皆を救ったら二次災害が起きてた件について(最低速度投稿)   作:カツオ節太郎

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自覚と無自覚

「……はぁ」

 

 制服に身を包み人気の無い通学路を歩く。

 ヤバい……ヤバい。

 

 …仕方ないで片付けるしかない。

 

 自宅に戻り荷解きの続きをしていた時、もう一枚のメモ。…と神山高校の制服を見つけた。

 

 転入は翌日。必要な身分証明書は名前を決めた後に送付する。

 

 スマホなどの必需品は自由に調達してくれ、と。……窓から外を眺める。

 

 時間は確認できない。けど、夜だった。

 ……ああ、無理だね。

 

 そっくりさんで通す他なくなった。

 だからこそ朝早くから登校している。

 

 これなら……なんとか…誰とも会わずに━━

 

 正門が見える。

 直ぐに足を止めた。

 

 少数の生徒が正門の前に立っている。

 遠目だけど腕章が見える。

 

 ……風紀委員会。

 忘れていた。

 

 今日は抜き打ちの持ち物検査だったのか。

 

 ……運が悪い。

 正門から入ろうものなら確実に止められる。

 

「このまま休んだ方が……」

 

 いや、何れは顔を合わせることになる。

 それに……また、救わないといけないんだ。

 

 開き直ろう。

 たまたま鹿目悠に似ていた男が、たまたま神山高校に転入してくるだけ。

 

 それだけ。

 ……行こう。

 

 △

 ▽

 

 久しぶりの持ち物検査。

 ふと気合いが入る。

 

 でも……空元気と変わらないかも。

 

 学校全体が暗い。

 ……悠さんのことで。

 あの変人ワンツーこと天馬先輩と神代先輩も大人しい。

 

 いつもは爆発させたりと騒ぎを起こすくせに…今は全く起こさない。

 天馬先輩に至ってはあの煩さがない。

 

 良いことかもしれないけど……嫌だなぁ。

 

 彰人や冬弥も……あからさまに元気がない。こはねも慕っていたしもちろん私だって……。

 

 だからこそ気丈に振る舞わないといけない。

 

 私まで沈んでじゃ……。

 

「あ、忘れ物したから取りに行ってくるね」

 

「はいよー」

 

 風紀委員の一人(友人)がポケットをまさぐりながら校舎に走っていく。

 

 んー……一人。

 まだ生徒が来ることは無いだろうし大丈夫かな。

 

 キッチリと閉めていた制服のボタンを外す。……ふぅ…やっぱりガラじゃない。

 

 正直持ち物検査なんてしたくなかった。

 

 生徒たちを見るのが……辛い、苦しい。

 

 悠さんは神山高校に居なくてはならない人だった。過大評価……をしてるつもりはない。

 

 穏やかで全てを包み込む優しさ。

 私たちを慈しむ綺麗な眼差し。

 

 ちょっとお節介だけど……ちょうどいい距離を保っていて…いつの間にか自分たちから距離を詰めていっちゃうの。

 

 悠さんは嫌な顔をせず受け入れてくる。先輩…というよりはお兄さん。

 

 後ろで見守ってくれている安心感があった。

彰人が悠さんを見つけると嬉しそうに駆けていくぐらい。

 

 天馬先輩を慕う冬弥並だし……。

 寧ろ懐きすぎて正直キツいと思った。

 

 それぐらい悠さんは……。

 

「……転入生がくるんだっけ」

 

 こんなタイミングに。

 職員室まで案内する様に先生に頼まれてたの思い出す。

 

 引き受けた以上はしっかりするつもり。

 だけど……。

 

「……気が重い」

 

 学校の空気を聞かれたらなんて答えればいいんだろう。……ほんとに……っ! 

 

 足音が向かってくる? 

 もしかして生徒…? やばっ……! 

 

 慌てて制服のボタンを閉める。

 こんな姿見られたら何を言われるか…! 

 

 ……目の前で足音が止まる。

 多分、見られてない……大丈夫! 

 

 よし…! 

 

「おはようございます! 風紀委……」

 

 顔を上げ……口を止めた。

 だ、だって……ありえないことが起きているから。

 

「あ……お、おはようございます」

 

 悠さん……? 

 え、なにこれ……い、生きて…。

 

 で、も葬式に参加して……火葬も……。

 あ、え? ……は? ……え? 

 

 ……あ、れ…涙……出て………。

 

 △

 ▽

 

 目の前で口元に手を当て固まった杏ちゃん。

 

 どうしようか。

 ……選択肢は一つしかない。

 

「えっと……その、今日転入す」

 

「……悠…さん……?」

 

 震えた声。

 目に涙をためている。

 

 ……そうだよ、ただいま。

 と言えればどれだけ良かったんだろう。

 

「……どうしたの?」

 

 鹿目悠の時間は終わった。

 終わってしまった。

 

「ぁ……大丈夫で…す。……嘘…止まんない…」

 

 溢れる涙を拭う杏ちゃん。

 それでもとめどなく流れる涙は頬を伝い足元へ落ちていく。

 

「………………」

 

 黙ってみることしかできない。

 

「ご、ごめんな…さ、い!」

 

 遂には座り込み顔を隠してしまった。

 …………心臓が痛い。

 

 あと何回泣かせればいいんだろう。

 分かっているのに……。

 

 分からないふりをしないといけない。

 俺は…………。

 

 その場でしゃがみ目線を合わせる。

 そっと……手を回し背中をさする。

 

「っ……あ、の…」

 

「大丈夫。……大丈夫だよ」

 

 優しく語りかける。

 ……慕ってくれてありがとう。

 

 泣かせてしまってごめんね。

 

「……は…い…」

 

「お待たせ…杏!? 大丈夫……えっ!? …鹿目先輩……?」

 

 風紀委員の女の子が駆け足で…。

 杏ちゃんと俺を交互に見て動揺する。

 

 ……ちょうどいいや。

 

「お願いできないかな?」

 

「え? ……あ、はい! 杏……」

 

 戸惑いながらも杏ちゃんに駆け寄り入れ替わりで背中を撫でていく。

 

 ……行こう。

 立ち上がる。

 

「……え?」

 

 瞬間に腕が下に引っ張られた。

 

「…………」

 

「あ…杏……?」

 

 杏ちゃんが裾を握っていた。

 困惑する風紀委員の女の子。

 

 …………………。

 

「……また、後でね」

 

「ぅ……」

 

 杏ちゃんの手を離した。

 職員室……どこだったかな。

 

 △

 ▽

 

 悠さん……だ。

 絶対に悠さん……だ。

 

「……大丈夫?」

 

「うん、もう大丈夫。ごめん」

 

 背中をさすってくれた友人に笑顔を見せて立ち上がる。

 

 感触はあった。友達も見ている。幽霊じゃない。

 背中をさすってくれた。

 

 あのぬくもりは……悠さん、だ。

 

「……ねぇ、あの人って」

 

「…………悠さん」

 

 校舎の中に入っていった。

 ……もしかして転入生って…。

 

「でも鹿目先輩は……ッ…」

 

 友達が息を飲んだ。

 

「どうしたの?」

 

「あ、ううん。なんでもないよ……」

 

 顔引き攣らせながら後ずさっていく。

 ? ……大丈夫ならいいんだけど。

 

 ……うん。

 

「行ってくる!」

 

「え? 持ち物検査は!?」

 

「悠さ……さっきの人。転入生かもしれないから! 先生から案内任されてるの!」

 

 ……確かめなきゃ。

 彰人達にも連絡しないと……! 

 

「あー……うん。行ってらっしゃい」

 

「なるべく早く戻ってくるから」

 

 スマホを取り出す。

 グループで送信、と。

 

 まだ…間に合うよね。

 

 足に力を入れて全速力で校舎へと駆け出した。

 

「……はぁ…怖かった。ほんと鹿目先輩の事になると……しかも自覚ないし。まだ東雲くんの方が可愛く感じるよ。……鹿目先輩に似てたなぁ」

 




アンケート通りだと2-Aですかね。
無自覚系です、はい。
またアンケート置いときます。
次回からはプロセカの別作品と交互に書いていく予定になりますので投稿頻度は下がると思います。
別作品との温度差ベクトルが対極なので書いてると普通に間違えて書いてたりします、はい。

んむ、こうしよう。次回の次回

  • 目覚めた奏
  • 勘違いの加速
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