僕はサイレンススズカ   作:キサラギ職員

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“夢”の続きへ


物語は続いて

 「僕」はサイレンススズカ。

 海外遠征で結果を残した僕は、帰国した。ライバルたちを片っ端から沈めて、それから、スペちゃんと一騎打ちだ。

 日本総大将とか言う凄い名前で呼ばれて、どこか垢抜けたスペちゃんと、異次元の逃亡者と呼ばれた僕の決着は………想像に任せよう。

 いい勝負だったよ。いまでも見返してみて、感極まることがあるくらいには。

 

 スペちゃんもいまは引退して、北海道の農場で元気にくらしてるみたいだ。どこで見つけたのか優しそうな人と結ばれて、たくさんの赤ちゃんに恵まれた。

 スペちゃんの牧場からたまに野菜が届くからいっぱい食べちゃうんだよね。太っちゃう……。

 

 僕は激痛に駆られていた。とんてもない痛みだ。僕は病院に居て、旦那の到着を待ちわびていた。職場からそう遠くない場所の病院なので、すぐ到着するはずだけど、なにしろ初めてのことで、二人揃ってああでもないこうでもない議論したりした。

 

 急に来た。正確にはまず鈍痛が。続いて激しい痛みが来て、僕は文字通り七転八倒したけど、手慣れた様子でウマ娘の看護師さんに取り押さえられる。

 

「痛い! 痛い!」

「はじまったか。沖野さん。大丈夫ですか、すぐ旦那さん呼びますね」

 

 最初は我慢できる痛さだったのが、だんだんと痛くなってきて、とんでもなく痛くなってきて、涙が止まらない。

 

「スズカ!」

「と、とれーなーさん……」

 

 誰がトレーナーだと頭を撫でられる。近頃白髪が出てきたと愚痴っている旦那その人が白衣を着て、そこにいた。

 

 僕はサイレンススズカ。

 母親になる。

 

 

 

「頑張れ! 踏ん張れ!」

「れ、レースだって、こんな苦しくない……!!」

 

 痛すぎた。自然分娩じゃなく帝王切開にしておけばよかったと今更ながらに後悔をする。

 

「あのサイレンススズカなんだろ! 頑張れ!」

「こういうときスパルタだよね……!」

 

 見様見真似で呼吸を整えて、旦那の手を握って踏ん張る。踏ん張らないとでない。自然の摂理と言うもので。

 はじまりが急なら、終わりも急だ。体の中からなにかが失われるセツナイ予感と共に、生命が新たにこの世に出てくる。

 大股開いている僕には瞬間はみえないけど、お医者さんが取り上げるのはわかった。

 

 

 

 

「おぎゃあ! おぎゃあ!」

 

 

 

「おめでとうございます! 元気なウマ娘のお子さんですよ!」

 

 

 僕はサイレンススズカ。母親になった。

 へその緒を切って、布に包まった子供を抱かせてもらう。平均的な体重らしい。

 

「スズカ。名前は……」

 

 旦那が名について聞いてきた。

 ウマ娘は異世界のウマソウルを継承した人間のことだ。名前が自然と浮かんでくるらしいのだけど、なぜか浮かばなかった。

 サイレンススズカ。レース中に骨折し、安楽死した悲劇の名バ。

 子供がいなかった。だから、名前があるはずもない。

 まっさらな子だ。真っ白な未来。何者も知らない物語の続き。

 

「この子の名前は………」

 

 

 

 

 

 

 Next Generation……?




ほんとに終わりです!(たぶん)
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