唐突で突然で申し訳ないのだが自分には前世、更にはその前世での記憶がある。つまりは今が三周目。
何を言い出してるのかわからないかもしれないけれど、そうとしか言いようが無いのだから勘弁してほしい。
少し語る事になってしまうが、前々世では自分は普通のヒトで男性だった。えらく他人事のようだが今生と前世の影響も在るのか、ホント他人の様な感じなのだ。特に語る要素もない、平々凡々とした社畜の一人、なんてことはないそこら辺に沢山居るモブと称して差し支えない人物だった。死因はわからない、気が付けば次の世である前世の生へと移っていた、老衰ではないだろうまだ30代だったし。まぁ過労か何かでポックリと逝ってしまったのだろう。
そんなこんなで移った次の生である今世からすれば前世に当たる生ではヒトではなかった。特に犯した覚えは無いのだが畜生道に堕ちるだけのナニカをヤッてしまっていたのだろう。その姿は馬だった。
それも平和な時代の馬ではない、戦に乱れた乱世の時代、その更に混迷を極めていた有名な『三國』の時代。その中の一頭として産まれ落ちていた。
まぁそれでも無銘ならまだ良かった、そこそこ生きて往生出来るだろうと、だがそうは問屋が卸してはくれなかった様だ。その生で自分に付けられていた名は『赤兎馬』、そう演義でもそうじゃなくても出てくる有名なアノ赤兎馬である。俗的には三國の時代は兎顔である馬が優秀でありその赤毛が須らく赤兎馬とされていたらしいのだが、あいにくと名前としてそう呼ばれていて、しかもちゃんと無双の猛将の元で共に駆け、奸雄の元に渡り、後に美髯公の元で共に駆け抜けた。まぁその辺りは語るべき時が在れば語ろうと思う。そろいも揃ってあいつ等なんか変わった感じの性格で演義やらなんやらで語られているような奴らでは無かったと、今はそれだけ。
そして今に至るは今世。なんの因果かそれぞれが全部並行世界だか別世界だかハッキリとわかる程に”現実”だったであろう前々世とは違う世界、だが知らない訳ではないこの世界。
前々世も前世も男でオスであったのに性転換し女の子になり、ヒトではなく馬でもなくウマとなり、『赤兎馬』だった前世を受けてるのか受けてないのか『アカウサギ』の名をソウルとその名前に刻んだ”ウマ娘”に成っている自分が此処にいる。競走馬達が麗かな乙女へと擬人化され競い合うゲームの世界に。
そんな語りを脳内で繰り広げていた私は今何故か大人たちに囲まれて居る。勿論知らない人に囲まれて、おうおうおうとカツアゲをされて居たりアブナイ事柄へ誘われて居るとかそんな事はなく……
「いいか雲長、お前だから、お前だからこそ我が娘であるウサギを預けられるんだ。絶対にトレーナーとしての権利を勝ち取れ。いいか、何度でも言うがお前しか信用していないといっても過言ではない、必ずやあの孟徳や仲穎に盗られるなよ!!」
「わかったわかった、ソレは何度も聞いている奉先。しかし良いのか? セキト殿自身は別段トレセン学園へ行きたいと言ってるわけでは無いのだろう?」
なんでか今生の父親はK〇eiで無双の顔やってそうな濃ゆい顔の呂布そのもので母親は作品を同じとする貂蝉その人だったり、更に姉にはヒトである玲綺が居たりする、なのに私の容姿は恋姫してる方の無双の呂布に長めの大きなウマ耳生えた感じになってる。
対してその呂布に喧しく同じことを結構前から言われ続けているのは、その美しさは認めるが長すぎる髭は社会の常識に喧嘩を売ってるのかと言いたくなるヒト、これまた無双の顔やってそうな美髯公、というかK〇ei版関羽そのものであり、なんでか知らないが父である呂布の大親友であったりする。私が産まれる前、というより学生時代よりも前、幼いころからの親友だったそうな。
ちなみに私の呼び名がセキトなのは私がそう呼んで欲しいとお願いしたから。流石に前二つの生の時に男だったのでウサギちゃんとかだったり可愛い名前で呼ばれるのはクるものがあるのだ。家族は頑なにウサギと呼び続けてくるけど。
「ソレはそうだが、ウマ娘に産まれた子は走りたがる、走ることが幸せだというではないか。ならば自由に優雅に走ることが出来るトレセン学園に入れてあげる事こそが最高だというものだろう!?」
「いや、だからセキト殿はその本能的なモノとは別にやりたい事があるのではと」
「この子は欲しがらない子なのだ! ならばこちらから全て用意して与えてあげるのが愛情だろう!」
「まぁそういう欲求が無いといえば嘘になるけど、私は普通に生きていければそれでいいのでぇ」
壮絶だった前世もあるし本当にこれに尽きる。それになぜだか私の周りにいる生まれる作品を完全に間違えた方々は素でウマ娘に匹敵する膂力や脚力を有している、我が父やその親友である雲長さんや文遠さんは言わずもがな、我が姉や母でさえもなんと私より強い。っというより私が平均より弱いのだろう、そうに違いない。世界はいつだって私に厳しい、バグまみれだ。
まぁそんななんやかんやがありまして、入学したのは中央トレセン学園。走れるだけなら地方でも良かったのに周りが張り切ってしまって中央を選択し、そこまでされたら頑張るしかないと思い受験にも合格。
それからなぜ居るのかわからないダンボール製の勝負服纏った娘が居たり、騒がしい事が大好きな鹿毛と黒毛が混じったような娘が居たり、角の様な頭飾りを付けピチッとした勝負服の葦毛の娘が居たり、色んなウマ娘と知り合って、色んな事をやって、なんだかんだ楽しい学生生活を送れたと思う。
そして……
『さぁ今年も始まりましたレジェンドドリームカップ、LDC。引退した娘も現役の娘もそうじゃないヒトも古今東西あらゆるウマ娘が集まって繰り広げられるこのレース。ここでは実力差なんてどうでもいい、得意距離も得意な脚質も得意なバ場も知った事ではない、みんな等しく好きなように楽しく走ればいいじゃない。ヒトである僕だって俺だって私だってウマ娘と走ってみたいんだ。そんな誰の夢でも叶えてくれるのがこの場所だ!!』
なんでJWCみたいな事がこの世界では起きてるんだ。
『そして今年の注目のヒトリはこの娘! アカウサギ! 無尽蔵のスタミナと圧倒的なスピード。普段のやる気の無さは御愛嬌、家族や友人の応援が在れば打って変わってヒト一倍頑張るカワイイ子。実況の私イチオシのウマ娘ちゃんです』
余計な解説言うなハズカシイ!!
普通の人から馬になり、その馬”赤兎馬”からまた生まれ変わりを果たして。
なんだかんだは在ったけど、この世界で楽しく生きてるウマ娘、それが私アカウサギです。
浮かんだら続く、でも続いてもオムニバス。