皆を救ったら二次災害が起きてた件について(最低速度投稿) 作:カツオ節太郎
「…………悠?」
「…奏?」
ベンチの上……の彼の上で寝ていたわたしは直ぐに降りる。
絵名の声を無視し彼をじっと見た。
安らかな寝顔。
日向を浴びとても気持ちよさそうに……なのに、なのに。
……嫌な汗が流れてくる。
それが何かは分からない。分からない、けど……。
分からないままでいたい。
早く彼を……悠を起こすだけ。
「悠……起きて。絵名が来たよ」
肩を掴み揺する。
……けど、うんともすんとも言わず眠っている。
ほっぺをつねる。
……少し冷たい。
……だけ、ど…悠は眠ったまま。
もっと強くつねる。
これなら悠も起きてくれるは━━
……まだ眠ったまま。
「……ッ!? ……悠!!」
「ちょっと奏!?」
「あ、絵名来てた……奏どうしたの?」
瑞希の声が聞こえる。でも今のわたしに返事をする余裕はなかった。
ち、違う……そう、じゃない!
だって悠は……悠は……!
無我夢中に揺する。
ガクガクと悠の首が揺れる。
人形のように無気力。
本当に人形……人形みたい……。
「悠…! …悠! 起きて! ねぇ…起きてよ!!」
「……絵名。救急車呼んで」
「まふゆも来……は? 言ってる意味が……」
「早く」
「っ……分かったわよ」
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!!
まだ貴方に何もしてあげられてないのに……。
わたしを救ってくれたのに……! みんなを救ってくれたのに……!
まだお礼すら言ってないのに……!
「………………起きて…よ。…悠……」
視界が歪む。いつの間にか熱くなった目尻には涙が溜まっていた。
だって、そんなの……ない、よ。
お願い……起きて…ねぇ、悠…………。
ギュッと……ギュッと強く抱きしめる。
……気付きたくなかった冷たい体。
聞こえない心臓の鼓動。
サイレンの音が聞こえる。
…………もう、いいや。
視界が……黒に染った。
△
▽
「…………あれ? ここは」
真っ白い部屋。
さっきまで奏とベンチで寝てい……ああ。そういう事なんだね。
「そういう事……です。ありがとうございます。貴方のおかげでみなさんは救われました」
女性の声が全方向から聞こえてくる。
救われた…か。
「そっか。……救えたのなら良かったよ」
「はい、救えたのは確かです。確かですが……」
歯切れ悪いのか途切れる言葉。
その前に俺の名前は悠。
なんて言うのかな。……現実で死んだ俺は神様に転生させて貰ったんだ。
神様はみんなを救って欲しいと言った。
だけどみんなを救い終えたら……貴方は死んでしまうとも言っていた。
そういう決まりだった。
役目を終えたら死ぬ。
それでも第二の人生があるならとお受けした。
神様いわくゲームの世界らしいけど趣味が読書と散歩の俺には分からない世界。
唯一、初音ミク……VOCALOIDが人気の世界ってことは分かった。
こういう時のためにゲームやアニメに触れておくべきだったかな。とちょっと後悔はあった。
まあ初めは手探りだったけど楽しかったよ。色んな子達と仲良くなれて……でも、みんながみんな何かを抱えていて。
役目、は抜きで友人として助けたくなるほどには……俺も丸くなったかな。
ひねくれてたのになぁ……。
少し時間はかかったけど……皆が救われた。
それは俺のタイムリミット。
問題を解決して……俺は死ぬのかなって思っていたら神様が気を利かせてくれたらしく一週間は生きながらえた。
幾許のタイムオーバー。
いつ死ぬか分からない。
それでも……それでも楽しかった。
それで……ニーゴのみんなと待ち合わせの時に急に睡魔に襲われて。
一緒に来た奏とベンチで睡眠をとっていたところで……かな。
奏には悪いことをしちゃったな。
目を覚ましたら友達が死んでいたなんて笑い話にもならない。
……神様は喋らない。
喋らない以上は聞くしかない。
「どうかしたの?」
「そ、その……確かに救っていただいたのですが……予想外の事態が起きまして」
ばつ悪そうにする神様の姿が思い浮かぶ。……声色からして本当に不味いみたいだ。
「…………もう一度あの世界に行ってくれませんか?」
「はい? あの世界って……あの」
「プロジェクトセカイです」
プロジェクトセカイ? ……というゲームの世界だったんだ。
初音ミクが存在したからリズムゲームだったのかな。
そんなことよりも神様の一言に思わず目を見開いた。またあの世界に……でも…。
「もう死んでますよ」
今頃救急車に運ばれていることだろう。
それならまだいいけど死亡診断書とか書かれてたら……。
「そうですね。なんならもう火葬されてます」
……早すぎやしませんか?
あ、いや……この空間と現実じゃ時間の流れがちがうのかな?
そこら辺は気にしなくても良さそうだけど……。
「それならわざわざ……」
「仕方ないんです! だって貴方が死んでから大変なことになってるんですよ!」
……た、大変なこと…?
訝しげに神様を見る……ことはできない。
想像するなら目を逸らし渋々といった感じかな?━━
時期的に葬儀が終わってすこし経ったくらいらしい。それで……と口を閉ざす神様。
……説明して貰えなかった。
「…神様?」
「……そうですよね。あれだけ親身になってくれた異性に惚れないわけがありませんよね。……過去を乗り越えたと思ったら意中の相手が死ぬとか心砕けかねませんよ」
辛うじて聞き取れる声量でブツブツと呟いている。
「あのー神様?」
「! …は、はい! なんでしょう!」
「結局どうしたらいいの?」
行くにしても死んだはずの人間が生きてたら問題だろう。
「名前だけ変えてもらって転生し直してもらいます」
「いや……姿とか」
「大丈夫です。世界にはそっくりさんが3人居るんですよ?」
「世界にだよね?」
「つべこべ言わず行ってください」
……はぁ…分かった。
何がどうなったのかは分からない。
悠……鹿目悠じゃなくて別人として人生を歩めば良いってことだけは分かった。
なら一から頑張っていこう。
それはそれできっと楽しいから。
「分かりました。それで名前は……」
「名前はご自由に名乗ってくれればこっちで調整しますので」
……うっかり山田太郎とか言わないようにしないと。
「あと俺の役目は」
「役目はありません。このまま人生を謳歌してください。転生後は一切関与をしません」
「……そう」
要は死ぬまでに何とかしろってことね。
その予想外の出来事を……。
「因みに住居は前と同じです。高校も神山高校。もう前回の貴方は亡くなり空き家になってますし高校も転校生として通ってもらいます」
……住居、学校は同じ。
やりやすいと言えばやりやすいか。
「それでは第三の人生。楽しんできてください……バレないようにしてくださいよ?」
「うん、バレないようにするよ」
……名前…悠と名乗りたいな。両親が名付けてくれた大切な言葉。…漢字は変えて苗字は……遊んでもいいかも。
髪色や髪型も変えなきゃな。
……明るい感じにして…喋り方とか。
そのままだと変に勘ぐって来そうな子が居そうだし……司とかまふゆ辺りは普通に怖い。
なんて考えていると視界が白に染った。
△
▽
「……はぁ…疲れた」
………………彼なら大丈夫。
問題は━━
もし彼の正体がバレれば━━
「……やっぱり姿は変えた方が良かったかなぁ」
でも…なんだかんだ長い付き合いだし。
なんとかなる…と思いたいけど、結構抜けてるし……。
関与しない以上は見守る他ない。
「……頑張って」
今はもう居ない彼に向けて嘆いた。
こう書くとなんか過去の掘り下げをしないといけないのしんどそうですね。
展開
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特に何も無く神山高校
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トラブル