ザレゴトリコイル 金色アランと戯言遣い   作:角刈りツインテール

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第三話です!


まずはこの子らを言い包めないといけないらしい。

今日から、ぼくは喫茶店でバイトをすることになった。名前は『喫茶店リコリコ』。可愛らしい店名だが実際の、従業員の本職はこれではない。

そして僕の本命の任務もここでお金を稼ぐことではない。

店名の由来にもなっているが—————リコリス。

DAとかいう(なんの略だろうか。DEAD or ALIVE?)、孤児を集めて日本の治安のために戦わせている秘密組織からの命令を受け、それの従う女の子たちのことらしいが———これには、ぼくも素直に驚いた。日本、といえば『住みたい国ランキング三位』『安全な国ランキング一位七連』『犯罪減少率一位七連』だとか、かなり治安がいい国だったはずだ。

だけど実際は違った。彼女らが、犯罪が起きる前に対処していたのだ。

何というか、それはそれは尊敬に値するね。

で、そんな戯言を吐きながら僕は今何をしているのかと言うと…。

 

「………といった感じで、ぼくは青い髪をした天才美少女に頼まれて、ある秘密組織の内状を探って欲しいと頼まれたのです。探った後その情報をどうするのかについてはぼくの存じ得ないところではあるので、どうかぼくの命だけはお許しください」

 

時は仕事終わり———というか、ぼくはほとんど研修のような感じだったので仕事は何をしていないに等しいのだけれど。いらっしゃいませすら言わせてもらえなかった。邪魔者扱いされているのか、たきなさんが根回ししたのか、どちらだろうか。

「どっちもっぽいなぁ……」

ぼくは事細かに、他の職員に事情を説明していた。…我ながら、バレるのが早すぎる。

ちなみにこの令和時代になんとも時代錯誤な、所謂『正座を強制』されている。

何か、悪いことでもしたのだろうか、僕は。

さっぱり分からないな。

 

「一周回って清々しいな!てか嘘くさっ!」

 

ただ今、元気なツッコミを入れてきた関西民(多分)は中原ミズキさん。茶髪のアラサー女子で、未婚なのだが、一体なぜなのだろうか。顔はかなりいい方…というか、めちゃくちゃいいと思うのだが。それこそ哀川さんに匹敵するくらいの……ということは性格にかなり難があるという解釈で正しいのだろうか。

私、気になりません。

 

「ミカさん、どうしてコイツは来たんですか」

 

井ノ上たきなさんは苛立たしげに尋ねた。恐らく千束と同年代くらいの、黒髪ロングの王道少女。友が大人びたらこんな感じになりそうだな、と思わないこともないくらいには美人だった。

 

「私も詳しくは知らないんだ。DAから転属命令が下されたようだが、そもそも井伊がどうしてリコリスに潜入できているのかすら分からん」

 

彼はミカさん、48歳。色黒で身長高い、強面のここで唯一の男性だ。しかし内面はそれとは反対にとても温厚で、今となっては怒鳴る場面なんて想像さえできない。

 

「ま、データしか信じない人間はどんどんアホになるからなぁ」

 

あはは、と椅子をくるくるさせながら呟いたこのロリはクルミ。こいつに関してはいまいちよく分かっていない———というか、聞いてもはぐらかされるので、ひとまずはただの従業員ということにしておこう。とりあえず可愛い。

……まじで美人しかいねぇなここ。

ちなみに現在、錦木千束さんはいない。何故なら、彼女は僕がDAから転属になったリコリスだと本気で信じ込んでいるからだ。事情もわからないままネタバラシをしてしまえば、彼女を混乱させてしまうに違いない。

 

「ていうか、なんで千束は気付かないんでしょうね」たきなが当然の疑問を抱く。

「それ。だってこいつ、普通に一人称ぼくだよ?」

「馬鹿だからなぁ千束は。僕っ子とでも思っているんじゃないのか?」

「…………。」

女性陣からの評価が著しく低い。

本人は気がついているのだろうか、この扱いに。

というか、クルミに至ってはお前自身が僕っ子だろうに自分のことを棚に上げて何を抜かしているんだ。

「で、どうしたら分かってくれますかね」

「んー……なら、そのご友人に送るデータは全部見せてください。……とかでいいのでは?」

「いいねいいねぇ!面白いじゃないの、賛成」

「データ消されてたらボクが地獄の底まで探し出すぜ」

「じゃあそういうことで———よろしく頼むな、井伊」

まぁ、こればかりは仕方あるまい。仮にもし重大な機密を見つけたとしても、パソコンで伝えず口頭で話せばいいだけだ。なんとまぁ、簡単な話。それで信頼も得られるというのだからこちらとしても有り難い。

「あ、それと、これを」

そう言いながら、たきなさんがポケットから取り出したのは———何かの機械?

なんだろう、嫌な予感がするな。

「えっと、たきなさん?」

「なんでしょうか」

「それは一体」

「これは盗聴器です」

 

……ですよね。まぁ信頼を獲得できるまでは仕方あるまい。悪いな、友。どうやら時間がかかりそうだ。

「あー……それと、一つ聞きたいことがありまして」

「なんだい?」ミカさんが答える。

「こちらの喫茶店の給料を知りたいです」

「今更ですか」

「あぁ…そういえば言っていなかったか。まぁ景気によっても変わるが、大体こんな感じだ」

そう言って出してくれたのは、給料についてまとめた表だった。

「たっか……」

公務員くらいあるんじゃねぇの、これ。

と、驚いて暫くしてから理解した。なるほど、リコリスとしての給料もここに含まれているのか。道理でミズキさんとクルミの給料が他のメンバーより安いわけだ。

今のぼくはリコリス—————つまりこれは、かなり稼げるということを意味している。ボロアパートに住んでいるぼくからしたらこれ以上に助かることはない。このスパイ期間中でいっぱい貯めて、家買うぞ、家。

「ま、戯言だけどね」

「戯言?」

「いえ、おかまいなく」

まぁ、なんとかなるさ。明日は明日の風が吹く。

ひとまず今日は解散ということになり、それから暫く経った後、店から灯りは完全に消えた。

ここから骨董アパートまでは、徒歩20分の距離だ。

タクシー……は高いからなぁ。

歩くか。そう決意を固め、初めを一歩を踏み出した。




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