ザレゴトリコイル 金色アランと戯言遣い   作:角刈りツインテール

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今までは西尾節を控えて書いてきましたが、鴉の濡れ羽島はある意味いーちゃんのホームグラウンドでもあるので、全力の西尾節でいかせてもらおうと思います。ここから先は震えて眠る暇も与えません———正々堂々真っ向から不意打ってご覧に入れましょう。


例の占い師と例の頼み。

「到っっっっっっっっ着!!」

白い海、青い空、白い雲———つまり、自然豊か———もっといえば、何もない島———それがぼくらが今、足を踏み入れた鴉の濡れ羽島の、事前情報がない人にとっての第一印象であろう。もし事前にここがどういう場所か知っていれば、きっとただの自然でも見え方が変わっていたはずで、当然ながら僕は後者の印象を持った。

何か悪いものが島全体に取り憑いているような、禍々しい空気。それはきっと、ぼくがかつてここで経験した、ある事件が原因だろう。

首切り連続殺人事件。

ABCでもXでもYでもない、そんな小遊び心さえ存在しないただただ単純な、人間の肩がまっ平になったあの禍々しい事件。

ぼくと友はそれを可憐に(可憐に?)解決し、犯人を追放することができたのだが———しかしそうは言ってもイメージというのは到底変わるものではない。

猫の死体に易々と触れられないように。

この島に来たくない。

所謂、精神的な『穢れ』というものだ。

まぁ、来たくないという思いは、それとは全く別に、ここに住む占い師の影響も大きいのだけれど…。

そんな感情を除いたとしてももう二度と来ないのだと思っていたのが正直なところだ。

 

まさかぼくが、例の占い師———姫菜真姫の死に様を見る羽目になるとは。

そして本当に、その犯人を暴くこととなろうとは。

奇しくも彼女の願いを———予言を叶えることになってしまったのはいささか不服だが、こればかりは致し方ない。

…なんていうのは、今現在船に乗っているぼくたちの、もっと後の話だ。

今はとにかく、女の子たちとのバカンスを楽しもうじゃないか。ビバ、青春。

 

ま、そんなのは全部、戯言だけどね。

あるいは真っ赤な御伽噺、つって。

 

♦︎♦︎♦︎

 

「あの」

「どうされましたか?」

「やっぱりぼく、以前と同じ部屋がいいです」

「…正気ですか?」

正気を疑われつつもメイド長にどうにか頼み込んで、結局ぼくは、前回と同じ物置に泊まることになった。今回こそは、と息を巻いていたのだが、やはりあの広い空間がどうにも落ち着かずここに舞い戻ってしまったのだ。

ここは、僕が以前宿泊した部屋。

と、同時に。

園山赤音が殺された———否、伊吹かなみの死体が置かれた場所でもある。先程、猫の死体には触れたがらないという人間の心理についてお話したところだが、生憎ぼくはそんな人間味のある感情が薄いため余裕だ。よゆうのよっちゃんである。

だったらどうしてあんな比喩を出したのかという話になるが———特筆すべき理由はない。そういえば『よゆうのよっちゃん』って、きっとかつては身内ネタだったんだよな、インターネットも無い時代にどうして日本中に広まったのだろうか。

なんて、どうでもいいことをなんて考えていると。

ノックの音。

めんどくせ、なんて思いつつドアを開けた。

「やっほやっほ」

「どうも」

訪問客は千束さんと、たきなさんだったようで、どうやら自室での荷物整理を終えて手持ち無沙汰になったらしい。

「ちょいちょいちょいななんでドア閉めるの!?」

勿論、リコリスの制服ではなく私服で、制服か浴衣しか見たことがなかったのでなんとも新鮮だった。それにしても、千束さんの服がゆるふわオーバーオールなのに対し、たきなさんの服はTシャツにジーンズ。

服、持ってないんだな。なんとなく察した。

何故なら、ぼくも同類だからだ。

なんなら、捕まらなければいいとさえ思っている。

「いいんですか、普通の部屋じゃなくて」こんなのただの倉庫じゃないですか。たきなさんが尋ねる。

「えぇ、ぼくはミニマリストでして。実の所、界隈では有名なんですよ、ぼく」

「ふぅん」千束さんがどうでも良いかのように(実際にどうでも良いのだろう)呟き、再び口角を歪ませた。「それよりさぁねぇこれ見てよ〜さっき廊下にあった甲冑〜」

「「何やってるんですか!?」」

ぼくはそのとき、初めて彼女に対して恐怖という感情を覚えた。よくもまぁ、こんな高級そうな装飾物を弄れる。

千束さんが銃撃戦を行なっているときにさえ微塵も感じなかった感情。

これが、恐怖…。

なんて、冗談はさておいて。

「えっと…どうしましょうか」

「いーちゃんってここ来たことあるんだよね?何か面白いものあるの?」

「えっと」僕は思い返す。いくつか脳内検索にヒットしたものがあったので、そのまま口に出した。

「占い師とか…」

「占い師ィ!?」

あ。

しまった、墓穴を掘った。

あの人とは、できるだけ関わるまいと思っていたのに———

「行こ!いーちゃん!」

太陽のような、陰を焼き尽くす笑顔を浮かべた千束さんは、ぼくには悪魔のように見えていた。横にいるたきなさんは、傍観を徹底している。既にぼくに任せる気満々らしい。おそらくは、ここに来るまでの間にも既に彼女の好奇心を抑えるのに苦労したのだろう。これ以上助けを求めることはできなさそうだ。お疲れ様です、たきなさん。

ならばもう、仕方ない、と。

ぼくはゆっくり立ち上がり、彼女らの先陣を切ったのだった。

 

♦︎道中♦︎

 

「そういえば、どう考えてもイリヤさんへの挨拶が先では?」

「イリヤさんって?」

「ここの主人です」

「いーちゃんはなんでも知ってるね」

「なんでもは知りません。戯言だけです。…って何言わせてるんですか」

「貴方自分で言いましたよね、今」

「まーいいんじゃない?後でも。どうせ挨拶はするんだし」

「…ですかね?」

「いーさん、流されないでくださいよ…」

 

♦︎到着♦︎

 

「わお、君か。びっくりしたよ!久しぶりだねぇ元気だった?」

「冗談はよしてください。どうせ分かっていたんでしょう。元気か否かで言えば、否です」

「だろうね。良好良好。でー?なんか用かなぁ、そちらのお嬢さん方は?はじめましてー、だね?」

「千束でーっす!」

「井ノ上たきなです」

「ふんふん、千束ちゃんにたきなちゃんか〜しくよろ〜」

「わ〜いしくよろ〜!」

「…………。」

朝っぱらからワインを嗜む、胸の大きい悪い女———これが、占い師・姫菜真姫の正体である。そして何より不味いのが、既に彼女と千束の間でコミュニティが生まれようとしていることだ。めんどくさい2名で二倍めんどくさくなっているし、何よりうるさい。

「今度は友ちゃんはいないようだね?ふゅー、女たらしー!」

「失礼な、純あ…じゃなくて。まぁなんというか。仕事仲間です」

「ふぅん、仕事。仕事ねぇ…やっぱり君の人生は見ていて面白いや」

一体何を見たのだろうか。過去か未来か、はたまたその両方か———別に、気になりはしない。ただ目の前の人間がそれを勝手に覗き見てニヤニヤしているのが心底気に障るだけだ。

ぼくはそっと、ため息をついた。

「ねぇねぇ、ちょっと占ってよ!」

「ちょ、千束…」

「いいのいいの。なんなら君もするかい?たきなちゃん」

「……では、お願いします」

あれ、おかしいな。

ぼくのときはあれほど渋ったのに。どうして彼女らには率先して占おうとしているのだろうか。

不思議だ。

「何か?」

「なんでもありません。ちょっとした戯言です」

そう言って姫菜さんは千束のほうに目を向けた(どうやら今回もぼくにはしてくれないらしい)。先程から述べているように、彼女は占い師だ。それも、この島に住んでいるからにはそこらの占い師とは一線を画す———彼女は、手相や誕生日や血液型やカードなんてものは全く使わないし、そもそもそれ自体を占うことだってできる。姫菜さんは、見ただけで、その人の全てが分かってしまうのだ。ぼくは彼女のことが苦手だが、しかしその腕だけは確かに評価して差し支えないものだと考えている。

「占いだけじゃないよーん。過去視、予知、テレパシー、遠隔透視、地獄耳、なんでもござれさぃ」

そうだったっけ。そんな細かいことは、もうとっくの昔に忘れた。が、言われてみれば予言以外にも色々できるという会話、いつだったかにしていた気がする。

「たきなちゃんはねぇ———おー、おめでと、君はDAに戻れるよ」

「! そうなんですか!?」

「うん、一瞬だけ」

「一瞬だけ…?」

どういう意味だ、それ。まさか、健康診断で本部の建物へ戻れるなんてオチじゃないだろうな。ぞれなら戻れるどころか、ちょうどこの前戻ったばかりなのだけれど。

「文字通りの意味だよん。戻れるには戻れるけど、リコリコが恋しくて戻って来ちゃうんだ。きゃー!」

「そうなのたきなぁ〜!そんなにウチのこと好きなんだ〜!」

「ちょっ暑苦しいです!やめてくださいよもう!」

千束さんに抱きつかれたたきなさんは、迷惑そうに彼女を押しのける。しかしその頬は赤く染まっていて、第三者目線では、満更でもないようにしか見えなかった。あぁ、なるほど、これが俗に言う百合というものなのか。

あの音楽家風に言うならば、悪くない。

「何か?」

「戯言です」

デジャブだった。

それにしても、たきなさんが怖すぎる。なんだか共に生活を送れば送るほど、ぼくのなかでの2人のコントラストが激しくなっていっている気がする。千束さんがすげぇ良い人に見えてしまうんだから、本当にどうしようもない。

「そんで千束ちゃんは———おめでとう、心臓の件は万事解決だ」

「え」

心臓の件?

それは、一体何の話だろうか。僕が聞いて良い話なのか?

「あの、それって私たちが聞いても良い話ですか」たきなさんが尋ねる。

それに対して、千束さんはふふんと笑顔で返し、「大丈夫だよ?」と答えた。

「私の心臓ね、機械なんだよ」

「「え」」

「それからねぇ、戯言遣い」

姫菜さんは、千束さんの衝撃発言から間髪入れずにニヤリと、笑みを更に深めてから本当に面白そうに、こう言った。困惑の表情を見て笑おうという魂胆だろうが、どうもぼくにはポーカーフェイスができなかったらしく、抱腹絶倒の顔を彼女に見せてしまったのだった。

 

「私、今日死ぬみたいだから———例の頼み、よろしくね」

は?

待て待て、情報が多すぎて混在している…。

えっと…。

は?




執筆中の僕「姫菜さんってこんなキャラだっけ…?」
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