と敵がやり合っている中で漁夫の利を取る」というのは最も効率的なやり口です。
それがやり易いのが三つ巴の利点であり、「敵の動きを利用して優位に立ち回る」というのもこの形式ならではだと思います。
敵の敵は味方ではありませんが、疑似的な共闘相手、利用する相手には成り得ますから。
もしも三つ巴にしていたら敵味方入り乱れる乱戦を列車上で演じる事になったかもしれませんが、今更でしょう。
ともあれ、これで私はワートリで書きたい事は書き切りました。
今作ではワートリのSF面、容赦のない現実といった面を趣味に従って描く事も出来たので、大満足です。
前にお話しした通り、二次創作はこれで一区切りとし、これからは一次創作の連載を始める為の準備を開始したいと思います。
実は既に下書き的なものは出来上がっており、後はそれを手直ししつつ創作コミュニティの仲間の協力を得ながらいつも通り完結の目途が立つようにプロットを組み直しつつ、連載開始に繋げていきたいと思います。
その為、小説を投稿しない期間がそこそこ続くかと思います。
何か気が向いたら短編程度は書くかもしれませんが、今後は一次の準備に集中したいので、恐らく可能性としては低いと思います。
何分一次創作の長編を本格的にやるのは初めてなので、なるだけ良いものが出来るように準備は入念にしておきたいので。
その書く予定の新作についてですが、正式名称はまだ決まっていませんが「忌譚回遊」という主題にしたいと思っています。
内容としては洒落怖の怪異の能力「
ぶっちゃけ「呪術廻戦」や「BLEACH」、「ダークギャザリング」に思いっきり影響された世界観であり、厨二的な要素も多分に含んだホラーバトルです。
元々ホラーが大好きなのが私で、厨二的な能力戦闘や頭を使って戦うバトルも好きなので、それを存分に活かせる舞台として構築した物語になります。
ワートリでは書けなかった容赦のない人死にを含んだ展開やドロドロした人間模様、因習村的な要素やヒトコワ等も描写するつもりですが、私が得意とするのはどちらかというと伝奇的なストーリーなので、そちらに寄せた作風になると思います。
ホラーものの勉強という事で「断章のグリム」や「ほうかごがかり」等は読破させて頂き大変気に入っているのですが、「この方向性は私には書き切れないな」と判断し、どちらかというと伝奇ものに寄った構成になる予定です。
戦闘システム的にはダークギャザリングに近く、世界観の雰囲気は呪術廻戦に似通い、BLEACH的なオサレ要素をふんだんに詰め込んだ作品になるでしょう。
洒落怖にどれだけ詳しいか、オカルトに対しどれだけ知識があるかが武器になる戦闘システムになるので、洒落怖好きなら楽しめる構成にするつもりでいます。
ちなみにヒロインの名前は「
他にも味方キャラには
名前に色々ネタを仕込んでるキャラも多いので、分かる人にはそれなりに察しがつくかもしれません。
準備期間にどの程度かかるかは少々分かりませんが、最短で1、2ヵ月以内、或いはもう少しかかるかもしれません。
何分色々手直しする所や今後の準備等々やる事が多いので、私自身どの程度かかるかは不明です。
ですがこれまで通り、一度やるからにはきっちり完結まで走り抜ける所存ですので、応援してくれると有難いです。
やるからには徹底的にがモットーで凝り性なので、私の作風が気に入って下さる方にはきっと面白い作品になるかと思います。
リアルも色々忙しくて大変ではありますが、それでも一度やると決めた以上は最後までやり切るつもりです。
では読者の皆様、しばしのお別れとなりますがこれからも私の作品を見て下されば幸いです。
長い物語に付き合って下さり、ありがとうございました。