皆を救ったら二次災害が起きてた件について(最低速度投稿) 作:カツオ節太郎
重い空気がヒシヒシと全身に降りかかる。どんよりとした瘴気と言えばいいのか。
通学路を歩く生徒たち。
顔を俯かせている生徒、楽しそうに談笑する生徒。色とりどり……だが。
「でね! あの時鹿目先輩……が……」
「……鹿目先輩…」
彼の名に周りの生徒が反応した。
オレもピクリと体をこわばらせる。
鹿目悠。
オレのクラスメイトであり、親友であり……初めて弱音を吐いた相手。なにより大切な……大切な━━
「……クッ」
叫びたい口を噛み締める。
突然だった。
先生に言われたあの言葉が今でも忘れられない。
無遅刻の悠が珍しくいない。
……あの日の朝礼。
『……鹿目悠さんが亡くなりました。……心不全らしい、です』
泣き腫らした顔を晒し嗚咽をもらす先生。
クラス全員が驚愕した。
信じられなかった。
いや、信じたくなかった。
だが……死に顔を見て…嫌でも認識させられた。
亡くなった……悠、が?
あんなに元気だったのに…し、心不全…?
悠……病気だったのか?
そんなこと一度も……。
な、なんで……オレに教えてくれなかったんだ?
頼りないから……か?
なら、オレじゃなくても…いい。
類でも、寧々でも、えむでも━━
……咲希や冬弥…誰でもいいんだ。
類は目に光が消えた。あれだけゲリラショーをしていたのに……濁りきった生気のない目が━━
寧々は寝込んだ。魘され目を覚ましては悠……お前の名を呟いて……。
えむは一日中泣いてたんだぞ?
あの元気の塊のえむが……!
咲希は心不全と聞いて……助けたかったって……助けられなかったって━━
冬弥……は彰人の事もあるがそれでもお前の死を惜しんでいた。
みんな……みんなお前のことを……!
相談したって良かったじゃないか!!
頼りっぱなしで……何も返せてないじゃない…か……。
『絶対世界一のスターになれる。だから諦めちゃだめだ。……司が諦めるわけない、か。そうだ、司が世界一のスターなったら絶対にショーを見に行くよ。あとはみんなでパーティを開こう。……作るなら司の大好きなアクアパッツァか生姜焼きかな?』
あの言葉は嘘だったのか?
オレが世界一のスターになったら見に来てくれるんじゃなかったのか……!
パーティを開いてくれるんじゃなかったのか?
ご馳走を用意してくれるんじゃなかったのか……!
もう……それも叶わないのか。
……オレを、置いていくのか。
……頭の中でグルグルとあの光景が写し出される。思い出したくない。
忘れたくない。見たくない……現実を。
誓った約束は儚く散り。
ひとつの思いは音を立てヒビを入れていく。
「……鹿目先輩…ぐすっ」
「…ちょっと……泣かない…で、よ」
何時ものオレなら笑顔にする為前に進んでいたんだろうな。
足が進むことはない。
目を伏せてしまう。
……逃げた。
あはは、オレは弱いな。
悠……お前がいなくなってこんなにも弱くなった。
オレだけじゃない。
みんな、がだ。
きっと……オレたちにとって━━
「……冬弥からか」
登校中に着信が入る。
久しぶり……だろう、か。
避けていたわけではない。
時間が欲しかった。
……受け入れる時間を。
まだまだ……掛かりそうだな。
「おっといかん」
学校で話せばいいものを朝早くに連絡してきているのだ。
何か大切な用事があるのだろう。
「もしもし」
「司先輩! 今すぐ学校に来てください!」
差し迫った冬弥の声が突き抜ける。
「冬弥? どうしたんだ?」
「お願いします! 彰人を止め……彰人!!」
電話越しから誰かの怒鳴り声……彰人か? 冬弥の静止する声を最後に切れる。
「冬弥? ……冬弥!!」
かけ……いや、学校に行けばいい。
「……どうし━━」
今度は通知?
しかも白石から……ッ!?
スマホに写し出される一文。
〖悠さんが生きてる〗
△
▽
視界がブレる。
口の中に鉄の味が広がっていく。
「ふざけんな!!」
胸ぐらを掴まれ壁に叩き付けられる。
「彰人! 落ち着け!」
「やめて…!」
冬弥くんと杏ちゃんが必死に止めに入る。
……周りにはどよめく生徒達。
分かってはいたんだ。
奏や杏ちゃんを見てれば分かっていた筈なのに……。
歯を食いしばった彰人くんを見て改めて実感する。
ああ……吐きたい言葉を抑え込むので精一杯だ。
「本当だよ。……君たちの事は知らない」
吐きたくない言葉で肩代わり。
知っている。良く知っているよ。
「ッ…!」
仕方ない、で片付けられないことでも。
もう残されていない。
「冬弥! どうし……」
「司先輩!」
背中が壁から離れ落ちる。
……迫力はお姉さん譲りだね。
殴られた頬が痛む。
……はぁ。
絵名に会うのが怖くてたまらないよ。
……切実に。
「……クソッ!」
「彰人!! ……すいませんでした」
走り去っていく彰人くん。
追いかける冬弥くん。
「大丈夫ですか……」
一緒に追いかけると思っていた杏ちゃんは傍に寄り赤くなった頬に触れる。
「……大丈夫だよ」
放心状態の司。
だけど瞳はハッキリと……俺を見ていた。
△
▽
「だ、大丈夫だよ」
「大丈夫……って頬が腫れてる。保健室で治療しますから……絶対に」
目の前の光景に目が離せない。
懐かしい……この光景に。
欠けたピースがハマっていく感覚。
「……悠…なのか?」
聞かずにはいられなかった。
悠の口から聞きたかった。
「天馬先輩、その……」
白石の言う通りなら……と、思った。
だが……白石の顔は━━
それでも……!
それでも、だ!
「…………ええと、ごめん。俺はその悠って人ではないよ」
白石の瞳が潤んだ。
「……そう、か」
……その声で言われるのはキツいな。
彰人も……きっと…。
答えなんて分かっていた。
現実なんてなくて良かった。
悠は死んだ。
分かっていた……。
ッッ!
……だって同じなんだぞ!?
その顔が! その目が! ……その声が!
寸分違わず……まるで生き写しじゃないか!!
「……俺はこれで」
「あ、悠さ……」
認めたくないのだろう。
白石には彼が見えてない。
見えているのは……。
「それにもう時間だね」
背を向け去っていく。
「待ってくれ! 名前は━━」
手を伸ばすが空を切る。
届かない。……嫌だ、オレを置いていかな━━
聞こえるチャイム。
時が過ぎていた。
我に返る。
……落ち着け、落ち着くんだ。
悠じゃない。違う……ユウジャナイ。
「……白石」
「なんですか」
涙を拭う姿は痛々しい。
だが聞かなければならない。
「……彼は」
△
▽
担任になる教師の後を歩く。
見覚えのある廊下は自然と懐かしさを覚える。
……クラスは2-A。
因果なんだろう。
また同じクラスなんてね。
頬を撫でる。
唇も切ったみたいで痛い……みんなはもっと痛いんだ。
殴られただけありがたいと思う。
……あ、そうだ。
名前……もう俺は鹿目悠としてみんなに寄り添えない。傍にいることはできない。
……この名前はとはお別れしよう。
狂わせてしまう……この名前とはさようなら。
だから……こそ、別人としてみんなと…。
上手くいく、とか打算的に考えちゃいけない。
絆に損得は必要ない。
ただみんなと一緒にいたいだけ。
救うなんて烏滸がましい。
……心を満たす。聞き届けよう。
それだけでいい。
「━━さん」
先生の声にノイズが走る。
……名前を決めてないから、かな。
「はい」
「私が教室に入ります。ホームルームが終わりましたら━━さんを呼びますので入ってきてください」
「……分かりました」
複雑そうな顔で教室に入る。
……また、よろしくお願いします…先生。
ンンンンン。
次回はもう片方の作品を投稿しますので少し時間がかかります。
勘違いの加速。承りました。まだ勘違いしてるのか怪しいけど……。
終わったら次は……宮益坂女子学園からか、な?
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1-A
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1-B
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1-C
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2-B
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2-D