皆を救ったら二次災害が起きてた件について(最低速度投稿) 作:カツオ節太郎
「…んっ」
起き上がる。
……昼、かな。
窓から外を眺める。
濁りきった曇り空。
窓ガラスを濡らす水滴。
……雨、か。
息を吐く。
腹部に痛みが。
押さえて深呼吸。
更に痛みが襲う。
……まいったね。
全身打撲に肋骨骨折。
戻ってきて三日目。
……三日目でこれだよ。
運が悪いのかな。
……自業自得。
安全運転をしていればこんなことは起きなかった。
感情に身を任せた愚か者の末路。
擦れる音。
「悠くんおはよう!」
立ち上がったみのりちゃん。
後ろには斜め向いた椅子。
「おはようみのりちゃん」
…来てくれたんだ。
そわそわと落ち着きがない。
消えない涙の痕。
不安と安心が入り交じった笑顔。
もしかしてさっきまで泣いて……。
「悠くん…?」
誤魔化せなかった。
……当たり前だ。
方法がないんだ。
身分証はない。
白状するしかなかった。
神様や転生は教えられない。
苦し紛れのカバーストーリー。
……気休めにもなりはしない。
ふざげた理由。
5発ぐらいは貰う覚悟をもって騙る。
……それ以上かもしれないなぁ。
はは……笑えない。
みのりちゃんは……。
生きているならそれでいいと。
言ってくれた。
……泣いてくれた。
……心に傷を残していく。
嘘をついた自責の念。
同時に憑き物が落ちる。
話せる相手がいる。
どれだけ幸せなことか。
まだ隠し続ける自分に嫌気がさす。
自分の死は大きいものだった。
分かっていただろう。
見ないようにして逃げていただけ。
怖くなって……どうしようなくなって……。
……二人だけの秘密にしてしまう。
そんなことして意味はあるのか。
……ない。
精一杯の強がりだ。
みのりちゃんを巻き込んだ茶番。
低俗な道化。
冷静に考えられない。
ああ、思ってる以上に。
追い詰められている。
心が、身体が……沈んでいく。
……弱いなぁ。
なんの為に戻ってきたのか分からなくなる。
一から頑張る? きっと楽しいから?
人を追い詰めるのが楽しいのか?
そんなわけがない。
……どうすればいい。
「……あ」
なんで簡単なことに気づけなかったのかな。
そうだよ。
……諦めればいいんだ。
なんていった?
一切関与しないといっていた。
バレたらいけないの?
……いいんだよ。
みんなにこんな思いをさせるくらいなら━━
神様の言いなりはやめよう。
……遅すぎた。
けど……これで元通りになる。
元通りにするんだ。
「悠くん……?」
「………………」
本当の手遅れになる前に。
逃げる足を止めるんだ。
立ち止まってもいい。
そこから一歩でも歩み出す。
……うん。
「みのりちゃん」
「! …う、うん」
「やっぱりみんなに━━」
「……大丈夫だよ」
「話すよ…え?」
……大丈夫?
「言わないから」
みのりちゃん?
「え、あ……いや…」
「……悠くんも言っちゃダメ」
有無を言わせない圧力。
仄暗い瞳。
嵐の前の静けさ……みたいな。
「でも……」
「悠くん」
っ……みのりちゃ。
抱きしめられる。
…苦しい、と思うのは失礼だね。
「わたしが守るから……」
「…………あ…うん」
ありがとう……嬉しいよ。
……言い得ない何かを感じる。
蛇に睨まれた蛙。
……鷹の前の雀。
甘い吐息がまとわりつく。
憑かれたように……重い。
「悠くんは悪くないんだよ。悪いのは━━」
抑制の欠如。
……落ちる色。
ああ……俺はどうやら……。
その一歩すら難しいかも。
結構痛い、なぁ。
精一杯の笑顔を向ける。
それしかできなかった。
△
▽
本当は生きていた。
なのに……死んだことにされた。
別人として生きることになるんだよ。
わたしなら……堪えられない。
……狂っていた。
両親から貰った大切な名前。
大切な家族。
……思い出の共有。
築いた友情……愛情。
全てが失われる。
なにも悪いことをしてないのに……。
悠くんは悪くないのに……。
はじめまして……。
どれだけ辛い思いをしたのか分からない。
これだけは分かるよ。
また戻ってきてくれた。
みんなの為に……。
別人として……。
悲しくて、辛くて、寂しくて。
本当に優しい人……。
今だって苦しそう。
……壊れかけの寝顔。
あの時……
うさぎさんが逃げ出さなきゃ━━
何も知らなかったんだ。
同じことを繰り返していた。
ありがとう…うさぎさん。
…悠くんを守ることができるよ。
わたしが……
……
「悠くん」
ベッドで眠り続ける。
……休んじゃった。
病院で診てもらうフリをしてお見舞い。
本当は夢なんかじゃないかって……。
幻なんかじゃないかって…。
違った。
本当に悠くんが生きてて…。
もう……悠くんじゃない。
叶音ヨウ、くん。
病室の表札にはそう書いてある。
大丈夫、大丈夫だよ。
悠くんのこと忘れないから。
わたしだけは悠くんのことを知ってるから。
安心して。
誰にも言わないから。
……教えないから。
だって━━
2人だけの……
「……っ」
身体に伝わる振動。
スマホに友達の名前。
……
こはねちゃんは知ってたんだよね。
悠くんのこと……。
神山高校には杏ちゃんや東雲くんがいる。
聞いてたんだよね。
……教えて欲しかったな。
ううん、これで良かったんだ。
じゃなきゃ……。
今はなかった。
ありがとう。
……教えないでくれて。
こはねちゃんも悠くんのこと好きだもんね。
……気持ち分かるから。
だから安心してね。
悠くんはわたしが守るから。
だからごめんね。
教えてあげられなくて。
でも……。
お互い様……だよね?
振動が消える。
……スマホの電源を落とした。
「…んっ」
……涙、隠さないと。
袖で拭う。
…大丈夫。
「悠くんおはよう!」
そう…大丈夫。
△
▽
みのりちゃんに流されてしまった。
いや……諦めた俺が悪い。
流された、と言うより鼓舞された。
……そう、考えたいんだけどさ。
ちょっと…諦めかけそう。
廊下を出てすぐの出来事。
「……嘘…先輩……?」
「…………」
目を見開いた瑞希。
潤んだ瞳に心を痛める。
無言で射殺す勢いの絵名。
……拳を握り締めている。
恐怖よりも、死そのもの。
この後の展開が予想できる。
……瑞希と絵名がいるってことは。
奏が入院してる病院…?
同じだったんだね。
あとでこっそり様子を見よう。
「……こんにちは」
「あの…えっと……」
「ふざけてるの?」
戸惑う瑞希。
普通の反応だよね。
死を目の当たりにしているなら尚更。
絵名も予想通りだよ。
彰人くんと全く同じ。
ダメだね。
……寧ろ助かったよ。
「ごめん。俺は…」
「悠くんじゃありません」
遮られる。
……あの、みのりちゃん?
「っ…どう見ても」
「悠くんは亡くなったんですよ」
「どう見ても悠でしょ!?」
絵名の叫び。
無数の視線が集まっていく。
「ヨウさんって名前があります」
怯むことなく表札を指差す。
……なんで名前が…。
学生証からかな。
呑気なことを言ってる場合じゃない。
これ以上はややこしくな…。
「みのりちゃん…学校は……」
「休みました」
瑞希の問に淡々と告げる。
あ…えぇ…?
みのりちゃん?…みのりさん?
「……あのー」
なんとかしな…。
「…そう。人違いだったのね。ごめん」
「ちょっと!絵名!?」
無理みたい、だね。
バレた後…本当にヤバそうだよ。
納得はしていない。
顔が物語っていた。
これでバラす選択肢が消えた。
……消えちゃったよ。
ああ…天寿を全うできるかな。
「大丈夫だよ悠くん」
微笑むみのりちゃん。
……大丈夫じゃないと思う。
はぁ…今だから言うけど。
……
△
▽
「ちょっと絵名!あれは…」
「悠よ」
「ならなんで…!」
「……みのりちゃん」
「みのりちゃん?」
「ちょっと、ね。…似てたから不味いと思ったの」
「似てた…?」
「……まふゆとね」
「あ、あー……」
「……呼びますか」
んんん。
自分から死地に向かうことになるとはなぁ。
あはっ……。
レオニの絡みにワンダショが絡むのでアンケで例の結果アンケ置いときますね。
DNA
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一致
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不一致