ザレゴトリコイル 金色アランと戯言遣い   作:角刈りツインテール

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受験勉強にあくせくしていた僕もいつの間にか大学3年生になりました。こんなの書いてたなぁとなんか思い出しちゃって久しぶりにハーメルンにログイン。懐かしいなぁこの感じ。
黒歴史にはさせたくないよね。


再会(再開?)

「あら、貴方は———————……えぇと、あぁ、玖渚さんでしたっけ」

「違いますよ。それは青色のほうです。ぼくはそいつの付き添い人です」

「あぁ、そうでしたっけ。それにしても、貴方が名乗った記憶が無いのだけれど」

「名乗っていないので当然かと」

「失礼ですが、お名前、尋ねても?」

「答えたいのは山々なんですが、生憎答えられるような名前を持ち合わせていなくてですね……」

「お久しぶりですね」

「えぇ、お久しぶりです」

 

まぁ、今回もただの付き添いなんですけども、と呟いたのは、聞こえていただろうか。なんとなく、イリヤさんに聞こえていようが聞こえてまいがどちらでも構わないと思っているのは、それがただの逆木深夜さんへのノルスタジイ故の発言だったからだろうか?

当時は僕と同じ付き添いの人間であり、そして今となってはもう二度とお目にかかれないであろう。あの男。

……いやいや、まさかね。

 

「積もる話もありますがそれは後ほどということで……ええと、そちらが、千束さんですね?」

「いえ、私は井ノ上たきなです。千束はこれ」

「おいコラこれとはなんだこれとはァ!」

 

千束さんが全力の否定を見せるも(よくもまぁ、こんな荘厳な空間で騒げるものだ。脱帽。)、そんな叫びは可憐に華麗にスルーされ、イリヤさんの視線はぼくに回帰する。にこりと微笑み、そして言葉を紡いだ。

 

「では、改めましてご挨拶いたします。私はこの島の主———赤神イリアです。『ヤ』ではなく『ア』ですのでお間違えなく」

「あぁ……それは、すみません」

「いえいえ」

 

そういえばそうだったか……のか?もしそれが本当なら(本来なら嘘であるはずが無いが前例があるのでそうとも言い切れないのだ)、そいつは失礼した。言い訳の機会を与えて頂けるとするならば、恐らく最近Fateを観始めたことが遠因の一つになると思う……プリズマ☆イリヤ、最高だね。にしてもまぁよくそんな微々たる発音の差に気がつけるものだ。ぼくが自分の名前を名乗らない人種が故に分からないことなのだが、自分の名前に対しては誰しも敏感になるものなのだろうか。

……この場合は、イリアさんの———『自分の』名前ではないけれど。

 

班田玲。

パンタレイ。

万物流転。

 

「ごゆっくりしていってくださいね。まぁ、何も無いところですが」

「おぉ〜!ねぇたきなたきな、これって最近流行りのデジタルデトックスってやつじゃない!いいじゃん最高じゃん!」

「デジタル……?なんですかそれ」

 

千束さんが謎のはしゃぎを見せる。デジタルデトックス。確か……電子機器を使わずに過ごそう、みたいな考え方だったはずだ。流行りというか、原点回帰というか、少なくともあまり電子機器を嗜まないぼくは年がら年中排出しまくりである。……デジタルを?

そしてそれは後に娘にも受け継がれることになるのだが、それはまた別のお話。

 

「戯言だ……」

 

全くもって意味が分からない。

 

「そういえば、他の面子はどこに?」

「さぁ?広間にいるのではないですか?どのみちすぐに昼食の時間も近いですし、すぐに会えるでしょう」

 

それから社交辞令の言葉のドッヂボールを繰り返し、部屋を後にした。一度来たことがあるはずなのに、凄く緊張を感じるのはどうしてだろうか、と思考して、あぁ、と思い至った。僕が学んでいないだけだ。それ以前に、忘れていると言った方が正しいか。僕はもう既に前回ここに訪れた時のことの過半数を忘れてしまっている。イリアさんの名前を、多少は違っていたものの覚えていただけでも御の字である。

 

「あの」

 

部屋を出た途端、ぼくに声をかけたのはたきなさんだった。珍しい。一体どういった用件だろうか。

 

「どうして貴方は名前を名乗らないのでしょうか。何か理由でも?」

 

今更ですが、と小さく呟くたきなさん。

あぁ、それか。と納得。近頃聞かれることもなくなっていたからこの質問もこれからの彼女の反応も久しぶりだな、と少々の哀愁を感じながらも、ぼくは今まで何度口にしたかも忘れた定型文を口に出した。

 

「まぁ曰く付きって言葉が分かりやすいかな……今までにぼくを本名で呼んだ人間が3人いるけど、生きている奴は誰もいないんだよ」

 

井伊遥奈。

想影真心。

そして—————— 玖渚友。

 

「それは、いったいどういうことでし」

「あっはははは!えぇ〜まっさかぁ〜」

 

最初に笑ったのは、意外なことに千束さんだった。へぇ、そうか。少し意外だ。こういった話を真っ先に信じそうなのは千束さんだと感じていたが。しかしまぁ、むしろ柔軟性に欠けるたきなさんだからこそ、信じてしまうのかもしれないと考えると納得できないこともない。

というか。

人の振り見て我が振り直せ。

ぼく自身も同じことが言えた。

 

「じゃあもし私が何かの間違えでいーちゃんのマイナンバーを見ちゃったら?」

「その場で心臓が止まります」

 

ひぇっと胸のあたりを抑える千束さん。な訳ねぇだろ。

 

「で、どうしますか。帰りますか」

「帰らねぇよっ!」千束さんがツッコミを入れる。なかなか鋭かった。なぁんでこんな折角のワクワク空間なのに、とジトリたきなを睨みつける。「まぁ折角だし〜?行ってみちゃう?広間」

「そうですね。私も賛成です」先程のは冗談だったようで、たきなさんも肯定する。

仕方ないからぼくも「分かった、分かったよ……」と倦怠感紛れに答える準備をした——————が、そもそもぼくに決定権はないらしく、質問はいつまで経っても来なかった。流石に酷くないですか、と尋ねる気も起きない程には、どうやらぼくはこの生活に慣れてしまっているらしい。

不幸中の幸い。

あるいは、不幸中の不幸。

どうでもいいね。

 

♦︎♦︎♦︎

 

『あ、なんだなんだ。新入りかい?』

 

……知らない顔だ。と、思う。ぼくの『思う』ほど信用ならない文面はそうそう見当たらないけれど、とにかく覚えていない。

学ランを着用した中性的な顔つきの男子高校生なんて、記憶を洗いざらい整理してみても行き当たらない。そもそもこの島に男性は逆木さんしかいなかったはずだ。その逆木さんがいない今、当然ながらここに男性がいるはずがない。ならぼくの記憶は正しいはず。うん、ぼくはこの人を知らない。この人は新参者だ。大丈夫、大丈夫、無問題。ノー・プロブレム。別に失礼なことじゃあない。

 

「どちら様でしょうか」

「その9文字を絞り出す過程が面倒臭すぎませんか」

 

うるせぇ。

 

『あぁ、おっけー、そこの可愛い金髪巨乳ちゃんに免じて今回だけは教えてあげよう』

 

「……なぁ〜にが免じてだ何が。普通にセクハラだが?」

 

「あっははは、ごめんごめん!僕の名前は牡丹座 押花。この島には『天才の天才』として呼ばれて来たんだ」わざとらしい指パッチン。「よろしくね」

「……天才の天才?」

「あれだ、簡単に言うとコピーってことだね」ひょいと椅子から立ち上がり、背伸びをする。「僕は瞬時に目の前の人間をプロファイリングし、憑依させることができるのさ。イタコ的なものだと思ってもらえればいいよ」

 

ううん。

よくわからない。

 

「よくわかんないなー」千束さんも同じ疑問を口にする。「例えば何ができんの?」

『浅ましい使い方をするなら裁判で責任能力がないと判断させることができるだろうしー、正義の使い方をするなら遭難者の行方を見つけ出すとか、色々ね』

 

なんというか、極めて異質な人物だ。

ここに来る天才は大抵、「絵」「料理」「数学」「機械」といったシンプルかつ明瞭な概念におけるプロフェッショナルだ。勿論、千束さんもそうと言えばそうになるのだが、どうも分かりずらい。仮に彼と道端で出会ったとして、僕が彼のことを天才だと認識できるだろうか。

多分、できない。

恐らく彼はその時、凡人のコスプレをしていることだろう。

もしくは真似事しかできない敗北者。

潔い—————グッドルーザー。

 

 

ぼくが今まで出会ってきた人物の中でもトップクラスでやべぇ奴だと瞬時に理解が及んだ。千束さんとたきなさんも同意見のようで、表情が硬い。哀川さんと勝負したら確実にコイツが負ける。なのに、あの人とはまた別ベクトルの怖さを持っている。

違和感。

そして、これもぼくが出会い人物に共通して言えることなのだが、ツッコミどころが異様に多い。そもそもどうして彼は学ランを着ておきながらワインを嗜んでいるのだろうか。まさか、そちらも文字通りコスプレとでも?

戯言だね。

あるいはとびっきりの大嘘。

そして僕は牡丹座——————さん?くん?の横の人物に目をやった。

 

「あ、お先にやってるよ〜」

 

やってるよ〜、じゃない。

 

「どうして姫菜さんがここにいるんですかね……」

「悪い?私がここで酒を飲んでることの何が?」

「悪いですよっ!死ぬかもしれないのにっ!」

千束さんも怒り気味で言う。

「あと少しで息絶えるから『こそ』なんじゃないの?」

牡丹座が僕らに異を呈する。

 

「あー,例えば、そこの異乳ちゃん」

「ひんっ……!」

「貴女が明日死ぬとしたら、何をする?」

 

もしも死んだら。

いつだったか友と話した、仮想マシン。

その質問に、たきなさんは右上を見ながら回答を整理する。10秒ほど経過して、ようやくそれを口に出した。

 

「そうならないよう最善を尽くします」

「うわ……」

 

おっと。しまった。

 

「うわってなんですか」

「なんでも。戯言です」

 

なんだか、「無人島に何をもっていく?」と尋ねられて「ド◯えもん」と答える小学生のようだ……と思いつつも、本質的には違うんだろうと判断し、口に出すのは控えることにした。英断である。

そもそも、こういうのは往来いかに質問者からの意図から外れた回答をするかというゲームでもあるしね。

 

『ま、それならそれでいいさ。強かな女の子は好きだよ』

 

女の子らしくて。

牡丹座はどこかキザな——————格好つけた台詞吐く代わりにグラスの中のワインをぐびと飲み干した。




なんかTwitterで西尾維新を思春期に読むなみたいなのがバズってて草です
僕の初めては中2で読んだ物語シリーズです。教室で傾物語読んでて忍野が登場したシーンでは叫ぶかと思いました。僕に物語を進めたお前。許しません。戯言だけどね。
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