ザレゴトリコイル 金色アランと戯言遣い   作:角刈りツインテール

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多分続きません。とか言ってモチベが上がったら続くかも。


特筆することもない、いつもの戯言。

いつもの断りきれない性分によって同じアパートの住人にベスパを貸してしまい、かといって代わりの乗り物も持っていないため諦めてバスで登校しているぼくの姿がそこにはあった。そういえばバスに乗るのは久しぶりな気がする。たまにはこうやってバタンゴトンと揺られるのも、中々に趣深いものだ———なんて、珍しくそんなことを考えていたら。

なんとびっくり。

財布を忘れた。

「……………。」

いやいやいや…嘘だろ。久しぶりだからってそれは無理がある。無料で乗れるとでも思っていたのかさっきの僕は。

今に見たことでもないが、どうやらぼくはとんでもない馬鹿らしい。

「君、お金は?」運転手が尋ねる。しかし無いものはない。

「えっとですね……」

濁した返事をしつつ、逃げるだの、土下座だの、あらゆる作戦を練ってみる。しかしどうも全てが上手くいかない。こればかりは笑い事でも戯言でもないぞ…嘘はついても罪を負うのは嫌だ。絶対に。こんなくだらないことで。だけどどうすることも———

「———あのーそこのお兄さーん?」

「あ、はい」

ん?

誰だ今の。

考察してみるに、ぼくには妹はいないはずだが———いや、厳密にはいたことにはいたが、少なくとも既に彼女はこの世にはいない、と言った方が正しいだろうか。幽霊として現れたというならばともかく、この世にぼくの妹はいない。

返事をしてから顔を見る(明らかに逆の動作だった)と、そこには金色がかった白髪という、なんとも珍しい女学生の姿があった。なんというか、ふわふわ系、というかぽわぽわ系、というか……巫女子ちゃんを思い出す感じだ。

というか雰囲気まるでそっくりである。今にも「『◯◯◯◯!ただし〇〇!』みたいなっ!」とでも言い始めそうだ。

これは正直に言って、苦手なタイプだと直感した…しかしそう考えてみると、少なくともぼくの痴態を嘲笑いにきた人間でないことは容易に想像がつく。ちなみにこれに関してはまったくもって戯言ではないことをここに注意書きしておこう。なにしろ、ぼくの周りには、わざわざ僕の所に来てぽんと肩を叩き、「どんまい」と満面の笑みを見せて自席に帰る人しかいないのだ。

まさかこれが、類は友を呼ぶ……なのだろうか。

ちなみに、友、とは今からぼくが会いに行く友人・玖渚友のことではなく。

主に哀川さんのことを指している。

「えっと、どうされましたか」

「お金落としましたよ?」そう言った彼女の手には小銭が置いてあった。それも、料金分ぴったりの金額。そうか落としたのか……それならば納得だ。

ぼくが朝、無意識のうちに料金をインターネットで検索し、無意識のうちに財布からポケットへお金を移し、無意識のうちに落としただけなのだから。

……いや、流石に無理がある。

戯言と言ってもいい。

ならば、これはきっと、この子の優しさなのだろう。

意地を張ってもどうしようもないし、そもそも張る意地もない。ぼくはありがたくその小銭を受け取った。

「すみません……その」

「いえいえ全然!まぁ、ひとまず降りましょうか?」

おっと、たしかにこれでは迷惑だ…どうやら彼女も同じバス停で降りる予定だったようなので、一緒にそそくさとバスを降りる。

「ありがとうございます。貴方がいなければ僕は身体で払わないといけなくなって……」

「いやどんな同人誌だよ……」

「戯言です」

「ふぅ……ん?まぁいいってことよ!困った時にはお互い様と言うだろぅ?」

肩をぽんと叩いてきた。

馴れ馴れしい。

が。

……お互い様、か。

さて、いつまで僕が今日のことを覚えてるかな。

たしかに恩を返すことは倫理的に、人間的に大切なことだろう。しかし忘れてしまえばそんなことだって不可能になる。なら今から、何かできるかと言えば答えはNOだ。第一、お金がない。『恩を返したいのですがお金がないので貸していただけませんか』なんてもってのほかだ。仏の顔は三度まで、というが目の目のこの子がどれだけ聖母であっても結局は人間であり、三度どころか二度だって本当は嫌だろう。

だから、今からぼくができることは。

このまま友に会いに行き、友からお金を借りて家に帰り、そのまま全てを忘れてことのみ。

「そうだ!じゃあウチ来てくださいよ!リコリコって喫茶店やってるんです!」

しかしそんな決断も、彼女の聖母スマイルを見てしまえば簡単に崩れてしまうほどには、ぼくは自我のない人間だった。

彼女の手には

『喫茶店リコリコ sweets & cafe』

とコーヒーのマークの前面に書かれてある名刺があった。いらない、と思ったが、つい反射でそれを手にとってしまう。

さて、どうするか……。

「ふぅん……じゃあ君がリコちゃん」

「いえ私は千束です」

おっと。外れたか。

渾身の推理だったのだれど———いやはや、つくづくぼくは探偵に向いていないな。

……じゃなくて。

「というかですね、えっと、先程の話の流れで分かっているとは思うんですが、不幸なことにお金がないんですよ、僕」

「あー……大丈夫です!ツケますよ多分」

「多分?」

「ツケます!絶対!」

信用できねぇ……加えて今時ツケなんて文化が残っているのも信じられないのだが本当に大丈夫だろうか。いざ飲んで「兄ちゃん金無いんか?」と脅されたりとか……ないか。

なんだか今日は被害妄想が激しい1日だ。疲れているのだろうか。

「……じゃあ」

結局、ぼくは大学をサボタージュしてその喫茶店に行くことになった。なにしろぼくの貞操の(?)恩人からの頼みだ。

それを断ってまで行く大学なんて、ぼくは大学とは呼ばないし呼びたくもない。

 

———喫茶店リコリコ。

 

到着した。

「ただいまっしゃいませー!」扉を開けながら、千束さんが慣れた様子でそう言った。どうして一度に言おうとするのか。

「へぇ、これはなかなか」

シンプル木目の、ジブリ作品に出てくるような、なんとも雰囲気のある場所である。

それに、店員も可愛い。友くらいの身長の、モンブラン色の髪をした女の子や所謂“清楚系”の女の子、二十代後半くらいだろうか?の女性、そして、千束。怪しい男もいたが話す限り意外にもいい人のようだ。人は見た目によらない、とはこういうことを言うのだろう。

ごちうさも顔負けの美人度だ。

「いい場所でしょ?」

千束さんがニヤニヤ顔で尋ねる。

「まぁ」

とぼくは返した。ここでドラマのガリレオよろしくそもそも“良い場所”とは云々と言い返してみても良かったのだが、面倒臭くなってやめた。

しかしなるほど、確かに悪くない。かの音楽家殺人鬼でなくともそう思える程には、素敵な場所であった。

「ご注文は?」

千束さんにミカと呼ばれていた色黒の男性がオーダーを尋ねた。まだ決まっていなかったぼくは、メニューを急ぎ見る。

「はは、急がなくてもいいよ」

「いえ、そういうわけには……そうですね。ブラックと……あぁ、最中で」

「了解」

そして黒髪の女の子から出された出来立てのスイーツとコーヒーは、なんとも美味しかった。パリ、という音とともに餡子の味が口の中で広がっていく最中。煎りたての深いコクのあるコーヒー。専門知識がある訳でもないが、それでも美味しいということだけは分かる。和菓子のお供といえばお茶というイメージだったが、コーヒーもなかなか合う。面白い発見をした。今度、友に自慢しよう。

もしかすると今後も使わせてもらうかもしれないな、となんとなく感じた。

 

 

「「「「ありがとうございましたーー!!」」」」

 

が、当然ながら上手い話には裏がある———のちにぼくは、彼女らの“本当の職業”を知ることになるのだが、それはまた別のお話。

戯言だけどね。




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